◆政治情勢レポート(4)◆2009年1月30日
●落ち続ける麻生内閣支持率
麻生内閣の支持率はすでに昨年末、危険水域に突入していたが、さらに落ち続けている。
毎日新聞(1月24-25日実施)と日本経済新聞(1月23-25日実施)が実施した最新の全国電話世論調査によると、麻生内閣の支持率はともに19%と、昨年12月の前回調査よりもともに2ポイント下落した。
今年に入って行われたこれ以前の調査でも、朝日新聞(1月10-11日実施)が19%(前回12月調査より3ポイント下落)、読売新聞(1月9-11日実施)が20.4%(同0.5ポイント下落)、共同通信(1月10-11日実施)が19.2%(同6.3ポイント下落)、産経新聞(1月10-11日実施)が18.2%(前回11月調査より9.3ポイント下落)と、軒並み20%を割っており、麻生内閣は20%を下回る支持率が定着している。
内閣支持率が20%を割り込んだのは、各種調査でばらつきがあるものの、おおよそ森政権末期の2001年2月以来。この2カ月後、森喜朗首相は退陣しており、20%以下の支持率は、首相がいつ政権を投げ出してもおかしくはない水準だ。
●東京都議選7月12日、衆院選とのダブルは回避
内閣支持率が危険水域に達する中、麻生首相はいつ衆院解散・総選挙に踏み切るのか。その鍵を握る一つの要素が、7月22日に任期満了を迎える東京都議会議員選挙の日程だ。
東京都選挙管理委員会は1月21日、東京都議会議員選挙の日程を7月3日告示、同12日投開票と決めた。都選管は当初、5日投開票を軸に検討したが、1週間先延ばしにすることになったという。
この背景には、都議選の時期を衆院解散・総選挙とできるだけ離したい公明党の意向が強く働いているとみていい。一週間先延ばししたところをみると、公明党は都議選前、具体的には2009年度予算と関連法成立後の衆院解散を想定しているらしい。
候補者の全員当選に向けて都議選に集中したい公明党は当初、昨年中の衆院解散・総選挙を切望していた。しかし、世界的な金融危機を受けて麻生太郎首相が解散をためらっているうちに越年したため、2009年度予算と関連法成立から間を置かないうちの解散が現実味を帯び始めている。予算は08年度内の3月中には成立するとしても、関連法の成立は野党が参院での採決を先送りして抵抗すれば4月にずれ込む可能性がある。それを待って麻生首相が解散に踏み切ったとしたら、総選挙は5月中旬以降になる。
都議選が当初の予定通り7月5日だとしたら、総選挙後からの時間は1カ月余りしか残されていない。公明党とその支持母体である創価学会としては、できるだけ選挙準備期間を確保するため、たとえ一週間でも都議選を先延ばししたかったのだ。
7月12日なら、その直前までイタリアでマッダレーナ・サミットが開催されていて、首相が日本を留守にすることもあり、可能性は低いとしても、都議選と衆院選のダブル選挙を避けられる。
衆院選が都議選の前に終わってしまえば、都議選が「政権選択選挙」のようにはならず、今吹きまくっている公明党への逆風を、多少なりとも弱められるという思惑もあるだろう。
ただ、公明党の思い通りに事が運ぶと考えるのは早計だ。予算と関連法が成立しても内閣支持率が低迷したままなら、麻生首相は解散をためらうかもしれない。政権交代の可能性が高いなら、福田康夫前首相のように、せめてサミットに参加したいと思うのも至極当然だろう。
そうなれば解散はさらに遅れ、9月10日に任期満了に限りなく近づくかもしれない。その場合には、追い込まれ解散、もしくは解散権すら行使できず、三木武夫内閣以来戦後二度目となる任期満了による選挙になり、政権交代の可能性はますます高くなるというジレンマに陥る。
●葬り去られた2011年度の消費税率引き上げ
一方、予算と関連法が成立すれば、自民党内で「麻生降ろし」が一気に加速するかもしれない。新しい総理・総裁の下で衆院選になだれ込んだ方が、これまでの経験上、自民党に勝機が開けるかもしれないからだ。 その場合、9月の自民党総裁選を前倒しして行い、新しい総裁・首相の下で解散・総選挙に臨むことになる。
すでに麻生降ろしの芽は出つつある。その顕著なものが消費税をめぐる自民党内の混乱だ。
麻生首相は2011年度からの消費税率引き上げる考えを明言していた。これは、たとえ有権者に痛みを強いる政策でも、国家国民のためなら政治家の責任で断行するという「責任政党」としての立場を示し、かつて消費税率引き上げを公約しながら、その後引っ込めた民主党の「無責任」ぶりをあぶり出すことで、次期衆院選を有利に戦おうという戦略でもあった。
麻生首相は昨年12月12日の記者会見で、「経済状況をみた上で3年後に消費税の引き上げをお願いしたい。2011年度から消費税を含む税制抜本改革を実施したい」と強調。12月末に閣議決定した、税財政抜本改革の道筋を示す「中期プログラム」は「経済状況好転を前提に、消費税を含む税制抜本改革を11年度から実施できるよう、必要な法政上の措置を講じる」と踏み込んだ。
しかし、消費税率引き上げ公約が次期衆院選で逆風になることを懸念した自民党議員が猛反発し、税制改正法案の国会提出を了承するにあたって、付則に「経済状況好転を前提に、消費税を含む税制抜本改革を行うため、11年度までに必要な法政上の措置を講じる」と書き込み、11年度からの消費税率引き上げを事実上、封印してしまったのだ。
麻生首相は1月22日、消費税率引き上げをめぐる政府と自民党との調整が決着したことを受け、「私がずっと申し上げてきた方針が理解されてよかった」と強弁したが、首相の方針が与党内の反発で棚上げされたことで、首相の求心力、指導力のなさが露呈してしまった。
●広がる自公の亀裂
消費税率引き上げを目指す麻生首相の方針は、自民党内の「反乱」以前にも、公明党とも摩擦を起こしていた。「中期プログラム」の内容をめぐる与党内の調整は、12月23日未明になってようやく決着したが、消費税率引き上げをめぐる文言は、2011年度からの引き上げを明記したい麻生太郎首相の意を汲んだ自民党と、景気回復を税率引き上げの前提条件にしたい公明党との間で調整がつかず、結局、どちらとも解釈できる「玉虫色」の表現で落ち着いた。
国の基本政策である消費税のあり方をめぐって、自民、公明両党の考え方の違いが明確になったことは、麻生内閣の支持率低迷を受け、与党内がすでに一枚岩でなくなっていることを表す象徴的な出来事となった。
●選挙協力でも緊張
与党内が分裂含みであることの象徴的な出来事は、これだけではない。古賀誠選挙対策委員長の発言をめぐり、自公両党間の緊張が一気に高まっていたからだ。
問題の発言は、12月15日夜行われた自民党選挙対策委員会委員との会食で飛び出した。古賀氏は席上、次期衆院選比例代表について「自民党の政策で戦わなければ(党組織が)弱体化する」と指摘。さらに、翌16日の自民党役員連絡会では「比例で他党への投票を求めるのはおかしい」と述べた。
自民党は1998年に公明党と連立政権を組み、その後、初めてとなる2000年の衆院選以降、公明党が候補者を立てない選挙区では、自民党候補が小選挙区で支援を受ける見返りに、「比例代表は公明」と呼びかける選挙戦術を展開してきた。古賀氏の発言は、これを見直そうというものだ。
背景には、2007年の参院選での歴史的大敗以降、自民党の党勢の落ち込みが深刻になってきたことがある。それまでは、「比例代表は公明」と呼びかけても、自民党の比例票は多少の落ち込みはあるものの、選挙結果にそれほど影響しなかったが、与党への逆風の中行われる次期衆院選で「比例代表は公明」と訴えて選挙戦を戦えば、自民党の比例代表は壊滅的な打撃を受けるだろうことが必至だからだ。つまり余裕がなくなったのだ。
しかし、小選挙区での候補者を絞り込んでいる公明党にとって、比例代表での議席獲得は党存立の命綱でもあり、自民党支持者の協力は不可欠だ。このため、古賀発言に対し、公明党の太田昭宏代表は12月20日、民放テレビの報道番組で、「公明党は比例代表が衆院選で一番大事で、(党員・支持者は)1票でも多くとお願いしている。それをシャットアウトするというニュアンスであれば、とんでもないという感情をみんな持った」と批判した。
太田氏によると、古賀氏から太田氏に対して「代表にもご迷惑をかけた」との釈明があったといい、自公間の選挙協力はこれまで通りということで落ち着いたが、両党間にそれぞれ不信感を残したことは容易に想像できる。
麻生首相は12月22日、太田氏の選挙区である東京12区内で開かれた自民党支部の会合に、太田氏とともに出席し、両党の結束をアピールしたが、いまさらながら、そんなことをしなくてはいけないことが、両党間の距離の広がりを象徴している。
自民、公明両党による連立政権ができて、はや10年がたとうとしている。両党間の連立は当初、政策の一致というよりも、自民党の参院過半数割れに伴う国会対策の円滑化という目標が先行していた。つまり、政権維持の優先順位が高いのだ。今回の与党内の混乱は、そうした「大義」なき政権の制度疲労を如実に表している、とも言える。
●揺れる最大派閥・町村派
消費税をめぐる与党内の混乱は、2009年度税制改正法案の付則をめぐる攻防が決着したことで一段落したが、その「余震」が、自民党最大派閥・町村派を襲っている。ことの発端は、同派の代表世話人を務める中川秀直元幹事長が麻生首相に批判的な言動を繰り返し、同派最高顧問の森喜朗元首相が中川氏に代表世話人を辞任するよう迫ったことだ。
中川氏は森内閣で官房長官を務めるなど、森氏とは蜜月関係を維持してきたが、昨年9月の自民党総裁選では、森氏は安倍晋三元首相、町村信孝元外相らとともに麻生氏を推したのに対し、中川氏は小池百合子元防衛相を担いだことから関係が悪化。さらに、中川氏は消費税率引き上げ問題で、反麻生的言動を繰り返したことから、森氏は中川氏に我慢ならなかったようだ。
中川氏は1月28日、派内の中堅・若手議員との会合で、代表世話人にとどまる考えを表明したが、小泉構造改革の継承を掲げる中川氏と、代表世話人の一人である町村氏との対立は、総裁候補の座も絡んでくすぶり続ける。
福田派、安倍派、三塚派、森派、町村派と続く系譜は、福田赳夫氏の後、長らく政権の座から遠ざかっていたが、森氏の首相就任後は4代続けて首相を出し、それに伴って自民党最大派閥に躍り出た。かつて最大派閥だった田中派、竹下派は、恒星が一生を終える前のように大きく膨張した後、分裂した。町村派も田中派、竹下派と同じ運命をたどるのだろうか。
●地方の反乱
1月25日に投開票された山形県知事選は、野党系新人候補が、自民党の大半の支援を得た現職候補を破った。
麻生首相は「(政権への批判とは)全く感じない」と静観を決め込んだが、保守王国・山形での与党系現職の敗北は、自民党の支持低迷を印象づけている。
東京都議会議員選挙が行われる7月12日以前にも、千葉県知事選(3月29日投開票)、秋田県知事選(4月12日投開票)、名古屋市長選(4月26日投開票)、さいたま市長選(5月24日投開票)など、県知事選や政令指定都市市長選が行われる。
民主党はこれらの地方選でも、自民党との対決を強めており、候補者選定にあたっては相乗りを禁じ、独自候補の擁立を目指している。
これらの選挙で、野党系候補が連勝すれば、次期衆院選での政権交代ムードが一気に高まるのは間違いない。麻生首相としては、地方選で与党系候補が連敗するような事態になれば、衆院解散をさらに先送りして、逆風がやむのを待つしか手がなくなる。
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