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2008年11月23日 (日)

「まんが宰相」の耐えられない軽さ

 この政権は、政権の体をなしていないとつくづく思う。公正取引委員会委員に上杉秋則・一橋大大学院教授(元公取委事務総長)を充てる同意人事案のことである。

 この人事案、いったん閣議で国会に提示することを決めたにもかかわらず、上杉氏が弁護士でないのに、匿名の著作で弁護士の肩書を使っていたことが野党の指摘で明らかになり、参議院本会議の直前になって、急きょ取り下げた。2007年夏の参院選での自民党惨敗による「ねじれ国会」で、政府が国会に提示した同意人事案が野党の反対で否決され、不同意となる例はあるが、政府側の不手際により本会議直前で取り下げるのは異例中の異例で、政府の大失態といってもいい。

 問題は、なぜそのようなことが把握できなかったのか、また野党から指摘があったにもかかわらず、当初そのまま国会に提示しようとしたことだ。

 野党には失礼かもしれないが、この程度のことを政府が把握できないはずがなく、今回、このような事態に至ったのは、官邸内が緩みきっている証拠と言っていい。各省から派遣されている秘書官らも、麻生内閣は「選挙管理内閣」とみて、腰掛けのつもりでいるのではないか。小泉内閣で5年以上にわたって懸案を処理してきた「小泉チーム」のような、首相への忠誠心やチームとしての結束力が全く感じられない。

 普通の秘書官チームなら、首相の漢字の読み間違い(麻生首相の場合は、国語力の欠如)を指摘したり、ホテルのバー通いが、いかに一般の国民の感覚から遊離しているかを、諫言して当然だろうが、そうしたことが行われている形跡はない。まあ、東大卒のエリート官僚が「まんが宰相」に仕えるばかばかしいさは、十分理解するが、それにしても、国益に反するような首相の振る舞いを止めないとしたら、国益毀損の共同正犯だ。

 こうした官邸の失態続きは、与党側から公明党はもちろん自民党にとっても噴飯ものらしい。

 自民党の塩崎恭久・元官房長官、茂木敏充・前行政改革相、渡辺喜美・元行革相ら中堅・若手議員24人は11月21日、河村建夫官房長官に対し、2008年度第2次補正予算案を今の臨時国会に提出するよう申し入れた。

 麻生首相は2次補正の提出を来年の通常国会に先送りする方針のため、塩崎氏らの行動は明らかに麻生首相に反旗を翻したことになる。

 塩崎氏らの行動に対し、自民党内では単に総選挙を意識した国民向けのパフォーマンスとの見方もあるが、24人には、先の総裁選で経済政策などをめぐって首相と最も対立した小池百合子元防衛相の推薦人が渡辺氏ら3人、石原伸晃幹事長代理の推薦人も塩崎氏ら3人含まれており、小泉改革を推進してきた「改革派」が中心となっているところが意味深だ。

 自民党内にポスト麻生候補が見当たらないことから考えると、彼らの行動が即、倒閣運動にはつながらないだろうが、麻生内閣から体力を失わせるには十分だ。以前にもブログで書いたが、麻生政権の劣化は予想以上に進んでいるとみた方がよく、麻生首相が解散する前に力尽き、自ら退陣を決意する可能性もないとは言えない。

 さらに、麻生首相がこの先、余りにも失態を繰り返すようだと、野党提出の内閣不信任決議案に、自民党から同調者が出て可決され、首相退陣に追い込まれるか、衆院解散から政界再編にまで一気に進むことがないとも限らない。

 いずれにしても、こうした事態を引き起こしているのは、麻生首相の宰相としての能力も品格も欠いた、耐えられない軽さである。麻生首相に続投を許している唯一の条件は、自民党内に有力な「ポスト麻生」候補が見当たらないということだけである。

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