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2008年12月 2日 (火)

◆政治情勢レポート(3)◆2008年12月2日

●危険水域のKY政権

麻生政権は危険水域に達していると言っていい。前週末、報道各社が行った世論調査によると、麻生内閣の支持率は30%前後に低迷している(産経27.5%、日経31%)。9月の内閣発足直後は50%前後だった(産経44.6%、日経53%)ので、約20%低下したことになる。これは福田内閣退陣直前の8月の支持率とほぼ同じであり、麻生内閣は支持率的にはいつ退陣してもおかしくない段階に達しつつある。

では、なぜ麻生内閣の支持率がこれほど短期間に、ここまで落ち込んだのか。その最大の理由が、麻生太郎首相の資質の問題だ。

麻生首相の役割は、9月の自民党総裁選後、一気に衆院解散・総選挙になだれ込み、その勢いで与党に過半数をもたらすことであった。麻生首相はこれまで失言癖が指摘されてきたが、総理・総裁としての資質よりも、国民的な支持があるということが、総裁選出の最大の理由とされた。

金融危機で解散が先延ばしされ、総理・総裁としての資質が問題されるようになったのも、必然的な成り行きなのである。

麻生首相が資質を欠く例としてあげられるのが、国語力の欠如である。つまりKY(漢字が読めない)だ。

麻生首相は「踏襲(とうしゅう)」を「ふしゅう」、「頻繁(ひんぱん)」を「はんざつ」、「未曾有(みぞう)」を「みぞうゆう」と読んだ。本人は読み間違いと釈明しているが、おそらく漢字の読み方を知らなかったのだろう。

首相はこれまで、まんがなどサブカルチャーにも理解があると、いい意味で受け止められていたが、まんがの読み過ぎが裏目に出た形だ。 

さらに問題なのは、首相のこうした間違いを、事前に防ぐシステムが確立されていないことである。普通の秘書官チームなら、首相の漢字の読み間違い(麻生首相の場合は、国語力の欠如)を指摘したり、ホテルのバー通いが、いかに一般の国民の感覚から遊離しているかを、諫言して当然だろうが、そうしたことが行われている形跡はない。

小泉政権では、飯島勲秘書官の下、各省から派遣された首相秘書官、参事官が結束し、5年以上にわたって「小泉チーム」として政権運営にあったったが、麻生官邸にはそうした首相への忠誠心や結束力が感じられない。

その理由の一つは、各省から送られた秘書官が、麻生内閣は「選挙管理内閣」とみて、腰掛けのつもりでいるからだ。

さらに、麻生首相が総務相時代の秘書官である岡本全勝(まさかつ)氏を首相秘書官に抜擢し、首相秘書官を異例の6人体制にしたことも、官邸チームの一体感をなくしている。これまで筆頭の事務秘書官として君臨していた財務省出身者はイニシアティブを発揮することができず、各省、特に財務省との連携がうまく取れていない。

こうしたことの弊害が、公正取引委員会委員に上杉秋則・一橋大大学院教授(元公取委事務総長)を充てる同意人事案をめぐって出てきた。

この人事案、いったん閣議で国会に提示することを決めたにもかかわらず、上杉氏が弁護士でないのに、匿名の著作で弁護士の肩書を使っていたことが野党の指摘で明らかになり、参議院本会議の直前になって、急きょ取り下げた。2007年夏の参院選での自民党惨敗による「ねじれ国会」で、政府が国会に提示した同意人事案が野党の反対で否決され、不同意となる例はあるが、政府側の不手際により本会議直前で取り下げるのは異例中の異例で、政府の大失態といってもいい。

 問題は、なぜそのようなことが把握できなかったのか、また野党から指摘があったにもかかわらず、当初そのまま国会に提示しようとしたことだ。政府がこの程度のことを把握できないはずがない。今回、このような事態に至ったのは、官邸内が緩みきっている証拠と言っていい。その原因が首相の統治能力のなさに起因していることは容易に想像できる。

●小沢氏の「超大連立構想」

 こうした状況に、 民主党の小沢一郎代表が、「超大連立」構想を提唱し始めた。麻生首相の早期退陣を視野に入れ、与野党各党に選挙管理内閣への参加を呼びかけるものだ。小沢氏は以前、福田首相にも大連立を呼びかけており、小沢氏の持論といってもいいだろう。

 ただ、与党側がこの構想に応じるとは考えられない。実際、河村建夫官房長官は122日の記者会見で「政府部内で話し合われたとか、考えているかということは一切ない」と否定した。さらに、他の野党の協力が得られるかどうかも不透明なので、小沢氏の狙いは、麻生政権の行き詰まりを印象づけ、早期の衆院・解散に追い込むことにあるだろう。

●自民内に「反麻生」の動き

 とはいえ、与党側も麻生政権の低迷ぶりに、一枚岩とは言えない状況だ。

 自民党の塩崎恭久・元官房長官、茂木敏充・前行政改革相、渡辺喜美・元行革相ら中堅・若手議員24人は1121日、河村建夫官房長官に対し、2008年度第2次補正予算案を今の臨時国会に提出するよう申し入れた。

 麻生首相は2次補正の提出を来年の通常国会に先送りする方針を明言しており、塩崎氏らの行動は明らかに麻生首相に反旗を翻したことになる。

 塩崎氏らの行動に対し、自民党内では単に総選挙を意識した国民向けのパフォーマンスとの見方もあるが、24人には、先の総裁選で経済政策などをめぐって首相と最も対立した小池百合子元防衛相の推薦人が渡辺氏ら3人、石原伸晃幹事長代理の推薦人も塩崎氏ら3人含まれており、小泉改革を推進してきた「改革派」が中心となっているところが意味深だ。

 自民党内にポスト麻生候補が見当たらないことから考えると、彼らの行動が即、倒閣運動にはつながらないだろうが、麻生内閣から体力を失わせるには十分だ。

 さらに、麻生首相がこの先、余りにも失態を繰り返すようだと、野党提出の内閣不信任決議案に、自民党から同調者が出て可決され、首相退陣に追い込まれるか、衆院解散から政界再編にまで一気に進むことがないとも限らない。

●背景に中川秀直氏?

 問題は、こうした動きの背景で、自民党の中川秀直氏が暗躍しているのではないかとの見方があることだ。

 中川氏は、小泉政権後も改革継続を訴える「改革派」「上げ潮派」。麻生首相が郵政民営化の見直しを示唆した際には、激しく批判した。

 中川氏は、9月の総裁選で支持した小池氏らとともに社会保障に関する議員連盟を結成する方向だ。渡辺、塩崎両氏もメンバーに加わる方向なので、この議員連盟が反麻生派の拠点となる可能性はある。

●衆院選は都議選前?

 麻生首相の手で解散をすると仮定すると、解散のタイミングには次の4つがある。(1)1月召集の通常国会冒頭(2)2009年度予算と関連法成立後の4~5月(3)通常国会会期末の6月(4)任期満了の9月10日だ。

 麻生首相は1114日、金融サミット出席のため訪れたワシントン市内のホテルで、同行記者団と懇談し、衆院解散・総選挙の時期について「1994年の予算の成立は6月。景気を決定的に悪くした。景気対策を考えたら、予算は年度内に(成立させ)きちんとスタートさせるのが大事」と述べた。

 これは、衆院解散は2009年度予算と関連法成立後に行う意向を示唆したものと受け取られている。予算関連法の成立に民主党が協力すれば解散は4月、協力しなければ5月になるだろう。

 麻生首相が景気のことを考え、予算こそ内閣最大の仕事だと考えるならば、予算および予算成立後の解散が現実的な対応だろう。

 通常国会会期末の解散は、自民党と連立を組み、自民党が選挙での組織的な支援を期待する公明党が重視する東京都議選(7月22日任期満了)の日程と重なるか近くなるため、公明党の理解を得られるかどうかが問題となる。公明党はこれまで、都議選と衆院選の間を最低3カ月間あけるように主張してきた。二つの選挙が近いと、支持者が十分活動できないとの理由からだ。

 麻生首相は例年120前後に召集している通常国会を、1月上旬にも召集し、2008年度第2次補正予算案を提出する意向を表明している。通常国会の延長がないと仮定すると、会期末は6月上旬。会期末に解散すれば、総選挙は6月下旬から7月上旬となる。

 一方、都議会の任期満了は09722日。公選法上、都議選の投票日は628日か、7月なら5日、12日、19日のいずれか。通常国会会期末の解散なら、都議選とはダブル選挙か、それに近い形になるが、それを公明党が受け入れるかどうか。

ダブル選挙を避けた場合、公明党に配慮したと言われ、票を減らすと麻生首相が判断すれば、あえてダブル選挙に持ち込むかもしれない。

解散・総選挙に日程設定には、来年7月8日から10日までイタリアのマッダレーナ島で開かれるG8サミット(主要国首脳会議)も考慮する必要がある。

 来年9月の任期満了、もしくはそれに近い総選挙はどうか。任期満了に近づけば近づくほど、麻生首相の求心力はなくなり、解散権を行使できなければ、それこそ命取りになる。三木武夫首相が解散権を行使できず、新憲法下で唯一の任期満了選挙に追い込まれ、政権の座から引きずり下ろされたことを考えれば、麻生首相が任期満了選挙を避けたいという気持ちも理解できる。

 予算および予算関連法成立後の解散で、公明党が要求する「3カ月条項」を満たすには、総選挙を9月10日の任期満了後に総選挙を行わなければならない。

前述の小泉純一郎元首相の政務秘書官、飯島勲・駒澤女子大学人文学部客員教授は「最終的には10月末まで投票日を延ばす選択肢の幅がありうる」と指摘している。

それによると、公職選挙法311項「衆院議員の任期満了に関る総選挙は、議員の任期が終る日の前30日以内に行う」に従えば、910日の任期満了より前の投票となる。投票日を日曜日に限定すると、「前30日以内」で可能性があるのは8月の16日、23日、30日か、最も遅くて96日だ。

同時に、同条2項は「総選挙を行うべき期間が国会開会中又は国会閉会の日から23日以内にかかる場合においては、その総選挙は、国会閉会の日から24日以後30日以内に行う」としている。仮に任期満了の09910日まで国会を開いている場合、この条項に該当する。10日閉会なら30日後は1010日の土曜日。日曜日投票に限ると、閉会から24日後の「104日投票」が可能ではある。

さらに同条3項は「衆院の解散に因る衆院議員の総選挙は、解散の日から40日以内に行う」と定めている。国会を開いたまま910日に解散し、この条項が適用できれば、40日後は1020日の火曜日。日曜日投票に限ると、最も遅くて「1018日投票」という設定も可能になるというわけだ。

ただ、ここまで公明党の「3カ月条項」に配慮した場合、創価学会の支援は得られても、国民の支持を失う可能性があり、かなりの奇策であることには間違いない。

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