カテゴリー「経済・政治・国際」の67件の記事

2009年6月 4日 (木)

参考●当面の政治日程(2009年6月4日現在)

6月14日   千葉市長選
6月16日   国民年金法改正案、再可決可能に
6月19日   西松建設前社長初公判
6月中旬   政府の「安心社会実現会議」が提言
6月22日   海賊対処法案、再可決可能に
6月29日   日本郵政株主総会
6月下旬   政府が骨太の方針2009を決定
7月3日    東京都議選告示
7月3日    天皇皇后両陛下米国、カナダご訪問
7月5日    静岡県知事選
7月8-10日  主要国首脳会議(伊ラクイラ)
7月12日   東京都議選、奈良市長選
7月12日   税制改正法案、再可決可能に
7月17日   天皇皇后両陛下がご帰国
7月26日   仙台市長選
7月28日   通常国会会期末
8月6日    広島原爆忌
8月9日    長崎原爆忌
8月11日   ◆衆院選公示(解散しない場合)
8月23日   ◆衆院選投開票(同)
9月10日   衆院議員任期満了
9月15日   国連総会開幕(ニューヨーク)
9月24-25日 金融サミット(米ピッツバーグ)
9月30日   麻生自民党総裁が任期満了
11月14-15日 APEC首脳会議(シンガポール)

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2009年5月29日 (金)

◆政局・外交レポート(8)外交編◆2009年5月29日

●北核実験、核論議の引き金に?

 北朝鮮が5月25日、2006年10月以来、二度目の核実験を行った。追加的な核実験をしないよう求めた国連安全保障理事会の制裁決議違反は明かで、日米両国などが中心となって新たな制裁決議の文言調整を進めている。

 北朝鮮の再核実験は、日本の安全保障政策にどういう影響を与えるのか。その一つが、「敵基地攻撃論」の台頭だ。

 自民党国防部会の防衛政策検討小委員会は5月26日、政府が年末に改定する「防衛計画の大綱」に向けた提言案をまとめ、おおむね了承された。

 政府はこれまでも、海外の敵の基地を攻撃することは、政府の憲法解釈で認められた自衛の範囲内との立場をとってきた。1956年当時の鳩山内閣による「我が国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない。他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である」という政府見解を維持し続けている。

 麻生首相も5月28日の参院予算委員会で、こうした見解を再確認している。

 ただ、憲法解釈上、可能であることと、実際にできるかと言うことは別問題で、自衛隊はこれまで、憲法9条に基づく専守防衛の観点から、敵の基地を攻撃する装備を保有してこなかった。これは、集団的自衛権は権利として保有していると考えられるが、行使することは憲法上認められないということと同じ論理と言っていい。

 しかし、北朝鮮による核・ミサイル開発が進むにつれ、実際に敵の基地を攻撃できる能力を、自衛隊が持つべきだという議論は、確実に台頭している。国防部会の提言はそうした自民党内の空気の現れでもある。

 提言案では、弾道ミサイルの脅威に対し、「座して死を待たない防衛政策」として、ミサイル防衛(MD)に加え、策源地(敵基地)攻撃能力の必要性を盛り込み、巡航ミサイルの導入などを挙げている。提言案は6月上旬にも提言を党として正式決定し、麻生首相に提出される見通しだ。

 ただ、首相は前述の参院予算委員会で「現実の自衛隊は敵基地攻撃を目的とした装備体系を保有していない。日米安保をきちんとして、日本の平和と安全を期することが基本だ」と語った。

 日米安全保障条約に基づく日米安保体制では、自衛隊が盾(防衛)、米軍が矛(攻撃)という役割分担をしている。日本が矛の役割を持とうとすることは、裏返せば日米安保が機能していないことになる。敵基地攻撃能力を持つという議論自体が、日米同盟の信頼性を失わせるというジレンマにもなっている。

 同様のことは、日本の核武装論にも言える。

 北朝鮮の核開発を受け、日本の一部タカ派議員やマスコミの間で、日本も核武装すべきだという意見が出ている。

 しかし、日本が核武装するということは、NPT(核不拡散条約)を脱退し、国際的な孤立を招くことを意味する。つまり、日本も北朝鮮になるということである。また、米国による核の抑止力「核の傘」の信頼性を失わせ、現実的ではないとして退けられてきた。

 日本にとって、核問題をめぐり気になるのは、北朝鮮の核開発よりも、オバマ政権による核軍縮論議の方だ。

 日本政府はこれまで、「唯一の被爆国」として15年連続して国連総会に核廃絶決議案を提出するなど、核軍縮・不拡散問題に取り組んできており、4月5日のオバマ米大統領のプラハ演説を受け、中曽根弘文外相が「世界的核軍縮のための11の指標」と銘打った日本独自の提言を発表した。

 その内容は(1)核軍縮国際会議の日本開催(2)米ロ両国の第1次戦略兵器削減条約(START1)に代わる条約交渉の早期妥結(3)米国の包括的核実験禁止条約(CTBT)早期批准(4)北朝鮮やインド、パキスタンの核拡散防止条約(NPT)加入-などだ。

 「11の指標」には、「唯一の被爆国」の願いを説得材料に、この分野をリードし、日本外交の存在感を高めようという思いがにじむ。

 しかし、米国の「核の傘」に依存する日本が、核軍縮をリードできるのかという指摘もある。

 オバマ政権発足後、日本政府は核の傘を維持するよう、念押しを重ねてきたという。毎日新聞によると、2月17日=クリントン国務長官訪日▽同24日=ワシントンでの日米首脳会談▽3月31日=オランダ・ハーグでの日米外相会談。4月5日のオバマ演説後は、同15日=麻生太郎首相の大統領あて親書▽同24日=日米首脳電話協議▽同27日=中曽根弘文外相の特別演説--という具合だ。

 こうした日本政府の姿勢は、核武装論を抑えるためにも、核の傘の維持を訴えているようにもみえるが、核抑止力を意味する「核の傘」の維持を求める一方で、核軍縮を訴えるのは、確かに矛盾のようにみえる。

 核の傘の維持と核軍縮をどう両立させるのか、日本政府は、その明確な見解は示していない。

 さらに、核抑止力の維持を訴える日本の姿勢は、核軍縮に反対する米国内の保守派に利用されかねない危惧はある。

 米国からの報告では、核軍縮活動家の間などで「スポイラー・ジャパン(Spoiler Japan)」という単語が広がっているという。核の傘に固執する日本の姿勢が、核軍縮に本腰を入れようとする米国をスポイルする(甘やかしてだめにする)という意味なのだという。

●ルース駐日米大使起用の波紋

 オバマ米大統領が5月27日、次期駐日大使にカリフォルニア州の弁護士ジョン・ルース氏(54)を正式に指名した。上院での承認を経て、夏ごろ、シーファー前大使の後任として日本に赴任する。

 ルース氏は、スタンフォード大ロースクールを卒業。大手弁護士事務所を経営し、同州シリコンバレーを拠点に、情報技術(IT)企業の合併・買収などを手がけてきた。昨年の大統領選では、オバマ氏の有力な資金提供者として貢献した。オバマ大統領はルース氏起用と同時に、金融大手シティグループの前副会長で、やはり選挙資金面で貢献したとされるルイス・サスマン氏を駐英大使に正式指名しており、ルース氏の駐日大使への起用は、資金集めへの「論功行賞」の色合いが強い。

 河村建夫官房長官は5月28日の記者会見で、ルース氏起用について「日本政府として歓迎したい。オバマ大統領の信任が極めて厚い方で、今回の指名はオバマ政権の日米同盟重視の証左だ」と、大統領とのパイプへの期待感を示した。

 ただ、米国の同盟国として大物大使の起用に期待を寄せていた日本政府にとって、日本とのパイプが細いルース氏起用は、期待はずれの面もある。

 次期駐日米大使は当初、国務、国防総省の要職を歴任し、国際政治学者として知名度の高いジョセフ・ナイ・ハーバード大教授が有力視され、日本のマスコミも一斉に報道した。在日米軍再編や北朝鮮の核問題など難題を抱える中で、東アジア政策に詳しいナイ氏が適任との期待感があったからだ。

 そうしたナイ氏に比べ、ルース氏の安全保障政策をめぐる手腕は未知数だ。近年の駐日大使は、マンスフィールド民主党上院院内総務、モンデール副大統領、フォーリー下院議長、ベーカー共和党上院院内総務ら政界の大物が起用される例が多く、ルース氏は、格落ちの感が否めない。

 日本政府の不満を増幅しているのは、米国が日本よりも中国を重視しているのではないかという疑念だ。

 オバマ大統領は次期駐中国大使にユタ州のジョン・ハンツマン知事を起用した。その発表は、大統領がホワイトハウスで自ら行うという力の入れようだったが、駐日大使の発表は5月27日夜、ホワイトハウス記者会に文書で事務的に連絡があっただけ。これが日本軽視との見方を増幅しているのだ。

 もっとも、この発表も英国、フランス、インドなど、ほかの11人の大使と同時で、日本だけ特別な扱いだったわけではなく、むしろ、同盟国としての気安さが、簡略な発表につながったとも言えなくもない。

 米大統領は共和党、民主党を問わず、大統領選での貢献者を大使に起用する傾向があり、ルース氏の大使起用も、驚くべきことではない。

 ナイ氏はクリントン政権で国防次官補を務め、東アジア戦略報告をまとめるなど、ヒラリー・クリントン国務長官に近いとみられている。これが、駐日大使に起用されなかった理由の一つとする報道もあり、ルース氏起用は、対日関係を国務省ではなく、ホワイトハウス直轄とするオバマ政権の意向の表れとみることもできる。

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◆政局・外交レポート(8)政局編◆2009年5月29日

●小沢辞任で民主復調

 小沢一郎前代表の公設秘書が西松建設の違法献金事件で逮捕・起訴され、ダメージを受けていた民主党が、小沢氏の代表辞任を契機に、息を吹き返している。

 朝日新聞が、鳩山由紀夫新代表選出を受けて5月16、17の両日に実施した全国電話世論調査によると、「いま投票するとしたら」との前提で質問した衆院比例代表の投票先は、民主党が38%で前回調査(4月18、19日)の32%から伸ばしたのに対し、自民党は25%と前回27%からやや減らした。

 また、政党支持率でも民主が26%(前回21%)と増え、自民の25%(同25%)と並んだ。望ましい政権の形は「民主中心」45%(同41%)、「自民中心」28%(同29%)で、「民主中心」が差をさらに広げた。

 どちらが首相にふさわしいかでは、麻生太郎首相29%に対し、鳩山代表が40%でリード。小沢氏の辞任前の前回は麻生氏37%、小沢氏23%で、麻生氏が優位に立っていたが、入れ替わった。

 朝日新聞以外の報道各社による世論調査でも、こうした傾向は同様で、小沢氏が「政権交代のため」として辞任した効果が出ているようだ。

 世論調査での民主党への追い風は、地方選挙にも現れている。鳩山新代表就任後、初めて行われた大型地方選である5月24日のさいたま市長選では、民主党埼玉県連支持の清水勇人氏が、与党系現職の相川宗一氏ら5氏に圧勝した。

 与党側は、さいたま市長選敗北について「さいたま市は民主党が比較的強い地域で、国政への影響は限定的だ」(細田博之自民党幹事長)と、9月までに行われる次期衆院選への影響を否定しているが、それは強がりだろう。

 民主党によほどの失策がない限り、麻生内閣がいくら経済対策で得点を上げたとしても、今の世論調査の傾向を覆すことは難しい。

 次期衆院選前に自民党総裁、首相を代えて、新しい顔の下で選挙に臨む。それが自民党が政権を維持する唯一の策になりつつある。

●世襲批判は新「階級闘争」

 自民党は、次期衆院選での逆風を少しでも弱めようと、有権者の歓心を買う様々な「改革姿勢」を打ち出している。その一つが「世襲制限」。麻生首相の側近で、自民党の選挙対策を取り仕切る菅義偉(すが・よしひで)選挙対策副委員長が口火を切った。

 菅氏は高校卒業後、秋田県から集団就職で上京し、働きながら大学を卒業。サラリーマンや故小此木彦三郎衆院議員秘書を経て、地縁も血縁もない横浜市で市議会議員となって政界入りした、いわゆるたたき上げの「党人派」。

 これまでも、親や親戚から地盤(後援会組織)看板(知名度)カバン(資金力)を受け継ぐ世襲候補に対しては、新人候補の参入を阻害するとして根強い批判があった。しかし、自民党内では、配偶者や子供らが選挙地盤や集票組織、後援会を受け継ぐ議員が後を絶たず、菅氏には、世襲を当然のことと考える自民党の姿勢が、国民の支持を失う大きな理由になっていると映ったようだ。

 実際、自民党の衆参両院議員のうち37.8%にあたる112人が三親等内に国会議員を持つ世襲議員。1996年の橋本龍太郎首相就任以降をみると、森喜朗元首相以外の橋本、小渕恵三、小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎の各首相経験者は皆、世襲議員だ。

 もちろん世襲議員には、落語家や歌舞伎役者のように、幼少の時から親の働く姿を見て、政治の「英才教育」を受けたという見方もあるが、泥酔会見で辞任した中川昭一前財務相や、事務所費問題で絆創膏を貼って会見に臨み、辞任に追い込まれた赤城徳彦元農相ら、その資質が疑われる世襲議員が続出したため、国民の世襲に対する目は厳しくなっている。

 菅氏の狙いは、自民党が世襲に厳しい姿勢を見せることで、国民の支持を回復することだが、もう一つの隠された思惑がある。それが「脱小泉」だ。

 小泉元首相は昨年、政界引退を表明し、後継に次男の進次郎氏を指名した。小泉氏の祖父、父も国会議員を務めており、典型的な世襲議員。進次郎氏が当選すれば、四代続けて国会議員を務めることになる。

 小泉家の世襲を認めず、自民党が進次郎氏を公認しなければ、国民に改革姿勢を示すと同時に、郵政民営化など新自由主義的政策を進めてきた小泉路線からの脱却をアピールできることになる。

 もちろん、自民党は「刺客候補」を立てることはなく、進次郎氏が無所属で当選すれば、追加公認して自民党入りさせる「抜け道」も用意している。小泉氏自身も、最初は自民党の公認がもらえず、無所属で立候補して落選した経験があり、世襲制限に理解を示しているようだ。

 ただ、菅氏が打ち出した世襲制限は、菅氏ら「党人派」の「世襲議員」に対する不満を顕在化させ、自民党内で権力闘争の新たな対立軸となるのは間違いない。

 苦労して政治家になった党人派が、その矛先を、銀のスプーンをくわえて生まれてきた世襲議員に向ける構図は、「新たな階級闘争」といってもいいだろう。

●衆院選8月9日が濃厚に

 次期衆院選は8月9日に行われる可能性が濃厚になっている。麻生太郎首相はいまだ、衆院解散の具体的な時期について明らかにしていないが、国会情勢や国事行為として衆院を解散する天皇陛下の日程等を考えると、8月9日が最有力候補として浮かび上がってくるからだ。

 衆院選の時期を考える上で、最も重要な要素は、2009年度補正予算案と補正予算関連法案、海賊対処法案など重要法案の審議・成立状況だ。

 まず補正予算案は6月29日、参院で野党の反対多数で否決されるが、憲法60条の衆院優越規定で同日中に成立する運び。

 予算執行の裏付けとなる補正予算関連6法案のうち、生前贈与の非課税枠を拡大することで相続税を軽減する税制改正法案は5月13日に衆院を通過しており、野党側が参院での採決を見送っても、7月12日には同法案の成立が担保される。12日は日曜日なので13日には再可決・成立の運びとなる。

 ほかの5法案のうち、株価の大幅下落に備え新組織を設置する資本市場危機対応臨時特例措置法案は成立を断念する方向で、日本政策投資銀行法改正案、銀行株式等保有制限法改正案、商工組合中央金庫法改正案など3法案は民主党と修正協議をしており、5月中の衆院通過は見送られるものの、両党が修正に合意すれば、早期成立が可能。修正に合意できず、成立に至らなくても、予算執行にほとんど影響ないとの見方が、与党内にはある。

 つまり、与党にとって開会中の通常国会で成立させなければならないのは、税制改正法案だけということになる。

 通常国会の会期は6月3日。通常国会は国会法の規定上、1回しか延長できないので、少なくとも7月13日までは国会を延長しなければならない。

 麻生首相は、補正予算の成立を最大の景気対策としてきたので、税制改正法が成立確実となる7月13日以降は、いつでも解散できるということになる。国会が延長されれば、麻生首相が成立を目指していた海賊対処法や改正国民年金法などの重要法案も成立させることができる。

 まず、ここで(1)「解散は7月13日以降」という「方程式」が導き出される。

 衆院選の期日を決める次の要素は、麻生首相が実際に解散に踏み切るかどうかだ。

 衆院議員の任期満了は9月10日。その30日前からは「任期満了選挙」が可能となる。日曜日に限れば8月16日、23日、30日、9月6日の4回ある。

 しかし、任期満了選挙は、首相が政権基盤の弱体化で解散に踏み切れなかったという印象を与え、与党に不利となる。もちろん、任期満了選挙が可能な期間でも、解散できないことはないが、主導権を維持したとは言い難いので、自民、公明両党としては、この期間の選挙は避けたいところだ。

 新憲法下で任期満了選挙は三木内閣当時に一回あるが、自民党は議席を減らし、三木武夫首相は退陣に追い込まれた。

 麻生首相が定石通りに任期満了選挙を避けるとしたら、(2)「衆院選の投開票日は8月9日以前」という、次の方程式が導き出される。

 衆院解散日を決める上で、もう一つ見逃せない要素は、天皇陛下の日程だ。衆院解散は天皇の国事行為の一つであり、天皇が外国訪問などで国内に不在の場合、皇太子が国事行為を代行できるものの、通常この間は解散を避ける。

 天皇陛下は7月3日から17日まで米国を訪問されることになっており、普通に考えれば解散は天皇陛下の帰国後だ。帰国される17日が金曜日で、この日を含め、土、日曜日と祝日の公務の負担をかけないとすると、先ほどの(2)「解散は7月13日以降」という方程式は、(3)「解散は7月21日以降」という方程式に上書きされる。

 7月21日は火曜日で公示日に当たるが、解散日に公示はできないので、(2)式と(3)式の連立方程式の解を求めると、「衆院選は8月9日」という解が得られる。

 この場合、公示日は7月28日となり、解散から1週間しかたっていない。解散から公示までは、通常は10日前後だが、任期満了近い予期された選挙なので、準備期間としては十分だろう。

 8月の選挙は新憲法下では行われた例がないが、旧憲法下では2回あり、2005年の郵政解散も公示は8月だったことから、できないわけではない。

 投開票日の8月9日は長崎原爆犠牲者慰霊平和記念式典があり、この日は避けるべきだとの意見はあるが、最近では期日前投票が普及し、投票日以外の投票がしやすくなっており、投開票日回避の決定的な要因とはならない。

 8月9日投開票なら、東京都議会議員選挙が行われる7月12日から約1カ月が経過しており、都議選から最低でも1カ月以上離すよう求めていた公明党の意向にも沿うことができる。

 もちろん、これらの方程式は、麻生首相が常識的な判断をした場合にのみ有効だ。安倍晋三元首相や福田康夫前首相のように政権を突然、投げ出した場合など不測の事態が起きれば、衆院解散・総選挙の時期は、これらの方程式で導き出した解よりもずれることになる。

 ただ、その場合でも、9月10日までには選挙は行われるので、多少ずれたとしても「誤差の範囲内」と言える。

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2009年5月10日 (日)

衆院選は8月9日が濃厚に

 次期衆院選は8月9日に行われる可能性が濃厚になった。麻生太郎首相はいまだ、衆院解散の具体的な時期について明らかにしていないが、国会情勢や国事行為として衆院を解散する天皇陛下の日程等を考えると、8月9日が最有力候補として浮かび上がってくるからだ。

 衆院選の時期を考える上で、最も重要な要素は、2009年度補正予算案と補正予算関連法案、海賊対処法案など重要法案の審議・成立状況だ。

 まず補正予算案について、与党は5月13日に行われる麻生首相と小沢一郎民主党代表との党首会談後、衆院予算委員会で採決し、同日中に衆院本会議を開いて可決、衆院を通過させたい考えだ。

 野党側は難色を示しているので、同日中の衆院通過は微妙だが、15日の金曜日までには衆院を通過するだろう。これにより、野党側が参院でどんなに審議を遅らせても、6月13日には補正予算本体、7月13日には補正予算関連法の成立が担保される。

 開会中の通常国会の会期は6月3日。通常国会は国会法の規定上、1回しか延長できないので、少なくとも7月13日までは国会を延長しなければならない。

 麻生首相は、補正予算の成立を最大の景気対策としてきたので、補正予算関連法が成立確実となる7月13日以降は、いつでも解散できるということになる。国会が延長されれば、麻生首相が成立を目指していた海賊対処法や改正国民年金法などの重要法案も成立させることができる。

 まず、ここで(1)「解散は7月13日以降」という「方程式」が導き出される。

 衆院選の期日を決める次の要素は、麻生首相が解散に踏み切るかどうかだ。

 衆院議員の任期満了は9月10日。その30日前からは「任期満了選挙」が可能となる。日曜日に限れば8月16日、23日、30日、9月6日の4回ある。

 しかし、任期満了選挙は、首相が政権基盤の弱体化で解散に踏み切れなかったという印象を与え、与党に不利となる。もちろん、任期満了選挙が可能な期間でも、解散できないことはないが、主導権を維持したとは言い難いので、自民、公明両党としては、この期間の選挙は避けたいところだ。

 新憲法下で任期満了選挙は三木内閣当時に一回あるが、自民党は議席を減らし、三木武夫首相は退陣に追い込まれた。

 麻生首相が定石通りに任期満了選挙を避けるとしたら、(2)「衆院選の投開票日は8月9日以前」という、次の方程式が導き出される。

 衆院解散日を決める上で、もう一つ見逃せない要素は、天皇陛下の日程だ。衆院解散は天皇の国事行為の一つであり、天皇が外国訪問などで国内に不在の場合、皇太子が国事行為を代行できるものの、通常この間は解散を避ける。

 天皇陛下は7月3日から17日まで米国を訪問されることになっており、普通に考えれば解散は天皇陛下の帰国後だ。帰国される17日が金曜日で、この日を含め、土、日曜日と祝日の公務の負担をかけないとすると、先ほどの(2)「解散は7月13日以降」という方程式は、(3)「解散は7月21日以降」という方程式に上書きされる。

 7月21日は火曜日で公示日に当たるが、解散日に公示はできないので、(2)式と(3)式の連立方程式の解を求めると、「衆院選は8月9日」という解が得られる。

 この場合、公示日は7月28日となり、解散から1週間しかたっていない。解散から公示までは、通常は10日前後だが、任期満了近い予期された選挙なので、準備期間としては十分だろう。

 8月の選挙は新憲法下では行われた例がないが、旧憲法下では2回あり、2005年の郵政解散も公示は8月だったことから、できないわけではない。

 投開票日の8月9日は長崎原爆犠牲者慰霊平和記念式典があり、この日は避けるべきだとの意見はあるが、最近では期日前投票が普及し、投票日以外の投票がしやすくなっており、投開票日回避の決定的な要因とはならない。

 8月9日投開票なら、東京都議会議員選挙が行われる7月12日から約1カ月が経過しており、都議選から最低でも1カ月以上離すよう求めていた公明党の意向にも沿うことができる。

 もちろん、これらの方程式は、麻生首相が常識的な判断をした場合にのみ有効だ。安倍晋三元首相や福田康夫前首相のように政権を突然、投げ出した場合など不測の事態が起きれば、衆院解散・総選挙の時期は、これらの方程式で導き出した解よりもずれることになる。

 ただ、その場合でも、9月10日までには選挙は行われるので、多少ずれたとしても「誤差の範囲内」と言える。

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2009年4月29日 (水)

◆政局・外交レポート(7)ver.2◆2009年4月30日 

●小沢は辞めるのか

 4月26日に投開票された名古屋市長選で、民主党推薦の前衆院議員、河村たかしが当選した。3月29日の千葉県知事選、4月12日の秋田県知事選で推薦・支持候補の敗北が続いていた民主党にとっては、今回の市長選勝利を、小沢一郎代表の公設秘書が政治資金規正法違反で逮捕された西松建設による違法献金事件の悪影響からの脱却につなげたいところだろう。

 ただ、これで小沢が引き続き代表を務め、そのまま衆院選に突入することができると考えるのは早計だ。

 幹事長の鳩山由紀夫は4月26日夜、市長選勝利が小沢の進退問題に与える影響について「圧勝したということで、プラスの影響は当然ある」と記者団に語ったが、河村はこれまで民主党内で「一匹オオカミ」的な存在として知られ、今回の勝利も「河村の個人人気の結果」との見方が、党内でも大勢だ。

 小沢は今回の市長選で、名古屋市入りし、選挙事務所など激励に訪れたが、街頭演説に立つことはなかった。このことは小沢と河村との微妙な距離、小沢の今置かれている現状を暗示しているようにみえる。

 党内有力者の発言をみると、鳩山は表向き、小沢と一蓮托生の立場だが、小沢の後継者と目される代表経験者の岡田克也、同じく代表経験者の前原誠司は、小沢と距離を置く発言を繰り返している。

 岡田は4月25日、熊本市内での講演で「われわれは国民が納得するだけの努力を一生懸命考えている。もう少し時間をいただきたい。理解ができていないままで、政権交代ができないことは分かっている」と強調した。

 前原も4月24日、日本外国特派員協会での講演で「小沢代表の『党代表や首相の座に未練はない。最大のテーマは政権交代可能かどうかだ』との発言を私は固く信じている。客観的に党の状況を分析し、判断することが大事だ」と述べた。

 これらの発言に共通しているのは、世論の賛同が得られないなら、代表を辞任すべきだとの考えを強くにじませている点だ。

 その世論の動向はどうだろうか。

 日本経済新聞社とテレビ東京が4月24日から26日に行った共同世論調査によると、小沢の進退について「辞任すべきだ」と答えた人が62%に達し、「続投すべきだ」の24%を大きく上回った。

 産経新聞とフジテレビが4月25、26両日に行った合同世論調査でも、「小沢代表を辞任すべきだ」との回答は56.6%で、1カ月前の前回調査よりも5.7ポイント減ったものの、依然過半数を占めている。また「麻生太郎首相は退陣し、衆院選を行うべきだ」と答えたのは23.5%にとどまっているのに対し、「小沢代表が退陣し、新代表の下で衆院選に臨むべきだ」との回答は57.3%に上っている。

 これらの調査結果は、小沢の代表続投が国民の支持を得られていないことを示している。

 また、民主党内では、かつて小沢の秘書を務めた、側近の樋高剛前衆院議員が小沢ではなく非小沢系の蓮舫参院議員と並ぶポスターを作ったことも発覚。 産経新聞によると、小沢と距離を置く中堅、ベテラン議員らが、小沢氏の辞任を求める「連判状」作成を検討するなど、小沢離れがじわじわと広がっている。

 当の小沢は4月28日の記者会見で、こうした党内の動きについて「いろんな意見があることは風の便りに聞いている」と、辞任論の存在を認めつつも、「(次期衆院選で)国民の信頼を必ず獲得できると現時点では思っている」と、代表辞任を改めて否定した。

 ただ、小沢はこれまで政権交代に政治生命をかけると明言しており、自らが身を引くことで民主党の党勢が著しく回復するような状況になった場合には、潔く身を引く可能性もある。今は、じっとその時を見定めているのかもしれない。

 次期衆院選では小沢の続投が自民党に有利になると説いている小泉純一郎元首相は4月22日、小沢の進退について「衆院解散直後に代表を辞任する。代表選をやらずに後継指名するだろう。彼の性格からして代表辞任後も影響力を残そうとするのではないか」との見通しを示している。

●首相側近4人の密談

 4月23日夜、首相官邸の敷地内に2台の自動車が裏門から滑り込んでいった。乗っていたのは安倍晋三元首相と菅義偉自民党選対副委員長。公式には、麻生はこのとき、首相公邸で甘利明行政改革担当相と会っていたことになっており、新聞各社の首相動静欄に、安倍と菅の記録はない。麻生にとって、安倍、菅との会談は、公にはできない事情があったのだろう。

 麻生とその周辺がなぜ、そこまで神経質になるのか。それは、この四人の密談が、衆院解散・総選挙の時期をめぐるものだったからに違いないと容易に推測できる。

 この会談の布石になったのが、官房長官の河村建夫が、衆院解散・総選挙の時期について「政権を一緒にやっている公明党だから、無視できないだろう」と述べた4月22日の講演だ。

 この発言は、公明党幹事長の北側一雄幹事長が4月20日、大阪市内での講演で、次期衆院選の時期について「4~6月期のGDP(国内総生産)が8月中ごろに出て、少しは経済の底打ち感が出てくるのではないか。多くの方々が底打ちを感じる時が一つのチャンスだ」と、8月中旬以降にすべきだと発言したことに呼応したものだ。

 公明党は、国政選挙並みに重視する東京都都議会議員選挙(7月12日投開票)と衆院選の時期を、少なくとも1カ月以上ずらすよう求めており、解散権者の麻生が公明党の意向を重視するなら、衆院選は6月7日以前か8月16日以降に絞られる。

 しかし、6月7日以前の衆院選は、民主党が2009年度補正予算の審議に全面的に協力して早期成立が可能になるか、民主党が補正予算審議に徹底抗戦して、成立しないまま解散に踏み切るしかできない。8月16日以降なら事実上の任期満了選挙だ。

 河村がなぜこの時期に、麻生の専権事項である衆院解散・総選挙の時期に踏み込んで発言したのかは分からない。

 安倍は麻生との密談で「補正成立後すぐの解散も視野に入れるべきだ」と、「5月解散論」を主張したという。事実上の任期満了選挙では、レームダックに陥る危険性があるとの認識からだろうが、河村発言に待ったをかける意味があったのかもしれない。

 麻生の盟友でもあり、密談に加わった甘利明行政改革担当相は4月21日の記者会見で、「麻生首相が国内外にメッセージを発信する環境が整ってきた。解散を焦る必要はないと思う」と、「5月解散論」を否定。首相側近として台頭著しい菅も4月20日の講演で「(2009年度補正予算を)しっかりと成立をさせ、王道を歩んだほうがいいと総理に申し上げた」ことを明らかにした。補正予算に加え、関連法も成立させた上で解散することが望ましいとの考えを示した発言で、菅も甘利と同じく「5月解散論」を否定的だ。

 麻生は4月27日、記者団に対し、衆院解散・総選挙の時期について「(税制)関連法案もあるし、ソマリアや年金の話など重要法案もある。これ(補正予算の成立)だけで、後はすべて終わりという状況ではない」と述べた。

 この発言は、2009年度補正予算と予算関連法に加え、海賊対処法や改正国民年金法など重要法案の成立前の衆院解散を否定したものと受け取られている。

 補正予算案と予算関連法案は、与党側のシナリオ通り5月中旬に衆院を通過したとしても、民主党は補正予算に反対しており、野党が多数を示す参院で採決を引き延ばされる可能性は大いにある。補正予算は衆院優越の憲法規定で6月中旬に成立したとしても、予算関連法を成立させるには、7月中旬まで待たなくてはならない。

 景気低迷が続く中、民主党がそこまで採決を引き延ばすとは考えにくいが、たとえ、補正予算案と関連法案の迅速な処理に合意したとしても、海賊対処法などを成立させるには、6月3日までの通常国会の会期内では困難だ。

 古賀誠選対委員長ら自民党内の一部には、5月解散を求める意見はあるが、麻生のこれらの発言から推測すると、麻生は5月解散に否定的だ。国会を延長して重要法案を仕上げて、7月のイタリアでのサミット後、景気対策と外交での成果を掲げて選挙に臨むという麻生の基本戦略は変わっていない。このことからも、選挙対策の実権はすでに、選対「委員長」の古賀から、「副委員長」の菅に移っていることも分かる。

 麻生は4月20日、自民党の細田博之幹事長、大島理森国会対策委員長らを首相官邸に呼び、2009年度補正予算案と税制改正関連法案など予算関連法案の早期成立を図るよう指示した。これも、5月解散に含みを残すというよりは、補正と関連法を早期に仕上げて、「景気の麻生」をアピールする狙いからなのは明らかだ。

 焦点は(1)7月12日の東京都議会議員選挙とのダブル選挙はあるのか(2)8月中旬のお盆前か後か(3)任期満了後の選挙はあるのか--だ。ただ、9月10日の任期満了まで、すでに4カ月しかなく、選挙期日の設定は限られ、いつ選挙があろうとも「誤差の範囲内」だ。

●3.5島返還論の背景

 前外務次官で政府代表を務める谷内正太郎が4月17日付の毎日新聞インタビューで、北方領土問題をめぐり「3.5島(返還)でもいいのではないか。北方4島を両国のつまずきの石にしない」と発言し、国内外に波紋を広げた。

 谷内は麻生が外相当時に外務次官を務めるなど麻生に近く、谷内発言の背景には、麻生の意向が働いているのではないかと受け止められたからだ。

 毎日新聞によると、谷内は1956年の日ソ共同宣言に基づく解決案としてロシア側が示している歯舞、色丹の2島返還を引き合いに、「2島では全体の7%に過ぎない。択捉島の面積が大きく、面積を折半すると、(歯舞、色丹、国後)3島プラス択捉島の20~25%ぐらいになる。実質は4島返還になる」と語ったという。

 政府はこの発言を「谷内氏の個人的見解」(河村官房長官)と火消しに走ったが、麻生自身も同様のことを発言したこともある。外相当時の2006年12月、衆院外務委員会で「択捉島の約25%を(国後、色丹、歯舞の)残り3党にくっつけると、(面積が)50(対)50の比率になる」と述べている。今回の谷内発言と全く同じ内容だ。

 3.5島返還論が、谷内の発想を麻生が代弁したものなのか、麻生の発想を谷内が代弁したものなのかは判然としないが、日本政府内で、北方領土問題解決の一つのアイディアとして存在することは間違いない。

 麻生は2月18日、サハリンを訪問し、ロシアのメドベージェフ大統領と会談した。会談後、麻生は記者団に、北方領土問題について「新たな、独創的で型にはまらないアプローチで、我々の世代で解決すべく、具体的な作業を加速しようということで一致した。4島の話は向こう(ロシア)が2、こっちが4ではまったく進展しない。日露間すべてに引っかかっている問題だ。政治が決断しなければいけない」と述べた。

 この「独創的アプローチ」が何を指すのかは分からないが、センテンスの後半「4島の話は向こう(ロシア)が2、こっちが4ではまったく進展しない」に、3.5島返還論がにじんでいるように見える。

 麻生が5月に来日するロシアのプーチン首相や、7月にイタリアで開かれる主要国首脳会議の際、メドベージェフ大統領との首脳会談で、面積2等分案を交渉カードに使うのではないか、との見方もあることにはあるが、4島返還を目指す日本側にとって大幅な譲歩であり、領土問題で譲歩案を示すには、麻生の政権基盤は脆弱すぎる。内閣支持率は一時の危機的な状況を脱しつつあるが、政治決断できる環境には至っていない。

 麻生自身は今回、4月23日の衆院海賊対処・テロ防止特別委員会で「北方4島の話は、帰属問題がはっきりしない限りは前に進まない。(谷内も)それを前提にしゃべっていると思う。ロシアとの平和条約締結は、4島の帰属問題を明らかにした上でどうするかという話にすべきだというのが、基本的な政府の考え方だ。このことは一貫して変わっていない」と述べるにとどめている。

 谷内発言が麻生と打ち合わせ済みの、北方領土問題の解決を目指すための「観測気球」だったとしたら、3.5島返還論への反発が依然、強いことが明らかになり、麻生が北方領土問題で譲歩案を提示するのは難しくなったといえる。逆に「観測気球」でなかったとしたら、谷内発言は軽率だったことになる。

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2009年4月27日 (月)

◆政局・外交レポート(7)◆2009年4月27日 

●小沢は辞めるのか

 4月26日に投開票された名古屋市長選で、民主党推薦の前衆院議員、河村たかしが当選した。3月29日の千葉県知事選、4月12日の秋田県知事選で推薦・支持候補の敗北が続いていた民主党にとっては、今回の市長選勝利を、小沢一郎代表の公設秘書が政治資金規正法違反で逮捕された西松建設による違法献金事件の悪影響からの脱却につなげたいところだろう。

 ただ、これで小沢が引き続き代表を務め、そのまま衆院選に突入することができると考えるのは早計だ。

 幹事長の鳩山由紀夫は4月26日夜、市長選勝利が小沢の進退問題に与える影響について「圧勝したということで、プラスの影響は当然ある」と記者団に語ったが、河村はこれまで民主党内で「一匹オオカミ」的な存在として知られ、今回の勝利も「河村の個人人気の結果」との見方が、党内でも大勢だ。

 小沢は今回の市長選で、名古屋市入りし、選挙事務所など激励に訪れたが、街頭演説に立つことはなかった。このことは小沢と河村との微妙な距離、小沢の今置かれている現状を暗示しているようにみえる。

 党内有力者の発言をみると、鳩山は表向き、小沢と一蓮托生の立場だが、小沢の後継者と目される代表経験者の岡田克也、同じく代表経験者の前原誠司は、小沢と距離を置く発言を繰り返している。

 岡田は4月25日、熊本市内での講演で「われわれは国民が納得するだけの努力を一生懸命考えている。もう少し時間をいただきたい。理解ができていないままで、政権交代ができないことは分かっている」と強調した。

 前原も4月24日、日本外国特派員協会での講演で「小沢代表の『党代表や首相の座に未練はない。最大のテーマは政権交代可能かどうかだ』との発言を私は固く信じている。客観的に党の状況を分析し、判断することが大事だ」と述べた。

 これらの発言に共通しているのは、世論の賛同が得られないなら、代表を辞任すべきだとの考えを強くにじませている点だ。

 その世論の動向はどうだろうか。

 産経新聞とフジテレビが4月25、26両日に行った合同世論調査によると、「小沢代表を辞任すべきだ」との回答は56.6%で、1カ月前の前回調査よりも5.7ポイント減ったものの、依然過半数を占めている。また「麻生太郎首相は退陣し、衆院選を行うべきだ」と答えたのは23.5%にとどまっているのに対し、「小沢代表が退陣し、新代表の下で衆院選に臨むべきだ」との回答は57.3%に上っている。

 その一週間前、朝日新聞が4月18、19両日に実施した全国世論調査でも、「小沢は代表を辞める方がよい」との意見は61%を占め、「続ける方がよい」は28%。 いずれの調査でも半数以上が、小沢の辞任を求めており、小沢の代表続投が国民の支持を得られていないことを示している。

 また、民主党内では、かつて小沢の秘書を務めた、側近の樋高剛前衆院議員が小沢ではなく非小沢系の蓮舫参院議員と並ぶポスターを作ったことも発覚するなど、小沢離れもじわじわと広がっている。

 当の小沢は4月21日の記者会見で、自らの進退について「民主党の組織としての総意はもう(続投と)決まり切っている。私は代表として総選挙に向けてみんなと一緒に全力で取り組む」と、続投への強い意欲を示した。

 ただ、小沢はこれまで政権交代に政治生命をかけると明言しており、自らが身を引くことで民主党の党勢が著しく回復するような状況になった場合には、潔く身を引く可能性もある。今は、じっとその時を見定めているのかもしれない。

 次期衆院選では小沢の続投が自民党に有利になると説いている小泉純一郎元首相は4月22日、小沢の進退について「衆院解散直後に代表を辞任する。代表選をやらずに後継指名するだろう。彼の性格からして代表辞任後も影響力を残そうとするのではないか」との見通しを示している。

●首相側近4人の密談

 4月23日夜、首相官邸の敷地内に2台の自動車が裏門から滑り込んでいった。乗っていたのは安倍晋三元首相と菅義偉自民党選対副委員長。公式には、麻生はこのとき、首相公邸で甘利明行政改革担当相と会っていたことになっており、新聞各社の首相動静欄に、安倍と菅の記録はない。麻生にとって、安倍、菅との会談は、公にはできない事情があったのだろう。

 麻生がなぜ、そこまで神経質になるのか。それは、この四人の密談が、衆院解散・総選挙の時期をめぐるものだったからに違いないと容易に推測できる。

 この会談の布石になったのが、官房長官の河村建夫が、衆院解散・総選挙の時期について「政権を一緒にやっている公明党だから、無視できないだろう」と述べた4月22日の講演だ。

 この発言は、公明党幹事長の北側一雄幹事長が4月20日、大阪市内での講演で、次期衆院選の時期について「4~6月期のGDP(国内総生産)が8月中ごろに出て、少しは経済の底打ち感が出てくるのではないか。多くの方々が底打ちを感じる時が一つのチャンスだ」と、8月中旬以降にすべきだと発言したことに呼応したものだ。

 公明党は、国政選挙並みに重視する東京都都議会議員選挙(7月12日投開票)と衆院選の時期を、少なくとも1カ月以上ずらすよう求めており、解散権者の麻生が公明党の意向を重視するなら、衆院選は6月7日以前か8月16日以降に絞られる。

 しかし、6月7日以前の衆院選は、民主党が2009年度補正予算の審議に全面的に協力して早期成立が可能になるか、民主党が補正予算審議に徹底抗戦して、成立しないまま解散に踏み切るしかできない。8月16日以降なら事実上の任期満了選挙だ。

 河村がなぜこの時期に、麻生の専権事項である衆院解散・総選挙の時期に踏み込んで発言したのかは分からない。

 しかし、安倍は麻生との密談で「補正成立後すぐの解散も視野に入れるべきだ」と、「5月解散論」を主張したという。事実上の任期満了選挙では、レームダックに陥る危険性があるとの認識からだろうが、河村発言に待ったをかける意味があったのかもしれない。

 麻生の盟友でもあり、密談に加わった甘利明行政改革担当相は4月21日の記者会見で、「麻生首相が国内外にメッセージを発信する環境が整ってきた。解散を焦る必要はないと思う」と、「5月解散論」を否定。

 首相側近として台頭著しい菅も4月20日の講演で「(2009年度補正予算を)しっかりと成立をさせ、王道を歩んだほうがいいと総理に申し上げた」ことを明らかにした。補正予算に加え、関連法も成立させた上で解散することが望ましいとの考えを示した発言で、菅も甘利と同じく「5月解散論」を否定的だ。

 麻生は4月20日、自民党の細田博之幹事長、大島理森国会対策委員長らを首相官邸に呼び、2009年度補正予算案と税制改正関連法案など予算関連法案の早期成立を図るよう指示したが、麻生が補正成立を衆院解散時期とどう結びつけようとしているのかは明らかではない。

 麻生は安倍にも態度を明らかにしなかったというが、雌雄を決する衆院選時期の「選択の幅」が、確実に狭まっていることだけは間違いない。

●3.5島返還論の背景

 前外務次官で政府代表を務める谷内正太郎が4月17日付の毎日新聞インタビューで、北方領土問題をめぐり「3.5島(返還)でもいいのではないか。北方4島を両国のつまずきの石にしない」と発言し、国内外に波紋を広げた。

 谷内は麻生が外相当時に外務次官を務めるなど麻生に近く、谷内発言の背景には、麻生の意向が働いているのではないかと受け止められたからだ。

 毎日新聞によると、谷内は1956年の日ソ共同宣言に基づく解決案としてロシア側が示している歯舞、色丹の2島返還を引き合いに、「2島では全体の7%に過ぎない。択捉島の面積が大きく、面積を折半すると、(歯舞、色丹、国後)3島プラス択捉島の20~25%ぐらいになる。実質は4島返還になる」と語ったという。

 政府はこの発言を「谷内氏の個人的見解」(河村官房長官)と火消しに走ったが、麻生自身も同様のことを発言したこともある。外相当時の2006年12月、衆院外務委員会で「択捉島の約25%を(国後、色丹、歯舞の)残り3党にくっつけると、(面積が)50(対)50の比率になる」と述べている。今回の谷内発言と全く同じ内容だ。

 3.5島返還論が、谷内の発想を麻生が代弁したものなのか、麻生の発想を谷内が代弁したものなのかは判然としないが、日本政府内で、北方領土問題解決の一つのアイディアとして存在することは間違いない。

 麻生は2月18日、サハリンを訪問し、ロシアのメドベージェフ大統領と会談した。会談後、麻生は記者団に、北方領土問題について「新たな、独創的で型にはまらないアプローチで、我々の世代で解決すべく、具体的な作業を加速しようということで一致した。4島の話は向こう(ロシア)が2、こっちが4ではまったく進展しない。日露間すべてに引っかかっている問題だ。政治が決断しなければいけない」と述べた。

 この「独創的アプローチ」が何を指すのかは分からないが、センテンスの後半「4島の話は向こう(ロシア)が2、こっちが4ではまったく進展しない」に、3.5島返還論がにじんでいるように見える。

 麻生が5月に来日するロシアのプーチン首相や、7月にイタリアで開かれる主要国首脳会議の際、メドベージェフ大統領との首脳会談で、面積2等分案を交渉カードに使うのではないか、との見方もあることにはあるが、4島返還を目指す日本側にとって大幅な譲歩であり、領土問題で譲歩案を示すには、麻生の政権基盤は脆弱すぎる。内閣支持率は一時の危機的な状況を脱しつつあるが、政治決断できる環境には至っていない。

 麻生自身は今回、4月23日の衆院海賊対処・テロ防止特別委員会で「北方4島の話は、帰属問題がはっきりしない限りは前に進まない。(谷内も)それを前提にしゃべっていると思う。ロシアとの平和条約締結は、4島の帰属問題を明らかにした上でどうするかという話にすべきだというのが、基本的な政府の考え方だ。このことは一貫して変わっていない」と述べるにとどめている。

 谷内発言が麻生と打ち合わせ済みの、北方領土問題の解決を目指すための「観測気球」だったとしたら、3.5島返還論への反発が依然、強いことが明らかになり、麻生が北方領土問題で譲歩案を提示するのは難しくなったといえる。逆に「観測気球」でなかったとしたら、谷内発言は軽率だったことになる。

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2009年4月 2日 (木)

◆政局・外交レポート(6)◆2009年3月31日 

●小沢代表の進退、焦点に

 小沢一郎民主党代表の進退問題が、当面の政局の最大の焦点になっている。

 ことの発端は、小沢の公設第一秘書が政治資金規正法違反の罪で逮捕・起訴された西松建設による巨額献金事件。小沢は秘書が起訴された3月24日、緊急役員会と常任幹事会で、贈収賄などの新しい事実が明らかにされなかったとして当面続投する考えを表明し、了承された。

 ただ、小沢の続投が次期衆院選に影響するとして、民主党内からも異論が出ている。24日の常任幹事会では、前原誠司副代表が「すんなり了と言うわけにはいかない」と指摘したほか、小宮山洋子衆院議員も24日夜、記者団に「政権交代を実現して日本を良くするため、代表は辞任すべきだ。謝りながら、言い訳しながらの選挙では勝てない。小沢氏が検察と戦うのは自身の問題で、小沢氏の裁判闘争と政権を取るための民主党の戦略は別だ」と語った。

 小沢の続投に対しては、世論も反発を示している。

 共同通信社が25、26両日に実施した全国緊急電話世論調査によると、小沢の続投表明に対し、「代表を辞めるべきだ」との回答が66.6%に上り、「代表を続けてよい」の28.9%を大きく上回った。事件に関する小沢の説明を「納得できなかった」との答えも79.7%に上り、「納得できた」は12.0%にとどまっている。

 一方、麻生内閣の支持率は23.7%で、3月7、8両日実施の前回調査から7.7ポイント増加し、不支持率は63.5%と7.3ポイント減少。麻生太郎首相と小沢の「どちらが首相にふさわしいと思うか」との質問でも麻生が前回比7.5ポイント増の33.1%、小沢が同2.4ポイント減の31.2%と逆転した。

 報道各社が行った世論調査でも同様の傾向が出ており、小沢がこのまま代表にとどまれば、政権交代確実とみられていた次期衆院選で、苦戦を強いられるのは避けられない情勢となっている。

 そうした、民主党にとって厳しい情勢の一端が、3月29日に投開票され、小沢の秘書起訴後、初の大型選挙となった千葉県知事選で明らかになった。民主党など野党が推薦する第三セクター鉄道会社の前社長吉田平(49)候補が、自民党県議会議員らの支援を受けた元自民党衆院議員の森田健作(59)に敗れたからだ。

 小沢は投開票前日の28日、吉田応援のため千葉県入りして、てこ入れしたにもかかわらず、40万票近い票差をつけられてしまった。選挙に強いとされてきた小沢の求心力は、西松巨額献金事件とともに陰り始めたことは否めない。

 小沢はこれまで、地方の首長選でも独自候補を擁立し、自民党と対決する選挙戦略を主導してきており、秋田県知事選(4月12日投開票)など、今後の地方選挙で敗北が続くようだと、党内から代表交代論が噴出し、小沢が代表辞任を決断せざるを得ない状況に追い込まれる可能性は十分ある。

 一方、小沢の立場からみれば、自らの秘書が関係する事件で、民主党に勢いがなくなる中、自らの辞任は、民主党を再び浮上させる要素にもなる。このため、小沢自身が、自らの辞任時期を慎重に見極めているとの見方もできる。

●5月解散論、自民内で浮上

 こうした民主党の混乱を受け、自民党内では「5月衆院解散・総選挙論」が浮上している。

 これまで解散時期への具体的言及を避けてきた自民党の古賀誠選挙対策委員長は26日、古賀派の総会で「5月は緊張しなければいけない時になる。追加の景気回復(対策を盛り込む2009年度補正予算案)の国会提出時期と成立させるタイミングは、今度の政局の最大のヤマ場になる」と述べた。

 また、細田博之幹事長も29日、NHKテレビの日曜討論で「5月解散論」について「与野党が早急に協議をして済ませればいろいろ余地が出てくるのではないか」と、可能性を否定しなかった。

 こうした発言の背景にあるのが、民主党が小沢の進退問題でもたつき、麻生内閣の支持率が持ち直している今こそ、解散の好機との判断だ。

 ただ、麻生自身は5月解散に否定的とみられる。その理由の一つが、麻生が7月上旬にイタリアで開かれるマッダレーナ・サミットへの出席を熱望している、とされていることだ。

 民主党がいくら小沢の進退問題で混乱しているとはいえ、次期衆院選で自民党が必ず勝てるとの確信はない。万が一、自民党がサミット前の解散・総選挙で敗北すれば、麻生のサミット出席は泡と消える。麻生にとって、そんな危険を冒してまで、5月に解散する必要はないからだ。

 さらに、5月解散の前提となっているのが、2009年度補正予算の早期成立。これには民主党の協力が不可欠だが、民主党が自分たちが負ける可能性のある5月解散のために協力するとは考えにくい。民主党がずるずると審議を引き延ばせば、5月解散は困難になり、7月の東京都議会議員選挙に近づく。公明党は次期衆院選と都議選の時期が近づくことを嫌がっており、麻生は結局、解散できなくなってしまう。

 また、5月解散の可能性が濃厚になれば、民主党内で次期衆院選への危機感から小沢降ろしの動きが一気に加速するかもしれない。もし、小沢が代表辞任を決断し、新しい代表の下で次期衆院選を戦うことになれば、民主党が議席を伸ばし、政権交代の可能性がより高くなる。

 つまり、5月解散論が声高に叫ばれるほど、その実現の可能性が低まるというジレンマになっている。

 結局、衆院解散・総選挙の時期は、サミット後から任期満了の9月10日までの間に行われる可能性が高い状況は、依然変わっていないとみるのが妥当だろう。

●ミサイル防衛の成否は

 外交面で喫緊の課題となっているのが、北朝鮮が人工衛星名目で4月4―8日の間に発射を予告している長距離弾道ミサイルへの対応だ。

 北朝鮮側の予告によると、このミサイルは秋田県の西方沖約130~380キロの日本海に1段目を落下させ、その後、東北地方北部上空を通過する。

 このため政府は3月27日、ミサイルが日本領土・領海に落下した場合に迎撃する「破壊措置命令」を初めて発令し、陸上自衛隊新屋(あらや)演習場(秋田県)、同岩手山演習場(岩手県)、首都圏の市ケ谷駐屯地(東京都新宿区)、朝霞(埼玉県)、習志野(千葉県)両駐屯地など全国5カ所に地上配備型迎撃ミサイル(PAC3)を配備、海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載した海上自衛隊のイージス艦「こんごう」と「ちょうかい」を日本海に展開した。

 また、米軍も米イージス駆逐艦「ジョン・S・マケイン」「チェフィー」を日本海に展開している。日米のイージス艦同士は「データリンク」で結ばれてデータを共有しており、米軍と自衛隊が連携してミサイルの発射を探知、飛行ルートを追跡するとみられる。

 では、実際に迎撃ミサイルは発射されるのだろうか。答えは「否」だろう。

 その理由の一つは、北朝鮮がミサイル発射を人工衛星打ち上げと主張、事前の通告も行っていることから、それを打ち落とせば深刻な外交問題に発展しかねないからだ。

 米国はイージス艦を展開しているものの、迎撃には慎重な姿勢を見せている。 ゲーツ米国防長官は29日、FOXテレビの番組で「もしハワイに向かってくるようなら迎撃も考慮するが、現時点でわれわれにはその計画はない」と語った。これは米政府が衛星写真などから、発射されるミサイルが米国を射程に含むものではないと見切り、ことさらに緊張を高める必要はないと判断しているものとみられる。

 第2の理由は、超高速で落下してくるミサイルを打ち落とすことは、実験では一部成功しているとはいえ、極めて困難だからだ。日本政府はこれまでミサイル防衛に約7千億円を投じており、迎撃が失敗すれば、ミサイル防衛を進めてきた政府への批判が高まる。

 そもそも、専門家の間では、日本の領土にミサイルが落下する可能性は低いとみられている。にもかかわらず、政府・防衛省がミサイル迎撃態勢をとり、本来、防衛秘であるはずのPAC3配備場所まで公開しているのは、北朝鮮へのけん制と同時に、日本国民に対してミサイル防衛をアピールする狙いもあるとみられる。

●「自由と繁栄の弧」復活

 麻生首相は3月25日夜、ウクライナのティモシェンコ首相と会談し、今後の協力強化と方向性を確認する共同声明を発表した。

 この会談の重要な点は、麻生首相がウクライナの民主化と市場経済化の努力を支援する方針を伝えたのに対し、ティモシェンコ首相が麻生首相が提唱してきた「自由と繁栄の弧」を高く評価したことだろう。

 自由と繁栄の弧は、2006年11月、安倍内閣の外相だった麻生が講演で提唱した外交政策で、ブッシュ米前政権のネオコン勢力が進めた「価値観外交」と軌を一にしている。
「弧」にあたるのは「北欧諸国から始まって、バルト諸国、中・東欧、中央アジア・コーカサス、中東、インド亜大陸、さらに東南アジアを通って北東アジアにつながる地域」。

 この地域への経済協力などを通じ、自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済などの「普遍的価値」を根付かせて政治・経済を安定させ、テロの温床を無くして平和を構築しようとする試みだ。

 麻生はこの際、特にインドとの関係を強化し、貿易・投資や政府開発援助の拡大政策などを行った。これは明らかに中国を意識したものであり、ウクライナへの協力は、ロシアに対するけん制でもある。自由と繁栄の弧は、中ロけん制、もしくは中ロ封じ込めと同義語だ。

 この「自由と繁栄の弧」は当時外務事務次官であった谷内正太郎を中心に企画・立案されたとされる。

 2007年9月に安倍首相が退陣し、後継の福田内閣が中韓両国を中心とするアジア外交に軸足を移したことに加え、2008年1月に谷内が退任したことで、「自由と繁栄の弧」政策は一時期、後退した。

 しかし、2008年9月に麻生自身が首相に就任し、2009年1月には谷内を政府代表に起用した。政府代表は外務公務員法に規定された特別公務員で、政府を代表して外国政府と交渉する権限がある。これまでも経緯から推測しても、麻生は外相の中曽根弘文よりも、谷内を信頼しているとみていい。

 麻生内閣がいつまで続くかは分からないが、当面は麻生-谷内ラインの「価値観外交」に基づく外交政策が進められることになる。

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2009年3月 3日 (火)

◆政局・外交レポート(5)◆2009年3月3日

政局の材料にされる日本外交

 麻生太郎首相が積極的な外交を展開している。2月18日にサハリンを日帰りで訪れ、メドベージェフ・ロシア大統領と会談。24日にはワシントンを訪問し、オバマ政権下でホワイトハウスに招かれる初めての外国首脳として、オバマ米大統領と初の日米首脳会談を行った。

 首相は、4月2日にロンドンで開かれる第2回金融サミット、4月にタイで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス日中韓首脳会議への出席を予定しているほか、5月に訪日するプーチン・ロシア首相のホスト役にも意欲を示している。中国訪問にも意欲的で、政府部内では金融サミット前の訪中も検討されている。

 麻生首相が外交日程を詰め込んでいるのは、内政での失点を外交で挽回しようという思惑以外に、外交日程を詰め込むことで、徐々に激しくなっている「麻生降ろし」の動きを封じる目的もある。国際会議や外国訪問を盾にして、反麻生の動きに対して「国益を損なう」と反論することができるからだ。

当事者能力を失う麻生政権

 ただ、外国政府側は麻生首相を、日本の首相として引き続き重要なパートナーであり続けるとは見ていないようだ。その理由は、内閣支持率の続落で政権交代の可能性が高まっており、政権の当事者能力を失いつつあるためだ。

 その具体例が、麻生首相の訪米だ。急きょ決まった、国会日程の合間を縫っての訪問ではあったが、現地滞在約24時間、共同文書は作成されず、昼食会や夕食会はもちろん記者会見も行われなかった。このことは、オバマ政権が発足間もないとはいえ、初訪米でキャンプ・デービッドに招待された小泉元首相とは、米政権側が日本の首相に抱く期待度の差が如実に現れている。

 高い内閣支持率を武器に首脳外交に臨み、ブッシュ前米大統領と蜜月関係を結んだ小泉純一郎元首相はモスクワでの記者会見で「外交において、その国の政治基盤が安定していることは大変重要だ。日本国内の政局混乱を一日も早く正すことが重要な課題だ」と述べたという(2009年2月19日付読売新聞朝刊)が、その指摘が麻生内閣の現状を指していることは衆目の一致するところだ。

 就任直後の米大統領に会うために訪米した首相は短命でもある。過去3代の大統領は就任3カ月以内に日米首脳会談に応じてきたが、日本の首相はいずれも会談後4カ月以内に退陣を余儀なくされている。

 例えば、1989年2月2日、就任2週間後のブッシュ大統領(父)と会談した竹下登首相は消費税導入やリクルート事件で激しい批判を浴びて4カ月後の6月に内閣総辞職。 93年4月16日に就任から3カ月足らずのクリントン大統領と会談した宮沢喜一首相はこの年7月、衆院選での自民党過半数割れで退陣し、非自民の細川護煕政権が誕生した。2001年3月19日、ブッシュ大統領(子)と会談した森喜朗首相は既に自民党総裁選前倒しを提案して事実上の退陣表明をしており、4月に小泉内閣が発足している。

 これは日米首脳会談を政権浮揚に利用しようとしても、外交は内閣支持率の上昇にはつながらず、結局は追い込まれることを如実に現している。

注目浴びる小沢発言

 麻生内閣が国政、外交ともに当事者能力を失う一方で、注目を集めているのが民主党の小沢一郎代表の言動だ。小沢氏はこれまで、麻生内閣を早期の衆院解散に追い込んで総選挙での政権交代を目指すため、全国を行脚し、選挙に向けた活動に重点を置いてきたが、麻生内閣のレームダック化が鮮明になるにつれ、外交活動にも力を入れ始めた。というよりも、外国政府側が日本の政権交代をにらんで、民主党中心の政権誕生時に首相に就任するとみられる小沢氏とのパイプづくりを急いでいると見た方がいいだろう。

 主なものだけでも、小沢氏は2月17日に来日したヒラリー・クリントン米国務長官、2月23日には中国の王家瑞・中国共産党対外連絡部長(中連部長)と会談した。

 野党党首と国務長官との初めての個別会談となったクリントン-小沢会談は、米国側の打診によるものだ。当初、小沢氏は地方出張を理由に会談を断っていたが、周囲の説得に応じた。王部長との会談は、麻生首相との会談よりも長い1時間15分にわたったという。

 各国から民主党幹部と会談したいとの要請が増えたのは昨年12月からで、実現した会談は12月以降30件を数えるという(2009年2月25日付朝日新聞朝刊)。

 そうした状況下で飛び出したのが、小沢氏の「第七艦隊」発言。その発言要旨は以下の通り(2009年3月1日時事通信配信)だ。

 「米国の言う通り唯々諾々と従うのではなく、きちんとした世界戦略を持ち、どんな役割を果たしていくか。少なくとも日本に関連する事柄についてはもっと日本が役割を果たすべきだ。そうすれば米国の役割は減る。今の時代、前線に部隊を置いておく意味が米国にもない。軍事戦略的に言うと第7艦隊がいるから、それで米国の極東におけるプレゼンスは十分だ。あとは日本が極東での役割を担っていくことで話がつく」(2月24日、奈良県香芝市内で記者団に)

 「安全保障の面で日本が役割を負担していけば、米軍の役割はそれだけ少なくなる。米軍におんぶにだっこだから、米国の言うことを唯々諾々と聞くことになっている。自分たちにかかわることはなるべく自分たちできちんとやるという決意を持てば、そんなに米軍は出動部隊を日本という前線に置いている必要はない。ただ、東南アジアは非常に不安定要因が大きいので、米国のプレゼンスは必要だ。それはおおむね第7艦隊の存在で十分じゃないか」(2月25日、大阪市内で記者団に)

 この発言について、小沢氏自身は2月27日、横浜市での記者会見で「わたしは単に自衛隊ができることをやり、米国の負担が軽くなれば、それだけ在日米軍も少なくて済むという、ごくごく当たり前の話をしただけだ」と真意を説明した。

 この発言の核心は「対等な日米関係」だ。小沢氏には自民党幹事長当時の1991年、湾岸戦争を受けて多国籍軍に90億ドル(1兆2000億円)の支援を主導したが、結局、当事国に感謝されなかったというトラウマがある。

 これ以降、小沢氏は日本の主体的な外交・防衛政策を主張するようになり、その一つの到達点が「対等な日米関係」であり、1993年に出版した「日本改造計画」で提唱した「普通の国」なのだ。

 ただ、仮に日本に駐留する米陸空軍や海兵隊が撤退することになれば、日本の安全保障だけでなく、アジア・太平洋地域の軍事バランスにも大きな影響が生じる。代わりに自衛隊増強を目指すのかどうかなど、小沢氏は全体像を明らかにしておらず、政府・与党からは「防衛に知識がある人はそういう発言はしない」(麻生首相、2月26日記者団に)などと民主党の政権担当能力を疑問視する意見が続出しており、民主党内でも小沢氏の説明不足を指摘する声が出ている。

 また、次期衆院選で民主党が勝利すれば、連立政権に参加すると見られる社民党は「(在日米軍撤退の)あとは日本でやるということなら、意味が違ってくる」(福島瑞穂党首)と受け止めており、小沢氏の「第七艦隊」発言が今後、連立協議の障害になる可能性は捨てきれない。

 もちろん、小沢氏の「第七艦隊」発言は、日本の外交当局、米政府にとっても懸念材料だ。小沢氏の「対等な日米関係」という言葉は、1993年に非自民連立政権の首相となった細川護煕首相が提唱した「成熟した大人の日米関係」に通じる。細川首相のこの姿勢は当時、日米包括経済協議をこじらせ、クリントン政権のその後の「日本離れ」の布石となったからだ。

 このため、民主党幹部は小沢発言の沈静化に躍起となっているが、小沢発言は図らずも、民主党が依然、安全保障政策で定見を持たない未熟な政党にとどまっているという印象を与えてしまった。

米中関係の深化に警戒感

 日中両国と台湾が領有権を主張する尖閣諸島をめぐり、日本政府は米中接近への警戒感を強めている。

 この尖閣諸島の領有権問題に関連し、麻生首相は2月26日の衆院予算委員会で、尖閣諸島に第三国が侵攻してきた場合について「尖閣は日本固有の領土である以上、日米安全保障条約の対象だ」と述べた。麻生首相が言及した尖閣諸島をめぐる日本政府の見解は従来と何ら変わることはない。

 これに対し、中国の楊潔チ外相は2月28日、就任後初めて中国を訪問した中曽根弘文外相との会談で、麻生首相の尖閣諸島をめぐる発言を念頭に、言動を慎重にするよう求め、両外相は「日中関係全般に影を差すべきではない」との認識で一致した。

 1960年に改定された新安保条約第5条は、日本の施政下にある領域への攻撃は、日米双方の平和と安全を危うくするものと認め、「共通の危険」に対処するよう行動することを定めている。

 尖閣諸島が日米安保の対象かどうかについて、ブッシュ前政権は2004年、尖閣諸島の魚釣島(沖縄県石垣市)に上陸した中国人活動家七人が逮捕された際、「1972年、沖縄の日本復帰の一部として返還されて以来、日本の施政下にあり、日米安全保障条約の第五条が適用される」(エアリー米国務省副報道官、2004年3月24日の記者会見)と、日米安保条約に基づいて尖閣諸島への攻撃は米国への攻撃とみなし、集団的自衛権を発動して反撃するとの見解を示しており、日本政府はこうした見解が米国の政権交代によっても変わらないことを期待している。

 しかし、オバマ民主党政権になり、日本政府がこうした見解を確認するよう求めているものの、米政府側は確認を避けているという(2009年2月27日付読売新聞朝刊)。ブッシュ共和党政権以前のクリントン民主党政権下でも、米政府は確認を避け続けた経緯があり、日本政府は、オバマ政権が今後、クリントン政権同様、中国に近いスタンスをとるのではないかと警戒しているのだ。

 日本政府にとって重要なのは、米国が尖閣諸島における日本の実効支配を認め、日米安保条約の対象とし続けることである。そのことが何よりも中国に対するけん制になるからであり、日本政府は米国に対し、機会あるごとに尖閣諸島が日米安保条約の対象となることの確認を米政府に求め続けるであろう。

 中国は今年から通常型空母2隻の建造を計画しているのに続き、2020年以降、同国として始めてとなる原子力空母2隻の建造を計画している、という(2009年2月13日付朝日新聞朝刊)。

 また、中国海軍の攻撃型潜水艦が2008年、過去最多の計12回の哨戒活動を実施していたことが分かった(2009年2月5日共同通信配信)。

 これら海軍力の増強、海軍活動の活発化はいずれも、中国の外洋進出の意図をうかがわせている。

 こうした動きに対し、米海軍が、潜水艦からの攻撃を想定した日米共同訓練(対潜特別訓練)を重視し、米本土から空母を派遣するケースが増えてきた(2009年2月26日付朝日新聞ウエッブ)。

 オバマ政権としても、いつまでも尖閣諸島を日米安保条約の対象か否か、曖昧にし続けることはできないだろう。中国の経済発展、外洋進出の意図はクリントン政権の時のそれとは全く異なるからである。

●3島返還論は消えていないのか

 麻生首相は2月18日、サハリンを訪問し、ロシアのメドベージェフ大統領と会談した。会談後、麻生首相は記者団に、北方領土問題について「新たな、独創的で型にはまらないアプローチで、我々の世代で解決すべく、具体的な作業を加速しようということで一致した。4島の話は向こう(ロシア)が2、こっちが4ではまったく進展しない。日露間すべてに引っかかっている問題だ。政治が決断しなければいけない」と述べた。

 麻生首相の「独創的アプローチ」が何を指すのかは分からない。しかし、それを読み解くヒントが、センテンスの後半「4島の話は向こう(ロシア)が2、こっちが4ではまったく進展しない」にある。(4+2)÷2。面積二分論、また3島(+α)返還論だ。

 麻生首相は外相当時、3島返還論に言及したことがある。2006年12月、衆院外務委員会で「択捉島の約25%を(国後、色丹、歯舞の)残り3党にくっつけると、(面積が)50(対)50の比率になる」と述べている。

 しかし、3島返還論が有力な解決策になり得たとしても、日本の国内世論的には、4島返還論から転換するに至っていない。かつて2島先行返還論を唱えた鈴木宗男衆院議員は失脚させられた。

 麻生首相であれ、首相が誰にせよ、3島返還で決着しようとしたら、世論の猛反発を買う。だからこそ、麻生首相は外相時代には3島返還論に言及できたとしても、より責任の重い首相としては言い出せる状況にはない。

 領土交渉を解決するには、強力な政治指導力が求められる。どんな形で決着するにせよ、国内の反対論を押さえ込むだけの政権基盤が必要だ。今の麻生政権にはそれだけの力量がなく、領土問題解決の道筋をつけられるような状況ではない。

 外交問題はつとめて内政問題である。北方領土問題は日ロともに、国内に強硬な世論を抱え、少なくとも日本側で支持基盤の弱い政権が続くうちは、解決は極めて難しいだろう。

※このレポートは、小沢一郎民主党代表の公設第一秘書が政治資金規正法違反で逮捕される以前に脱稿したものです。

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2009年1月30日 (金)

◆政治情勢レポート(4)◆2009年1月30日

 ●落ち続ける麻生内閣支持率

 麻生内閣の支持率はすでに昨年末、危険水域に突入していたが、さらに落ち続けている。

 毎日新聞(1月24-25日実施)と日本経済新聞(1月23-25日実施)が実施した最新の全国電話世論調査によると、麻生内閣の支持率はともに19%と、昨年12月の前回調査よりもともに2ポイント下落した。

 今年に入って行われたこれ以前の調査でも、朝日新聞(1月10-11日実施)が19%(前回12月調査より3ポイント下落)、読売新聞(1月9-11日実施)が20.4%(同0.5ポイント下落)、共同通信(1月10-11日実施)が19.2%(同6.3ポイント下落)、産経新聞(1月10-11日実施)が18.2%(前回11月調査より9.3ポイント下落)と、軒並み20%を割っており、麻生内閣は20%を下回る支持率が定着している。

 内閣支持率が20%を割り込んだのは、各種調査でばらつきがあるものの、おおよそ森政権末期の2001年2月以来。この2カ月後、森喜朗首相は退陣しており、20%以下の支持率は、首相がいつ政権を投げ出してもおかしくはない水準だ。

 ●東京都議選7月12日、衆院選とのダブルは回避

 内閣支持率が危険水域に達する中、麻生首相はいつ衆院解散・総選挙に踏み切るのか。その鍵を握る一つの要素が、7月22日に任期満了を迎える東京都議会議員選挙の日程だ。

 東京都選挙管理委員会は1月21日、東京都議会議員選挙の日程を7月3日告示、同12日投開票と決めた。都選管は当初、5日投開票を軸に検討したが、1週間先延ばしにすることになったという。

 この背景には、都議選の時期を衆院解散・総選挙とできるだけ離したい公明党の意向が強く働いているとみていい。一週間先延ばししたところをみると、公明党は都議選前、具体的には2009年度予算と関連法成立後の衆院解散を想定しているらしい。

 候補者の全員当選に向けて都議選に集中したい公明党は当初、昨年中の衆院解散・総選挙を切望していた。しかし、世界的な金融危機を受けて麻生太郎首相が解散をためらっているうちに越年したため、2009年度予算と関連法成立から間を置かないうちの解散が現実味を帯び始めている。予算は08年度内の3月中には成立するとしても、関連法の成立は野党が参院での採決を先送りして抵抗すれば4月にずれ込む可能性がある。それを待って麻生首相が解散に踏み切ったとしたら、総選挙は5月中旬以降になる。

 都議選が当初の予定通り7月5日だとしたら、総選挙後からの時間は1カ月余りしか残されていない。公明党とその支持母体である創価学会としては、できるだけ選挙準備期間を確保するため、たとえ一週間でも都議選を先延ばししたかったのだ。

 7月12日なら、その直前までイタリアでマッダレーナ・サミットが開催されていて、首相が日本を留守にすることもあり、可能性は低いとしても、都議選と衆院選のダブル選挙を避けられる。

 衆院選が都議選の前に終わってしまえば、都議選が「政権選択選挙」のようにはならず、今吹きまくっている公明党への逆風を、多少なりとも弱められるという思惑もあるだろう。

 ただ、公明党の思い通りに事が運ぶと考えるのは早計だ。予算と関連法が成立しても内閣支持率が低迷したままなら、麻生首相は解散をためらうかもしれない。政権交代の可能性が高いなら、福田康夫前首相のように、せめてサミットに参加したいと思うのも至極当然だろう。

 そうなれば解散はさらに遅れ、9月10日に任期満了に限りなく近づくかもしれない。その場合には、追い込まれ解散、もしくは解散権すら行使できず、三木武夫内閣以来戦後二度目となる任期満了による選挙になり、政権交代の可能性はますます高くなるというジレンマに陥る。

 ●葬り去られた2011年度の消費税率引き上げ

 一方、予算と関連法が成立すれば、自民党内で「麻生降ろし」が一気に加速するかもしれない。新しい総理・総裁の下で衆院選になだれ込んだ方が、これまでの経験上、自民党に勝機が開けるかもしれないからだ。 その場合、9月の自民党総裁選を前倒しして行い、新しい総裁・首相の下で解散・総選挙に臨むことになる。

 すでに麻生降ろしの芽は出つつある。その顕著なものが消費税をめぐる自民党内の混乱だ。

 麻生首相は2011年度からの消費税率引き上げる考えを明言していた。これは、たとえ有権者に痛みを強いる政策でも、国家国民のためなら政治家の責任で断行するという「責任政党」としての立場を示し、かつて消費税率引き上げを公約しながら、その後引っ込めた民主党の「無責任」ぶりをあぶり出すことで、次期衆院選を有利に戦おうという戦略でもあった。

 麻生首相は昨年12月12日の記者会見で、「経済状況をみた上で3年後に消費税の引き上げをお願いしたい。2011年度から消費税を含む税制抜本改革を実施したい」と強調。12月末に閣議決定した、税財政抜本改革の道筋を示す「中期プログラム」は「経済状況好転を前提に、消費税を含む税制抜本改革を11年度から実施できるよう、必要な法政上の措置を講じる」と踏み込んだ。

 しかし、消費税率引き上げ公約が次期衆院選で逆風になることを懸念した自民党議員が猛反発し、税制改正法案の国会提出を了承するにあたって、付則に「経済状況好転を前提に、消費税を含む税制抜本改革を行うため、11年度までに必要な法政上の措置を講じる」と書き込み、11年度からの消費税率引き上げを事実上、封印してしまったのだ。

 麻生首相は1月22日、消費税率引き上げをめぐる政府と自民党との調整が決着したことを受け、「私がずっと申し上げてきた方針が理解されてよかった」と強弁したが、首相の方針が与党内の反発で棚上げされたことで、首相の求心力、指導力のなさが露呈してしまった。

 ●広がる自公の亀裂

 消費税率引き上げを目指す麻生首相の方針は、自民党内の「反乱」以前にも、公明党とも摩擦を起こしていた。「中期プログラム」の内容をめぐる与党内の調整は、12月23日未明になってようやく決着したが、消費税率引き上げをめぐる文言は、2011年度からの引き上げを明記したい麻生太郎首相の意を汲んだ自民党と、景気回復を税率引き上げの前提条件にしたい公明党との間で調整がつかず、結局、どちらとも解釈できる「玉虫色」の表現で落ち着いた。

 国の基本政策である消費税のあり方をめぐって、自民、公明両党の考え方の違いが明確になったことは、麻生内閣の支持率低迷を受け、与党内がすでに一枚岩でなくなっていることを表す象徴的な出来事となった。

 ●選挙協力でも緊張

 与党内が分裂含みであることの象徴的な出来事は、これだけではない。古賀誠選挙対策委員長の発言をめぐり、自公両党間の緊張が一気に高まっていたからだ。

 問題の発言は、12月15日夜行われた自民党選挙対策委員会委員との会食で飛び出した。古賀氏は席上、次期衆院選比例代表について「自民党の政策で戦わなければ(党組織が)弱体化する」と指摘。さらに、翌16日の自民党役員連絡会では「比例で他党への投票を求めるのはおかしい」と述べた。

 自民党は1998年に公明党と連立政権を組み、その後、初めてとなる2000年の衆院選以降、公明党が候補者を立てない選挙区では、自民党候補が小選挙区で支援を受ける見返りに、「比例代表は公明」と呼びかける選挙戦術を展開してきた。古賀氏の発言は、これを見直そうというものだ。

 背景には、2007年の参院選での歴史的大敗以降、自民党の党勢の落ち込みが深刻になってきたことがある。それまでは、「比例代表は公明」と呼びかけても、自民党の比例票は多少の落ち込みはあるものの、選挙結果にそれほど影響しなかったが、与党への逆風の中行われる次期衆院選で「比例代表は公明」と訴えて選挙戦を戦えば、自民党の比例代表は壊滅的な打撃を受けるだろうことが必至だからだ。つまり余裕がなくなったのだ。

 しかし、小選挙区での候補者を絞り込んでいる公明党にとって、比例代表での議席獲得は党存立の命綱でもあり、自民党支持者の協力は不可欠だ。このため、古賀発言に対し、公明党の太田昭宏代表は12月20日、民放テレビの報道番組で、「公明党は比例代表が衆院選で一番大事で、(党員・支持者は)1票でも多くとお願いしている。それをシャットアウトするというニュアンスであれば、とんでもないという感情をみんな持った」と批判した。

 太田氏によると、古賀氏から太田氏に対して「代表にもご迷惑をかけた」との釈明があったといい、自公間の選挙協力はこれまで通りということで落ち着いたが、両党間にそれぞれ不信感を残したことは容易に想像できる。

 麻生首相は12月22日、太田氏の選挙区である東京12区内で開かれた自民党支部の会合に、太田氏とともに出席し、両党の結束をアピールしたが、いまさらながら、そんなことをしなくてはいけないことが、両党間の距離の広がりを象徴している。

 自民、公明両党による連立政権ができて、はや10年がたとうとしている。両党間の連立は当初、政策の一致というよりも、自民党の参院過半数割れに伴う国会対策の円滑化という目標が先行していた。つまり、政権維持の優先順位が高いのだ。今回の与党内の混乱は、そうした「大義」なき政権の制度疲労を如実に表している、とも言える。

 ●揺れる最大派閥・町村派

 消費税をめぐる与党内の混乱は、2009年度税制改正法案の付則をめぐる攻防が決着したことで一段落したが、その「余震」が、自民党最大派閥・町村派を襲っている。ことの発端は、同派の代表世話人を務める中川秀直元幹事長が麻生首相に批判的な言動を繰り返し、同派最高顧問の森喜朗元首相が中川氏に代表世話人を辞任するよう迫ったことだ。

 中川氏は森内閣で官房長官を務めるなど、森氏とは蜜月関係を維持してきたが、昨年9月の自民党総裁選では、森氏は安倍晋三元首相、町村信孝元外相らとともに麻生氏を推したのに対し、中川氏は小池百合子元防衛相を担いだことから関係が悪化。さらに、中川氏は消費税率引き上げ問題で、反麻生的言動を繰り返したことから、森氏は中川氏に我慢ならなかったようだ。

 中川氏は1月28日、派内の中堅・若手議員との会合で、代表世話人にとどまる考えを表明したが、小泉構造改革の継承を掲げる中川氏と、代表世話人の一人である町村氏との対立は、総裁候補の座も絡んでくすぶり続ける。

 福田派、安倍派、三塚派、森派、町村派と続く系譜は、福田赳夫氏の後、長らく政権の座から遠ざかっていたが、森氏の首相就任後は4代続けて首相を出し、それに伴って自民党最大派閥に躍り出た。かつて最大派閥だった田中派、竹下派は、恒星が一生を終える前のように大きく膨張した後、分裂した。町村派も田中派、竹下派と同じ運命をたどるのだろうか。

 ●地方の反乱

 1月25日に投開票された山形県知事選は、野党系新人候補が、自民党の大半の支援を得た現職候補を破った。

 麻生首相は「(政権への批判とは)全く感じない」と静観を決め込んだが、保守王国・山形での与党系現職の敗北は、自民党の支持低迷を印象づけている。

 東京都議会議員選挙が行われる7月12日以前にも、千葉県知事選(3月29日投開票)、秋田県知事選(4月12日投開票)、名古屋市長選(4月26日投開票)、さいたま市長選(5月24日投開票)など、県知事選や政令指定都市市長選が行われる。

 民主党はこれらの地方選でも、自民党との対決を強めており、候補者選定にあたっては相乗りを禁じ、独自候補の擁立を目指している。

 これらの選挙で、野党系候補が連勝すれば、次期衆院選での政権交代ムードが一気に高まるのは間違いない。麻生首相としては、地方選で与党系候補が連敗するような事態になれば、衆院解散をさらに先送りして、逆風がやむのを待つしか手がなくなる。

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2009年1月27日 (火)

東京都議選日程と衆院解散・総選挙

 既報だが、東京都議会議員選挙の日程が、7月3日告示、同12日投開票の日程で決定した(1月21日)。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/news/20090122-OYT8T00118.htm?from=navr

 報道によると、都選挙管理委員会は当初、5日投開票を軸に検討したが、1週間先延ばしにすることになったという。

 この背景には、都議選の時期を衆院解散・総選挙とできるだけ離したい公明党の意向が強く働いているとみていい。一週間先延ばししたところをみると、公明党は都議選前の衆院解散を想定しているらしい。

 都議選に集中したい公明党は当初、昨年中の衆院解散・総選挙を切望していた。しかし、麻生太郎首相が解散をためらっているうちに越年し、2009年度予算と関連法成立から間を置かないうちの解散が現実味を帯び始めている。予算は08年度内の3月中には成立するとしても、関連法の成立は4月にずれ込む可能性があり、それを待って麻生首相が解散に踏み切ったとしたら、総選挙は5月中旬以降になる。

 都議選が当初の予定通り7月5日だとしたら、総選挙後からの時間は約1カ月間しか残っていない。公明党とその支持母体である創価学会としては、できるだけ準備期間を確保するため、たとえ一週間でも都議選を先延ばししたかったのだ。

 7月12日なら、その直前までイタリアでマッダレーナ・サミットが開催されていて、首相が日本を留守にすることもあり、可能性は低いとしても、都議選と衆院選のダブル選挙を避ける意味合いもあった。

 ただ、公明党の思い通りに事が運ぶと考えるのは早計だろう。予算が成立しても内閣支持率が低迷したままなら、麻生首相は解散をためらうかもしれない。政権交代の可能性が高いなら、福田康夫前首相のように、せめてサミットに参加したいと思うのも至極当然だろう。

 そうなれば解散はさらに遅れ、9月10日に任期満了に限りなく近づくかもしれない。その場合には、追い込まれ解散、もしくは解散権すら行使できず、戦後二度目の任期満了による選挙になり、政権交代の可能性はますます高くなるというジレンマに陥る。

 一方、予算が成立すれば、自民党内で「麻生降ろし」が一気に加速するかもしれない。新しい総理・総裁の下で衆院選になだれ込んだ方が、これまでの経験上、自民党に勝機が開けるかもしれないからだ。 

 いずれにせよ、今年の政局の焦点の一つだった都議選の日程が決まった。今後は、与野党間で、都議選の日程をにらみながらの駆け引きが活発になることだろう。

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2009年1月26日 (月)

オバマ政権誕生と日本

 麻生太郎首相のあまりの体たらくぶりに、ブログに書き込む気力をなくして、しばらく休筆していましたが、あまり休むのも筆が鈍るので、気力を振り絞って久々に書くことにしました。この間もブログを訪問していただいた「読者」の皆様にはお詫びと感謝を申し上げます。

                        ◇

 米国のオバマ上院議員が現地時間の1月20日、第44代大統領に就任した。サブプライムローン問題に端を発する世界的な金融危機、景気交代の中、ハニームーンと呼ばれる就任後100日間の間に、どこまで成果への道筋をつけることができるのか、当面はお手並み拝見というところだ。

 オバマ大統領就任直前の支持率は80%超と非常に期待は高いが、問題を克服するのは容易ではない。期待が高い分だけ、それに見合うような成果が上げられなければ、落胆へと変わる。オバマ政権は出だしは順調に見えるが、いつ政権の危機にひんするともしれない、危うい船出と見るのが妥当であろう。

 そうした中、日本としてはどのようにオバマ政権と向き合うべきか、という議論が研究者らを中心に活発だ。それらを聞いてみると、おおむね、日本としては日米関係がどうなるのかということよりも、どうすべきかを考えるべきだ、という論調が目立つ。まさにその通りだ。

 これまでのような米国偏重の外交を継続するのか、日米同盟関係は維持しつつ、アジア外交にも軸足を移すのか、そろそろ国会を巻き込んだ議論があってもいい時期なのだが、国会からはいっこうにこうした議論は聞こえてこない。その原因はもちろん、麻生太郎首相による衆院解散先送りに伴う、麻生政権のレームダック状態にある。

 9月までには必ずある衆院選では政権交代があるかもしれず(その可能性は高いとみた方がいいのだが)、そうした不安定な状況では、米国政府も日本政府を相手に腰を据えた議論はできないのではないだろうか。

 特に、オバマ大統領が重視するアフガニスタンの治安回復活動に、日本政府がどう取り組むのかに関しては、自民、民主両党間の考え方の違いが大きい。アメリカ政府にしてみれば、麻生政権を相手に話をすればいいのか、小沢民主党とどの程度話をすればいいのか、とまどうところだろう。米軍再編問題でも、麻生政権との間で詰めたところで、選挙で政権が交代してしまえば、軌道修正しなければならなくなるかもしれない。

 オバマ政権発足に伴い、日本政府は太平洋の同盟国として、国際的な問題にどう対応していくのか、米側と突っ込んだ議論をするためには、日本側も早く政治的に安定した政権をつくるべきだろう。いくら衆院議員としての任期が残っているとはいえ、その時期はとっくに過ぎているはずだ。

 麻生首相は大相撲初場所千秋楽で、優勝した朝青龍関に賞状と優勝杯を渡し、土俵上で「横綱はやっぱり強くなくっちゃ」と脳天気に言っていた。けがをしながらも鬼気迫る土俵で優勝した貴乃花関に「痛みに耐えてよく頑張った、感動した」と絶叫した小泉純一郎元首相の向こうを張ったつもりかもしれないが、役者が違う。両者の内閣支持率は比較にならない(もちろん麻生内閣の方が格段に低い)。

 こうした弱体政権が居座り、衆院選を先延ばしにすればするほど、日本の国際的地位は下がっていくだろう。麻生政権の延命は、それ自体が国益を毀損しているのである。

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2009年1月 6日 (火)

「湯浅誠」は日本のオバマになれ

 自民党の坂本哲志総務政務官が「年越し派遣村」に集まった失業者らについて「本当に真面目に働こうとしている人たちが集まっているのかという気もした。学生紛争の時の戦略のようなものが垣間見える」と発言。野党などから厳しい批判を浴び、翌日になって撤回した。

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090105/plc0901052135010-n1.htm

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090106/stt0901061116005-n1.htm

 この発言に接して、自民党議員の認識はこの程度なのだろうという思いをさらに深くした。自民党の中には、必死になって現状を打開しようとしている議員がいることは承知しているが、坂本氏の程度の議員が党内で幅をきかせるようでは、自民党の命脈も長くはあるまい。自民党は自ら「国民政党」を称し、これまで保守政党にしては行き過ぎと思えるほど、社会主義的な政策をとり続けてきたが、ようやく地金が現れてきたような気がする。

 実は私自身、「年越し派遣村」に集まった人たち、運営に当たった人たちが期間後、どう行動するか注目していた。ひょっとしたら、このまま厚生労働省の講堂や日比谷公園を占拠するのではないかと。そのようなことがもしあれば、派遣村の活動は、それこそ坂本氏が「学生運動の時の戦略」と指摘するような、冷戦時代の「階級闘争」的な思考を引きずった旧態依然の左翼活動と同列ということになる。

 しかし、実態は正反対で、報道によれば、期限の5日に閉村、退去が粛々と行われ、集まった人たちは新しい宿泊所に移っていったという。これは、ボランティアの活躍に加え、派遣村の村長を務めたNPO「自立生活サポートセンターもやい」事務局長の湯浅誠氏らの指導力によるところが大きいと思う。

 米国のオバマ次期大統領はハーバード大学出身のエリートでありながら、シカゴの貧困地域でコミュニティ・オーガナイザーとして貧しい人たちの救済に悩み苦しみながら努力した。今、国民の代表である政治家に求められるのは、そうした現場での経験ではないのだろうか。

 坂本氏のような冷戦時代の思考を引きずり、かつ現場を見ようともしない政治家には、一刻も早く国政の場から去ってほしいと思う。このような自称政治家が自民党を、日本政治を悪くしているのだ。そして、湯浅氏のような現場で悩み苦しんだ人物がさらに成長して、国政の場に参画してほしいと思う。

 あえて言わせてもらおう。「湯浅よ日本のオバマになれ」と。

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2009年1月 4日 (日)

麻生首相記者会見の空疎さ

 麻生太郎首相が1月4日、年頭の記者会見を首相官邸で行った。近年、恒例行事となっているもので、通常国会冒頭の施政方針演説と並んで、首相がこの一年、この国の政治をどう舵取りをするのか、その心構えを披露するものだ。

 しかし、麻生首相の会見内容は乏しいものに終わった。

 まず首相は記者会見の冒頭、毛筆を手に取り、「安心活力」と揮毫し、披露した。首相はこの文字に、自らの思いを託したつもりだろうが、当たり前すぎて何のメッセージも伝わってこない。

 さらに首相は、衆院解散・総選挙に関し「解散は総理大臣、麻生太郎が決断する」と、自らの手で衆院解散・総選挙に踏み切る考えを強調したが、それ以上、首相の口から具体的な政策が披露されることはなかった。

 今、日本経済は金融危機の余波で雇用情勢が厳しさを増している。こんな時には、具体的な政策とともに、将来に向けた力強いメッセージが求められている。明るい将来像があるからこそ、厳しい現状を乗り越えようという気力も沸いてくるというものだ。そうしたメッセージを発する第一の責任は政治家、特に首相にある。

 その首相から何ら将来像が聞かれず、自分の手で解散することが唯一のメッセージだとしたら、情けない限りだ。揮毫のパフォーマンスなど、ない方がましだった。

 宰相の座の投げ出しによる政権たらい回しが続いている中、事態打開の唯一の策は、政権選択を国民、有権者の手にゆだねることだが、麻生首相は2009年度予算成立後の今春まで、衆院を解散する気はないらしい。だとしたら、1月5日から始まる通常国会では、与野党が未来に向けたメッセージを発し、侃々諤々の議論をしてほしい。それが麻生首相が政権を担うことによる政治空白を、多少なりとも埋めるせめてもの策となるだろう。

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2009年1月 3日 (土)

年頭に思う

 あけましておめでとうございます。このブログを開設して3カ月あまりがたちました。トップページをブックマークして定期的に訪問していただいている「読者」の方もいらっしゃるようで、つたない文章にお付き合いいただき、ありがたい限りです。年末年始は書き込みをお休みしていましたが、今年も初心に立ち返り、思うままに書きつづりたいと思いますので、よろしくお付き合いのほどお願いいたします。

 この3カ月余りの間、早期解散を期待されて麻生太郎自民・公明連立政権が誕生したものの、金融危機の深刻化で衆院解散・総選挙は先送りされ、日本政治をめぐる現在の構図は当面、続くことになりました。その一方で、雇用問題は深刻化し、日比谷公園には「派遣村」が開設され、厚生労働省の講堂が職を失った派遣労働者に開放されるなど、寒々しい光景が都心で広がっています。

 この光景は、経済のグローバル化に伴う必然の結果なのでしょうか、それとも政治の貧困の結末なのでしょうか。もちろん、景気の低迷で、ある程度の痛みは覚悟せざるを得ないにせよ、私には、後者の比重が重いように思えてなりません。もしそうだとしたら、その責任は私たち自身にあります。

 私たち日本国民は1955年以降、基本的に自民党政権を選択してきました。1993年に誕生した細川「八党派連立」政権も、主導した小沢一郎新生党代表幹事、首相になった細川護煕日本新党代表が自民党出身者であることを考えれば、基本的に亜自民党政権といえるでしょう。

 過去の自民党政権は、疑似社会主義政権だったと、私自身は思っています。国民皆保険制度、食糧管理制度、終身雇用制、金融機関の護送船団方式などはその典型です。もちろん、そのような政策の源流は1940年の戦時体制にあることは否定できませんが、政府がそのような政策をとった背景には、社会党という社会主義政党が一定の力を保っていたことと切り離して考えることはできません。自民党という保守政党が大企業よりだったとはいえ、その政策は社会党との妥協の産物だったわけです。

 それが一変した契機は、東西冷戦の崩壊による社会党の凋落、橋本龍太郎自民・社民・さきがけ連立政権崩壊後の小渕恵三自民党単独政権の復活だったのではないでしょうか。実際、現在問題となっている労働者派遣法の大幅改正は1999年から始まっています。つまり歯止めを失った自民党の暴走は、小泉純一郎政権以前からすでに始まっていて、有権者はそれに気づかず、自民党が昔ながらの亜社会主義政党と勘違いして投票し続けていることになります。

 現在深刻化している雇用問題の原因は、政府の政策にあることは間違いないのですが、その究極的な責任はわれわれ有権者自身にあります。つまり自分たちの責任を棚上げにして政府の責任を追及することは、天につばをするようなものです。以前、このブログでも書いたように、問題は、政治不信ではなく、政治過信にあります。

http://yoichitoyoda.cocolog-nifty.com/seiji/2008/09/post-44b1.html

 つまり政府というものは正しい政策をするものだという過信が、自民党政権の誤った政策を継続させているのです。英国の宗教弾圧から逃れた歴史的経緯から、政府を信用していないアメリカでは、政府はできるだけ小さい方がいいと一般的には考えられています。これが自由放任の経済思想を生み、現在の金融危機の元凶となっていますが、経済発展の原動力となったことは間違いありません。

 ただ、私は今回、雇用問題の深刻化の中で一筋の希望を見ました。それは各自治体が解雇された派遣労働者に雇用を作り出したり、公営住宅を提供したりしていることです。動かない国に先んじて、雇用問題を地域の問題ととらえ、独自の政策を打ち出していることは、地方分権、地方主権の芽になると思います。もちろん政策の妥当性の問題は残るでしょうが、思考なきところに独創性は生まれません。

 幸い私たちは、民主主義国家に生きています。来るべき総選挙では、誰にも弾圧されることなく、自由な一票を投じることができます。そして、その一票は当然、責任がつきまとうものです。そのことを肝に銘じて、各政党の政策を慎重に見極め、自分自身の見方、考え方を書きつづっていきたいと思います。

 今年1年、よろしくお付き合い願います。なお、ご意見は左上にあるプロフィール欄を開いていただき、「メール送信」をクリックしていただければ、お寄せいただくことができます。

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2008年12月26日 (金)

参考●当面の政治日程(2008年12月26日現在)

【2009年】
1月5日   通常国会召集
1月5日   2008年度第2次補正予算案・関連法案提出
1月6日   衆院代表質問
1月7日   参院代表質問
1月8日?  衆院予算委で審議開始
1月中旬   補正予算案・関連法案衆院通過
1月中旬   「経済財政の中期方針と展望」を決定
1月18日   自民・民主両党が党大会
1月19日   2009年度予算案・関連法案提出
1月19日? 麻生首相施政方針演説
1月20日   米大統領就任式
1月21-22日?衆院代表質問
1月22-23日?参院代表質問
1月28日-2月1日 ダボス会議
2月上中旬 予算案・関連法案衆院通過
2月中旬   補正予算案自然成立
3月上中旬 予算自然成立
3月中旬   補正予算関連法再可決・成立
3月中下旬 定額給付金を支給
4月2日   第2回金融サミット(ロンドン)
4月上中旬 予算関連法再可決・成立
6月3日   通常国会閉会
7月8-10日 主要国首脳会議(マッダレーナ、イタリア)
7月22日   東京都議任期満了
7月31日   イラク復興支援特措法期限
9月10日   衆院議員任期満了
9月30日   麻生自民党総裁が任期満了

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2008年12月25日 (木)

米大統領選講義ノート(4)その3完「日米同盟の再構築―日米安全保障戦略と米軍再編―」ケント・カルダーSAIS教授

(質疑)

Q.DPRI( Defense Policy Review Initiative)が行われない場合、日米同盟関係に大きな影響を与えるのではないか。

カルダー 大変微妙な問題だ。辺野古がどうなるのか。首脳レベルで取り決めたこと。それが12年たっている。何らかの形で決着する必要がある。再交渉することはさらに複雑に交錯することになると思う。技術的に手を入れることが可能かどうかなどの設問はあるが、再交渉が生産的とは思わない。技術的再調整が、取り決めの性格を変えることは非生産的だ。双方の信頼関係を維持することがなくてはならない。

Q.日米中の二等辺三角形は維持されるのか。

カルダー クリントン政権でジャパンパッシングがあったと確信しているようだが、フォーリー大使は個人的に、関心を深く持っていた。1998年11月にクリントン訪中があったが、クリントンの訪日は五回あった。オルブライト国務長官は、橋本龍太郎に公式訪問を要請したが、選挙で実現できなかった。日米関係はワシントンが中心。フォーリーの時代は東京ではなかなか報道されなかったが、クリントンが日本を無視していたというのは事実と違う。今回、財務長官は日本語ができるガイトナーになった。日米関係のエディター、新アーミテージになる。クリントンは環境、エネルギーに造詣が深い。リチャードソンも対日関係に関心が深い。ボルカーはトヨタの国際問題委員会を務め、行天の友人。ヒラリーになったからといって、日本が課題からなくなることはない。対日関心は変わらない。もっと全体像を見て、報道してほしい。ガイトナー、ボルカーがいることを忘れないでほしい。アーミテージ報告はアジアの安定を強く言っている。視点が幅広くなっている。

Q.オバマは歴史問題に関わるのか。

カルダー とても重要な問題だ。硫黄島の映画を見た。この問題は、日本の国家の意識、人々の価値観に迫る問題。それを尊重すべきだ。どう考えるべきかは言わない。歴史問題は日米でもデリケートな問題になりうる。過去の問題ではない。戦争ではいろいろなことがあった。私は言うつもりはないが、アジアでは状況が異なる。アジア系米国人が違った感想を持つかもしれない。米国の人口構成が変わっている。かなり急速に状況が変わっている。日本では理解されていないが。ブッシュ大統領はニュートラル。人の意思に関わる問題について、判断すべきでない。歴史問題の判断に、オバマは介入しないと思う。オバマはインドネシアを通して、アジアを見てきた。中国と言うよりも東南アジアに注目するのではないか。中国系米国人と対話するスタンスではない。歴史は、多くの人が懸念材料に挙げている。カリフォルニアでは関心を集める。過去よりも、この問題が焦点になるかもしれない。モラルではなく政治から見ると、デリケートな問題になるかもしれない。

Q.国連に対して、どういう方向に向かうのか。

カルダー オバマはグローバリストであり、国連重視を積極的にやっていく。ヒラリーも同じことが言える。国連に対する再認識も高まる。非常に重要なテーマだ。個人的には、日本は安保理入りすることが重要だ。日本側の課題は、国連の中でどう受け入れられるべきか、日本政府としてどういう選択肢を選ぶかが重要だ。米国としては、問題がないと思うが、その前にクリアすべき問題がある。日本が積極的になれば、オバマ政権では歓迎される。日米強化につながるかもしれない。日米が国連の場を使って、環境、文化面で一緒にやっていこうということはあり得る。

Q.在韓米運の指揮権返還は中期的にどう影響するのか。

カルダー 日本における米国のプレゼンス、日本に展開している兵力には、日本の防衛、基地防衛と、周辺事態という二つの意味ある。かなり幅広く役割を果たす可能性がある。日本の安全保障のニーズは、幅広くとらえる必要がある。日本は99%の石油をペルシャ湾経由で輸入しており、シーレーン防衛をサポートする。8000人が日本から減るが、周辺事態が起こったときは、日本に近いところで即応できる。ジョージ・ワシントンがよこすかに配備される。安保の性能は変わらない。変わるのはもう少し技術的な部分だ。海兵隊のプレゼンス、即応体制の能力、周辺事態の能力、必要ならより遠くで空母を展開する能力がある。

Q.日本はG20諸国との直接のパイプが細く、中国はG20の関係が深まっている。

カルダー 国際社会の構造そのものだ。G8がなくなることはないが、現実的にはグローバルな金融問題だ。中国は1兆5千億の蓄積を持っている資本輸出国だ。日本は重要だが、国際金融の重要性は増す。米国にとって金融面で重要性がある日本であり続ける。ユーロと比べれば、安定性は特記すべきものある。金本位制の時代でもそうだった。日本の重要性はぬきんでたものがある。しかし、重要性を増す国が増えたのも事実だ。二国間、G20の中で強化する必要がある。ガイトナーはそういう感性のある人。彼の経歴からいってもできる人だ。もう一つは、日本政治は安定の重要性を増している。今後1年から1年半、重要な時期だ。オバマ大統領が政策をつくる上で重要だ。課題は変わっている。金融の安定性、エネルギー、環境、BIG3の問題、エネルギー価格が上がっているからといって忘れられない問題だ。3つの問題で日本の役割は死活的に重要だ。日本が寄り積極的に提案してほしい。安保会議、NSC、構造づくりをやってきたが、これからも重要だ。民間の役割、政治的安定性、積極的姿勢を示してほしい。

(2008年12月1日、東京アメリカンセンターにて)

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ケント・E・カルダー博士【ジョンズ・ホプキンス大学高等国際研究大学院(SAIS)エドウィン・O・ライシャワー東アジア研究センター所長・教授】

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2008年12月24日 (水)

麻生首相の言語力(2)

 旧知の東照二(あずま・しょうじ)ユタ大学言語文学部教授が、教授を兼任する立命館大学の東京キャンパスで行った講演にお招きいただいたので、聴講してきた。東教授は「歴代首相の言語力を診断する」(研究社)などの著書があり、社会言語学の立場から、政治家の言葉を分析するユニークな研究者だ。

 今回のテーマは「アメリカ大統領選と言語コミュニケーション学」。東教授によると、言語は事実や政策、論理、ロジックを伝えるリポート・トーク(Report Talk)と、共感や感情、つながり、情緒を伝えるラポート・トーク(Raport Talk)に大別され、ラポート・トークの方が、聞く人を引きつけるのだという。

 例えば、副大統領によるディベートでは、「どちらが勝ったか」という調査に、バイデンと答えた人51%に対し、ペイリンは36%だったが、「どちらが好きな人物か」という質問ではこれが逆転し、バイデン36%、ペイリン54%だった。ペイリンは政策に弱く、ディベートには負けたが、その庶民的な言葉遣いで親近感を与えることに成功し、好感度では勝ったのだ。

 大統領候補のディベートはどうだったか。マケインは常にオバマに対して攻撃的な態度を見せたが、オバマは落ち着いた態度で応じた。マケインはオバマをファーストネームで呼んだことはないが、オバマはマケインに34回も「John」と呼びかけた(3回目のディベート)。結局、マケインは愛国的でいらだっている印象を与えたのに対し、オバマは分かりやすく、冷静で、大統領然とした印象を与えた。選挙結果は、オバマの大勝だった。

 ひるがえって、日本の政治家はどうか。「自民党をぶっ壊す」「人生いろいろ」などの名台詞を産んだ小泉純一郎首相はラポート・トークの話者であるのに対し、政策通である岡田克也民主党代表は典型的なリポート・トークの話者。両者がぶつかり合った2005年の衆院総選挙は、小泉自民党の圧勝に終わった。

 東教授は「岡田代表は、小泉首相の発言を『政策に中身がない』と批判していたが、小泉に優るラポート・トークができなかっただけ」と切り捨てる。

 政治家にとって言葉は命だ。その使いようで、出処進退を大きく左右するし、国を盛り上げることも衰退させることもできる。

 麻生太郎首相の場合、私の印象ではラポート・トークが過ぎて、軽薄な印象を与えているようにも見える。小泉首相が同じことを言っても、それほど悪印象を与えないだろうから、結局、言葉は人となり、なのである。

 ちなみに、10月15日の参院予算委員会での麻生首相の発言を分析すると、「少なくとも」を25回、「基本的に」を28回、「何となく」を12回も使ったそうだ。これらの言葉には特段の意味がなく、なくても文意は変わらない。

 麻生首相は漢字をたびたび読み間違い、その言語力には大いに疑問符がつくが、国民を引きつけたいなら、言葉を選んで発言したらどうか。記者団との質疑応答もぞんざいで、横柄な印象を与える。先のブログでも記したように、政治家には「説得責任」(persuadability)が必要だ。ぞんざいな言葉遣いでは、人を説得できず、その責任を果たすことはできない。

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2008年12月22日 (月)

Persuadability(説得責任)が問われている

 麻生太郎首相を取り巻く政治状況をみると、宰相をはじめとするリーダーには「説明責任」(accountability)はもちろん、「説得責任」(persuadability)が必要とされているように思えてならない。

 説得責任とは、文字通り、とろうとしている方針(政治の場合は政策)について、対象者(政治の場合は有権者、もしくはその代表である議員)に納得してもらうために必要とされる責任、能力である。説明責任が、「説明」に重きが置かれているのに対して、説得責任は、その結果、つまり説得して、納得してもらうところまでの努力、責任が求められている。ただの、言いっぱなしは許されないのだ。

 例えば、「私はこの政策について、説明責任を果たした」という発言には、「私は責任を果たしたのに、理解しない方が悪い」という本音が隠されている。つまり、相手が納得しなくても、それは相手の責任であり、自分には責任がない、という論法だ。

 しかし、特に国の重要政策について、説明責任を果たしただけでいいのだろうか。

 確かに、多様な意見がある民主主義では、有権者の意見が完全に一致することはない。極言すれば、一通り説明して過半数の理解を得れば、手続き的には完了していることになるが、それが今の日本政治の混迷を生み出したとは言えまいか。

 これまでの自民党の政治家は、国民の反発を買いそうなことは極力避け、国民への甘言で票を稼いできたが、それが巨額の財政赤字を生み出し、孫子の世代にまでつけ回ししなければいけない状況を生み出してきたことは否定できない。

 その中で、麻生首相が消費税率の三年後の引き上げに言及したことを、私自身率直に評価したいと思う。国家財政の将来を考えれば、税率引き上げは避けられないと思うからだ。

 同時に、麻生首相には「説得責任」の能力が欠けていることに失望もしている。

 自らの主張を実現するには、数あまたの障害を乗り越えなければならない。麻生首相の場合、まず与党内の障害(公明党)、国会内での障害(野党)、有権者の間にある障害(反対意見)だ。消費税率を引き上げるには、これらの障害を一つずつ乗り越えていかねばならないが、与党内に確たる政権基盤もない、国民の高い支持を得ているわけでもない麻生首相には、手を付ける以前に退陣する可能性が大きいことは別にしても、奇跡が起こらない限り、まず無理と言っていいだろう。

 すでに、麻生首相が進めている定額給付金には、8割近くの人が納得していないことが、報道各社の世論調査で明らかだ。

 障害を乗り越えるには、説得するだけの根拠、熱意、そして資質が必要だ。麻生首相の場合、根拠や熱意があったとしても、資質に欠けている。「この首相が言うことなら」という信頼感がまるでない。説得責任には全人格的な幅広い能力が求められるのだ。

 ひるがえって、今の政界をみると、説得責任を果たせる政治家がどこにいるのだろうか。地位が人をつくるとはいえ、すぐには思い浮かばないところに、今の政治状況に対する憂鬱がある。

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2008年12月14日 (日)

政権基盤のない首相を抱く不幸

 自民・公明両党が12月12日にまとめた税制改正大綱に、麻生太郎首相が主張していた「消費税率の3年後の引き上げ」が公明党を中心とする反対で盛り込まれなかった。また、2200億円の社会保障費の抑制幅を小さくする財源として首相らが検討していた「たばこ税」の増税案も、自民党内の反発で見送られた。これらは、麻生首相の求心力が、内閣支持率の急落とともに、急速に落ちていることの証左だろう。

 麻生首相は12日夕の記者会見で、3年後の消費税率引き上げを重ねて主張したが、首相のどこに、そんな大仕事をやり遂げるだけの政治力があるのだろうか。

 政権を司る宰相にとって、政権基盤は極めて重要である。それがなければ政策遂行はおぼつかない。

 例えば、小泉純一郎首相が就任するまで、自民党では1955年の結党以来、派閥の会長が首相を務めてきた。例えば、鳩山、石橋、岸、池田、佐藤、田中、三木、福田、大平、鈴木、中曽根、竹下、宮沢、森。例外は宇野、海部、橋本(その後、橋本派を次いだが、首相就任時点では小渕派所属だった)だけだ。

 これは、自派と友好派閥で多数派を形成して政権基盤とし、政権運営をしてきたことを意味する。故に、弱小派閥出身の首相は政権運営に苦しむことになる。ロッキード事件の徹底解明を目指していた三木武夫首相は猛烈な「三木降ろし」にあって解散権を封じられ、任期満了選挙での敗北の責任をとって辞任した。

 三木派を引き継ぐ河本派に所属していた海部俊樹氏は、当時最大派閥だった竹下派の全面的な支援で1989年に就任し、1991年に小選挙区制を導入する政治改革法案の廃案を受けて衆院解散・総選挙に打って出ようとしたところ、竹下派の猛反対にあい、総裁選への不出馬という形で辞任させられた。

 こうした構図を大きく変えたのが小泉氏だった。小泉氏が郵政民営化などの構造改革を推進できたのも、圧倒的な国民の支持を政権基盤とし、自民党内の反対派を押し切ることができたためだ。

 ひるがえって、麻生首相の政権基盤は、ないに等しい。麻生氏は20人の弱小派閥を率いているだけだし、自民党内で求心力もない。首相就任前に取りざたされた国民的な人気も、ふたを開けてみたらあると言えるほどのものではなかった。

 こうした状況で政権を維持できているのは、無責任な政権投げ出しが安倍、福田と二代続いており、三人目となれば次期衆院選で自民党は国民の支持を得られないという選挙事情と、ポスト麻生候補が見当たらないという人材枯渇が理由だ。つまり、麻生政権は就任後、臨時国会での衆院解散を見送った時点ですでにレームダック(死に体)状態であり、麻生首相ははじめから思い通りには政策遂行できない状態なのである。麻生首相はそうした実態を理解しているのであろうか。「まんが宰相」には理解できまい。

 日本国民は、アメリカ発の金融危機の中、政策遂行能力のない政権を抱き、次期衆院選までの時間を無為に過ごさざるを得なくなっている。これは国民にとって不幸に極みだ。こうした状況を打開する唯一の方法は、衆院を解散し、新しい体制の下で、金融危機後の日本を作り上げることである。

 とはいえ、麻生首相には、もはや解散権すらないとみた方が妥当だ。先に述べた、三木首相や海部首相、非自民連立の羽田孜首相は解散権を行使できなかった。いずれも自らの政権基盤を持たない「弱い首相」だった故であり、麻生首相も同様だからである。

 その三木、海部、羽田三氏の時代よりも今が不幸なのは、自民党内でまともな政局判断ができる人材がいないことだろう。つまり日本という国家は、荒波の中、船長がいないまま彷徨い続けているのと同じ状況なのである。

 自民党を選んできたのは日本国民自身なのだが、2007年夏の参院選で民意が示したように、すでに国民は自民党を、政権を担当するに足る政党とは認めていない。

 自民党は2009年度予算を理由にすることなく、速やかに衆院を解散するよう良識を働かせてほしい。それが国会議員たるものの最後の務めだと思うのは、私だけであろうか。

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2008年12月11日 (木)

◆政治情勢レポート(3)Ver.2◆2008年12月11日

●内閣支持率急落、危険水域に

 麻生政権が「危険水域」に達している。前週末、報道各社が行った世論調査によると、麻生内閣の支持率は20%台前半にそろって落ち込んだ(朝日22%、毎日21%、読売20.9%、共同25.5%)。この前の週に産経新聞と日本経済新聞が行った世論調査では、30%前後だった(産経27.5%、日経31%)ことから、この一週間で約10ポイント落ち込んだことになる。

 9月の内閣発足直後は50%前後だった(朝日48%、毎日45%、読売49.5%、産経44.6%、日経53%)ので、約20%低下したことになる。30%前後という支持率は、福田内閣退陣直前の水準とほぼ同じであり、麻生内閣の支持率は放物線の軌跡のように下落し、支持率的にはいつ退陣してもおかしくない段階に達している。

●経済政策「無策」を露呈

 なぜそうなったのか。その原因の一つは、経済政策をめぐる無策ぶりを露呈したことだ。

 読売の調査によると、内閣を支持しない理由は「政策に期待できない」32%が最も多く、内閣が今の経済情勢に「的確に対応していない」と答えた人は83%、追加景気対策のための第2次補正予算案提出を年明けに先送りしたことを「妥当ではない」と答えた人も67%に上った。

 首相は10月30日、追加経済対策の発表に当たって、「道路特定財源の一般財源化に際しましては、1兆円を地方に移します」と表明し、首相はその後、1兆円は地方が自由に使えるお金、と記者団に強調した。

 これを素直に読めば、道路特定財源を一般財源化し、その中から地方自治体が自由に使途を決められるよう1兆円を「地方交付税」として交付する、と受け取れる。

 しかし、既得権益を死守しようとする自民党道路族の反発にあい、結局、地方向けの1兆円の交付金を創設し、その「8割ぐらいは道路に使わせていただく」(谷垣禎一元国土交通相)ことになった。小泉政権で種をまいた一般財源化は結局、道路予算の焼け太りという実をならせ、道路族が満面の笑みでそれを刈り取るという構図になった。

 麻生首相は「1兆円を地方に」とアイディアを示したに過ぎず、それを国会に予算と根拠法を提出して実現に移す政治力は欠いていたということだろう。自らのアイディアをひっくり返されても、それを巻き返す力もなかった。古賀誠という強面の重鎮を頭とする道路族を従わせる「統治能力」のかけらもなかった。

●資質欠く、KYな「まんが宰相」

 麻生太郎首相の「宰相としての資質」の問題も、内閣支持率を押し下げる要因になっている。

 麻生首相が資質を欠く例としてあげられるのが、国語力の欠如である。つまりKY(漢字が読めない)だ。

 麻生首相は「踏襲(とうしゅう)」を「ふしゅう」、「頻繁(ひんぱん)」を「はんざつ」、「未曾有(みぞう)」を「みぞうゆう」と読んだ。本人は読み間違いと釈明しているが、おそらく漢字の読み方を知らなかったのだろう。

 首相はこれまで、まんがなどサブカルチャーにも理解があると、いい意味で受け止められていたが、まんがの読み過ぎが裏目に出た形だ。 

●岡本全勝秘書官が火種

 さらに問題なのは、首相のこうした間違いを、事前に防ぐシステムが確立されていないことである。普通の秘書官チームなら、首相の漢字の読み間違い(麻生首相の場合は、国語力の欠如)を指摘したり、ホテルのバー通いが、いかに一般の国民の感覚から遊離しているかを、諫言したりして当然だろうが、そうしたことが行われている形跡はない。

 小泉政権では、飯島勲秘書官の下、各省から派遣された首相秘書官、参事官が結束し、5年以上にわたって「小泉チーム」として政権運営にあったったが、麻生官邸にはそうした首相への忠誠心や結束力が感じられない。

 その理由の一つは、各省から送られた秘書官が、麻生内閣は「選挙管理内閣」とみて、腰掛けのつもりでいるからだ。

 さらに、麻生首相が総務相時代の秘書官である岡本全勝(まさかつ)氏を首相秘書官に抜擢し、首相秘書官を異例の6人体制にしたことも、官邸チームの一体感をなくしている。これまで筆頭の事務秘書官として君臨していた財務省出身者はイニシアティブを発揮することができず、各省、特に財務省との連携がうまく取れていない。

●前代未聞の同意人事案取り下げ

 こうしたことの弊害が、公正取引委員会委員に上杉秋則・一橋大大学院教授(元公取委事務総長)を充てる同意人事案をめぐって出てきた。

 この人事案、いったん閣議で国会に提示することを決めたにもかかわらず、上杉氏が弁護士でないのに、匿名の著作で弁護士の肩書を使っていたことが野党の指摘で明らかになり、参議院本会議の直前になって、急きょ取り下げた。2007年夏の参院選での自民党惨敗による「ねじれ国会」で、政府が国会に提示した同意人事案が野党の反対で否決され、不同意となる例はあるが、政府側の不手際により本会議直前で取り下げるのは異例中の異例で、政府の大失態といってもいい。

 問題は、なぜそのようなことが把握できなかったのか、また野党から指摘があったにもかかわらず、当初そのまま国会に提示しようとしたことだ。政府がこの程度のことを把握できないはずがない。今回、このような事態に至ったのは、官邸内が緩みきっている証拠と言っていい。その原因が首相の統治能力のなさに起因していることは容易に想像できる。

 衆院解散・総選挙を早く行っていれば、選挙前にそうしたことも表面化しなかったのだろうが、ためらっているうちに地が出てしまったということだろう。内閣支持率の急落は、解散先延ばしの必然的帰結なのである。

●小沢氏の「超大連立構想」

 こうした状況に、 民主党の小沢一郎代表が、「超大連立」構想を提唱し始めた。麻生首相の早期退陣を視野に入れ、与野党各党に選挙管理内閣への参加を呼びかけるものだ。小沢氏は以前、福田首相にも大連立を呼びかけており、小沢氏の持論といってもいいだろう。

 ただ、与党側がこの構想に応じるとは考えられない。実際、河村建夫官房長官は12月2日の記者会見で「政府部内で話し合われたとか、考えているかということは一切ない」と否定した。さらに、他の野党の協力が得られるかどうかも不透明なので、小沢氏の狙いは、麻生政権の行き詰まりを印象づけ、早期の衆院・解散に追い込むことにあるのだろう。
民主党は大連立や政界再編の動きを警戒している。なぜなら、このまま麻生内閣の低迷が続けば、麻生内閣は自滅し、政権が転がり込んでいるからであり、わざわざ政界再編に巻き込まれることはないからだ。

 むしろ、民主党は、定額給付金を実施するための2008年度第二次補正予算案と関連法案が審議される通常国会に焦点を当てている。定額給付金は、11月の共同通信世論調査で「評価しない」人が6割に迫るなど、国民の評価は芳しくない。国民の反発を考慮すれば、衆院で「3分の2」の多数を使って再可決し、成立させることはできない。

 民主党のねらい目はまさにそこで、給付金を徹底攻撃することで、与党から造反議員が出ることを促す作戦だ。

 自民、公明両党の衆院議席は335議席。3分の2で再可決するには319議席が必要で、与党から17人が造反すれば、再可決できない。麻生首相が重要政策に掲げる給付金が実現できなければ、麻生首相は退陣するか、衆院を解散するかの選択を迫られる。

●自民内で「麻生離れ」加速

 こうした麻生政権の沈みゆく「泥船」状況に、倒閣運動の動きが活発になってきた。その震源地の一人が渡辺喜美元行革担当相である。

 7日朝にはフジテレビの新報道2001で、失言などで麻生太郎首相の求心力が低下していることに関連し、「選択肢としてはいろいろあり得る。倒閣運動をやるときは腹をくくる」と、退陣を求めていく可能性に言及した。

 これに先立ち、渡辺氏と、自民党の塩崎恭久・元官房長官、茂木敏充・前行政改革相ら中堅・若手議員24人は11月21日、河村建夫官房長官に対し、2008年度第2次補正予算案を今の臨時国会に提出するよう申し入れた。

 麻生首相は2次補正の提出を来年の通常国会に先送りする方針を明言しており、塩崎氏らの行動は明らかに麻生首相に反旗を翻したことになる。

 塩崎氏らの行動に対し、自民党内では単に総選挙を意識した国民向けのパフォーマンスとの見方もあるが、24人には、先の総裁選で経済政策などをめぐって首相と最も対立した小池百合子元防衛相の推薦人が渡辺氏ら3人、石原伸晃幹事長代理の推薦人も塩崎氏ら3人含まれており、小泉改革を推進してきた「改革派」が中心となっているところが意味深だ。

 さらにこの動きは、内閣支持率の急落後の今月9日には、参加者が48人と倍増するなど、「麻生離れ」加速の象徴とされている。

 自民党内にポスト麻生候補が見当たらないことから考えると、彼らの行動が即、倒閣運動にはつながらないだろうが、麻生内閣から体力を失わせるには十分だ。

 さらに、麻生首相がこの先、余りにも失態を繰り返すようだと、野党提出の内閣不信任決議案に、自民党から同調者が出て可決され、首相退陣に追い込まれるか、衆院解散から政界再編にまで一気に進むことがないとも限らない。

 その前に、麻生首相自身が退陣を決意しなければならない状況にならない保証はない。

 麻生首相の役割は、9月の自民党総裁選後、一気に衆院解散・総選挙になだれ込み、その勢いで与党に過半数をもたらすことであった。麻生首相はこれまで失言癖が指摘されてきたが、総理・総裁としての資質よりも、国民的な支持があるということが、総裁選出の最大の理由とされた。

 金融危機で解散が先延ばしされ、総理・総裁としての資質が問題されるようになったのも、当然の成り行きなのである。

●背景に中川秀直氏?

 問題は、こうした動きの背景で、自民党の中川秀直氏が暗躍しているのではないかとの見方があることだ。

 中川氏は、小泉政権後も改革継続を訴える「改革派」「上げ潮派」。麻生首相が郵政民営化の見直しを示唆した際には、激しく批判した。

 中川氏は、9月の総裁選で支持した小池氏らとともに社会保障に関する議員連盟を結成する方向だ。渡辺、塩崎両氏もメンバーに加わる方向なので、この議員連盟が反麻生派の拠点となる可能性はある。

 一方、小泉純一郎元首相は今月9日に発足した、自民党の議員連盟「郵政民営化を堅持し推進する集い」に顔を出し、 「あの3年前の(郵政)選挙がどういう選挙であったか思い起こしていただきたい。何やら不可解な行動をしている方々の多くは、元々郵政民営化に反対。しかし、誓約書まで書いて、間違いだったと(認めて)復党した」 と語気を強めた。

 小泉氏は首相退陣表明後、表舞台に出ることを避けていたが、麻生内閣で郵政民営化反対組が次々と政権中枢に入り、民営化見直しの機運が出てきたことへの危機感から、表舞台に復活した形だ。

 小泉氏の人気は依然高い。次期衆院選では次男の進次郎氏に地盤を譲ることを表明しているが、郵政民営化をめぐる麻生首相の出方次第では、小泉氏が反麻生派結集の軸になる可能性は捨てきれない。

●衆院選は都議選前?

 麻生首相の手で解散をすると仮定すると、解散のタイミングには次の4つがある。(1)1月召集の通常国会冒頭(2)2009年度予算と関連法成立後の4~5月(3)通常国会会期末の6月(4)任期満了の9月10日だ。

 麻生首相は11月14日、金融サミット出席のため訪れたワシントン市内のホテルで、同行記者団と懇談し、衆院解散・総選挙の時期について「1994年の予算の成立は6月。景気を決定的に悪くした。景気対策を考えたら、予算は年度内に(成立させ)きちんとスタートさせるのが大事」と述べた。

 これは、衆院解散は2009年度予算と関連法成立後に行う意向を示唆したものと受け取られている。予算関連法の成立に民主党が協力すれば解散は4月、協力しなければ5月になるだろう。

 麻生首相が景気のことを考え、予算こそ内閣最大の仕事だと考えるならば、予算および予算成立後の解散が現実的な対応だろう。

 通常国会会期末の解散は、自民党と連立を組み、自民党が選挙での組織的な支援を期待する公明党が重視する東京都議選(7月22日任期満了)の日程と重なるか近くなるため、公明党の理解を得られるかどうかが問題となる。公明党はこれまで、都議選と衆院選の間を最低3カ月間あけるように主張してきた。二つの選挙が近いと、支持者が十分活動できないとの理由からだ。

 麻生首相は例年1月20前後に召集している通常国会を、1月上旬にも召集し、2008年度第2次補正予算案を提出する意向を表明している。通常国会の延長がないと仮定すると、会期末は6月上旬。会期末に解散すれば、総選挙は6月下旬から7月上旬となる。

 一方、都議会の任期満了は09年7月22日。公選法上、都議選の投票日は6月28日か、7月なら5日、12日、19日のいずれか。通常国会会期末の解散なら、都議選とはダブル選挙か、それに近い形になるが、それを公明党が受け入れるかどうか。

 ダブル選挙を避けた場合、公明党に配慮したと言われ、票を減らすと麻生首相が判断すれば、あえてダブル選挙に持ち込むかもしれない。

 解散・総選挙に日程設定には、来年7月8日から10日までイタリアのマッダレーナ島で開かれるG8サミット(主要国首脳会議)も考慮する必要がある。

●任期満了後の奇策も?

 来年9月の任期満了、もしくはそれに近い総選挙はどうか。任期満了に近づけば近づくほど、麻生首相の求心力はなくなり、解散権を行使できなければ、それこそ命取りになる。三木武夫首相が解散権を行使できず、新憲法下で唯一の任期満了選挙に追い込まれ、政権の座から引きずり下ろされたことを考えれば、麻生首相が任期満了選挙を避けたいという気持ちも理解できる。

 予算および予算関連法成立後の解散で、公明党が要求する「3カ月条項」を満たすには、総選挙を9月10日の任期満了後に総選挙を行わなければならない。

 前述の小泉純一郎元首相の政務秘書官、飯島勲・駒澤女子大学人文学部客員教授は「最終的には10月末まで投票日を延ばす選択肢の幅がありうる」と指摘している。

 それによると、公職選挙法31条1項「衆院議員の任期満了に関る総選挙は、議員の任期が終る日の前30日以内に行う」に従えば、9月10日の任期満了より前の投票となる。投票日を日曜日に限定すると、「前30日以内」で可能性があるのは8月の16日、23日、30日か、最も遅くて9月6日だ。

 同時に、同条2項は「総選挙を行うべき期間が国会開会中又は国会閉会の日から23日以内にかかる場合においては、その総選挙は、国会閉会の日から24日以後30日以内に行う」としている。仮に任期満了の09年9月10日まで国会を開いている場合、この条項に該当する。10日閉会なら30日後は10月10日の土曜日。日曜日投票に限ると、閉会から24日後の「10月4日投票」が可能ではある。

 さらに同条3項は「衆院の解散に因る衆院議員の総選挙は、解散の日から40日以内に行う」と定めている。国会を開いたまま9月10日に解散し、この条項が適用できれば、40日後は10月20日の火曜日。日曜日投票に限ると、最も遅くて「10月18日投票」という設定も可能になるというわけだ。

 ただ、ここまで公明党の「3カ月条項」に配慮した場合、創価学会の支援は得られても、国民の支持を失う可能性があり、かなりの奇策であることには間違いない。

●総裁選前倒し論が浮上

 ただ、こうした総選挙の日程設定は、麻生首相が続投し、麻生首相自身が解散権を行使することが前提の話だ。しかし、「麻生首相では選挙を戦えない」との意見が、この先強まれば、選挙前に退陣する可能性が出てくる。

 麻生首相の総裁としての任期は来年9月。もし麻生首相が任期前に退陣することになれば、自民党総裁選の前倒し実施という形で、総裁・首相の交代が図られる。

 通常、新しい首相が登場した直後には「ご祝儀」もあり、与党への追い風が期待できる。このため、麻生首相は退陣を決意するなら、その時期を慎重に見極めるだろう。

 想定できるのは、野党の反対で成立が遅れる可能性がある2009年度予算関連法案の早期成立と引き替えに、首相が退陣するというシナリオだ。自民党は直ちに新しい総裁を選出し、間をおかずに衆院解散・総選挙になだれ込むだろう。

 ひょっとしたら、それが自民党にとって、政権を維持する唯一の方法になるのかもしれない。

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2008年12月10日 (水)

米大統領選講義ノート(4)その2「日米同盟の再構築―日米安全保障戦略と米軍再編―」ケント・カルダーSAIS教授

 ダレスは1951年、サンフランシスコ講和条約の立役者で、当時、日本にとって米国は相手にすべき唯一の国だったが、いまはそういう時代ではない。2006年、日中の貿易は日米を超した。投資は日米間は活発ではない。中国は経済的にはGNPは2%にしか過ぎず、まだまだだ。技術的にも日米は強い関係だが、関係は変わりつつある。ダレスの時代ではない。

 日米とも国内の変化がある。米国の変化は中国系が400万人で、日系は80万人。アジア系、日系は12年前まで割合は大きかったが、いまは中国系が大きくなった。特にカリフォルニアでは、政治的に大きい。

 貿易でみると、日米にいい方に変わってきた。労組の組織率は15%くらい。90年には25%で、組合の力が減速している。90年代の状況は貿易戦争だった。組合が強く、貿易も不均衡だった。ジャパンパッシング、アメリカパッシングは、いいか悪いかは別にして、分かるところはある。

 米国人は、もっと日米関係のあらゆる側面を理解すべきだ。構造的変化は承知している。課題設定で競争が多くなっている。

 日本は「見せる意味」が重要になっている。北朝鮮の拉致問題をみると、いま述べたプロセスがどう機能するのかが分かる。北の問題が政策メディアの中でどう扱われるべきかが不可欠になっている。

 もう一つ、安保そのものについて話したい。戦略の環境が変わっている。テロはワールドトレードセンターだけでなく、インドでもバリでもあったし、新幹線が攻撃対象になる可能性もある。日本ではサリンの事件もあり、何が起きるか分からない。10年前より問題は深刻になっている。

 ミサイル防衛の問題では、北朝鮮、中国の能力は上がっている。1996年、ミサイルが与那国の近くまで飛んできた。日米が協力する必要がある。キャンプ座間は対応する重要なポイントだ。沖縄から海兵隊を移転し、グアムで対応しようとしている。運用面も見直されている。オバマ政権になってもいままでの努力は継続される。ゲーツ、ジョーンズ。ダウンサイジングも発表されると思うが、米国の安保は超党派の取り組みになる。

(結論)

 日米関係、何ができるのか。変革、テロ、ミサイル、シーレーン、重要問題がある。一方、政治的には不安定の様相だ。国内政治、日米とも変化がある。待っているだけではいけない。マンスフィールドが言うように、先取りして対応していかねばならない。

 広報活動、人的要望に答えること、エネルギー供給、エネルギーはほとんど中東から。シーレーン守らねば。日米の外交官だけでなく、NGOが大事。二国間の理解を進めるため、何ができるか、日米協会は米国で弱くなっている。日本はNYをみているのではないか。ワシントンで強化する必要がある。

 ブッシュは小泉をグレースランドに招待した。中曽根はレーガンを日の出山荘に招いた。象徴的な行動が重要になる。共同プロジェクトができる可能性がある。DC、NYを結ぶ高速鉄道。ジャパンパッシングへの対応、ジャパンパッシングへの対応で、新幹線の技術を米国に供与することあり得る。

(まとめ)

 日米関係は超党派で維持されてきた。ダラスは共和党だが、民主党のトルーマンに仕えた。私もライシャワー、フォーリー両方に伝えた。オバマはグローバルな視野を持った人。東南アジアに5年住んでいた。ハワイにも。グローバルな問題を理解する能力を持っている。私は楽しみにしている。オバマの回顧録にあったように、とても小さかったころ、鎌倉を訪れた。インドネシアに行く途中、帰る途中。様々な形でコンタクトをとることできる。日米関係でもそういう姿勢をみることができる。

(To be continued)

(2008年12月1日、東京アメリカンセンターにて)

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2008年12月 9日 (火)

米大統領選講義ノート(4)その1「日米同盟の再構築―日米安全保障戦略と米軍再編―」ケント・カルダーSAIS教授

 より広いグローバルなコンテキストから日米関係を見たい。最近、本を二冊出版した(「米軍再編の政治学」「日米同盟の静かなる危機」)。根本的には、問題提起する本だ。日米が直面する課題について提案している。他の3つの国、米英、米独、米中と比較して議論している。日米同盟を改善するヒントが得られる。日本政治を米英などと比較して、違った角度から見る。独特の歴史がある。敵だった国が同盟を結ぶ。私は三人の駐日大使に仕えた。個人的に日米関係を重視している。関係を改善するには、比較が重要だ。

 第一に、米軍受け入れ国の政治学。日本の基地マネージメントは比較的成功している。独立国家に外国の基地が置かれるのは、歴史的に特異で、珍しいことだ。1930年代にタイに日本軍が基地を置いたことはあるが、それは特別なことだ。日米はかなり敵対していたが、それが同盟関係になり、比較的安定しているのは珍しい。

 フィリピンから米軍は撤退した。韓国はいくつかの問題があった。最も成功しているのはドイツとイタリアと日本。これは歴史的要素がある。帝国主義のあとに解放者として入ってきた国の基地が残っている。フィリピンも50年間残った。帝国主義だと基地は撤退する。解放的占領だと違う。1943年に新しいイタリア政府ができ、米国との関係が始まる。最も安定した友好関係の一つ。解放的占領だった。自由をその国で推進しようとした。韓国の場合は少し曖昧。

 日本の基地が安定した要素は、防衛施設庁の要素がある。問題があると、早急に対応できる珍しい組織だ。イタリアは地元の市長と近い関係を築くが、国レベルとの連携は密に取れない。韓国にはピョンテク(平沢)があるが問題解決には時間がかかる。地元の代表機関がない。日本には日米防衛委員会があり、タマネギのスライスだという人がいるが、NATOよりもずっとうまく機能している。

 もう一つ大事なのは、財務関係、財政的側面。問題があったときに支援する。土地の地権者に財政的支援、賃貸料が高くなっている。沖縄は安定しすぎている。動かせないまでになっている。お金がかなり落ちている。なかなか基地を動かせない。基地へのお金が増えている。基地が安定する要素になっている。利害関係が安定している。世界的に異例だ。戦略的に、日本にも同盟国にもよいことだ。シーレーンに近く、中国に近い。戦略的要衝で安定していることはいいことだ。日本の基地相対的に安定していた。日米安保がいまでもこういう形で進むことが望ましい。

 米国外で空母の母校化は横須賀だけ。受け入れ側で大きな政治的変化があると、スペイン、ギリシャ、韓国、フィリピンでも会ったが、双方の国は基本的構造を維持しようとする。交渉の期間はある程度続く。いずれにしても、過渡期には政治的変化がある。広報も重要。米駐留軍を知ることも重要だ。同盟を極端な方向に持っていかないこと、双方が合意できる範囲でとどまることが重要だ。

 受け入れ側に、基地の存在についてのコンセンサスがなければいけない。地元の安保感でなければいけない。安保とは何か、なぜ米国でなければいけないか、共通の理解が存在しているべきだ。そうしなければ安定性が保てない。同盟がどう動いてきたか、幅広く認識しなければならない。

 中国が保護主義になると言われるが、日米同盟がどうなりそうか、安定していると思うが、アーミテージの時代ではない。

 今日の日米同盟における課題は、構造的なものがある。今日の日米の課題は、構造が変わっている。これは克服可能だ。努力、真剣な理解、新機軸が必要だ。克服可能だが、深刻な大きな構造的な問題を、認識されていないことが問題だ。

(To be continued)

(2008年12月1日、東京アメリカンセンターにて)

…………………………………………………………………………………………………

ケント・E・カルダー博士【ジョンズ・ホプキンス大学高等国際研究大学院(SAIS)エドウィン・O・ライシャワー東アジア研究センター所長・教授】

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2008年12月 8日 (月)

必然的帰結の支持率急落

 麻生内閣の支持率が前週に続いて急落し、20%台前半に落ち込んだ。読売新聞社が5日から7日まで電話方式で実施した全国世論調査で、内閣支持率が20.9%となり、11月初めの前回調査40.5%から、ほぼ半減する一方、不支持率が66.7%と約25ポイント跳ね上がったのだ。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20081207-OYT1T00561.htm

 また、毎日新聞が6、7両日に行った電話による全国世論調査でも、支持率は21%と、10月の前回調査から15ポイント下落した。

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20081208k0000m010073000c.html

 産経新聞と日本経済新聞がその前の週に行った全国世論調査では、内閣支持率はそれぞれ27.5%、31%とおおむね30%前後だったので、この一週間の間に10ポイントも急落したことになる。麻生内閣の支持率下落はまるで、放物線の軌跡のようだ。

 福田首相の退陣表明直前の報道各社による内閣支持率はおおむね30%前後なので、20%前半という支持率は、首相退陣の危険水域とされる30%をも割り込んだことになる。

 なぜそうなったのか。その一番の原因が、経済政策をめぐる無策ぶりを露呈したためだろう。

 読売の調査によると、内閣を支持しない理由は「政策に期待できない」32%が最も多く、内閣が今の経済情勢に「的確に対応していない」と答えた人は83%、追加景気対策のための第2次補正予算案提出を年明けに先送りしたことを「妥当ではない」と答えた人も67%に上った。

 首相は10月30日、追加経済対策の発表に当たって、「道路特定財源の一般財源化に際しましては、1兆円を地方に移します」と表明し、首相はその後、1兆円は地方が自由に使えるお金、と記者団に強調した。

 これを素直に読めば、道路特定財源を一般財源化し、その中から地方自治体が自由に使途を決められるよう1兆円を「地方交付税」として交付する、と受け取れる。

 しかし、既得権益を死守しようとする自民党道路族の反発にあい、結局、地方向けの1兆円の交付金を創設し、その「8割ぐらいは道路に使わせていただく」(谷垣禎一元国土交通相)ことになった。小泉政権で種をまいた一般財源化は結局、道路予算の焼け太りという実をならせ、道路族が満面の笑みでそれを刈り取るという構図になった。

 麻生首相は「1兆円を地方に」とアイディアを示したに過ぎず、それを国会に予算と根拠法を提出して実現に移す政治力は欠いていたということだろう。自らのアイディアをひっくり返されても、それを巻き返す力もなかった。古賀誠という強面の重鎮を頭とする道路族を従わせる「統治能力」のかけらもなかった。

 衆院解散・総選挙を早く行っていれば、選挙前にそうしたことも表面化しなかったのだろうが、ためらっているうちに地が出てしまったということだろう。内閣支持率の急落は、解散先延ばしの必然的帰結なのである。

 付言すれば、谷垣氏は20世紀末、次代を担う政治家と期待されたが、結局、利権重視の普通の自民党の政治家に成り下がったようである。

 こうした麻生政権の沈みゆく泥船状況に、やっぱりというべきか、倒閣運動の動きが活発になってきた。その震源地が渡辺喜美元行革担当相である。

 7日朝にはフジテレビの新報道2001で、失言などで麻生太郎首相の求心力が低下していることに関連し、「選択肢としてはいろいろあり得る。倒閣運動をやるときは腹をくくる」と、退陣を求めていく可能性に言及した。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/081207/stt0812071742000-n1.htm

 渡辺氏が今後、実際にどのような動きをするのかは分からないが、麻生政権の低迷が続くようだと、1993年の細川政権発足前後のように、自民党に見切りを付ける動きが出てくるだろう。

 こうした状態に、「麻生じゃ通常国会はもたない」と漏らしている民主党の小沢一郎代表はほくそ笑んでいるに違いない。政権担当能力がない麻生首相が、いくら解散を先延ばししても深みにはまるだけ。いずれ選挙があれば、民主党が勝ち、自らが執念を傾けてきた選挙による政権交代が実現する。そのシナリオは今のところ順調に進行し、クライマックスは間近だ--と。

 確かに、読売の調査によると、次期衆院選後に自民党中心の政権を望む人は12%に過ぎず、政権党としての自民党はすでに賞味期限は過ぎ、国民に飽きられている。次の衆院選は自民か民主かの政権選択を迫る選挙になるのは確実だ。

 しかし、それは同時に、浮かんでは消えてきた「小沢一郎首相」就任の是非を問う選挙にもなる。日本政治はこの15年間、良きにつけ悪しきにつけ、「小沢か非小沢か」を軸に進んできた。その構図がいまもなお、変わっていないことは、日本政治の貧困というべきだろう。

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2008年12月 4日 (木)

古い自民党の復活か

 政府が12月3日、来年度予算編成の基本方針を閣議決定した。

http://www.asahi.com/politics/update/1203/TKY200812030301.html

 社会保障費の伸びを2200億円抑制することや公共事業費の3%削減などを定めた概算要求基準(シーリング)は「維持」するとしたものの、これまでの「堅持」からはトーンダウンしている上が、その枠外で財政出動を容認する方針も盛り込んでいる。

 麻生太郎首相自身、景気対策と財政再建は「両立しないわけでもなんでもありません」と述べている。

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/081203/plc0812032127013-n1.htm

 しかし、今回の予算編成方針により、小泉純一郎元首相が進めた財政再建路線を事実上、棚上げするものと受け止められている。

 麻生首相はもともと経済政策を重視しており、国際的な金融危機を受けて、各国が財政出動により有効需要を創出することで景気を下支えしようとしており、麻生首相が財政出動を増やす政策をとっても不思議はない。問題はその内容である。

 麻生首相は道路特定財源の一般財源化という福田康夫前首相が打ち出した政策を引き継ぐ考えを表明している。これは、小泉元首相ですら切り込めなかった道路族議員と官僚にとっての「聖域」だ。麻生首相が一般財源化を成し遂げられるかが、この政権の力量を見極める試金石といってもいいかもしれない。

 私自身、麻生首相は宰相の器でないと再三強調し、早期に衆院解散・総選挙を行うよう、当ブログでも求めてきたが、麻生首相がもし一般財源化を成し遂げたら、その評価が変わるかもしれない。

 麻生首相の一般財源化に伴う景気対策として、使途を限定しない地方交付税として1兆円を自治体に配分する方針を表明していた。しかし、道路整備の遅れを懸念する自民党の道路族議員らが麻生首相支持の見直しにまで言及して激しく反発し、結局、1兆円は道路整備など公共事業に充てられる新たな交付金「地域活力基盤創造交付金(仮称)」に化けてしまった。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20081202-OYT1T00619.htm

 問題の第1は、公共事業によって本当に経済が活性化し、景気浮揚するのかという点だ。確かに1990年代まで公共事業は有効需要創出効果、いわゆる乗数効果が高く、景気の活性化には有効だったことは確かであるが、最近ではその乗数効果は低く、公共事業は景気浮揚にはつながらないという見方が、政界と関係業界以外では支配的だ。こうした状況で公共事業を増やせば、関係業界の一部と、その業界の支援を受ける自民党議員だけが潤うことになりかねない。

 問題の第2は、やはり支持基盤の弱い首相の下では、有効な政策は取れないということである。麻生首相は党内にも党外にも強い支持基盤を持たない。麻生首相は国民に人気があるということで、選挙の顔として総理・総裁に選ばれたが、ふたを開けてみれば口ほどでなく、福田前首相以下ということが世論調査で明らかにされてしまった。総選挙をすれ負けてしまうような総裁に、党内の支持が集まるわけもない。つまりどこにも支持基盤がない。党内に支持基盤のなかった小泉元首相が圧倒的な国民の支持を背景に改革を推進したことを想起すれば、支持基盤の重要性は推して知るべしであろう。

 つまり無力、無能な総理・総裁が自身の目指す政策を推進しようとも、それが実現できることはなく、時間と貴重な財源を浪費するに過ぎないのだ。

 道路族議員の跋扈は、古い自民党の復活を思い起こさせる。もちろん、麻生首相にはそれを食い止める手だてもなく、その気概さえも見えない。

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2008年12月 2日 (火)

◆政治情勢レポート(3)◆2008年12月2日

●危険水域のKY政権

麻生政権は危険水域に達していると言っていい。前週末、報道各社が行った世論調査によると、麻生内閣の支持率は30%前後に低迷している(産経27.5%、日経31%)。9月の内閣発足直後は50%前後だった(産経44.6%、日経53%)ので、約20%低下したことになる。これは福田内閣退陣直前の8月の支持率とほぼ同じであり、麻生内閣は支持率的にはいつ退陣してもおかしくない段階に達しつつある。

では、なぜ麻生内閣の支持率がこれほど短期間に、ここまで落ち込んだのか。その最大の理由が、麻生太郎首相の資質の問題だ。

麻生首相の役割は、9月の自民党総裁選後、一気に衆院解散・総選挙になだれ込み、その勢いで与党に過半数をもたらすことであった。麻生首相はこれまで失言癖が指摘されてきたが、総理・総裁としての資質よりも、国民的な支持があるということが、総裁選出の最大の理由とされた。

金融危機で解散が先延ばしされ、総理・総裁としての資質が問題されるようになったのも、必然的な成り行きなのである。

麻生首相が資質を欠く例としてあげられるのが、国語力の欠如である。つまりKY(漢字が読めない)だ。

麻生首相は「踏襲(とうしゅう)」を「ふしゅう」、「頻繁(ひんぱん)」を「はんざつ」、「未曾有(みぞう)」を「みぞうゆう」と読んだ。本人は読み間違いと釈明しているが、おそらく漢字の読み方を知らなかったのだろう。

首相はこれまで、まんがなどサブカルチャーにも理解があると、いい意味で受け止められていたが、まんがの読み過ぎが裏目に出た形だ。 

さらに問題なのは、首相のこうした間違いを、事前に防ぐシステムが確立されていないことである。普通の秘書官チームなら、首相の漢字の読み間違い(麻生首相の場合は、国語力の欠如)を指摘したり、ホテルのバー通いが、いかに一般の国民の感覚から遊離しているかを、諫言して当然だろうが、そうしたことが行われている形跡はない。

小泉政権では、飯島勲秘書官の下、各省から派遣された首相秘書官、参事官が結束し、5年以上にわたって「小泉チーム」として政権運営にあったったが、麻生官邸にはそうした首相への忠誠心や結束力が感じられない。

その理由の一つは、各省から送られた秘書官が、麻生内閣は「選挙管理内閣」とみて、腰掛けのつもりでいるからだ。

さらに、麻生首相が総務相時代の秘書官である岡本全勝(まさかつ)氏を首相秘書官に抜擢し、首相秘書官を異例の6人体制にしたことも、官邸チームの一体感をなくしている。これまで筆頭の事務秘書官として君臨していた財務省出身者はイニシアティブを発揮することができず、各省、特に財務省との連携がうまく取れていない。

こうしたことの弊害が、公正取引委員会委員に上杉秋則・一橋大大学院教授(元公取委事務総長)を充てる同意人事案をめぐって出てきた。

この人事案、いったん閣議で国会に提示することを決めたにもかかわらず、上杉氏が弁護士でないのに、匿名の著作で弁護士の肩書を使っていたことが野党の指摘で明らかになり、参議院本会議の直前になって、急きょ取り下げた。2007年夏の参院選での自民党惨敗による「ねじれ国会」で、政府が国会に提示した同意人事案が野党の反対で否決され、不同意となる例はあるが、政府側の不手際により本会議直前で取り下げるのは異例中の異例で、政府の大失態といってもいい。

 問題は、なぜそのようなことが把握できなかったのか、また野党から指摘があったにもかかわらず、当初そのまま国会に提示しようとしたことだ。政府がこの程度のことを把握できないはずがない。今回、このような事態に至ったのは、官邸内が緩みきっている証拠と言っていい。その原因が首相の統治能力のなさに起因していることは容易に想像できる。

●小沢氏の「超大連立構想」

 こうした状況に、 民主党の小沢一郎代表が、「超大連立」構想を提唱し始めた。麻生首相の早期退陣を視野に入れ、与野党各党に選挙管理内閣への参加を呼びかけるものだ。小沢氏は以前、福田首相にも大連立を呼びかけており、小沢氏の持論といってもいいだろう。

 ただ、与党側がこの構想に応じるとは考えられない。実際、河村建夫官房長官は122日の記者会見で「政府部内で話し合われたとか、考えているかということは一切ない」と否定した。さらに、他の野党の協力が得られるかどうかも不透明なので、小沢氏の狙いは、麻生政権の行き詰まりを印象づけ、早期の衆院・解散に追い込むことにあるだろう。

●自民内に「反麻生」の動き

 とはいえ、与党側も麻生政権の低迷ぶりに、一枚岩とは言えない状況だ。

 自民党の塩崎恭久・元官房長官、茂木敏充・前行政改革相、渡辺喜美・元行革相ら中堅・若手議員24人は1121日、河村建夫官房長官に対し、2008年度第2次補正予算案を今の臨時国会に提出するよう申し入れた。

 麻生首相は2次補正の提出を来年の通常国会に先送りする方針を明言しており、塩崎氏らの行動は明らかに麻生首相に反旗を翻したことになる。

 塩崎氏らの行動に対し、自民党内では単に総選挙を意識した国民向けのパフォーマンスとの見方もあるが、24人には、先の総裁選で経済政策などをめぐって首相と最も対立した小池百合子元防衛相の推薦人が渡辺氏ら3人、石原伸晃幹事長代理の推薦人も塩崎氏ら3人含まれており、小泉改革を推進してきた「改革派」が中心となっているところが意味深だ。

 自民党内にポスト麻生候補が見当たらないことから考えると、彼らの行動が即、倒閣運動にはつながらないだろうが、麻生内閣から体力を失わせるには十分だ。

 さらに、麻生首相がこの先、余りにも失態を繰り返すようだと、野党提出の内閣不信任決議案に、自民党から同調者が出て可決され、首相退陣に追い込まれるか、衆院解散から政界再編にまで一気に進むことがないとも限らない。

●背景に中川秀直氏?

 問題は、こうした動きの背景で、自民党の中川秀直氏が暗躍しているのではないかとの見方があることだ。

 中川氏は、小泉政権後も改革継続を訴える「改革派」「上げ潮派」。麻生首相が郵政民営化の見直しを示唆した際には、激しく批判した。

 中川氏は、9月の総裁選で支持した小池氏らとともに社会保障に関する議員連盟を結成する方向だ。渡辺、塩崎両氏もメンバーに加わる方向なので、この議員連盟が反麻生派の拠点となる可能性はある。

●衆院選は都議選前?

 麻生首相の手で解散をすると仮定すると、解散のタイミングには次の4つがある。(1)1月召集の通常国会冒頭(2)2009年度予算と関連法成立後の4~5月(3)通常国会会期末の6月(4)任期満了の9月10日だ。

 麻生首相は1114日、金融サミット出席のため訪れたワシントン市内のホテルで、同行記者団と懇談し、衆院解散・総選挙の時期について「1994年の予算の成立は6月。景気を決定的に悪くした。景気対策を考えたら、予算は年度内に(成立させ)きちんとスタートさせるのが大事」と述べた。

 これは、衆院解散は2009年度予算と関連法成立後に行う意向を示唆したものと受け取られている。予算関連法の成立に民主党が協力すれば解散は4月、協力しなければ5月になるだろう。

 麻生首相が景気のことを考え、予算こそ内閣最大の仕事だと考えるならば、予算および予算成立後の解散が現実的な対応だろう。

 通常国会会期末の解散は、自民党と連立を組み、自民党が選挙での組織的な支援を期待する公明党が重視する東京都議選(7月22日任期満了)の日程と重なるか近くなるため、公明党の理解を得られるかどうかが問題となる。公明党はこれまで、都議選と衆院選の間を最低3カ月間あけるように主張してきた。二つの選挙が近いと、支持者が十分活動できないとの理由からだ。

 麻生首相は例年120前後に召集している通常国会を、1月上旬にも召集し、2008年度第2次補正予算案を提出する意向を表明している。通常国会の延長がないと仮定すると、会期末は6月上旬。会期末に解散すれば、総選挙は6月下旬から7月上旬となる。

 一方、都議会の任期満了は09722日。公選法上、都議選の投票日は628日か、7月なら5日、12日、19日のいずれか。通常国会会期末の解散なら、都議選とはダブル選挙か、それに近い形になるが、それを公明党が受け入れるかどうか。

ダブル選挙を避けた場合、公明党に配慮したと言われ、票を減らすと麻生首相が判断すれば、あえてダブル選挙に持ち込むかもしれない。

解散・総選挙に日程設定には、来年7月8日から10日までイタリアのマッダレーナ島で開かれるG8サミット(主要国首脳会議)も考慮する必要がある。

 来年9月の任期満了、もしくはそれに近い総選挙はどうか。任期満了に近づけば近づくほど、麻生首相の求心力はなくなり、解散権を行使できなければ、それこそ命取りになる。三木武夫首相が解散権を行使できず、新憲法下で唯一の任期満了選挙に追い込まれ、政権の座から引きずり下ろされたことを考えれば、麻生首相が任期満了選挙を避けたいという気持ちも理解できる。

 予算および予算関連法成立後の解散で、公明党が要求する「3カ月条項」を満たすには、総選挙を9月10日の任期満了後に総選挙を行わなければならない。

前述の小泉純一郎元首相の政務秘書官、飯島勲・駒澤女子大学人文学部客員教授は「最終的には10月末まで投票日を延ばす選択肢の幅がありうる」と指摘している。

それによると、公職選挙法311項「衆院議員の任期満了に関る総選挙は、議員の任期が終る日の前30日以内に行う」に従えば、910日の任期満了より前の投票となる。投票日を日曜日に限定すると、「前30日以内」で可能性があるのは8月の16日、23日、30日か、最も遅くて96日だ。

同時に、同条2項は「総選挙を行うべき期間が国会開会中又は国会閉会の日から23日以内にかかる場合においては、その総選挙は、国会閉会の日から24日以後30日以内に行う」としている。仮に任期満了の09910日まで国会を開いている場合、この条項に該当する。10日閉会なら30日後は1010日の土曜日。日曜日投票に限ると、閉会から24日後の「104日投票」が可能ではある。

さらに同条3項は「衆院の解散に因る衆院議員の総選挙は、解散の日から40日以内に行う」と定めている。国会を開いたまま910日に解散し、この条項が適用できれば、40日後は1020日の火曜日。日曜日投票に限ると、最も遅くて「1018日投票」という設定も可能になるというわけだ。

ただ、ここまで公明党の「3カ月条項」に配慮した場合、創価学会の支援は得られても、国民の支持を失う可能性があり、かなりの奇策であることには間違いない。

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2008年12月 1日 (月)

これでは「田母神疑獄」ではないのか

 やっぱりというべきなのか。田母神俊雄・前航空幕僚長の論文問題で、選考過程をめぐる不透明さが報道され始めた。

http://www.asahi.com/national/update/1201/OSK200811300062.html

 この問題に関しては、以前の本ブログ「政治的領域を侵した田母神論文」で、田母神氏と懸賞を主催したアパグループの元谷外志雄代表との親密な関係を指摘し、「最初から田母神空幕長に賞金を与えるために、懸賞という形を取った『賄賂』だった可能性がぬぐいきれない」と書き記した。

http://yoichitoyoda.cocolog-nifty.com/seiji/2008/11/post-b068-1.html

 前述の朝日新聞による報道が正しかったと仮定すると、選考の過程で何があったのかを詳しく調べ、真実を明らかにしなければならない。

 朝日の報道の通りであれば、現職公務員への多額の贈与、請託受託の関係にあれば賄賂となり、論文の内容にかかわらず、贈収賄事件の疑いが濃厚になるからだ。当事者にしてみれば、選考の透明性を巧妙に仕掛けたつもりかもしれないが、端から見れば、「バレバレ」なのだ。透明さを装うために、引っ張り出された高名な学者や「ジャーナリスト」にはご同情を申し上げる。もし、やましいことがないならば、今すぐにでも外部機関による検証を受け入れ、潔白を証明すればいい。

 論文の内容自体は稚拙なもので、とても将たるものの文とは思えないが、仮にその主張に正当性があったとしても、このような形で論文に高い評価が与えられるのは本意ではなかっただろう。

 この選考過程自体が「謀略」だったのかもしれないが、完全な失敗に終わった。ただ、自衛隊の作戦がこの程度だとは思いたくないので、謀略だったとは思わないことにしよう。

 田母神氏は自衛隊を去ったとはいえ、いろいろな問題を提起し、後味の悪さも残した。「李下に冠を正さず」。将たるものこの言葉を胸に刻み、論文の賞金も防衛省の退職金も辞退すべきである。

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2008年11月29日 (土)

名古屋大学国際シンポジウム聴講ノート(2)完

●北朝鮮核問題

田中 北朝鮮は核について、最初から米国と話をする方針だった。北は自分の持っているものを大きく見せて妥協するのが常套手段。

フォスター 濃縮ウラン問題は米朝交渉最大の障害だ。北朝鮮は一時認めたが、その後否定し、否定はいまも続く。北朝鮮とは基本的に交渉できない。北は開放すれば、金政権は短くなる。米国はどうやったら韓国との関係を強化できるのか。米軍の冷戦体制のプレゼンスを再構築しなければならない。再構築には脅威は何かを明確にしなければならない。米国にとって最大の脅威は中国だ。

田中 クリントン政権は宥和政策だったが、小泉政権も対話路線だった。制裁を前提にしたことはない。1%でも核放棄の状況があるなら、それにかけるべきだ。

フォスター 1%の可能性があるならやるべきだ。ただ、6者協議では解決できない。最終的に韓国に朝鮮半島のオーナーシップを認めなければならない。朝鮮半島の独立は歴史的に珍しい。いま時寝ションを含んだ戦略が必要だ。日韓の心を込めた話し合いから始まらねばならない。

●靖国問題

田中 小泉純一郎首相が靖国に行くことによって、に中間系が損なわれると話したことはある。小泉首相は、時に怒った。靖国に理屈はいくつかあって、右を抑えるのは一つの考え方だった。中国が常にカードとして使うのを防ぐ意味もある。小泉首相はアジェンダをつくって実施することに、ものすごい強い意識を持っている。公約に掲げたのは郵政改革と靖国参拝。靖国に行かないと、郵政で妥協するのではないかという見方が出てくる。これを跳ね返すために、2001年以降毎年靖国に参拝した。小泉首相は途中で深刻に参拝をやめようと思ったことはあるが、中国は自分の政権の時には関係を改善する気がないと考えた。首相の靖国参拝は残念でならない。大きなものを失っている。

●オバマ政権

フォスター オバマ政権では経済、イラク、テロが課題だ。テロが身近な問題になる。その中で北朝鮮をどう位置づけるのか。6者協議は続く。それに限界はあるが、目の前の危機を回避したら、評価しなければならない。日本にも責任があるのではないか。オバマ政権が誕生しても変わらない。北朝鮮の問題は、朝鮮半島の問題として考えた方がいい。

田中 日本が何をするのかが大事だ。日本がつくりたい世界は経済的に繁栄している世界だが、それには中国、ASEAN、韓国を巻き込まなければならない。どうビジョンで東アジアに向かうのか。日本と中国と米国の枠組みが必要だと思うし、この地域でcommon visionをつくれるのは日本だけだ。日本と韓国のパートナーシップが必要だ。オバマ政権ではイラクからの撤退、アフガニスタンが大きな関心だ。日本が東アジアでどうするのかが必要だ。

(2008年11月28日夜、名古屋大学経済学部カンファレンスホールにて)

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名古屋大学国際シンポジウム聴講ノート(1)

 11月28日夜、名古屋大学で開かれた「東アジアの安全保障とメディア」と題する国際シンポジウムを聴講しました。田中均元外務審議官ジェイムス・フォスター元米国務省朝鮮半島部長、NHK、中日新聞・東京新聞、共同通信の記者がパネリストとして参加し、春名幹男・名古屋大学大学院国際言語文化研究科教授(元共同通信ワシントン支局長、国際報道論)が司会進行を務めました。以下はその抄録です。田中氏の発言を中心に紹介します。

●問題提起

田中 きょう言いたいことは二つ。一点目、日本の自主外交が失われていると言われているが、自主外交がいいとは言うつもりはない。外交は国益があってのこと。国益達成は簡単なことではない。主張する外交と言うが、結果をつくらないと意味がない。2002年9月17日、小泉首相が訪朝し、日朝平壌宣言という原則、ロードマップを示した文書を作った。拉致などの懸案解決は、敵対関係ではなく、対話で進める。日朝正常化を目標とし、正常化のあと経済支援する。金総書記は拉致を認めて謝罪した。生きている人を帰す、その他の人も真相を究明する。首相が行けば結果をつくれるものではない。長い期間、実務的な準備をした。私は訪朝前の一年間、週末を活用して20数回水面下で交渉した。秘密が途中で漏れれば、生きている人の命に関わる。1年間の交渉の最初に思ったことは、朝鮮半島の平和を日本がつくれるか。植民地支配の事実は変えられない。国家の当局者は全部頭の中にある。すべてを解決する仕組みを作らなければならない。北の政権は特異な政権だが、なぜ日本ができたのかというと、韓国が南北融和政策をとったからだ。日本がやっても韓国に文句を言われない。米国は北朝鮮のことを悪の枢軸といっていたから、北朝鮮は日本が米国の同盟国として安全を保証してくれるのではないかと思ったのではないか。外交はそういう動きを活用しなければならない。このロードマップはつぶれない。六者協議の中でも、宣言に則って日本のことが盛られている。拉致は彼しか認められない。拉致の実行機関は北朝鮮政府そのもの。だから、総理が北に行って、トップ会談をやらざるを得ない。トップ交渉に引きずり出さなければならなかった。

 二点目。世界はものすごく変わっている。世界の富が西から東に移っている。新興国の経済が大きくなってる。どうやって国際問題を合意で解決するか、難しくなる。新興国をどうやって入れ込むのか。世界のリーダーの課題だ。中国もインドも東アジア。東アジアでどうやって秩序をつくるのか。一番近い立場にあるのは日本だ。安全保障を含めた秩序をどうつくるのか。それは世界につながる。メディアが果たして鳥瞰図的に描いているのか。そうではない。メディアの役割はなんなんだ。テレビを見ていると、国民目線で変えると言っているが、それがメディアの役割かと言いたい。メディアには社会を引っ張る啓蒙的な役割があるのではないか。

フォスター いま東アジアは危機的状況だ。日本夜間国の政治的基盤が弱くなった。東アジアに対して、どこまで注意を払えるのか。金正日がいなくなったらどうなるのか、誰も考えていない。対半島の政策が必要だ。日本の課題は対韓国政策。日韓が社会的経済的問題を解決できなかったら、東アジアは安定しない。日韓は新しい基軸にならなければならない。

●日朝平壌宣言

田中 拉致、核ともに大事だ。包括的な解決をしなければならない。拉致だけ、核だけが解決することはない。北にとっては政権存続そのものだ。米国の一部は、訪朝に反対したが、政策の反対は、米国ではいつものことだ。濃縮ウラン開発のインテリジェンスを持っているのは米国だから、直接米国が話すべきだ。核は多国間の問題。だから、小泉は帰国後真っ先にブッシュに電話した。「米国も北と交渉すべきだ」と。ジム・ケリーが北を訪れてウラン問題を提起した。国際問題の解決は難しいが、は提起しないと解決しない。解決するときは両方解決する。核の解決へ日本は貢献しなければならない。20万ドルを支援を拉致があるから肩代わりさせるというが、決していいことではない。なぜできないのか。メディアや世論がものすごく大きい。行政の当局者は気になって仕方がない。それが本当に国にとっていいことなのか。

田中 (平壌宣言に拉致を書かなかったことは)結果として、何が大事かを判断しなければならない。拉致と書くことが大事なのか、金総書記に拉致を認めさせることが大事なのか。行政はそういう判断をしなければならない。交渉が100%自分に有利という外交はできない。(経済支援は)利益誘導ではない。日韓基本条約は請求権を相互に放棄して、韓国は満足しないので、経済協力をした。同じことを北にやる義務はある。

(To Be Continued)

(2008年11月28日夜、名古屋大学経済学部カンファレンスホールにて)

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期待はずれの党首討論

 麻生太郎首相と小沢一郎民主党代表との党首討論が28日行われた。私自身、所用でテレビ中継は見られなかったが、産経新聞のWebにアップされた詳報を読む限り、期待はずれに終わったようだ。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/081128/stt0811281548002-n1.htm

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/081128/plc0811281637008-n1.htm

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/081128/plc0811281724010-n1.htm

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/081128/plc0811281744011-n1.htm

 現下の最大の懸案は、アメリカのサブプライムローン問題に端を発した金融危機をどう克服するかなので、党首討論が2008年度第2次補正予算案を中心的な議題とするのは理解できたとしても、ほぼそれに関連する話題に終始したのは残念でならない。

 インドで同時多発的にテロが発生する中、テロとの戦いに、日本としてどう対応するのか。アメリカでオバマ新政権が誕生するに際し、日本として対米外交をどう展開するのか。田母神俊雄前航空幕僚長の論文問題に関し、シビリアンコントロールはどうあるべきかなど、党首らしい大所高所からの深みのある討論を期待していたのだが、所詮、「まんが宰相」と「壊し屋」の二人が登場人物では、望む方が間違っていたのだろうか。

 二大政党の党首が、衆院を解散しろ、しないのやりとりを延々とすることにも違和感を感じ、むなしさを感じざるを得なかった。おそらく、小沢代表は、麻生首相が解散しない限り、「解散しろ」と言い続けるだろう。それ自体、国民の審判を受けていない首相が三代も続いている状況では、仕方がないこととはいえ、解散の是非が論議になること自体、政権末期の症状なのだろう。

 もし次に党首討論が行われることがあるのなら、先に述べた課題について、じっくり議論してほしい。党首討論自体が「消化試合」に終わるようなら、やるだけ無駄。期待させるだけ罪は重い。

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2008年11月27日 (木)

米大統領選講義ノート(3)その3完「大統領選後の米国と如何に付き合うべきか」宮家邦彦立命館大学客員教授

●まとめ

 オバマになったことで、新しい思考が形を変えてやってくる。日本の宿題だったことが、全部出てくる。紙をつくるが政策が変わらないから、不満が募る。入れ替え戦で負ける。安保でミニマム・マムコンセンサスをつくってくれないのか。安保は超党派。共民、ナショナルな同意ある。

●質疑

Q.オバマはパラダイムシフトをしたいのか、したくてもできないのか。

宮家 国内ではパラダイムシフトしたい。将来のアメリカの政治を先取りした人。先取りしすぎたのかもしれない。やろうとしている方向は正しい。非白人のウエイトが増えるほど、彼のやることが主流になるが、ちょっとまだ早い。早い分だけ、反発、批判が出る。人種の壁を越えていない。まず人事。混乱なく来年秋を迎えられるのか。混乱が生じると過去の民主党と同じだ。

Q.金融危機。

宮家 アメリカでは経済的に、変わって困る人を平気で切り捨てる。日本では既得権を持った団体が黙っていない。平気で血を流す。はるかに早く回復するだろう。

Q.G7からG20になると、どこが上がってくるのか。

宮家 中国が上がってくる。中国が入ればインド。米欧が中印を見る。

Q.憲法改正に踏み込むべきか。

宮家 ハードパワーのない国が生き残った話は聞かない。ハードパワーのない形でのグレートゲームへの参加はハンディキャップを負う。ソフトパワーはハードパワーを持っているからこそ生きる。憲法の精神はそのままで、集団的自衛権を使える形にするだけでも、一つの解決策はある。非常に難しいと思う。ハードパワーだけでは難しいことは米国が証明している。ソフトパワーだけでは、ゲームの中で弱い。解釈の変更は最低限必要。

Q.原爆を持つことに最終的になるのでは。

宮家 核兵器も兵器だから、ハードパワーの中ではあるが、政策論として核武装する必要はない。法的に難しい。秘密に開発できない。開発に成功しても、政治的にはマイナスがはるかに大きい。軍事的にも、核を持つ軍事的意義は疑問。核のオプションはない。すべてにおいて、メリットはない。

Q.日本への姿勢は変わるのか。

宮家 共和党の親日派がいなくなって大丈夫かという本能的な予感は正しいところはある。日米関係がブッシュ小泉の時代はよかったのは奇跡的。ある意味、日米関係がアジア関係の中でアテンションが低かった。厳しい問題でうるさく言う人がいなかった。幸せだったし、それはよくなかったのかもしれない。ブッシュ小泉はものを読まない。直感的な政治判断ができる政治家で、日米関係はもった。ネオコンがいたおかげで幸せだった。共和党の中でも例外的だった。マケインだとしても日本への期待が大きいし、圧力をかけてきただろう。この8年間なかっただけ。

Q.民主党に人脈がない。

宮家 そんなことはない。アーミテージが偉かったのは、日米関係が日本の国内政治であり、圧力をかけることが政治的争点になると分かっていたことだ。イラク戦争開戦は、日本に知らせた。そうでないと日本は持たないと知っていたから。民主党ならしないだろう。しかしこれは秘密の漏洩。健全な日米関係ではない。オバマになったことで普通になるだろう。それでも維持できる日米関係にならないといけない。特定の人でつながっている日米関係は健全ではない。

Q.ソフトパワー、インテリジェンスが不足しているのではないか。

宮家 日本はインテリジェンスはしないと決めた国だ。インテリジェンスの最たることは改選の日時と場所だ。しかし、日本は戦争をしないと決めたので、守るべき秘密はない。これを再興するのは難しい。インテリジェンスの本当のプロは政策はやらない。ソフトパワー以前に、インテリジェンスは存在しない。

Q.オバマは資金をグラスルーツで集めた。

宮家 竹下的な金の集め方だ。問題はそれに応える人がいるかだ。あの戦術で当選したのではなく、正しいメッセージでイメージを提供したから、集まった。戦術を過大評価することで、勝利の本質を忘れてはならない。すばらしいキャンペーンだった。民主党のキャンペーンであれほどうまくいったのは前代未聞だ。

(2008年11月17日午後、日本記者クラブにて)

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米大統領選講義ノート(3)その2「大統領選後の米国と如何に付き合うべきか」宮家邦彦立命館大学客員教授

●パラダイムシフトとグレートゲーム

 米国の国力が低下、相対的に力が衰える。オバマの当選、時代が求める人が当選する。アメリカが直面する大きな問題への本能的な答え。無関係な人を大統領に選ぶ国。日本は危機があると、二世、三世が後継者になるアメリカがうらやましい。

(1)18世紀末(第1次グレートゲーム)パクスブリタニカ始まる。産業革命。

(2)19世紀末(第2次グレートゲーム)露独日など新興国の台頭。鉄鋼、重化学工業。

(3)20世紀中頃(第3次グレートゲーム)パクスアメリカーナ始まる。電気、自動車技術。

(4)1990年代、米一人勝ち。コンピューター、情報技術革新。

(5)21世紀初頭(第4次グレートゲーム)中印露など新興国の台頭。19世紀末に似ている(グローバル化)

 パクスアメリカーナの中で、本当のチャレンジャーが出始めた。

●新グレートゲームの特徴

(1)多国間主義 → 米国の国力の相対的な低下。新規プレーヤーの参入(旧植民地の台頭)。弱肉強食。

(2)グローバル化 → 新興国は昔のような独立した経済圏を築けない。

(3)人口、資源、エネルギー → 欧州、日本緩やかな衰退。インド、中国の台頭とロシアの限界。米国の相対的な優位は変わらない。

 G7体制からG20体制(二部リーグ制)へ。G7は入れ替え戦がない東京六大学野球。G20になって、日本は入れ替え戦に勝てるのか。入れ替え戦でどう生き残るのか。その際、米国をどう利用するか。

●米「自己チュー」外交の優先度

(1)対テロ → 新ゲームの一部であり米国はやめない。

(2)対欧州(ロシア)外交 → 危機感を強め、生き残りをかける欧州とは協調する。欧州は疲弊して生き残れるのか危機感がある。

(3)気候変動、環境、貧困問題 → 新ゲームの戦術の一つとして重視する可能性

(4)対中東外交 → イスラエルを重視しつつ、和平プロセスを再開。イラン、アフガンで軍事オプション模索の可能性。

(5)対アジア(中国)外交 → 米が多国間の枠組みを模索する可能性がある。

●日米関係、日本は何をすべきか

(1)アジア太平洋国家としての米国 → 中国中心の地域主義に対抗するため、米国という資産を如何に活用するかを考える(民、共はニュアンスの差)。両者で利用しあえば財産になる。

(2)米国の「中国は重要」は不可避 → 感情的にならず、現実を直視し、米国の対中政策提案者に正しいアドバイスを。経済的脅威、軍事的脅威は、米国のアジア太平洋国家としての立場を揺るがせる。日本パッシング、ナッシングといっても知的前進はない。もっと知恵を出して、中国をどのように活用するか、付き合うかを米国に言えばいい。ジェフリー・ベーダーらアジア中国担当者に中国へのものの見方を伝えればいい。どうしてアメリカしか知らないアメリカ通しか、アメリカに送り込まないのか。中国の専門家の知見が、対米関係、アジア政策に生かされていない。報道機関の中には、北京のあとはワシントン、ワシントンのあとは北京と、特派員の派遣を実行している社もある。外務省、商社はしていない。

(3)北朝鮮 → 6者協議は将来、多国間の枠組みになるのか。冷徹な判断で、内政問題で健全な距離を置くことが必要。

●日米安保は何をすべきか

(1)米国の国力低下 → 二国間安保条約で十分だった時代は終わる? 当面はリスクヘッジのための新たな思考が必要。米国が思わぬ方向に行く可能性がある。民主党の人たち、経験のないのは恐ろしい。2、30年の経緯しか知らない人がいる。

(2)戦後の「一国平和主義外交」の限界 → 安全保障分野のグローバル化が不可欠。国内の政治状況。

(3)日米安保再定義 → 大変結構な話だが、集団的自衛権の不行使を前提にするなら実質的な意味ない。ソフトパワーはハードパワーを補完するが、代替はできない。これから入れ替え戦があるなら、一部の実力がなければならない。言葉だけでなく、実行しなければ。

(To Be Continued)

(2008年11月17日午後、日本記者クラブにて)

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2008年11月26日 (水)

党首討論に期待する

 麻生太郎首相と民主党の小沢一郎代表との党首討論が28日にようやく行われることになった。実現までの経緯は、後ほど論ずるとして、これをきっかけに、与野党間で、喫緊の課題について論議を深めてほしい。

 衆参で多数派が違う「ねじれ国会」になって、国会でまともな論戦が行われなくなったと思うのは私だけであろうか。例えば、金融危機を受け、実体経済への波及をどう食い止めるのかについて、国会での真剣な議論を聞いたことがない。日本経済はこのままずるずると深い闇の中に消えていくのであろうか。今、日本国民は少子高齢化社会や年金問題の噴出を契機に、明るい未来を描けないでいる。希望を持てないと言ってもいい。

 こうした時代にこそ、国民の代表たる政治家が明確なビジョンを語り、実現可能な選択肢を示し、国民の判断にゆだねるべきではないのか。田母神俊雄前航空幕僚長の論文問題にしてもそうだ。論文の何が問題で、どう克服しなければならないのか、国会は何も指し示していないように見える。

 そればかりか、国会では与野党ともに党利党略ばかりが先行し、本当に国民のための議論をしているのか、疑念は深まるばかりだ。

 もちろん、国民の信任を得ていない政権が三代も続いている(そのうち安倍政権は2007年の参院選で国民に不信任を突きつけられた)ので、一刻も早く衆院を解散すべきだとの野党の主張は分からなくもないし、私自身も強くそう思う。

 しかし、そのことと国会での議論を放棄することとは別のはずだ。

 これまで小沢代表は「選挙になれば、毎日党首討論のようなものだ」と、党首討論を拒否してきたが、ようやく重い腰を上げたようだ。

 麻生首相側が小沢代表に党首討論に応じるよう迫った背景には、小沢氏はこうした討論が苦手で、自分の方が党首討論を通じて国民に優位さをアピールできるとの思いがあるようだが、それは思い上がりというものだろう。あの程度の国語力で、討論が得意だとはいってほしくないものだ。小沢氏のこれまでの討論を見てみても、ぼくとつなしゃべり方の中にも、小沢氏らしい論理的な攻め口が随所にみられる。本格的な論戦となるよう期待したい。

 特に、この討論をきっかけに、アメリカの新しいオバマ政権と、日米関係をどう構築していくのかを真剣に議論してほしい。久々の民主党政権の誕生で、日米関係はどうなるかではなく、日本としてどうしたいのかという視点からの議論を望みたい。

 アメリカはパワーは落ちたとはいえ、超大国に変わりなく、アメリカ側の出方を見極める必要はあるにせよ、それではあまりにも受け身の外交に過ぎないか。是非とも、日本が自ら動ける分野で積極的に動き、対米外交で主導権を握る試みをしてほしい。オバマ氏が重視するアフガニスタンの平和構築に、日本としてどう関わるのかも、党首討論の議論にふさわしいテーマだ。

 オバマ政権発足はあと1カ月あまりと近づいている。議論はその内容とともにスピードも必要である。

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2008年11月23日 (日)

「まんが宰相」の耐えられない軽さ

 この政権は、政権の体をなしていないとつくづく思う。公正取引委員会委員に上杉秋則・一橋大大学院教授(元公取委事務総長)を充てる同意人事案のことである。

 この人事案、いったん閣議で国会に提示することを決めたにもかかわらず、上杉氏が弁護士でないのに、匿名の著作で弁護士の肩書を使っていたことが野党の指摘で明らかになり、参議院本会議の直前になって、急きょ取り下げた。2007年夏の参院選での自民党惨敗による「ねじれ国会」で、政府が国会に提示した同意人事案が野党の反対で否決され、不同意となる例はあるが、政府側の不手際により本会議直前で取り下げるのは異例中の異例で、政府の大失態といってもいい。

 問題は、なぜそのようなことが把握できなかったのか、また野党から指摘があったにもかかわらず、当初そのまま国会に提示しようとしたことだ。

 野党には失礼かもしれないが、この程度のことを政府が把握できないはずがなく、今回、このような事態に至ったのは、官邸内が緩みきっている証拠と言っていい。各省から派遣されている秘書官らも、麻生内閣は「選挙管理内閣」とみて、腰掛けのつもりでいるのではないか。小泉内閣で5年以上にわたって懸案を処理してきた「小泉チーム」のような、首相への忠誠心やチームとしての結束力が全く感じられない。

 普通の秘書官チームなら、首相の漢字の読み間違い(麻生首相の場合は、国語力の欠如)を指摘したり、ホテルのバー通いが、いかに一般の国民の感覚から遊離しているかを、諫言して当然だろうが、そうしたことが行われている形跡はない。まあ、東大卒のエリート官僚が「まんが宰相」に仕えるばかばかしいさは、十分理解するが、それにしても、国益に反するような首相の振る舞いを止めないとしたら、国益毀損の共同正犯だ。

 こうした官邸の失態続きは、与党側から公明党はもちろん自民党にとっても噴飯ものらしい。

 自民党の塩崎恭久・元官房長官、茂木敏充・前行政改革相、渡辺喜美・元行革相ら中堅・若手議員24人は11月21日、河村建夫官房長官に対し、2008年度第2次補正予算案を今の臨時国会に提出するよう申し入れた。

 麻生首相は2次補正の提出を来年の通常国会に先送りする方針のため、塩崎氏らの行動は明らかに麻生首相に反旗を翻したことになる。

 塩崎氏らの行動に対し、自民党内では単に総選挙を意識した国民向けのパフォーマンスとの見方もあるが、24人には、先の総裁選で経済政策などをめぐって首相と最も対立した小池百合子元防衛相の推薦人が渡辺氏ら3人、石原伸晃幹事長代理の推薦人も塩崎氏ら3人含まれており、小泉改革を推進してきた「改革派」が中心となっているところが意味深だ。

 自民党内にポスト麻生候補が見当たらないことから考えると、彼らの行動が即、倒閣運動にはつながらないだろうが、麻生内閣から体力を失わせるには十分だ。以前にもブログで書いたが、麻生政権の劣化は予想以上に進んでいるとみた方がよく、麻生首相が解散する前に力尽き、自ら退陣を決意する可能性もないとは言えない。

 さらに、麻生首相がこの先、余りにも失態を繰り返すようだと、野党提出の内閣不信任決議案に、自民党から同調者が出て可決され、首相退陣に追い込まれるか、衆院解散から政界再編にまで一気に進むことがないとも限らない。

 いずれにしても、こうした事態を引き起こしているのは、麻生首相の宰相としての能力も品格も欠いた、耐えられない軽さである。麻生首相に続投を許している唯一の条件は、自民党内に有力な「ポスト麻生」候補が見当たらないということだけである。

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2008年11月21日 (金)

麻生首相の居座りこそ政治空白だ

 やっぱりというべきか、早くもというべきか、麻生太郎内閣の政権末期状態に拍車がかかり始めた。今の政治状況は、麻生首相の能力の限界を超えているのであろう。

 以前、このブログでは、解散を先送りしてでも与野党が力を合わせて、未曾有の金融危機を乗り切るべきだと主張したこともある。なぜなら、参院で多数を持たない自公政権では、迅速な意思決定ができなからだ。

http://yoichitoyoda.cocolog-nifty.com/seiji/2008/10/post-f90b.html

 その証拠に、金融危機が実体経済に波及することを防ぐための2008年度第2次補正予算案の提出は、迷走の末、来年1月召集の通常国会に先送りされることが濃厚だ。景気優先といいながら、先送りするのではダブルスタンダードではないのか。この一点においては、現在開会中の臨時国会に提出するよう求めている小沢一郎民主党党首に分があるように思えてならない。

 迷走はそれだけではない。

 道路特定財源の一般財源化に伴う1兆円の地方交付税化や日本郵政の株式売却凍結をめぐり、首相の発言がぶれ、自民党内からも厳しい批判にさらされている。

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20081121k0000m010138000c.html

 1兆円の地方交付税化には自民党の道路族議員が、日本郵政の株式売却凍結には、中川秀直氏らいわゆる「上げ潮派」が猛反発し、まさに「前門の虎、後門の狼」状態だ。

 首相がどういった意図で発言したのかは分からないが、結果的に、首相の発言は自民党内の反対で撤回せざるを得なくなったとしか思えない。

 首相は、医師不足問題に関しても「社会的常識がかなり欠落している人(医師)が多い」と発言し、撤回したばかりだ。こうしたことが繰り返されれば、首相の発言の重さは、ますます失われていく。これは国益に反する。

 そもそも以前にも指摘したように、首相の国語力の欠如には耐え難いものがある。

http://yoichitoyoda.cocolog-nifty.com/seiji/2008/11/post-d39f.html

 まんがばかりを読みふけ、母国語に基づく論理的な思考をする訓練をしてこなかったとしか思えない。そもそも首相としての資質を欠いているのだ。

 自民党総裁選で託された麻生首相の使命は、臨時国会冒頭での衆院解散・総選挙であった。それが果たせなかった今、政権延命の正当性はない。麻生政権が続けば続くほど、政治空白は長引くだけなのだ。

 前出の中川氏は、自らのサイトに「万一、『隠れ郵政民営化反対派』が『アナウンスなき05年路線転換』を図るというなら、こちらも覚悟をもって、堂々と、受けて立つつもりだ」と、書き記した。

http://www.nakagawahidenao.jp/pc/modules/wordpress0/index.php?p=1114

 山崎拓前副総裁も山崎派総会で「いったん発言した以上、その方針でやらないと党内抗争を引き起こしかねない。綸言(りんげん)汗のごとしだ」と、首相を批判した。与党内での求心力低下や、政権基盤の弱体化が急激に加速しているとみた方がいい。

 麻生首相は衆院解散を、2009年度予算が成立する来春以降に先送りするつもりらしいが、自民党内で麻生批判が高まれば、それまで政権維持できるかどうか。衆院選前の首相交代の可能性すら頭をもたげてきた、何ともきな臭い、昨今の政局である。

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2008年11月19日 (水)

天誅ではない。国家国民への反逆だ

 元厚生事務次官やその妻が殺傷された事件に関し、年金政策の不作為を理由にして「天誅だ」「天罰だ」と容認するかのような言説があるが、テロ行為は国家・国民への反逆であることを、この際、強調しておきたい。

 天誅論者は、テロは、強き者に対して弱き者がその窮状を訴え、それを正すための「乾坤一擲」と主張するかもしれない。

 もちろん、私自身、年金問題をめぐる厚生労働省、政府・与党(この場合、長年政権にあった自民党)の不作為を肯定するものではないが、それをテロによって正すことはできるだろうか。

 昭和恐慌の際、軍部のテロを許し、厳しく処断しなかったことが、あの戦争で300万人という同胞に犠牲を強いることになった。国家国民を守るための軍隊(その証拠に自衛戦争と主張していた)が、国家国民を滅亡へと導いたのだ。

 言論には言論で、法には法で対処すべきである。

 繰り返して言うが、テロ行為は国家国民への反逆であり、許されるものではない。それを容認するかのような無責任な言説も、いくら言論の自由が保障されているかとはいえ、慎むべきである。

 言論の自由は、それが責任ある言論であれば処断されることがないという前提で保証されている。テロを許せば、いずれ言論の自由さえも侵されることは、われわれ日本人の歴史が証明している。歴史から学ばぬものは愚かである。

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政治的テロを糾弾する

 元厚生事務次官の山口剛彦夫妻が刺殺されたのに続き、同じ元厚生事務次官の吉原健二氏の妻が刺されて重傷を負った。両事件の関連性は現在、捜査中だが、殺傷行為自体があってはならないし、旧厚生省の官僚を狙った政治的意図を持ったテロだとしたら、民主主義への重大な挑戦であり、許されざる蛮行だ。厳しく糾弾したい。捜査当局には万全の捜査で、早期の犯人逮捕を望みたい。

 経済が行き詰まりを見せ、社会的、経済的、政治的格差が広がっている状況を、農村部が貧困にあえいだ戦前の日本にたとえ、戦争前夜だと指摘する意見があるが、安易にたとえるべきではない。もちろん、一定の範囲を超えた格差の拡大は容認されるべきものではないが、そういった指摘自体が、テロを誘発する温床になりかねないからだ。

 われわれの生きている社会が戦前と違うことは、テロに屈し、政党政治が軍部に翻弄されてきた戦前から、多くの教訓を学んでいることだ。

 今回の事件が、たとえ厚生労働行政や年金行政への不満に端を発したテロだとしても、それを容認する社会的空気はないだろうし、そもそもあってはならない。先人が築き上げた民主主義は、そのようなテロではいささかも揺るぎない。

 今回の事件で、「不安」を口にする官僚がみられるし、麻生太郎首相は自宅周辺での朝の散歩を取りやめるそうだ。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2008111801015

http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/news/20081118010010011.asp

 そうした不安や警備上の理由も分からないではないが、そうした不安を口にすればするほど、「テロリスト」の思うつぼだ。テロの語源は「terror」(恐怖)であり、社会的不安をかき立てることが、テロリストの目的だからだ。

 いくら内閣支持率が低いとはいえ、麻生首相は現役首相であり、テロ対策に指導力を発揮して、テロに屈しない姿を堂々と見せほしい。そうした態度をとること自体が、テロを許さないという力強いメッセージになる。

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2008年11月18日 (火)

米大統領選講義ノート(3)その1「米大統領選後の米国と如何に付き合うべきか」宮家邦彦立命館大学客員教授

●民主党関係者の興奮

 民主党関係者が送ってきたeメールのメッセージから、その興奮ぶりが分かる。

●「米国通」を見破る方法

(1)「米国初の黒人大統領だ」と言う人=オバマはアフリカ系だが、黒人ではない。ミシェルと結婚したから黒人になった。

(2)「新しいニューディール連合の誕生」と言う人=民主党員の希望とアメリカの現実は違う。

(3)「ユダヤロビーは恐ろしい」と言う人=対ユダヤ系差別を正確に理解すべし。

(4)「アーミテージ、グリーンに会った」と言う人=知日派は親日派ではない。彼らに依存する時代ではない。

(5)「最近中国の専門家が増えた」と言う人=中国は問題国だから、中国語を学ぶことは当然

 オバマ365票、マケイン162票。大勝利というが、2004年と08年を比べても参考にならない。

●内政 潮目は変わったか?

(1)ブッシュの失政に対する反発=1980年のレーガンから保守化が始まる。レーガン、ブッシュWによる2回の保守合同が終焉。レーガノミックス、保守主義も終わりといえるのか。

(2)新しいニューディール連合?=これまでに5回の政界再編。①ジェファーソン(各州の権限強化を求める)②ジャクソン③リンカーン④ルーズベルト(1929年FRD大連合)⑤レーガン(1980年)。Red、Blueの色分けは90年代に入ってから。最近まで逆だった。米国の選挙に伝統的なものはない。レーガン・デモクラッツで潮目が変わった。365票とはいえ、ランドスライドとは呼ばない。1992年に似ている。過渡期の状況。

(3)米国の人種別人口比率予測によると、今白人は三分の二を示すが、2050年の白人の割合は46%に。ヒスパニックは15%から30%に。黒人系は増えない。アジア系は倍増。ヒスパニックとアジア系は20%から40%に。白人はマイノリティに転落。これは大きな要素。過去数十年間にWASPの中に入り、ホワイトハウスに入っていく。1960年代から始まった長いプロセス。マイルストーンについた。オバマ当選が大事。CNNによると、ヒスパニックの66%がオバマに投票。メキシコ国境から中西部に進出したことが、NM、ニバダのマケイン敗北につながる。共和党が増加した地域がバイブル・ベルト。オバマが共和党から取り戻した州では民主党が増えている。

(4)ブッシュへの反発と共和党への反発、保守主義への反発は微妙に違う。保守的アジェンダ、どれだけ保守化しているか。小さな政府、個人の活動への政府の介入を避ける支持者は多い。オバマがひっくり返しているわけではない。最近のワシントン政府は大きな政府と考える人は80%に上る。オバマが勝ったという前に、ブッシュがひどかった。共和党がそれに引きずられた。保守主義まで変わったわけではない。保守主義は健在。

●潮目は変わっていない

(1)ブッシュ失政への反発=第二次保守合同が終わる。ペイリンは役不足。レーガノミクスまで否定されているとは言えない。

(2)新ニューディール連合=オバマノミクスはこれからの共和党の対応次第。財政、宗教などの保守主義は引き続き残る。

(3)オバマ候補の得意な資質=黒人キャンペーンを張らなかった。ヒラリー陣営の自制と協力

●国内政策の優先順位

(1)経済建て直しが最優先=財政支出による景気刺激策。低所得者への減税。財政赤字09年1兆ドル。

(2)敵は共和党より民主党左派=国民皆医療保険、環境、エネルギー。

(3)人事を間違えばクリントン政権の二の舞=中道を目指すオバマは清く正しいクリントン。民主党の支持基盤の脆弱さは変わっていない。民主党は寄せ集め。まずは人事。

(To Be Continued)

(2008年11月17日、日本記者クラブにて)

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2008年11月17日 (月)

米大統領選講義ノート(2)「オバマ大統領の誕生と新政権の方向性」久保文明東京大学教授

●オバマの勝因

(1)VA、NC、CO、FLなど共和党の地盤に浸食。支持構造の違い(マケインの支持者は消極的支持、オバマは熱烈な支持)。オバマを強く支持する人がいることが、世論調査に出ている。オバマ独特のファクター。人種よりも年齢の方が問題だった。ペイリンはネガティブな効果。

(2)ブルーカラーは、マケインとオバマで迷う。金融危機の後、最終的にオバマを選ぶ。ホワイトカラー、高学歴、白人エリート層はオバマ。北部の白人と南部の白人はかなり違った。

(3)米国はいい国だと確認する選挙。リベラルやインテリは、オバマが負けるとレイシストの国になると心配。歴史的作業に参加。黒人の95%、ヒスパニックの70%がオバマ支持。

(4)ワシントンポストのデイビッド・ブローダーは「1960年の選挙戦がベスト。今回も内容のある選挙」

●歴史の中で

(1)黒人は13%の少数派。経済格差に苦しむ。大統領当選に歴史的意義。ヒスパニックもオバマを強く支持。マイノリティーから大統領になることに意味。見本が出来た。ジムクロウ法、1964年までの価値観。30歳以下には人種的バイアスない。1960年代と比べて寛容度が増している。

(2)マケインは不法移民に寛大だったが、相当右に寄らざるを得ず、ヒスパニックの共和党に対するイメージが悪化。オバマに流れる。金融危機、小さな政府にこだわる共和党の政治的限界。むしろ保守に徹すべきだとの議論が多い。

●新政権の立ち上げ…未曾有の危機の中で

(1)大恐慌の中の選挙に似ている。フーバーになるか、金融危機に対処できればローズベルトに。オバマは経験不足。州知事でない大統領はケネディ以来。そのケネディは上院議員を8年やっている。(オバマは4年)

(2)バイデン、エマニュエル、ポデスタ、かなりの経験者。用意周到な人事。バイデンは外交安保司法、能力を評価。エマニュエルはクリントン政権で次席補佐官。2006年民主党勝利の立役者。ホワイトハウスを知っている。相当したたか。

(3)オバマキャンペーンチームは「ベストのチーム。ほとんどエラーはなかった」。ネットを駆使して、地上戦に。ディーンの誤りから学ぶ。オバマは、チームを二年間まとめたマネージメント能力がある。

(4)オバマのイデオロギー、上院の中で相当のリベラル。予備選後柔軟に。6月、イラクは「責任ある形で撤退」、盗聴容認、沿岸のオイル掘削を許容。オバマも「flip frop」(弱い政治家)に見られる可能性。ただ、フーバーは原則にこだわり、現実に対応できなかった。

(5)大統領として成功できるかは、どのくらいのマージンで勝ったか(53%の得票率 → 60%超えるとランドスライド)、議会でどの程度勝ったか(民主党が増えた)。Coat Tail Effectの有無が左右。1980年のレーガン、1964年のゴールドウオーターが増やした。1960年のケネディは減らした。オバマはさい先よいスタート。

(6)最初の100日間でどれだけ法律を通せるか(実際は1年)。オバマ支持75%、レーガンは67%。一番高い数字、国民に歓迎ムード。公共投資、減税 → 成果を主張できる。左派の基盤をどの程度抑えられるか。

(7)超党派のレトリック。閣僚に二人以上入れるのではないか。トップだけか否か。局長以上を代えるので、下の方まで代えるのかどうか。3000人の1割代えるだけでも300人。難しい課題。

●政策課題

(1)アフガン難しい。イラクから撤退、アフガンに増派。4年後どうなっているか。出口戦略が必要。アフガンは戦死者多い。Mr Obama's Warと位置づけられる可能性。

(2)交渉の優先順位は高いが、いつまで交渉するか、相当考えないと、成果は上がらない。

●対日政策

(1)アフガン重視を理解する必要。難しい課題。給油にとどまらず、手伝ってほしい願望ある。ペロシは「インド洋続けてほしい」。同盟国の評価。

(2)対日政策は政党対立の対象ではない。共和党はイデオロギー重視でやりやすい、共和党は労働組合が基盤で、通商重視と言われるが、政党だけの問題ではない。クリントン時代のよくない思い出の反面、ブッシュ時代はよかった。

(3)中国へのシフト、オバマ政権はクリントンと同じと見る必要ない。ブッシュは中国批判。その反射としての対日政策。イラク戦争で、日本がそれまでの一線を超えたことを高く評価。ブッシュの遺産で食べるのは難しい。

(4)通商では中国に厳しく、日本へはそれほど厳しくない。

(5)金融は米国だけでは対応が十分でない。日本が一定程度貢献できる。

(6)民主党の方が、Global Issue 重視。日本の本来の外交と合致することが多い。日本が一緒にやる部分多い。日本の方でどうするか考える必要がある。

(2008年11月14日午後、日本財団ビルにて、第16回東京財団フォーラム)

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2008年11月16日 (日)

衆院総選挙は東京都議選と同日選か

 麻生太郎首相は11月14日、金融サミット出席のため訪れたワシントン市内のホテルで、同行記者団と懇談し、衆院解散・総選挙の時期について「1994年の予算の成立は6月。景気を決定的に悪くした。景気対策を考えたら、予算は年度内に(成立させ)きちんとスタートさせるのが大事」と述べた。

http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/news/20081115010000261.asp

 これは、衆院解散は2009年度予算と関連法成立後の4月以降に行う意向を示唆したものと受け取られている。

 麻生首相は同時に「あらかじめ(解散は来年)4月と決めておくわけではない。1月に施政方針演説をして冒頭解散もある。何が起こるか分からない世界だ」とも述べているが、これは野党向けのリップサービスで、本音は4月以降にあると見た方がいいだろう。

 金融危機や「出来レース」だった自民党総裁選の影響で内閣支持率が低迷する中、早期に解散・総選挙を行えば、自民党の議席は大幅に減り、政権の座から転落することは目に見えている。

 麻生首相が臨時国会冒頭解散を期待されながら踏み切れなかったことを考えれば、少しでも政権維持の可能性を探るためには、解散は出来るだけ先送りした方がよいと麻生首相が考えるのも無理もない。

 かといって、来年9月の任期満了に近づけば近づくほど、麻生首相の求心力はなくなり、解散権を行使できなければ、それこそ命取りだ。三木武夫首相が解散権を行使できず、新憲法下で唯一の任期満了選挙に追い込まれ、政権の座から引きずり下ろされたことを考えれば、麻生首相が任期満了選挙を避けたいという気持ちもよく分かる。

 筆者は民意を反映していない政権が三代も続き、自民党政治が劣化している状況を考えれば、早期に解散し、有権者に政権選択をゆだねるべきだと考えているが、自らの主張は脇に置いて、解散・総選挙はいつなのかを考えると、7月に任期満了を迎える東京都知事選とのダブル選挙という有力な選択肢が浮上する。

 このブログでも指摘したとおり、自民党と連立を組み、自民党が選挙での組織的な支援を期待する公明党は、来年の東京都議選(7月22日任期満了)を重視し、都議選と衆院選の間を最低3カ月間あけるように主張している。

http://yoichitoyoda.cocolog-nifty.com/seiji/2008/10/20081025-9c29.html

 しかし予算成立後の解散で、公明党の条件を満たすには、総選挙を9月11日の任期満了後に総選挙を行わなければいけなくなる。小泉純一郎元首相の首席秘書官で政略に長けた、飯島勲・駒澤女子大学人文学部客員教授は「最終的には10月末まで投票日を延ばす選択肢の幅がありうる」と指摘した、という。

http://www.nikkei.co.jp/neteye5/shimizu2/20080528neb5s000_28.html

 ただ、これはかなりの奇策であることには間違いない。任期満了後の総選挙を設定した場合、自民党は公明党の言いなりという批判を浴び、惨敗する可能性も出てくる。そうした批判も前には、「景気対策優先」との言い訳も無力だろう。

 だとしたら、選択肢は予算と予算関連法成立後の選挙しかない。

 ねじれ国会下、予算は衆院通過後1カ月経過すれば、衆院の優越で自然成立するにしても、予算関連法については、参院で野党が抵抗し、採決を先延ばしした場合、衆院通過後60日後に参院で否決されたものとみなす「みなし規定」を使い、衆院で三分の二以上の賛成で再可決しなければならない。単純に考えれば、予算関連法の成立は予算成立後の約一カ月後だ。

 予算と関連法の衆院通過は早くても2月下旬だろうから、予算成立は3月下旬から4月上旬、予算関連法の成立は5月以降になる。

 さて5月の予算関連法成立直後に、衆院解散に踏み切れるのだろうか。その時点では東京都議選に向けた動きが本格化しており、そんな時期に衆院解散に踏み切れば、公明党の不興を買うのは目に見えている。それを回避するぎりぎりの選択肢が、都議選とのダブル選挙というわけだ。

 都議会の任期満了は09年7月22日。公選法上、都議選の投票日は6月28日か、7月なら5日、12日、19日のいずれかだ。来年7月8日から10日までは、イタリアのマッダレーナ島でG8サミット(主要国首脳会議)が開かれるので、サミット効果を最大限生かすには7月12日か19日が有力だ。夏休み直前を避けるなら12日だろう。

 ただ、都議選の日程設定を衆院解散と連動させられるか、筆者は情報を持ち合わせていない。加えて、衆院解散時期の決断は、その時々の政治状況が最も大きい要素になるのは間違いない。とりあえずは、11月30日に会期末を迎える臨時国会や、来年1月召集予定の通常国会での与野党攻防の行方を注意深く見る必要があるだろう。

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米大統領選講義ノート(1)「米大統領選と日米関係」村田晃嗣同志社大学教授

 米大統領選でバラク・オバマ上院議員が大勝し、米国史上初めてアフリカ系大統領が誕生したことを受け、日本国内でも米大統領選やオバマ政権下の日米関係に関する講演会が頻繁に行われるようになりました。私もそのうちの何回かに参加しましたので、その内容を書き留めておきたいと思います。題して「米大統領選講義ノート」。第一回は、村田晃嗣同志社大学教授による講演「米大統領選と日米関係」です。

●米大統領選

(1)ミズーリでは最終的な投票結果が出ていないが、おそらくマケインが勝つ。「ミズーリを制したものが大統領選に勝つ」というジンクスがあるが、今回の大統領選では、それが崩れた。

(2)オバマは圧勝ではないが、大勝には間違いない。大統領選と同時に、上下両院議員選も行われ、いずれも民主党が勝った。最高裁判所判事9人の内訳は現在、保守派4人、リベラル4人、やや保守寄りの中道1人だが、5人が70歳を超えている。オバマ政権が8年続けば、死亡か辞任でポストが開き、オバマはリベラルを指名し、9人はリベラルに変わる。これにより、行政、立法、司法がすべて民主党に変わる。

(3)今回は、民主党が勝つはずの大統領選。理由は3つ。

①共和党が2期8年続き、復元力が働き、民主党に移るころだった。同じ政党が3期続いたのは、レーガン2期とブッシュ父の12年だけ。

②現職大統領の支持率が低い。ブッシュ大統領の支持率は25%程度で、極端に低い。共和党に不利。

③景気がよければ与党に有利。(悪ければ野党に有利)

(4)オバマは魅力的な候補。3つの多様性を象徴している。

①オバマは1961年、ハワイで生まれた黒人と白人のハーフ。当時、全米3分の1の州で、白人と黒人の結婚が禁止されていたが、ハワイの州法では禁止されていなかった。父母がハワイで出会ったことが重要 → 人種の多様性

②オバマの母は、オバマの父と別れた後、インドネシア人と結婚し、オバマは最大のイスラム国に3年間暮らした → 文化の多様性

③オバマはハーバードに進学。その後、シカゴの貧困地域でコミュニティオーガナイザーに → 社会階層の多様性

(5)オバマは雄弁家。天才的に話がうまい。オバマが勝のは必定。元NHKの日高さんはマケインが勝つと断言していた。インチキの典型。ただ、8月に起こったロシアのグルジア侵攻でマケインの支持率が上がった。ペイリン効果もあった。米国の保守の壁は厚く、人種偏見もある。民主党分裂の可能性もあり、オバマが負ける可能性もあった。最終的にオバマが勝ったのは金融危機が要因。これにより、外交よりも内政に有権者の関心が向いた。生活を守る大統領を選んだ。

(6)オバマは、自分の信念にかかわらず、政治的に望ましい方向にシフトする。第2のケネディ、ローズベルト、リンカーンになる可能性。期待はずれに終わり、第2のカーターになる可能性もある。オバマは途方もないカリスマがある。第2のレーガンになるかも知れない。

●今後の日米関係

(1)日米関係がどうなるのかという質問の背景には、日米関係は米国次第という発想がある。日米関係をどうしたいかを問うべきで、日米関係を主体的に変える必要がある。日米関係を強化し、発言力を強めたい。

(2)日本の政局が不安定。2世、3世議員が多く、最近では首相の親族しか首相になれない。これは日本の民主主義にとって危機。日本の政治が袋小路に入っている。日米関係をどうするかという前に、日本の民主主義をどうするかが重要。

(3)オバマの課題は金融危機対応。麻生首相のプレゼンスはない。外交の中での争点は、アフガニスタン、イランの核武装。米国はアフガン兵力を増強する。ドナーカントリーで200億円出すが、どの国が出すか決まっていない。イギリス、カナダ、ドイツ、オランダはアフガンに軍隊を出しており、金融危機でお金は出せない。日本は憲法の制約で人は出せない。もっとお金をという議論になってくる。

(4)北朝鮮問題で、ブッシュ政権は焦りからテロ支援国家指定を解除。同盟国への配慮を欠いた。オバマは対話路線。

(5)2010年は日米安保改定50年。APEC首脳会談が日本であり、オバマは必ず日本に来る。外務省は日米安保を再々定義する共同宣言を出したい。地球環境や中国、国際テロにどう取り組むかが重要なポイント。

(6)戦後、日米関係で成功した政治家は、アジアでも成功している。岸しかり中曽根しかり。米国かアジアかではなく、立体的ビジョンが求められる。小泉は例外。ビジョンがなかった。安倍さんはイデオロギーを前面に出して参院選で大敗。国内のコンセンサスビルディングがなかった。政治は好き嫌いではない。妥協するのが政治。福田さんは説明責任能力に欠けた。

●田母神論文

(1)内容の是非にかかわらず、敵性勢力が批判し、大きな問題になることは分かっていた。これにより喜ぶのは中国、北朝鮮だ。これにより、拉致被害者の帰国が少なくとも一週間遅れた。日本のイメージを傷つけ、国益を害した。将軍は戦略的な思考をしなければならない。書きたいなら、制服を脱いで書くべきだ。それになぜアパホテルの懸賞論文なのか。本気で主張するなら、NYタイムズに投稿すべきなかったのか。アパとの親密な関係が指摘されている。賄賂ではなかったのかという邪推を招く。李下に冠を正さずという言葉を知らないのか。

(2)田母神論文はいくつかの観点から批判がある。戦略的観点や、論文のレベルなど。日本軍の進駐は条約に基づくというが、条約には圧力がつきもので、その程度が問題。論文には想像力の欠如が山のようにある。

(2008年11月15日午前、拓殖大学にて、海外事情研究所国際講座)

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2008年11月14日 (金)

押し付けは「地方分権」か

 麻生太郎首相が金融サミット出席のため、ワシントンに到着した。首相としては、1990年代後半の金融危機を乗り切った日本の対応を教訓に、短期的な金融市場安定化策として、経営者責任を明確にした上での金融機関への公的資金注入の必要性などを訴えて、サミットで主導的な役割を果たしたい考え、だそうだ。

 背景には、「経済の麻生」を国際的にアピールするとともに、国内向けには、国際会議での活躍を印象づけ、低迷する内閣支持率のアップに少しでも役立てたいとの思いがあるのだろう。

 とはいえ、定額給付金の迷走ぶりを見ると、とても経済政策を主導したとは言えないし、第一、いくら国際会議の場で自分を売り込んでみても、国際的な関心が麻生首相に向くことはないだろう。単なる首相の自己満足に終わる可能性が高い。

 金融サミットをめぐる評価は、それが終わった時点で試みたい。

 ところで、麻生首相は出発前日、定額給付金の受け取りにあたって所得制限を設けるかどうかを各自治体にゆだね、同じ所得でも住む自治体によって受け取れる人と受け取れない人が出てくることを「だって地方分権なんだから、よろしいんじゃないですか」と言い放った。とても、地方自治を担当する総務相を務めた人の発言とは思えない暴言だ。

 地方分権とは国の権限や財源を地方に移譲し、地方の裁量で実情に応じた施策をとることを指す。

 しかし、今回の定額給付金は、もともと地方自治体側が求めたものではなく、国の政策だ。自民党の公明党対策といってもよく、地方自治体はその事務を押しつけられたに過ぎない。ましてや、高額所得者を給付対象にするかどうかは、高度な政治判断が必要な問題だ。

 政府・与党が1800万円という目安を示したとはいえ、その判断を各自治体にゆだねたのは、政府・与党内で調整しきれなかったためで、そのつけを地方に回すことが地方分権ではないことは、火を見るよりも明らかだ。

 もし、首相が地方分権を推進したいなら、定額給付金の財源として用意する2兆円を各自治体に財源委譲し、その使途は各自治体の工夫に任せたらどうだろうか。各自治体が知恵を絞って、それぞれの景気浮揚策を考え、実現したら、それこそが地方分権の成果ではないのか。

 前回、首相の国語力のなさを指摘したが、首相は漢字の読み方を知らないばかりか、重要政策の定義も知らないらしい。地方分権の定義も知らないような人物が総務相をやっていたと思うと、背筋が寒くなる。

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麻生首相の言語力

 揚げ足を取るつもりはないが、麻生太郎首相の言語力の欠如には、耐え難いものがある。

 発端は11月11付の朝日新聞朝刊だ。

 http://www.asahi.com/politics/update/1110/TKY200811100225.html

 記事によると、麻生首相は「踏襲」を「ふしゅう」と読み間違えたが、この報道をきっかけに、首相が漢字が苦手なことが次々と報道された。 「頻繁(ひんぱん)」を「はんざつ」、「未曾有(みぞう)」を「みぞうゆう」という具合だ。

 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20081113-OYT1T00202.htm

 http://mainichi.jp/select/seiji/news/20081113ddm005010124000c.html

 首相は12日夜、記者団に「読み間違えた」と釈明したが、間違えたのではなく、読み方を知らなかったのだろう。日本語の言語力が欠如しているといわざるを得ない。

 ベストセラー「国家の品格」を書いた藤原正彦氏によると、「国語力を取り戻すことが日本人としての品格を育み、日本という国柄を再生させる第1の要諦」なのだそうだ。

 保守派の旗頭が国語力を著しく欠いていたとすれば、保守派にとっても由々しき自体だろう。

 首相はまんが好きで有名だが、まんがを読む前に、漢字や国語の勉強をして、一般書を読み重ねることが必要だ。私は自分の子どもに「まんがばっかり読んでいたら、国語の成績はよくならないよ」と注意してきたが、首相は、こうした注意を聞かずに育ってきたに違いない。注意する人さえいなかったのかも。

 言語力のなさでは、ブッシュ米大統領もぴかいちだったが、麻生首相は「遅れてきたブッシュ」というところか。

 一国民分際で、首相にまで上り詰めた人にこんなことを言いたくないのだが、あえて言わせてもらおう。

 「まんがを捨てて、本を読もう」

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2008年11月13日 (木)

定額給付金、丸投げとは驚いた

 定額給付金をめぐる与党合意が11月12日まとまった。金融危機に伴って低迷必至な景気を、個人消費を刺激することでてこ入れするのが目的で、1人あたり1万2千円、18歳以下と65歳以上には8千円を上乗せする。

 そもそもこの定額給付金、受け取る側の国民にはすこぶる評判が悪い。報道各社の世論調査では、おおよそ6割以上が「不要」「評価せず」と厳しい評価を下している。

 自民党は1999年にも、公明党の意をくんで地域振興券を発行したが、このとき景気浮揚効果は、経済企画庁(当時)のアンケート調査によると、新たに約2,000億円強の消費押し上げ効果しかなかったと推定されている。このときの発行額が約6200億円だから32%だ。思ったほどの効果はなかったと言っていい。

 このときの地域振興券は、当時野党だった公明党を与党に引きつけるための国会対策費だった意味合いが強い。今回の定額給付金も、自民党離れを起こしつつあった公明党を引き留めるという側面を持つことは否定できない。世論調査で不評なのは、有権者がそのあたりの事情を見抜いているからではないか。

 加えて驚いたのは、所得制限を設けるか否かを、各自治体の判断に丸投げしたことである。

 所得制限をめぐっては、与謝野馨経済財政担当相が1日の民放番組で「高い所得層にお金を渡すのは生活支援の名に反する」と発言し、中川昭一財務相らが事務手続きの煩雑さを理由に反対したことから、政府・与党内で議論になった。

 結局、所得制限については1800万円という目安は設けたものの、法律では定めず、各自治体の判断にゆだねることになったが、これは、政府・与党内で決着できなかった問題を、自治体に押しつけたことは、火を見るより明らかだ。

 所得制限を法律で定めることになれば、事務手続きが煩雑になり、年度内に間に合わないという理由は分からないではない。しかし、結果的に麻生政権の政府・与党内での調整能力不足が露呈しただけではないのか。

 首相は12日、記者団の質問に「それ(現場の混乱)はあなた(記者)の希望であって、全然現場は混乱しない」と強弁したが、首相の指導力が発揮されることはなかった。

 早期解散を期待されながら解散権を行使しないことで、当初から高くない内閣支持率はさらに下落しつつある。発足当初から政権末期状態の政権が三代続くのは異常としか言いようがない。金融危機で、やるべきことをやらなければ解散できないのは分からなくはないが、一刻も早く、国民に政権選択をゆだねるべきである。選挙期間中も政府がなくなるわけではない。この言葉は他ならぬ、麻生首相の言葉である。

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2008年11月11日 (火)

田母神論文再論

 きょう午前10時から参院外交防衛委員会で、田母神俊雄航空幕僚長が参考人として招致される。このブログを書いているのが午前5時なので、約5時間後だ。田母神氏はおそらく自説を再び展開するのだろうが、やはり航空幕僚長という制服自衛官のトップに立つ人が、懸賞論文への応募という形にしろ、政府見解と異なる自説を堂々と表明することには違和感を覚える。文民統制の観点からで、田母神氏の行為はやはり、制服自衛官としては暴走としか思えない。

 私自身、これまでもこのブログで書いたように、国民の生命と財産を守る最小限度の軍事力(日本政府はあくまでも防衛力と呼ぶが)を保有することは、憲法が認めるとの立場を取る。危険な任務に日夜、服している自衛官に対しても、尊敬の念を抱いてやまない。生命を賭して、国民を守る崇高さは、何人によってもゆがめられることはあってはならない。

 しかし、それは規律への絶対的な服従があってのみ可能である。その規律の最高位に位置づけられるのは、文民統制に他ならない。軍隊が文民統制から外れると、国民をどれほど悲惨な結末に導くかは、太平洋戦争敗戦に至った経緯を見れば明らかだ。

 11月7日付の産経新聞朝刊に掲載された、櫻田淳東洋学園大準教授の「正論」によれば、終戦時の陸軍大臣だった阿南惟幾は、二・二六事件の際、陸軍幼年学校校長として全校生徒を集め、「農民の救済を唱え政治の改革を叫ばんとする者は、先ず軍服を脱ぎ然る後に行え」と厳しく訓示したという。

 もちろん、自衛官とはいえ日本国憲法に庇護された日本国民である限り、思想信条の自由はあるが、それと職責に伴う義務とは別問題だ。田母神氏がもし、自らの信条を自由に表明したいのであれば、制服を脱いでからにすべきだった。

 今回の行為が、どれほど組織としての自衛隊への信頼を損ねたか。自衛隊発足以来、自衛官一人一人が厳しい訓練や任務、国際貢献を地道に重ね、国民の信頼を勝ち得てきただけに、軽率な意見表明は誠に残念だ。

 防衛大学校の五百旗頭真校長は11月9日付の毎日新聞朝刊に「国、国民への『服従』は誇り」と題するコラムを寄稿し、文民統制の重要性を指摘している。

 本日の参考人招致で、田母神氏は、文民統制から外れた自らの行為を反省し、自衛隊への国民の信頼を損ねたことを率直に謝罪すべきである。再び自説のみを展開するような往生際の悪さを見せれば、武人としてあるまじき行為であることは論を待たない。

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2008年11月10日 (月)

政治的領域を侵した空幕長論文(2)

田母神俊雄空幕長の更迭に関連し、歴史認識とはどうあるべきか、ノンフィクション作家の保坂正康さんのインタビュー記事がありますので、リンク先を紹介します。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/sokkyo/news/200708/CK2007081402040841.html

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2008年11月 9日 (日)

政治的領域を侵した空幕長論文

 「我が国が侵略国家だったというのはぬれぎぬ」と主張する論文をホテルグループ主催の懸賞に応募していた田母神俊雄・航空幕僚長が更迭された。歴史認識に関して論議があることは認めるが、空幕長という空軍トップの意見表明としては不適切だったと指摘せざるを得ない。

 私自身、国民の生命財産を守るための必要最小限の軍事力は必要だと考えている。そうした軍事力は、日本国憲法を改正しなくても、持つことが可能だとの立場を取る。解釈改憲は、英国と不成典憲法と同様、有効だと考えることが現実的と考えるからだ。

 さて戦後、戦力の不保持を明記した憲法下で、自衛隊の存在をいかに認めるかは、自衛隊を旧軍といかに切り離すかが大前提であった。軍の政治介入により、国を勝算なき戦争に導き、300万以上の同胞に犠牲を強いたことの反省からだ。

 言論の自由が認められた現行憲法下で、個々人が自らの意見を表明することは当然の権利だが、空幕長という立場で表明する必要、妥当性があったのか。むしろ、営々と積み上げられた自衛隊への信頼を揺るがす結果になってしまったのではないか。立場をわきまえず高度な政治判断が必要な領域にまで踏み込んでしまったのは、行き過ぎとのそしりを免れない。仮に確信犯だとしたら、極めて悪質だと断ぜざるを得ない。

 さらに、私が問題だと思うのは、懸賞論文の選考過程だ。新聞報道によると、論文は筆者の名前や肩書きを伏せた形で行われたというが、外部による検証が必要だろう。空幕長と論文を募集したホテルグループのトップはこれまでもきわめて親しい関係にあり、最初から田母神空幕長に賞金を与えるために、懸賞という形を取った「賄賂」だった可能性がぬぐいきれないからだ。やましいことがないならば、今すぐにでも外部機関による検証を受け入れるべきだ。

 今回の更迭劇をめぐって、様々な議論があるが、私が読んだ中では、11月7日の産経新聞の「正論」欄に掲載された櫻田淳・東洋学園大学准教授の論考「空幕長論文の正しさ・つたなさ」に一番、共感したので、リンク先を紹介しておきたい。

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/081107/acd0811070337000-n1.htm

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オバマ大統領誕生と米国の変容

 バラク・オバマ氏がアメリカ大統領選を制し、来年1月、第44代大統領に就任する。選挙直前にはすでに優勢が伝えられていたため、驚きはないが、初のアフリカ系、8年ぶりの民主党政権という意味では感慨深い。

 勝因はいろいろあろうが、やはり一番大きいものは、8年にわたるブッシュ路線の否定だろう。

 ブッシュ政権は米中枢同時テロを受け、戦時体制に突入した。そして報復のためにアフガニスタンを攻撃、その後、大量破壊兵器などなかったにもかかわらず、イラクに兵を進めた。そして4千人以上という米兵を失い、多くのイラク国民を犠牲にした。

 この過程で、ブッシュ政権は強大な軍事力を背景に一国主義(unilateralism)を推し進め、多国間主義(multilateralism)を放棄した。ブッシュ大統領は戦時大統領の強い指導力、決断力を演出して、父が果たせなかった再選を実現した。アメリカは一極支配を謳歌しているかに見えた。

 しかし、イラク・アフガニスタン情勢の悪化と、新自由主義経済の一つに帰結である金融危機は、そうした一極支配の終焉を告げた。皮肉にも、金融危機は大統領選が佳境に入るころ起こり、共和党のマケイン候補の足を確実に引っ張り、オバマ候補の優勢を決定づけた。急速なブッシュ路線離れが、米国政治を大転換させた。

 実は、私自身、オバマ氏が2004年の民主党大会で行った基調演説をボストンで聴き、将来、大統領候補になることを確信したのだが、それは早くても2012年の大統領選だろうと思っていた。米国社会の変容、つまりブッシュ政権の一国主義、新自由主義経済からの転換が私の予想以上のスピードで進み、オバマ氏を大統領に押し上げたのだろう。

 それにしても、うらやましいのは米国社会の復元力だ。それも、二大政党制による政権交代があるからこそ可能だ。アメリカの国としての歴史は浅いが、アメリカという実験国家が生んだ民主主義、三権分立という政治システムは、古代ローマの原始民主制を除けば最も古い歴史を持つ。その点は見落とすべきではない。

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2008年10月30日 (木)

解散攻防の背景に政党助成金

 麻生太郎首相がきょう30日に記者会見し、追加経済対策を発表するとともに、衆院解散を年明け以降に先送りすることを正式に表明する。

 これはあくまで推測だが、首相が「年内は解散しない」と明言することはないと思う。これまでのように「政局よりも政策」「金融危機が実体経済に影響しないようにすることが重要」などの表現で、解散先送りを「事実上」表明することになるのではないか。なぜなら、首相にとって、解散権は首相の大権であり、わざわざ手の内を明かす必要はないからだ。麻生首相は特に、そうした思いが強いと思う。

 それはともかく、首相が解散先送りを表明することで、政局は新たな局面に入るが、年内解散見送りは結局、政党助成金(交付金)狙いに思えてならない。なぜなら、政党助成金は毎年1月1日時点の議員数と直近の衆参両院選挙の結果で決まるからだ。

 自民党に2008年に交付される政党助成金は約158億円。2007年が約166億円だから、8億円減った。これは、自民党が2007年夏の参院選で惨敗し、参院議員数と参院選での得票数が減ったためだ。

 一方、自民党は2005年の衆院選で歴史的圧勝を果たし、この勝利により、2006年の政党助成金は、2005年よりも10億円増えている。

 麻生首相の現在の内閣支持率や、自民党の政党支持率では、自民党が次の衆院選で前回並みの議席を確保することはあり得ず、議席の大幅減は避けられない。そうなれば政党助成金も大幅に減らすことになる。過去の選挙結果から言えば、今の自民党の党勢では政党助成金の減額幅は10億円以上になるだろう。

 問題はその時期だ。政党助成金の決定はあくまで1月1日現在の議員数と得票数が基準であるため、年内に衆院選を断行して惨敗すれば、来年から政党助成金が減らされるが、衆院選を来年に先送りすれば、惨敗しても政党助成金の減額は再来年からになる。つまり、解散を先送りすれば、現在交付されている政党助成金の額を1年間維持できるのだ。

  逆に、民主党からしてみれば、年内の総選挙で議席を増やせば、来年から政党助成金が増えるのに、解散が年明けになれば、政党助成金の増額も再来年からになってしまう。解散をめぐる攻防の背景には、政党助成金をめぐるぶつかり合いもあるのだ。

 とはいえ、解散権は麻生首相が握っている。世界的な金融危機に対応する必要性は認めるが、年内解散見送りの背景に、政党助成金のことがあるとしたらいただけない。首相の「経営感覚」は一政党のために使わず、国民のために役立ててもらいたいものだ。

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2008年10月28日 (火)

◆政治情勢レポート(2)◆2008年10月28日

 ●年内解散見送り

 麻生太郎首相が年内の衆院解散・総選挙を見送り、年明け以降に先送りする意向を固めざるを得なくなったようだ。10月30日に追加経済対策を表明する記者会見で、解散見送りの意向を正式に表明する見通しだ。

 なぜ、臨時国会「冒頭」での解散を模索していた首相が、解散先送りを固めざるを得なくなったのかは、10月25日付けの前回「政治情勢レポート(1)」で詳述したとおり、自民党総裁選効果が思わしくなかった上に、金融危機が深刻化したためである。

http://yoichitoyoda.cocolog-nifty.com/seiji/2008/10/20081025-9c29.html

 ただ、この決断は麻生首相の政権運営をさらに困難にするだろう。

 ●攻勢強める民主

 その第一は、対野党、特に民主党との関係だ。

 民主党はこれまで、首相に早期解散を促すため、2008年度補正予算案やインド洋での給油継続法案の審議に協力してきた。解散見送りとなれば、民主党がこれに反発して、国会運営に協力しなくなるのは確実だ。そうなれば、補正予算はすでに成立したものの、参院で審議中の給油継続法案の早期成立は困難になる。

 民主党が、以前のような抵抗姿勢で国会審議に臨み、野党が多数を占める参院で採決に応じなければ、予算は衆院通過後30日後に自然成立するものの、他の一般法案は、60日間待ち、参院で否決されたものとみなす「見なし否決」規定に基づいて衆院で三分の二以上で再可決しなければならない。

 給油継続法案は10月21日に衆院を通過しており、60日経過後は衆院での再可決が可能になるが、11月30日までの臨時国会の会期を延長しなければならず、たとえ来年1月15日の期限切れ前に給油継続法案の再可決が可能になっても、国会開会中は民主党から激しい攻撃を浴びせられ、内閣支持率の低迷は一層顕著になるだろう。同様のことは、来年1月召集予定の通常国会でも起きる。

 ●変わる公明党との関係

 政権運営が困難になるもう一点は、公明党との関係だ。

 公明党は来年6月か7月に行われる東京都議選の選挙運動に集中するため、衆院選を年内に行うよう主張してきた。首相がこうした意向に答えられなくなれば、連立関係にも大きく影響するのは間違いない。

 公明党の支持母体・創価学会内には、自民党との連立政権の中で、暮らしや平和重視という公明党の存在意義に関わる政策課題で主張が反映されていないのではないのではないかという不満が、もともと強くあった。その上、解散時期でも党の意向を無視されたとすれば、公明党の自民党への視線がさらに冷淡になることは確実だ。自民党が次の衆院選で過半数を取れず、民主党の第一党の座を譲り渡すことになれば、公明党と自民党の関係が決定的に変わることは避けられない。

 内閣支持率低迷の上に、解散見送りで矢面に立たされる弱体化した政権が、国会での激しい攻撃や、連立政権内での公明党の冷たい態度に耐えられるかどうか。通常国会冒頭の衆院解散や、麻生首相が安倍、福田に続いて政権を再び投げ出す可能性すら出てきた「金融危機政局」である。

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2008年10月25日 (土)

◆政治情勢レポート(1)◆2008年10月25日

 ●総裁選「失敗」と金融危機で解散先送り

 麻生首相は当初、就任後の臨時国会冒頭の10月上旬に衆院を解散する腹づもりだった。10月10日発売の月刊誌「文藝春秋」に寄せた手記には「国会の冒頭、堂々と自民党の政策を(民主党の)小沢(一郎)代表にぶつけ、賛否をただした上で国民に信を問おうと思う」と書いている。

 首相は9月29日の所信表明演説で、手記の通り、麻生内閣が取り組む政策課題を列挙し、小沢氏に賛否を「逆質問」している。このことから推測すると、首相は10月1-3日の各党代表質問などで小沢氏の回答を聞いた上で、解散に踏み切る腹積もりだったようだ。

 これに待ったをかけたのが、総裁選の失敗と、金融危機だ。

 自民党は当初、福田首相退陣 → 自民党総裁選 → 麻生首相誕生という流れの中で、自民党への注目度を集め、内閣支持率が高いうちに一気に解散に踏み切る「臨時国会冒頭解散シナリオ」を書いていた。

 しかし、麻生氏の圧勝が確実だった総裁選は「出来レース」との批判を浴びて盛り上がりを欠き、内閣支持率は自民党が期待したほど上がらなかった。例えば、共同通信世論調査では内閣支持率は48.6%で、昨年9月の福田前内閣発足直後の57.8%を下回った。

 一方、自民党は9月下旬に独自の世論調査を行った結果、自民党は220議席程度にとどまり、200議席の大台を割り込む可能性もあるとの調査結果が出た。これが自民党内に伝わったのが10月上旬。以降、冒頭解散もしくは早期解散の流れは一気にしぼんだ。

 これに追い打ちをかけたのが、金融危機だ。何も対策を打つことなく、衆院解散・総選挙に踏み切れば政治空白が出来、国民から批判を受けるのは確実であり、麻生首相は追加の経済対策を矢継ぎ早に指示した。つまり、金融危機で「選挙どころではない」のである。

 追加の経済対策を矢継ぎ早に支持した背景には、「経済に強い麻生」を演出し、近く行われる衆院選で支持を集めようという思惑があるのかも知れない。

 しかし、大恐慌並みといわれる今回の金融危機は、そうした思惑をも吹き飛ばし、麻生首相の解散権を確実に縛りつつある。

 ●年内総選挙なら11月30日が限界

 年内に総選挙を行うには、11月30日が限界とみられる。自民党の笹川尭総務会長は「12月7日までは許容(範囲)」と述べているが、12月に入ると外交日程が山積し、税制改正、予算編成作業が控えているからだ。

 首相は10月30日に記者会見して、金融危機に対応するための追加経済対策を発表する段取りだ。この日に2008年度補正予算が成立する見通しで、首相がこの記者会見の中で衆院解散にどう言及するのかが注目される。もし、解散を明言すれば、11月18日公示、11月30日投開票の日程で衆院選が行われる。

 ただ、首相は、先延ばしされてきた日中韓首脳会談を12月6、7両日に、首相の地元・福岡市で開催することを中韓両国に打診し、了解を得た。

 もし11月30日に衆院選を行い、自民党が負ければ麻生氏は首相の座から降りることになる。そうした可能性がある中で、首脳会談に招いたとなれば外交儀礼上失礼になるので、首相はひょっとしたら、11月30日の衆院選は考えていないのかも知れない、との憶測を呼んでいる。

 首相が11月30日の衆院選を見送れば、考えられる次のタイミングは来年一月召集予定の通常国会冒頭解散、2009年度予算が成立する来年4月解散、通常国会の会期末(来年6月)解散、来年9月の衆院議員任期満了もしくはその近くでの解散だ。

 麻生首相が景気のことを考え、予算こそ内閣最大の仕事だと考えるならば、予算成立後の解散が現実的な対応だろう。 

 ただ、自民党と連立を組み、自民党が選挙での組織的な支援を期待する公明党は、来年の東京都議選(7月22日任期満了)を重視し、都議選と衆院選の間を最低3カ月間あけるように主張している。二つの選挙が近いと、支持者が十分活動できないとの理由からだ。

 麻生首相が公明党に配慮すれば、通常国会冒頭解散が有力なシナリオとなる。任期満了の場合でも、選挙を出来るだけ送らせれば、都議選との間がぎりぎり3カ月間開くようにも出来るらしいが、奇策であり、あまり現実的なシナリオではない。

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2008年10月24日 (金)

首相の品格

麻生太郎首相が夜な夜な、ホテルのバーやレストランなどに通い詰めていることの是非が、報道を賑わせている。

私自身、一国の宰相がホテルのバーに行くことが悪いとは思わない。たまに居酒屋で杯を傾けるのも、ご愛嬌かもしれないが、首相が毎晩のように居酒屋でいっぱいでは、首相という地位に抱く尊敬もあこがれ、威厳もなくなってしまう。

実際、警備の問題等を考えれば、ホテルというのは都合のいい場所である。国家の安全という意味からも、ホテルの利用はやむを得ないというか、むしろ望ましい。毎度のように居酒屋に通う首相だとしたら、国家に対するその見識を疑わざるを得ないだろう。

問題は、記者団が首相にホテル通いをただした10日24日昼のやりとりだ。

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/081022/plc0810221334005-n1.htm

この中で、首相は「そういう言い方を引っかけるような言い方やめろって。もうちょっと事実だけ言え。事実だけ」「あなたのおかげで営業妨害ですって言われたら、新聞社として私たちの権利ですっていって、それずーっと立って店の妨害をして平気ですか?今、聞いてんだよ。答えろ。フ、フ、フ、フ、フ」などと答えている。

麻生首相は、そのがらっぱちな物言いや、オタクぶりが売りなのかも知れないが、この口調は、とても一国の首相としてはほめられるものではない。つまり、品が全く感じられないのである。

その昔、首相は言葉の一つ一つをすごく大事にしていたように思う。大平正芳首相が「あーうー」を口癖にしていたのも、言葉を選んでいるからだと、本人がテレビのインタビューで語っていたことを思い出す。

もう自民党には、首相然とした政治家はいないのであろうか。このようなことが報道を賑わすのも、首相がなかなか衆議院解散に踏み切らないためでもある。

麻生首相は、首相としての自らの品格を問うためにも、そろそろ衆議院を解散して、国民に信を問うたらどうか。

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2008年10月13日 (月)

ネット論壇の可能性と限界

 佐々木俊尚氏の「ブログ論壇の誕生」(文春新書)を読み始めた。これを機に、ブログと論壇、特に新聞論説との関係について、考察してみたい。

 今、ブログで意見表明することが若い世代で一般化し、それが「論壇」とも呼べる状況を生み出しているようだ。これには、インターネット技術の進展や社会構造の変化など、様々な要因があろうと思うが、自由に意見が表明できるようになったことは、その内容の是非はともかく、歓迎すべきことだろうと思う。インターネット技術の進化は、直接民主主義の可能性をもはらんだ展開となるだろう。

その一方、新聞は販売部数が減り、広告出稿量が減っているが、これはブログ「論壇」の隆盛と無関係とは思われない。つまり社説を含めて、新聞の報道内容に対する信頼度が低下しているのではないだろうか。

 ネットの登場に伴い、特に若い世代の新聞離れが指摘されて久しい。ニュースはネットで見ればいいという風潮は、裏を返せば、わざわざ金を払ってまで読む価値がないと思われていることに等しい。

 若者の新聞離れの背景には、新聞が旧世代の代表であり、若い人たちの意見を反映していないと思われていることもあるように考える。新聞はロストジェネレーションと呼ばれる世代に、どれほどの共感を示し、社会に対して彼らに手を差しのばさせるような論陣を張ったのだろう。格差社会でもがく若者たちに対して「今の若い人たちは」などというステレオタイプなものの見方で切り捨ててはいないだろうか。旧世代の擁護は、若者ら新世代との世代間対立を激化させるだけだ。

 新聞の原点は、明治期の自由民権運動だ。その当時の立ち位置は、体制派ではなく、旧体制の打破にあったに違いない。その新聞が戦後60余年を経て体制化し、読者の喪失につながっている。若者からみれば、新聞すら打破すべき体制の一つなのかも知れない。

 もちろん、これまで新聞が多様な言論を守る砦になってきた、そして今後もなり続けることも事実である。新聞がなくなった社会はどうなるのか、容易に想像がつく。社会悪を誰が告発し、社会に知らしめ、体制を動かすのだろうか、と。その部分のすべてを、ネットが担いきれるであろうか。現状では否であろう。その間、新聞の役割は、いささかも揺るぐことはない。

 かといって、今のままの新聞では自然死を待つようなものだ。新聞は今一度、創刊の原点に立ち戻り、ロスジェ世代を生んだ経済的、政治的、社会的要因を考え、それを克服するための処方箋を指し示すべきであろう。それが新聞を今一度、生まれ変わらせる唯一の道であると、考える。

(関連記事)http://tb.japan.cnet.com/tb.php/20383836

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2008年10月10日 (金)

参考●ノーベル賞の教訓

昨日書いた「ノーベル賞の教訓」に関連して、伊東乾・東大准教授の洞察深い記事「日本にノーベル賞が来た理由 幻の物理学賞と坂田昌一・戸塚洋二の死」を見つけましたので、参考記事としてリンク先を紹介します。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20081009/173322/

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2008年10月 9日 (木)

ノーベル賞の教訓

 日本人がノーベル物理・化学賞を相次いで受賞した。特に物理賞は、3人同時受賞という快挙だ。受賞された先生方に、まずはお祝いを申し上げたい。

 今回の日本人による受賞は、世界経済が資本主義の暴走で先行きの不透明さを増す中で、日本社会に明るさを与える好材料であることは論を待たない。と同時に、いくつかの教訓を示していると思うので、思いつくままに述べてみたい。

 まずは、基礎科学研究の重要さだ。今回の受賞、特に物理学賞の対象となった研究は、直ちに経済的利益が出なくても、長期、かつ多岐にわたる研究の土台となったものである。昨今、短期間のうちに成果を求める風潮が強いが、今回の受賞は、そうした風潮に警鐘を鳴らすものだ。

 もう一つの教訓は、前述のものと関係があるのだが、今回の受賞者4人のうち、2人がアメリカ在住であるということだ。このことは日本での研究環境の未成熟さを表しているようでならない。渡米した理由はそれぞれあろうが、日本で研究のための資金も設備も人材も豊富なら、わざわざアメリカには行かないだろう。

 日本政府には、社会科学を含めて、より一層の基礎科学研究への投資を求めたい。化石資源のない日本では、人材と技術だけが、生き残るための資源である。人材流出は、資源の乏しい日本にとって、死活問題なのである。

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2008年10月 7日 (火)

東国原知事の逡巡

 日教組などに対する発言の責任を取って辞任し、次期衆院選に立候補しない意向を表明した中山成彬前国土交通相の後継候補として、宮崎県の東国原英夫知事が宮崎1区からの立候補に、一時意欲を示していた。

 立候補するか否か逡巡していたが、結局、断念したようなので、そのこと自体は歓迎したい。とはいうものの、そもそも立候補に意欲があるとみられるような発言をしたこと自体、評価できるものではない。

 その理由の一つが、知事はまだ一期目途中であるという点だ。マスコミでもてはやされているとはいえ、どんな仕事をやり遂げたのだろう。これが成果だと胸を張って言えるものがあるのであろうか。国政に続く、任期途中での「知事の椅子」投げ出しは、政治不信を深めるだけではないのか。

 さらに、県知事は国政のステップではないという点だ。確かに、地方分権が進んでいない以上、国が都道府県の上部機関であるという位置づけに変わりはない。国が変わらなければ、都道府県政が変わらないのも事実だ。

 しかし、これまでも多くの都道府県知事が国政に転出したが、それにより、地方分権は飛躍的に進んだのであろうか。むしろ、都道府県の側で声を上げることの方が、国を動かす力になるのではないか。その点では、石原慎太郎都知事の国に対峙する姿勢を評価したいと思う。その政治姿勢、信条は別にして。

 もし、東国原知事が県知事を国政へのステップと考えているなら、大きな勘違いである。国政への転出に、県民から反対意見が多数寄せられたそうだが、その民意は知事への警告でもある。

 宮崎県民が誰を知事に選ぼうが自由だ。選挙の結果は当然、尊重されなければならない。しかし、私個人は素直に、東国原知事を評価する気にはなれない。それがなぜか、具体的な理由を明示しなければ、説得力を持たないだろうが、積極的に評価できる要素が、個人的にはどうにも見当たらない。タレント政治家というものを、どうにも受け付けないのである。

 そんな人物が、国政の場に出てくることは、今回は避けられそうで、一安心している。とりあえず、宮崎県民の良識に敬意を表しておきたい。

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2008年10月 3日 (金)

議場の神聖性

 麻生太郎首相の所信表明演説への各党代表質問が終わった。論戦はいつものようにかみ合わず、低調だったようだが、議論の内容は一時、横に置いて、議場の神聖性について考えてみたい。

 というのも、麻生首相、中川昭一財務相が議場を相次いで退出する際、一礼していたところをテレビ中継が映し出していてからだ。彼らは議場に入るときも一礼していたことだろう。そのこと自体、右傾化しているといわれる彼らの政治思想の是非は別にして、歓迎されるべきだと思う。

 議場、特に国会の本会議場は、国民の代表が議論を戦わせる神聖な場所である。形式的であるにせよ、この国の方針はすべて国会の議場で決まる。時には、国民の生殺与奪をも握る。そんな重要な場所が、世俗にまみれていていいわけがない。

 今、国会議員と呼ばれる人たちの中で、真に尊敬できる人間が、どれほどいるのだろう。少なくとも議場を神聖な場所と思っていれば、その立ち振る舞いにも、自ずから品格が出てくるはずだが、そうでないところをみると、議場の神聖な場所だとは思ったこともないのだろう。政治不信、自らの代表であるはずの国会議員に対する国民の不信は、案外、そうしたことに起因しているのかもしれない。

 武道場はもちろん、野球場など「戦いの場」に、選手が一礼して入るのは、礼節を重んじるこの国では常識化している。むしろ、議場でそうした慣例がないこと自体が不思議だ。私自身、麻生氏や中川氏ら、自民党内で保守と呼ばれる人たちの主張に、すべて同調するわけではないが、礼節を重んじることは、人間として、社会人としての当然の姿勢だと思う。

 国会議員、さらには地方議会の議員にも、その思想信条にかかわらず、議論を戦わせる議場を神聖な場所だと意識していることを表現してほしい。それが政治への信頼を回復する第一歩ではないかとの思いを、昨今の政治状況をみて、強くしている。

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2008年10月 2日 (木)

麻生首相「代表質問」の愚挙

麻生首相就任後初の所信表明演説は、野党第一党・民主党の小沢代表に質問を突きつける内容だった。これに対し、小沢氏は政権奪取時の構想を示す内容で、さながら所信表明演説だった。主客逆転した状況に、衆院選を目前に控えた緊張感が漂う。

 首相の「代表質問」には、野党側の見解をただし、あわよくば解散の口実を作るとの思惑が透けて見えるが、それが妥当だったかどうかには疑問が残る。民主党代表の「所信表明演説」はこれまでにも例があり、珍しいものではないが、民主党の出方に関係なく、首相なら堂々と国民にその所信を訴えるのが筋だったのではないか。総選挙に向けた余裕のなさが現れ、選挙にも逆効果だと思うのだが、これは要らぬお節介か。

 本来なら、党首同士の丁々発止のやりとりは、党首討論でしてほしかった。小沢氏が自ら作り上げた制度にもかかわらず、いつも避けようとすることも、首相が本会議で「代表質問」の愚挙に出た理由の一つだ。小沢氏も堂々と党首討論に応じてほしい。

 国民の信を得ていない政権が続き、国会のねじれが解消しないことが最大の政治空白であり、一日も早い衆院解散・総選挙が望まれるのは論を待たないが、金融危機など事ここに及んでは党利党略にうつつを抜かしている場合ではない。解散を一時先送りしてでも与野党が力を合わせてこの危機を乗り越えるべきだ。民主党にとっても、国民に政権担当能力を示す機会だと思うのは、私だけであろうか。

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2008年9月28日 (日)

中山国交相辞任と閣僚の資質

中山成彬国土交通省が、日教組や成田空港拡張反対派に対する発言の責任を取って、辞任する意向を固めた。24日に就任し、在任5日間は、1988年、竹下内閣の長谷川峻法相の4日間に次ぐスピード辞任だ。

日教組発言の是非については、賛否両論があろう。自民党の保守派にしてみれば、中山氏の発言は至極当然といえるかもしれない。しかし、中山氏が閣僚の資質を欠いていたという点では異論があるまい。

自民党の肩を持つわけではないが、近く総選挙が行われるだろうみられ、与党の結束が何よりも大切な切迫した状況下、批判や反発を招くことを承知の上で発言したことは、軽率のそしりを免れない。麻生内閣が、福田康夫首相の下では総選挙を戦えないとの与党内の声を背景に誕生したことを考えれば、いったいこの人は、どういう意識で閣僚になったのだろうかという疑問がぬぐい去れない。おそらく、与党の多くの議員がそう感じているに違いない。

同時に、麻生太郎首相の任命責任も免れるものではないだろう。

中山氏は自分や妻子が官僚出身、あるいは現職官僚であることを理由に、行政改革担当相への就任要請を断ったという。その程度の感覚の持ち主が、閣僚になろうという気が知れないし、それを登用する気も知れない。国政を担うことの重要性を、首相や中山氏が理解していなかったとしか思えない。

もちろん、日教組の過去や現在の言動がすべて正しいというつもりもない。しかし、そうしたことを勘案しても、中山氏の確信犯的は問題発言の連発は、とうてい理解ができない。その程度の議員しか、閣僚候補はいなかったのだろうか。もし、いなかったとしたら、自民党の劣化、ここに極まれりとしか言いようがない。

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2008年9月26日 (金)

小泉的な、余りに小泉的な

小泉純一郎元首相が25日、近く予定される次期衆院選に立候補せず、政界を引退する意向を関係者に伝えた。政界では驚きを持って受け止められたが、自らの美学を貫いたという意味で、「小泉的な、余りに小泉的な」引き際だった。

小泉氏の首相在任中の業績については最近、「小泉改革の負の遺産」として語られることが多いが、業績についての論考は別の機会に譲るとして、今回は引退自体の意味について考えてみたいと思う。

小泉氏は現在66歳。父の純也氏は65歳で死去しており、小泉氏は以前から65歳をめどに政界を引退する意向を表明していた。こうした意向は、首相在任当時、中曽根康弘元首相が引退勧告に抵抗した際に表明しており、60代での政界引退表明は、自らが政界での「老害」になることを避ける意図があることは明白だ。その意味では今回の引退表明は、自民党らしくない小泉美学にも映る。

日本社会で長寿化が進む現在、65歳が政界における定年かどうかは議論があるところだが、政治家としての「早い引退」は、依然、権力を手放そうとしないほかの長老政治家の進退にも影響を与えるかもしれない。

その一方、小泉氏は後継者に次男の進次郎氏を指名した。長男の小泉孝太郎氏はすでにタレントとして活動しており、小泉氏自身の中では、以前から進次郎氏が念頭にあったのだろう。進次郎氏は米国の有力シンクタンクCSISで研究員を務めるなど、その準備を着々と進めていた節がある。小泉氏の秘書を長年務め、小泉内閣の首相秘書官だった飯島勲氏が昨年、小泉事務所を突然去ったのも、進次郎氏への代替わりを念頭に置いたものだった。

ただ、小泉氏が次男を後継指名したことは、いくら三代続いた政治家の家系とはいえ、余りにも自民党的だ。テレビニュースの解説では、そうした点をとらえて落胆を表明する解説者もいた。

潔い引退表明と身内の後継指名。「相反する」小泉氏の行動をどう説明したらいいのだろう。実は「相反する」と思いこむことに、大きな誤解がある。

小泉氏は「自民党をぶっ壊す」と絶叫して、人気を博したことから、自民党的ではないと思われがちだが、これまでの政治行動は例外なく自民党的だからだ。

小泉氏は森喜朗氏の首相在任中、清和政策研究会、いわゆる森派の会長を務めた。その間、2000年に起こった、森首相に退陣を迫る「加藤の乱」では、小泉氏は盟友とされた「YKKトリオ」の加藤紘一、山崎拓両氏を切り捨て、森首相を守った。そこで小泉氏を支配していたのは、派閥の論理に他ならない。

これよりさかのぼること4年、鳩山由紀夫氏が新党をつくろうとした際、小泉氏を党首として迎えようと打診したが、小泉氏は自民党を離れようとしなかった。小泉氏はあくまでも自民党の議員であることにこだわり続けたのだ。

小泉氏は3回目の総裁選挑戦で、首相の座を射止めたが、それまでは、自民党にこだわることが、小泉氏の限界だと指摘されたことがあった。その意味で、小泉的とは自民党的と同義語だと言ってもいいだろう。小泉氏が自民党的でないということの方が幻想なのだ。言い換えれば、小泉氏のような一匹狼を首相の座に据える融通無碍さが自民党的であるとも言える。

先に述べたように、小泉氏の業績についての論考は別の機会に譲るとして、一つだけ指摘しておきたいのは、今、テレビで小泉批判を展開しているキャスター、解説者は、小泉氏の構造改革によって既得権益を失った自民党旧竹下派の担当記者を長く務め、旧竹下派寄りだと、しばしば批判されていたという事実である。

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2008年9月25日 (木)

政治不信と政治過信

麻生太郎氏が首相に指名され、与野党ともにいよいよ衆院解散・総選挙に向けた動きを加速し始めた。当面の焦点は、麻生新首相がいつ解散に踏み切るかだ。

民主党は本年度補正予算案の成立に協力すると言っているが、これまでの姿勢から言えば、本当に協力するかどうかは疑わしい。結局、野党が多数を占める参院に予算案が送付されれば、採決せずに放置するかもしれない。成立には衆院通過後1カ月経過することが必要だから、民主党が参院での予算案採決を阻めば、麻生新首相は、それを理由に解散に踏み切ることになるだろう。

麻生氏を総裁に選んだのはあくまでも自民党総裁選であり、一般の有権者の信任を得たわけではない。二代続けて国民の信を得ていない首相が政権を投げしたわけだから、麻生氏は一刻も早く解散に踏み切るべきだろう。

有権者は2005年の前回衆院選で、与党に三分の二以上という圧倒的な議席を与えた。しかし、自公政権の末路は惨めなものだ。あのときの約束はどこまで果たされ、国民の生活はどれほどよくなったのか、あるいは悪くなるのをどこまで食い止められたのであろうか。自らの不作為を民主党のせいにするなら、それこそ政権政党たる自覚が足りない。

フランス革命に大きな影響を与えた十八世紀の哲学者ルソーは、その著書、社会契約論に「イギリスの人民は自由だと思っているが、それは大まちがいだ。彼らが自由なのは、議員を選挙する間だけのことで、議員が選ばれるやいなや、イギリス人民はドレイとなり、無に帰してしまう」と書き記した。

結局、公約であれマニフェストであれ、選挙では甘言をささやくものの、いざ選挙が終わってしまえば、どこ吹く風だ。例えば、2005年の衆院選で、有権者は郵政民営化を叫ぶ小泉純一郎首相を支持し、自民党を圧勝させたが、小泉首相が退陣してしまえば、郵政民営化など熱病だったと言わんばかりだ。

麻生内閣の顔ぶれを見ても、党規違反で処分された議員が、またぞろ入閣している。状況の変化に柔軟に対応するのが政権与党の責任とも言えるが、今の政権与党は責任を果たしていると言えるのか。小泉氏は、自民党延命のためのただの人寄せパンダだったのか。

有権者の側にも問題がある。今のこうした状況はよく「政治不信」と言われるが、実は政治を信用しすぎた「政治過信」ではなかったのか。

例えば、高価な商品を買う場合、衝動買いはしない。じっくり情報を集め、人の意見を聞いて選ぶだろう。政治家・政党を選ぶのは、実は高価な買い物だ。これまでだまされ続けてきたと感じる有権者は、今回は「政治過信」に陥らず、じっくり吟味して投票してみてはどうだろうか。

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2008年9月23日 (火)

小沢氏「国替え」の深謀

民主党の小沢一郎代表が、これまで選出されてきた岩手4区を離れ、首都圏に「国替え」することが取りざたされている。国会議員やその候補者にとって、地盤を離れるのはよほど覚悟のいることだろう。

自民党は、地盤を死守したい候補者を調整する方法として、比例代表と小選挙区を選挙ごとに入れ替える「コスタリカ方式」を発明した。コスタリカは連続再選を禁止しているのであって、自民党のコスタリカ方式とは根底の思想が違うが、とりあえず定着しているので、こう呼ぼう。

国会議員はその選挙区に住民票があることを被選挙権の条件としていない。これは国会議員がその地域の代表ではなく、広く国民の代表とされているからだ。故に、地域への利益誘導は国会議員の仕事ではない。誰がどこから選ばれてもいいのである。だから、地盤の存在は、理念に反する。一度築き上げた地盤を手放すことを皆、したがらないだろうが。小沢氏が率先して、地盤にこだわらない姿勢を示すことで、利益誘導に慣れた自民党政治に喝を入れることになるだろう。

小沢氏の国替えには、もう一つ重要な意味がある。それは都市部での得票の積み上げだ。

民主党は前回2005年の衆院選で大敗した。しかし、選挙区ごとに2003年の衆院選と比べてみると、いわゆる地方ではそれほど議席の変動はなく。大きく動いたのは東京、大阪などの都市部だ。都市部を制しなければ、民主党が政権を奪取することはできない。都市部での民主党の票を上積みするための国替えなのだ。

選挙後の協力態勢や再編を考えれば、太田昭宏公明党代表の東京12区への国替えは得策でないとの意見もあるが、小沢氏が12区にくれば、公明党抜きの新体制をつくるとの意思表示になる。

もっとも、自民党の菅義偉選対副委員長は麻生太郎新総裁も国替えして、小沢氏と戦えばいいと言っているようだが、小沢氏が東京12区に国替えしたら、麻生氏も12区に国替えして同じ与党の太田氏と戦うのであろうか。小沢氏へのけん制だとしても、思いつきも甚だしい。

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自民党総裁選の蹉跌

自民党総裁選が昨日終わり、麻生太郎氏が24日に首相に指名される。

福田康夫首相は、自らが辞めることで総裁選に持ち込み、新首相誕生の勢いに乗って苦戦が予想される衆院選を乗り切ろうと考え、民主党代表選と重なるこの時期を選んで辞任表明したようだ。

しかし、そのもくろみは今のところ外れたと言っても過言でない。総裁選が予想よりも低調だったからである。

そもそも総裁選は、自民党の「コップの中の争い」でしかない。2006年の政治資金収支報告書によれば、自民党員は1,210,323人。日本の人口の約十分の一だ。街頭演説をしても、その中に自民党員はどれほどいるのだろう。

もちろん、新聞やテレビで報道されることを織り込んで、街頭に立っているのだろうが、2005年の郵政解散・総選挙での刺客騒動に踊らされたマスコミ側は、今回は慎重で、報道は抑制気味だった。もちろん、読者や視聴者の興味を引くようなものなら、マスコミもこぞって報道したのだろうが、そうならなかったのは、麻生総裁誕生に向けた仕掛けが見え見えで、ドラマ性がなかったために他ならない。

本番は言うまでもなく、衆院選だ。投票日をめぐって、与党内や与野党間で駆け引きがあるようだが、どうせ来年9月までにはやらなければならない。いつあってもいいように、有権者であるわれわれも、そろそろ政権選択の準備を始めたい。国民に信を問うていない首相が三代も続くのは、どう考えても異常だ。憲政の常道ではない。

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2008年9月21日 (日)

保守主義の本質

「保守主義」ほど、受け取る人によって多様なイメージを与える言葉はないのではないか。

アメリカで保守主義といえば、政府からの自立を目指す自由主義、ロシアでは共産主義を指す。また、これに「新」が付くと、ブッシュ政権下で台頭した「ネオコン」を意味する。自由、民主主義、市場主義など、いわゆる米国の価値観を、軍事力を使ってでも世界に拡大しようという人たちだ。この人たちはもともと、社会主義、特に、共産主義を世界に広めようというトロツキストが出発点だったらしい。自らの価値観で世界を塗りつぶさないと、自らの存在基盤も危うくなるという点で、ネオコンとトロツキストは共通しているが、いかにもややこしい。

一般に、保守主義は、理性に批判的で、伝統を重視するが、伝統とは何かという問題にぶち当たる。われわれが伝統と思っているものでも、必ず起源があり、それが生まれた時点では革新的であり、長い年月の間に形を変えてきているはずである。例えば、日本の伝統芸能と呼ばれるものも、誕生したときから今の形ではないだろう。つまり、重要なのは形よりも、精神であり、伝統とはその精神を受け継ぐことなのである。私自身、そういう意味での伝統は重視したい。伝統を、先人の知恵と言い換えてもいいだろう。

では、日本国憲法、特に、憲法九条を変えることが保守主義なのであろうか。私の見方は、結論から言えば、否である。つまり、60年以上も続き、特段の支障、外国からの侵略がなく、平和が守られている現状から言えば、これをあえて変えなかったことを、先人の知恵と言わずしてなんと言うのであろうか。

決して、一国平和主義を是認しているわけではない。経済大国として、世界の中で、応分の負担をすべきだし、現行憲法下でも、それが十分かどうかの議論は残っているにせよ、ある程度の責任は果たしてきていると思う。裏返せば、現行憲法下でも、それが十分可能だったということである。今のねじれ国会下で、インド洋での給油継続が不可能になりつつあることとは全くの別問題なのだ。

憲法は不磨の大典ではないが、変える必要もない部分をあえて変えることもあるまい。憲法を変えず、解釈によって事実を積み上げていく解釈改憲に対しては批判もあろうが、先人の知恵と思えばいい。あえて言えば、成文憲法はないものの、マグナ・カルタや権利の請願、権利の章典、諸法律を積み重ねてきたのイギリスのことを思えば、納得がいく。

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20世紀の教訓

今、サブプライムローン問題が世界中に影響を及ぼしている。

この問題の底流には、米国社会、政治、経済の、自由主義市場経済への過度の傾斜があることは否定できない。

自由主義は当然、完璧ではない。ひょっとしたら、サブプライムローン問題も市場の機能で調整され、いずれ無害化されていくのかもしれないが、そこまでの過程で多大な経済的被害が出るとしたら、それは完璧なシステムとは言えまい。AIG救済に、公的資金投入という米政府の市場介入があったのも、紆余曲折があったとはいえ、当然の帰結だ。

かといって、政府主導の計画経済、いわゆる「大きな政府」が万能かというと、そうでもない。それは巨額の財政赤字を生み、そのつけは国民に回ってくる。行政の硬直化も避けられない。

その一方、政府の規模には耐え難い「不可逆性」があるので、一度大きくなると、なかなか縮小しにくい。それは行政改革なるものが常に困難を伴うことをみれば、明らかだ。官僚主導国家は社会主義国家と同義語でもある。

人類は20世紀、自由放任主義経済で大恐慌を招き、第二次世界大戦へとすすみ、一方、計画経済は独裁国家を生み、人々を不幸に陥れた。行き過ぎた自由主義経済も、行き過ぎた計画経済も結局破たんし、そのバランスを取ることこそが有効であることは、20世紀の教訓のはずだ。

サブプライムローン問題は、その教訓を全く忘れたが故に起きた、ということは否定できない事実だ。

ひるがえって、自民党総裁選。当初は、上げ潮派と財政再建派の対立が取りざたされ、本格的な政策論争が期待されたが、五人も候補が出てしまい、論点が完全にぼやけてしまった。政策論争をしないために五人も、しかも、総裁になる用意のなかった人まで出たようなものだ。

自分たちの選んだ総裁がやめれば、国民の信任を受けた政策まで反故にしてしまう人たちだ(小泉首相への熱狂的支持と、退陣後の構造改革への冷淡さを見れば明らか)。当然、争点ぼかしくらいやってもかまわないと思っているのだろう。結局、自民党はどの方向に進むのか、誰が総裁になっても全く見えてこないだろう。

いずれ衆院解散・総選挙になるが、そこでも「自民党か民主党か」だけがクローズアップされて、本格的な政策論争は期待薄だ。それでいいのか。国民は、自分たちの進むべき方向を、自分たちで決められないのか。フラストレーションがたまるばかりの、この耐え難き「政治空白」である。

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2008年9月20日 (土)

参考●保守主義と遺伝

保守主義と遺伝の科学的分析に関するおもしろい記事を見つけました。

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=93977141

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参考●アローの定理

社会的選好に関するアローの定理というものがあるそうです。

【アローの定理】

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%81%AE%E5%AE%9A%E7%90%86

【投票のパラドクス】

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%95%E7%A5%A8%E3%81%AE%E9%80%86%E7%90%86

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【論考・考証】開設にあたって

今、自民党総裁選の真っ最中です。2001年総裁選の「小泉vs橋本」のようには盛り上がっていないようですが、その「政治空白」の間に、汚染米問題やリーマン・ブラザーズの破たんなど、日本政治が対応しなければならない政治課題は次々と起こっています。対応能力を失い、漂流する日本政治を、どうみたらいいのでしょうか。日々の感じるまま、記憶を記録に残したいと思います。

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