« 2008年10月 | トップページ | 2008年12月 »

2008年11月の21件の記事

2008年11月29日 (土)

名古屋大学国際シンポジウム聴講ノート(2)完

●北朝鮮核問題

田中 北朝鮮は核について、最初から米国と話をする方針だった。北は自分の持っているものを大きく見せて妥協するのが常套手段。

フォスター 濃縮ウラン問題は米朝交渉最大の障害だ。北朝鮮は一時認めたが、その後否定し、否定はいまも続く。北朝鮮とは基本的に交渉できない。北は開放すれば、金政権は短くなる。米国はどうやったら韓国との関係を強化できるのか。米軍の冷戦体制のプレゼンスを再構築しなければならない。再構築には脅威は何かを明確にしなければならない。米国にとって最大の脅威は中国だ。

田中 クリントン政権は宥和政策だったが、小泉政権も対話路線だった。制裁を前提にしたことはない。1%でも核放棄の状況があるなら、それにかけるべきだ。

フォスター 1%の可能性があるならやるべきだ。ただ、6者協議では解決できない。最終的に韓国に朝鮮半島のオーナーシップを認めなければならない。朝鮮半島の独立は歴史的に珍しい。いま時寝ションを含んだ戦略が必要だ。日韓の心を込めた話し合いから始まらねばならない。

●靖国問題

田中 小泉純一郎首相が靖国に行くことによって、に中間系が損なわれると話したことはある。小泉首相は、時に怒った。靖国に理屈はいくつかあって、右を抑えるのは一つの考え方だった。中国が常にカードとして使うのを防ぐ意味もある。小泉首相はアジェンダをつくって実施することに、ものすごい強い意識を持っている。公約に掲げたのは郵政改革と靖国参拝。靖国に行かないと、郵政で妥協するのではないかという見方が出てくる。これを跳ね返すために、2001年以降毎年靖国に参拝した。小泉首相は途中で深刻に参拝をやめようと思ったことはあるが、中国は自分の政権の時には関係を改善する気がないと考えた。首相の靖国参拝は残念でならない。大きなものを失っている。

●オバマ政権

フォスター オバマ政権では経済、イラク、テロが課題だ。テロが身近な問題になる。その中で北朝鮮をどう位置づけるのか。6者協議は続く。それに限界はあるが、目の前の危機を回避したら、評価しなければならない。日本にも責任があるのではないか。オバマ政権が誕生しても変わらない。北朝鮮の問題は、朝鮮半島の問題として考えた方がいい。

田中 日本が何をするのかが大事だ。日本がつくりたい世界は経済的に繁栄している世界だが、それには中国、ASEAN、韓国を巻き込まなければならない。どうビジョンで東アジアに向かうのか。日本と中国と米国の枠組みが必要だと思うし、この地域でcommon visionをつくれるのは日本だけだ。日本と韓国のパートナーシップが必要だ。オバマ政権ではイラクからの撤退、アフガニスタンが大きな関心だ。日本が東アジアでどうするのかが必要だ。

(2008年11月28日夜、名古屋大学経済学部カンファレンスホールにて)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

名古屋大学国際シンポジウム聴講ノート(1)

 11月28日夜、名古屋大学で開かれた「東アジアの安全保障とメディア」と題する国際シンポジウムを聴講しました。田中均元外務審議官ジェイムス・フォスター元米国務省朝鮮半島部長、NHK、中日新聞・東京新聞、共同通信の記者がパネリストとして参加し、春名幹男・名古屋大学大学院国際言語文化研究科教授(元共同通信ワシントン支局長、国際報道論)が司会進行を務めました。以下はその抄録です。田中氏の発言を中心に紹介します。

●問題提起

田中 きょう言いたいことは二つ。一点目、日本の自主外交が失われていると言われているが、自主外交がいいとは言うつもりはない。外交は国益があってのこと。国益達成は簡単なことではない。主張する外交と言うが、結果をつくらないと意味がない。2002年9月17日、小泉首相が訪朝し、日朝平壌宣言という原則、ロードマップを示した文書を作った。拉致などの懸案解決は、敵対関係ではなく、対話で進める。日朝正常化を目標とし、正常化のあと経済支援する。金総書記は拉致を認めて謝罪した。生きている人を帰す、その他の人も真相を究明する。首相が行けば結果をつくれるものではない。長い期間、実務的な準備をした。私は訪朝前の一年間、週末を活用して20数回水面下で交渉した。秘密が途中で漏れれば、生きている人の命に関わる。1年間の交渉の最初に思ったことは、朝鮮半島の平和を日本がつくれるか。植民地支配の事実は変えられない。国家の当局者は全部頭の中にある。すべてを解決する仕組みを作らなければならない。北の政権は特異な政権だが、なぜ日本ができたのかというと、韓国が南北融和政策をとったからだ。日本がやっても韓国に文句を言われない。米国は北朝鮮のことを悪の枢軸といっていたから、北朝鮮は日本が米国の同盟国として安全を保証してくれるのではないかと思ったのではないか。外交はそういう動きを活用しなければならない。このロードマップはつぶれない。六者協議の中でも、宣言に則って日本のことが盛られている。拉致は彼しか認められない。拉致の実行機関は北朝鮮政府そのもの。だから、総理が北に行って、トップ会談をやらざるを得ない。トップ交渉に引きずり出さなければならなかった。

 二点目。世界はものすごく変わっている。世界の富が西から東に移っている。新興国の経済が大きくなってる。どうやって国際問題を合意で解決するか、難しくなる。新興国をどうやって入れ込むのか。世界のリーダーの課題だ。中国もインドも東アジア。東アジアでどうやって秩序をつくるのか。一番近い立場にあるのは日本だ。安全保障を含めた秩序をどうつくるのか。それは世界につながる。メディアが果たして鳥瞰図的に描いているのか。そうではない。メディアの役割はなんなんだ。テレビを見ていると、国民目線で変えると言っているが、それがメディアの役割かと言いたい。メディアには社会を引っ張る啓蒙的な役割があるのではないか。

フォスター いま東アジアは危機的状況だ。日本夜間国の政治的基盤が弱くなった。東アジアに対して、どこまで注意を払えるのか。金正日がいなくなったらどうなるのか、誰も考えていない。対半島の政策が必要だ。日本の課題は対韓国政策。日韓が社会的経済的問題を解決できなかったら、東アジアは安定しない。日韓は新しい基軸にならなければならない。

●日朝平壌宣言

田中 拉致、核ともに大事だ。包括的な解決をしなければならない。拉致だけ、核だけが解決することはない。北にとっては政権存続そのものだ。米国の一部は、訪朝に反対したが、政策の反対は、米国ではいつものことだ。濃縮ウラン開発のインテリジェンスを持っているのは米国だから、直接米国が話すべきだ。核は多国間の問題。だから、小泉は帰国後真っ先にブッシュに電話した。「米国も北と交渉すべきだ」と。ジム・ケリーが北を訪れてウラン問題を提起した。国際問題の解決は難しいが、は提起しないと解決しない。解決するときは両方解決する。核の解決へ日本は貢献しなければならない。20万ドルを支援を拉致があるから肩代わりさせるというが、決していいことではない。なぜできないのか。メディアや世論がものすごく大きい。行政の当局者は気になって仕方がない。それが本当に国にとっていいことなのか。

田中 (平壌宣言に拉致を書かなかったことは)結果として、何が大事かを判断しなければならない。拉致と書くことが大事なのか、金総書記に拉致を認めさせることが大事なのか。行政はそういう判断をしなければならない。交渉が100%自分に有利という外交はできない。(経済支援は)利益誘導ではない。日韓基本条約は請求権を相互に放棄して、韓国は満足しないので、経済協力をした。同じことを北にやる義務はある。

(To Be Continued)

(2008年11月28日夜、名古屋大学経済学部カンファレンスホールにて)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

期待はずれの党首討論

 麻生太郎首相と小沢一郎民主党代表との党首討論が28日行われた。私自身、所用でテレビ中継は見られなかったが、産経新聞のWebにアップされた詳報を読む限り、期待はずれに終わったようだ。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/081128/stt0811281548002-n1.htm

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/081128/plc0811281637008-n1.htm

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/081128/plc0811281724010-n1.htm

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/081128/plc0811281744011-n1.htm

 現下の最大の懸案は、アメリカのサブプライムローン問題に端を発した金融危機をどう克服するかなので、党首討論が2008年度第2次補正予算案を中心的な議題とするのは理解できたとしても、ほぼそれに関連する話題に終始したのは残念でならない。

 インドで同時多発的にテロが発生する中、テロとの戦いに、日本としてどう対応するのか。アメリカでオバマ新政権が誕生するに際し、日本として対米外交をどう展開するのか。田母神俊雄前航空幕僚長の論文問題に関し、シビリアンコントロールはどうあるべきかなど、党首らしい大所高所からの深みのある討論を期待していたのだが、所詮、「まんが宰相」と「壊し屋」の二人が登場人物では、望む方が間違っていたのだろうか。

 二大政党の党首が、衆院を解散しろ、しないのやりとりを延々とすることにも違和感を感じ、むなしさを感じざるを得なかった。おそらく、小沢代表は、麻生首相が解散しない限り、「解散しろ」と言い続けるだろう。それ自体、国民の審判を受けていない首相が三代も続いている状況では、仕方がないこととはいえ、解散の是非が論議になること自体、政権末期の症状なのだろう。

 もし次に党首討論が行われることがあるのなら、先に述べた課題について、じっくり議論してほしい。党首討論自体が「消化試合」に終わるようなら、やるだけ無駄。期待させるだけ罪は重い。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2008年11月27日 (木)

米大統領選講義ノート(3)その3完「大統領選後の米国と如何に付き合うべきか」宮家邦彦立命館大学客員教授

●まとめ

 オバマになったことで、新しい思考が形を変えてやってくる。日本の宿題だったことが、全部出てくる。紙をつくるが政策が変わらないから、不満が募る。入れ替え戦で負ける。安保でミニマム・マムコンセンサスをつくってくれないのか。安保は超党派。共民、ナショナルな同意ある。

●質疑

Q.オバマはパラダイムシフトをしたいのか、したくてもできないのか。

宮家 国内ではパラダイムシフトしたい。将来のアメリカの政治を先取りした人。先取りしすぎたのかもしれない。やろうとしている方向は正しい。非白人のウエイトが増えるほど、彼のやることが主流になるが、ちょっとまだ早い。早い分だけ、反発、批判が出る。人種の壁を越えていない。まず人事。混乱なく来年秋を迎えられるのか。混乱が生じると過去の民主党と同じだ。

Q.金融危機。

宮家 アメリカでは経済的に、変わって困る人を平気で切り捨てる。日本では既得権を持った団体が黙っていない。平気で血を流す。はるかに早く回復するだろう。

Q.G7からG20になると、どこが上がってくるのか。

宮家 中国が上がってくる。中国が入ればインド。米欧が中印を見る。

Q.憲法改正に踏み込むべきか。

宮家 ハードパワーのない国が生き残った話は聞かない。ハードパワーのない形でのグレートゲームへの参加はハンディキャップを負う。ソフトパワーはハードパワーを持っているからこそ生きる。憲法の精神はそのままで、集団的自衛権を使える形にするだけでも、一つの解決策はある。非常に難しいと思う。ハードパワーだけでは難しいことは米国が証明している。ソフトパワーだけでは、ゲームの中で弱い。解釈の変更は最低限必要。

Q.原爆を持つことに最終的になるのでは。

宮家 核兵器も兵器だから、ハードパワーの中ではあるが、政策論として核武装する必要はない。法的に難しい。秘密に開発できない。開発に成功しても、政治的にはマイナスがはるかに大きい。軍事的にも、核を持つ軍事的意義は疑問。核のオプションはない。すべてにおいて、メリットはない。

Q.日本への姿勢は変わるのか。

宮家 共和党の親日派がいなくなって大丈夫かという本能的な予感は正しいところはある。日米関係がブッシュ小泉の時代はよかったのは奇跡的。ある意味、日米関係がアジア関係の中でアテンションが低かった。厳しい問題でうるさく言う人がいなかった。幸せだったし、それはよくなかったのかもしれない。ブッシュ小泉はものを読まない。直感的な政治判断ができる政治家で、日米関係はもった。ネオコンがいたおかげで幸せだった。共和党の中でも例外的だった。マケインだとしても日本への期待が大きいし、圧力をかけてきただろう。この8年間なかっただけ。

Q.民主党に人脈がない。

宮家 そんなことはない。アーミテージが偉かったのは、日米関係が日本の国内政治であり、圧力をかけることが政治的争点になると分かっていたことだ。イラク戦争開戦は、日本に知らせた。そうでないと日本は持たないと知っていたから。民主党ならしないだろう。しかしこれは秘密の漏洩。健全な日米関係ではない。オバマになったことで普通になるだろう。それでも維持できる日米関係にならないといけない。特定の人でつながっている日米関係は健全ではない。

Q.ソフトパワー、インテリジェンスが不足しているのではないか。

宮家 日本はインテリジェンスはしないと決めた国だ。インテリジェンスの最たることは改選の日時と場所だ。しかし、日本は戦争をしないと決めたので、守るべき秘密はない。これを再興するのは難しい。インテリジェンスの本当のプロは政策はやらない。ソフトパワー以前に、インテリジェンスは存在しない。

Q.オバマは資金をグラスルーツで集めた。

宮家 竹下的な金の集め方だ。問題はそれに応える人がいるかだ。あの戦術で当選したのではなく、正しいメッセージでイメージを提供したから、集まった。戦術を過大評価することで、勝利の本質を忘れてはならない。すばらしいキャンペーンだった。民主党のキャンペーンであれほどうまくいったのは前代未聞だ。

(2008年11月17日午後、日本記者クラブにて)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

米大統領選講義ノート(3)その2「大統領選後の米国と如何に付き合うべきか」宮家邦彦立命館大学客員教授

●パラダイムシフトとグレートゲーム

 米国の国力が低下、相対的に力が衰える。オバマの当選、時代が求める人が当選する。アメリカが直面する大きな問題への本能的な答え。無関係な人を大統領に選ぶ国。日本は危機があると、二世、三世が後継者になるアメリカがうらやましい。

(1)18世紀末(第1次グレートゲーム)パクスブリタニカ始まる。産業革命。

(2)19世紀末(第2次グレートゲーム)露独日など新興国の台頭。鉄鋼、重化学工業。

(3)20世紀中頃(第3次グレートゲーム)パクスアメリカーナ始まる。電気、自動車技術。

(4)1990年代、米一人勝ち。コンピューター、情報技術革新。

(5)21世紀初頭(第4次グレートゲーム)中印露など新興国の台頭。19世紀末に似ている(グローバル化)

 パクスアメリカーナの中で、本当のチャレンジャーが出始めた。

●新グレートゲームの特徴

(1)多国間主義 → 米国の国力の相対的な低下。新規プレーヤーの参入(旧植民地の台頭)。弱肉強食。

(2)グローバル化 → 新興国は昔のような独立した経済圏を築けない。

(3)人口、資源、エネルギー → 欧州、日本緩やかな衰退。インド、中国の台頭とロシアの限界。米国の相対的な優位は変わらない。

 G7体制からG20体制(二部リーグ制)へ。G7は入れ替え戦がない東京六大学野球。G20になって、日本は入れ替え戦に勝てるのか。入れ替え戦でどう生き残るのか。その際、米国をどう利用するか。

●米「自己チュー」外交の優先度

(1)対テロ → 新ゲームの一部であり米国はやめない。

(2)対欧州(ロシア)外交 → 危機感を強め、生き残りをかける欧州とは協調する。欧州は疲弊して生き残れるのか危機感がある。

(3)気候変動、環境、貧困問題 → 新ゲームの戦術の一つとして重視する可能性

(4)対中東外交 → イスラエルを重視しつつ、和平プロセスを再開。イラン、アフガンで軍事オプション模索の可能性。

(5)対アジア(中国)外交 → 米が多国間の枠組みを模索する可能性がある。

●日米関係、日本は何をすべきか

(1)アジア太平洋国家としての米国 → 中国中心の地域主義に対抗するため、米国という資産を如何に活用するかを考える(民、共はニュアンスの差)。両者で利用しあえば財産になる。

(2)米国の「中国は重要」は不可避 → 感情的にならず、現実を直視し、米国の対中政策提案者に正しいアドバイスを。経済的脅威、軍事的脅威は、米国のアジア太平洋国家としての立場を揺るがせる。日本パッシング、ナッシングといっても知的前進はない。もっと知恵を出して、中国をどのように活用するか、付き合うかを米国に言えばいい。ジェフリー・ベーダーらアジア中国担当者に中国へのものの見方を伝えればいい。どうしてアメリカしか知らないアメリカ通しか、アメリカに送り込まないのか。中国の専門家の知見が、対米関係、アジア政策に生かされていない。報道機関の中には、北京のあとはワシントン、ワシントンのあとは北京と、特派員の派遣を実行している社もある。外務省、商社はしていない。

(3)北朝鮮 → 6者協議は将来、多国間の枠組みになるのか。冷徹な判断で、内政問題で健全な距離を置くことが必要。

●日米安保は何をすべきか

(1)米国の国力低下 → 二国間安保条約で十分だった時代は終わる? 当面はリスクヘッジのための新たな思考が必要。米国が思わぬ方向に行く可能性がある。民主党の人たち、経験のないのは恐ろしい。2、30年の経緯しか知らない人がいる。

(2)戦後の「一国平和主義外交」の限界 → 安全保障分野のグローバル化が不可欠。国内の政治状況。

(3)日米安保再定義 → 大変結構な話だが、集団的自衛権の不行使を前提にするなら実質的な意味ない。ソフトパワーはハードパワーを補完するが、代替はできない。これから入れ替え戦があるなら、一部の実力がなければならない。言葉だけでなく、実行しなければ。

(To Be Continued)

(2008年11月17日午後、日本記者クラブにて)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月26日 (水)

党首討論に期待する

 麻生太郎首相と民主党の小沢一郎代表との党首討論が28日にようやく行われることになった。実現までの経緯は、後ほど論ずるとして、これをきっかけに、与野党間で、喫緊の課題について論議を深めてほしい。

 衆参で多数派が違う「ねじれ国会」になって、国会でまともな論戦が行われなくなったと思うのは私だけであろうか。例えば、金融危機を受け、実体経済への波及をどう食い止めるのかについて、国会での真剣な議論を聞いたことがない。日本経済はこのままずるずると深い闇の中に消えていくのであろうか。今、日本国民は少子高齢化社会や年金問題の噴出を契機に、明るい未来を描けないでいる。希望を持てないと言ってもいい。

 こうした時代にこそ、国民の代表たる政治家が明確なビジョンを語り、実現可能な選択肢を示し、国民の判断にゆだねるべきではないのか。田母神俊雄前航空幕僚長の論文問題にしてもそうだ。論文の何が問題で、どう克服しなければならないのか、国会は何も指し示していないように見える。

 そればかりか、国会では与野党ともに党利党略ばかりが先行し、本当に国民のための議論をしているのか、疑念は深まるばかりだ。

 もちろん、国民の信任を得ていない政権が三代も続いている(そのうち安倍政権は2007年の参院選で国民に不信任を突きつけられた)ので、一刻も早く衆院を解散すべきだとの野党の主張は分からなくもないし、私自身も強くそう思う。

 しかし、そのことと国会での議論を放棄することとは別のはずだ。

 これまで小沢代表は「選挙になれば、毎日党首討論のようなものだ」と、党首討論を拒否してきたが、ようやく重い腰を上げたようだ。

 麻生首相側が小沢代表に党首討論に応じるよう迫った背景には、小沢氏はこうした討論が苦手で、自分の方が党首討論を通じて国民に優位さをアピールできるとの思いがあるようだが、それは思い上がりというものだろう。あの程度の国語力で、討論が得意だとはいってほしくないものだ。小沢氏のこれまでの討論を見てみても、ぼくとつなしゃべり方の中にも、小沢氏らしい論理的な攻め口が随所にみられる。本格的な論戦となるよう期待したい。

 特に、この討論をきっかけに、アメリカの新しいオバマ政権と、日米関係をどう構築していくのかを真剣に議論してほしい。久々の民主党政権の誕生で、日米関係はどうなるかではなく、日本としてどうしたいのかという視点からの議論を望みたい。

 アメリカはパワーは落ちたとはいえ、超大国に変わりなく、アメリカ側の出方を見極める必要はあるにせよ、それではあまりにも受け身の外交に過ぎないか。是非とも、日本が自ら動ける分野で積極的に動き、対米外交で主導権を握る試みをしてほしい。オバマ氏が重視するアフガニスタンの平和構築に、日本としてどう関わるのかも、党首討論の議論にふさわしいテーマだ。

 オバマ政権発足はあと1カ月あまりと近づいている。議論はその内容とともにスピードも必要である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月23日 (日)

「まんが宰相」の耐えられない軽さ

 この政権は、政権の体をなしていないとつくづく思う。公正取引委員会委員に上杉秋則・一橋大大学院教授(元公取委事務総長)を充てる同意人事案のことである。

 この人事案、いったん閣議で国会に提示することを決めたにもかかわらず、上杉氏が弁護士でないのに、匿名の著作で弁護士の肩書を使っていたことが野党の指摘で明らかになり、参議院本会議の直前になって、急きょ取り下げた。2007年夏の参院選での自民党惨敗による「ねじれ国会」で、政府が国会に提示した同意人事案が野党の反対で否決され、不同意となる例はあるが、政府側の不手際により本会議直前で取り下げるのは異例中の異例で、政府の大失態といってもいい。

 問題は、なぜそのようなことが把握できなかったのか、また野党から指摘があったにもかかわらず、当初そのまま国会に提示しようとしたことだ。

 野党には失礼かもしれないが、この程度のことを政府が把握できないはずがなく、今回、このような事態に至ったのは、官邸内が緩みきっている証拠と言っていい。各省から派遣されている秘書官らも、麻生内閣は「選挙管理内閣」とみて、腰掛けのつもりでいるのではないか。小泉内閣で5年以上にわたって懸案を処理してきた「小泉チーム」のような、首相への忠誠心やチームとしての結束力が全く感じられない。

 普通の秘書官チームなら、首相の漢字の読み間違い(麻生首相の場合は、国語力の欠如)を指摘したり、ホテルのバー通いが、いかに一般の国民の感覚から遊離しているかを、諫言して当然だろうが、そうしたことが行われている形跡はない。まあ、東大卒のエリート官僚が「まんが宰相」に仕えるばかばかしいさは、十分理解するが、それにしても、国益に反するような首相の振る舞いを止めないとしたら、国益毀損の共同正犯だ。

 こうした官邸の失態続きは、与党側から公明党はもちろん自民党にとっても噴飯ものらしい。

 自民党の塩崎恭久・元官房長官、茂木敏充・前行政改革相、渡辺喜美・元行革相ら中堅・若手議員24人は11月21日、河村建夫官房長官に対し、2008年度第2次補正予算案を今の臨時国会に提出するよう申し入れた。

 麻生首相は2次補正の提出を来年の通常国会に先送りする方針のため、塩崎氏らの行動は明らかに麻生首相に反旗を翻したことになる。

 塩崎氏らの行動に対し、自民党内では単に総選挙を意識した国民向けのパフォーマンスとの見方もあるが、24人には、先の総裁選で経済政策などをめぐって首相と最も対立した小池百合子元防衛相の推薦人が渡辺氏ら3人、石原伸晃幹事長代理の推薦人も塩崎氏ら3人含まれており、小泉改革を推進してきた「改革派」が中心となっているところが意味深だ。

 自民党内にポスト麻生候補が見当たらないことから考えると、彼らの行動が即、倒閣運動にはつながらないだろうが、麻生内閣から体力を失わせるには十分だ。以前にもブログで書いたが、麻生政権の劣化は予想以上に進んでいるとみた方がよく、麻生首相が解散する前に力尽き、自ら退陣を決意する可能性もないとは言えない。

 さらに、麻生首相がこの先、余りにも失態を繰り返すようだと、野党提出の内閣不信任決議案に、自民党から同調者が出て可決され、首相退陣に追い込まれるか、衆院解散から政界再編にまで一気に進むことがないとも限らない。

 いずれにしても、こうした事態を引き起こしているのは、麻生首相の宰相としての能力も品格も欠いた、耐えられない軽さである。麻生首相に続投を許している唯一の条件は、自民党内に有力な「ポスト麻生」候補が見当たらないということだけである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月21日 (金)

麻生首相の居座りこそ政治空白だ

 やっぱりというべきか、早くもというべきか、麻生太郎内閣の政権末期状態に拍車がかかり始めた。今の政治状況は、麻生首相の能力の限界を超えているのであろう。

 以前、このブログでは、解散を先送りしてでも与野党が力を合わせて、未曾有の金融危機を乗り切るべきだと主張したこともある。なぜなら、参院で多数を持たない自公政権では、迅速な意思決定ができなからだ。

http://yoichitoyoda.cocolog-nifty.com/seiji/2008/10/post-f90b.html

 その証拠に、金融危機が実体経済に波及することを防ぐための2008年度第2次補正予算案の提出は、迷走の末、来年1月召集の通常国会に先送りされることが濃厚だ。景気優先といいながら、先送りするのではダブルスタンダードではないのか。この一点においては、現在開会中の臨時国会に提出するよう求めている小沢一郎民主党党首に分があるように思えてならない。

 迷走はそれだけではない。

 道路特定財源の一般財源化に伴う1兆円の地方交付税化や日本郵政の株式売却凍結をめぐり、首相の発言がぶれ、自民党内からも厳しい批判にさらされている。

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20081121k0000m010138000c.html

 1兆円の地方交付税化には自民党の道路族議員が、日本郵政の株式売却凍結には、中川秀直氏らいわゆる「上げ潮派」が猛反発し、まさに「前門の虎、後門の狼」状態だ。

 首相がどういった意図で発言したのかは分からないが、結果的に、首相の発言は自民党内の反対で撤回せざるを得なくなったとしか思えない。

 首相は、医師不足問題に関しても「社会的常識がかなり欠落している人(医師)が多い」と発言し、撤回したばかりだ。こうしたことが繰り返されれば、首相の発言の重さは、ますます失われていく。これは国益に反する。

 そもそも以前にも指摘したように、首相の国語力の欠如には耐え難いものがある。

http://yoichitoyoda.cocolog-nifty.com/seiji/2008/11/post-d39f.html

 まんがばかりを読みふけ、母国語に基づく論理的な思考をする訓練をしてこなかったとしか思えない。そもそも首相としての資質を欠いているのだ。

 自民党総裁選で託された麻生首相の使命は、臨時国会冒頭での衆院解散・総選挙であった。それが果たせなかった今、政権延命の正当性はない。麻生政権が続けば続くほど、政治空白は長引くだけなのだ。

 前出の中川氏は、自らのサイトに「万一、『隠れ郵政民営化反対派』が『アナウンスなき05年路線転換』を図るというなら、こちらも覚悟をもって、堂々と、受けて立つつもりだ」と、書き記した。

http://www.nakagawahidenao.jp/pc/modules/wordpress0/index.php?p=1114

 山崎拓前副総裁も山崎派総会で「いったん発言した以上、その方針でやらないと党内抗争を引き起こしかねない。綸言(りんげん)汗のごとしだ」と、首相を批判した。与党内での求心力低下や、政権基盤の弱体化が急激に加速しているとみた方がいい。

 麻生首相は衆院解散を、2009年度予算が成立する来春以降に先送りするつもりらしいが、自民党内で麻生批判が高まれば、それまで政権維持できるかどうか。衆院選前の首相交代の可能性すら頭をもたげてきた、何ともきな臭い、昨今の政局である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月19日 (水)

天誅ではない。国家国民への反逆だ

 元厚生事務次官やその妻が殺傷された事件に関し、年金政策の不作為を理由にして「天誅だ」「天罰だ」と容認するかのような言説があるが、テロ行為は国家・国民への反逆であることを、この際、強調しておきたい。

 天誅論者は、テロは、強き者に対して弱き者がその窮状を訴え、それを正すための「乾坤一擲」と主張するかもしれない。

 もちろん、私自身、年金問題をめぐる厚生労働省、政府・与党(この場合、長年政権にあった自民党)の不作為を肯定するものではないが、それをテロによって正すことはできるだろうか。

 昭和恐慌の際、軍部のテロを許し、厳しく処断しなかったことが、あの戦争で300万人という同胞に犠牲を強いることになった。国家国民を守るための軍隊(その証拠に自衛戦争と主張していた)が、国家国民を滅亡へと導いたのだ。

 言論には言論で、法には法で対処すべきである。

 繰り返して言うが、テロ行為は国家国民への反逆であり、許されるものではない。それを容認するかのような無責任な言説も、いくら言論の自由が保障されているかとはいえ、慎むべきである。

 言論の自由は、それが責任ある言論であれば処断されることがないという前提で保証されている。テロを許せば、いずれ言論の自由さえも侵されることは、われわれ日本人の歴史が証明している。歴史から学ばぬものは愚かである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

政治的テロを糾弾する

 元厚生事務次官の山口剛彦夫妻が刺殺されたのに続き、同じ元厚生事務次官の吉原健二氏の妻が刺されて重傷を負った。両事件の関連性は現在、捜査中だが、殺傷行為自体があってはならないし、旧厚生省の官僚を狙った政治的意図を持ったテロだとしたら、民主主義への重大な挑戦であり、許されざる蛮行だ。厳しく糾弾したい。捜査当局には万全の捜査で、早期の犯人逮捕を望みたい。

 経済が行き詰まりを見せ、社会的、経済的、政治的格差が広がっている状況を、農村部が貧困にあえいだ戦前の日本にたとえ、戦争前夜だと指摘する意見があるが、安易にたとえるべきではない。もちろん、一定の範囲を超えた格差の拡大は容認されるべきものではないが、そういった指摘自体が、テロを誘発する温床になりかねないからだ。

 われわれの生きている社会が戦前と違うことは、テロに屈し、政党政治が軍部に翻弄されてきた戦前から、多くの教訓を学んでいることだ。

 今回の事件が、たとえ厚生労働行政や年金行政への不満に端を発したテロだとしても、それを容認する社会的空気はないだろうし、そもそもあってはならない。先人が築き上げた民主主義は、そのようなテロではいささかも揺るぎない。

 今回の事件で、「不安」を口にする官僚がみられるし、麻生太郎首相は自宅周辺での朝の散歩を取りやめるそうだ。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2008111801015

http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/news/20081118010010011.asp

 そうした不安や警備上の理由も分からないではないが、そうした不安を口にすればするほど、「テロリスト」の思うつぼだ。テロの語源は「terror」(恐怖)であり、社会的不安をかき立てることが、テロリストの目的だからだ。

 いくら内閣支持率が低いとはいえ、麻生首相は現役首相であり、テロ対策に指導力を発揮して、テロに屈しない姿を堂々と見せほしい。そうした態度をとること自体が、テロを許さないという力強いメッセージになる。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2008年11月18日 (火)

米大統領選講義ノート(3)その1「米大統領選後の米国と如何に付き合うべきか」宮家邦彦立命館大学客員教授

●民主党関係者の興奮

 民主党関係者が送ってきたeメールのメッセージから、その興奮ぶりが分かる。

●「米国通」を見破る方法

(1)「米国初の黒人大統領だ」と言う人=オバマはアフリカ系だが、黒人ではない。ミシェルと結婚したから黒人になった。

(2)「新しいニューディール連合の誕生」と言う人=民主党員の希望とアメリカの現実は違う。

(3)「ユダヤロビーは恐ろしい」と言う人=対ユダヤ系差別を正確に理解すべし。

(4)「アーミテージ、グリーンに会った」と言う人=知日派は親日派ではない。彼らに依存する時代ではない。

(5)「最近中国の専門家が増えた」と言う人=中国は問題国だから、中国語を学ぶことは当然

 オバマ365票、マケイン162票。大勝利というが、2004年と08年を比べても参考にならない。

●内政 潮目は変わったか?

(1)ブッシュの失政に対する反発=1980年のレーガンから保守化が始まる。レーガン、ブッシュWによる2回の保守合同が終焉。レーガノミックス、保守主義も終わりといえるのか。

(2)新しいニューディール連合?=これまでに5回の政界再編。①ジェファーソン(各州の権限強化を求める)②ジャクソン③リンカーン④ルーズベルト(1929年FRD大連合)⑤レーガン(1980年)。Red、Blueの色分けは90年代に入ってから。最近まで逆だった。米国の選挙に伝統的なものはない。レーガン・デモクラッツで潮目が変わった。365票とはいえ、ランドスライドとは呼ばない。1992年に似ている。過渡期の状況。

(3)米国の人種別人口比率予測によると、今白人は三分の二を示すが、2050年の白人の割合は46%に。ヒスパニックは15%から30%に。黒人系は増えない。アジア系は倍増。ヒスパニックとアジア系は20%から40%に。白人はマイノリティに転落。これは大きな要素。過去数十年間にWASPの中に入り、ホワイトハウスに入っていく。1960年代から始まった長いプロセス。マイルストーンについた。オバマ当選が大事。CNNによると、ヒスパニックの66%がオバマに投票。メキシコ国境から中西部に進出したことが、NM、ニバダのマケイン敗北につながる。共和党が増加した地域がバイブル・ベルト。オバマが共和党から取り戻した州では民主党が増えている。

(4)ブッシュへの反発と共和党への反発、保守主義への反発は微妙に違う。保守的アジェンダ、どれだけ保守化しているか。小さな政府、個人の活動への政府の介入を避ける支持者は多い。オバマがひっくり返しているわけではない。最近のワシントン政府は大きな政府と考える人は80%に上る。オバマが勝ったという前に、ブッシュがひどかった。共和党がそれに引きずられた。保守主義まで変わったわけではない。保守主義は健在。

●潮目は変わっていない

(1)ブッシュ失政への反発=第二次保守合同が終わる。ペイリンは役不足。レーガノミクスまで否定されているとは言えない。

(2)新ニューディール連合=オバマノミクスはこれからの共和党の対応次第。財政、宗教などの保守主義は引き続き残る。

(3)オバマ候補の得意な資質=黒人キャンペーンを張らなかった。ヒラリー陣営の自制と協力

●国内政策の優先順位

(1)経済建て直しが最優先=財政支出による景気刺激策。低所得者への減税。財政赤字09年1兆ドル。

(2)敵は共和党より民主党左派=国民皆医療保険、環境、エネルギー。

(3)人事を間違えばクリントン政権の二の舞=中道を目指すオバマは清く正しいクリントン。民主党の支持基盤の脆弱さは変わっていない。民主党は寄せ集め。まずは人事。

(To Be Continued)

(2008年11月17日、日本記者クラブにて)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月17日 (月)

米大統領選講義ノート(2)「オバマ大統領の誕生と新政権の方向性」久保文明東京大学教授

●オバマの勝因

(1)VA、NC、CO、FLなど共和党の地盤に浸食。支持構造の違い(マケインの支持者は消極的支持、オバマは熱烈な支持)。オバマを強く支持する人がいることが、世論調査に出ている。オバマ独特のファクター。人種よりも年齢の方が問題だった。ペイリンはネガティブな効果。

(2)ブルーカラーは、マケインとオバマで迷う。金融危機の後、最終的にオバマを選ぶ。ホワイトカラー、高学歴、白人エリート層はオバマ。北部の白人と南部の白人はかなり違った。

(3)米国はいい国だと確認する選挙。リベラルやインテリは、オバマが負けるとレイシストの国になると心配。歴史的作業に参加。黒人の95%、ヒスパニックの70%がオバマ支持。

(4)ワシントンポストのデイビッド・ブローダーは「1960年の選挙戦がベスト。今回も内容のある選挙」

●歴史の中で

(1)黒人は13%の少数派。経済格差に苦しむ。大統領当選に歴史的意義。ヒスパニックもオバマを強く支持。マイノリティーから大統領になることに意味。見本が出来た。ジムクロウ法、1964年までの価値観。30歳以下には人種的バイアスない。1960年代と比べて寛容度が増している。

(2)マケインは不法移民に寛大だったが、相当右に寄らざるを得ず、ヒスパニックの共和党に対するイメージが悪化。オバマに流れる。金融危機、小さな政府にこだわる共和党の政治的限界。むしろ保守に徹すべきだとの議論が多い。

●新政権の立ち上げ…未曾有の危機の中で

(1)大恐慌の中の選挙に似ている。フーバーになるか、金融危機に対処できればローズベルトに。オバマは経験不足。州知事でない大統領はケネディ以来。そのケネディは上院議員を8年やっている。(オバマは4年)

(2)バイデン、エマニュエル、ポデスタ、かなりの経験者。用意周到な人事。バイデンは外交安保司法、能力を評価。エマニュエルはクリントン政権で次席補佐官。2006年民主党勝利の立役者。ホワイトハウスを知っている。相当したたか。

(3)オバマキャンペーンチームは「ベストのチーム。ほとんどエラーはなかった」。ネットを駆使して、地上戦に。ディーンの誤りから学ぶ。オバマは、チームを二年間まとめたマネージメント能力がある。

(4)オバマのイデオロギー、上院の中で相当のリベラル。予備選後柔軟に。6月、イラクは「責任ある形で撤退」、盗聴容認、沿岸のオイル掘削を許容。オバマも「flip frop」(弱い政治家)に見られる可能性。ただ、フーバーは原則にこだわり、現実に対応できなかった。

(5)大統領として成功できるかは、どのくらいのマージンで勝ったか(53%の得票率 → 60%超えるとランドスライド)、議会でどの程度勝ったか(民主党が増えた)。Coat Tail Effectの有無が左右。1980年のレーガン、1964年のゴールドウオーターが増やした。1960年のケネディは減らした。オバマはさい先よいスタート。

(6)最初の100日間でどれだけ法律を通せるか(実際は1年)。オバマ支持75%、レーガンは67%。一番高い数字、国民に歓迎ムード。公共投資、減税 → 成果を主張できる。左派の基盤をどの程度抑えられるか。

(7)超党派のレトリック。閣僚に二人以上入れるのではないか。トップだけか否か。局長以上を代えるので、下の方まで代えるのかどうか。3000人の1割代えるだけでも300人。難しい課題。

●政策課題

(1)アフガン難しい。イラクから撤退、アフガンに増派。4年後どうなっているか。出口戦略が必要。アフガンは戦死者多い。Mr Obama's Warと位置づけられる可能性。

(2)交渉の優先順位は高いが、いつまで交渉するか、相当考えないと、成果は上がらない。

●対日政策

(1)アフガン重視を理解する必要。難しい課題。給油にとどまらず、手伝ってほしい願望ある。ペロシは「インド洋続けてほしい」。同盟国の評価。

(2)対日政策は政党対立の対象ではない。共和党はイデオロギー重視でやりやすい、共和党は労働組合が基盤で、通商重視と言われるが、政党だけの問題ではない。クリントン時代のよくない思い出の反面、ブッシュ時代はよかった。

(3)中国へのシフト、オバマ政権はクリントンと同じと見る必要ない。ブッシュは中国批判。その反射としての対日政策。イラク戦争で、日本がそれまでの一線を超えたことを高く評価。ブッシュの遺産で食べるのは難しい。

(4)通商では中国に厳しく、日本へはそれほど厳しくない。

(5)金融は米国だけでは対応が十分でない。日本が一定程度貢献できる。

(6)民主党の方が、Global Issue 重視。日本の本来の外交と合致することが多い。日本が一緒にやる部分多い。日本の方でどうするか考える必要がある。

(2008年11月14日午後、日本財団ビルにて、第16回東京財団フォーラム)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月16日 (日)

衆院総選挙は東京都議選と同日選か

 麻生太郎首相は11月14日、金融サミット出席のため訪れたワシントン市内のホテルで、同行記者団と懇談し、衆院解散・総選挙の時期について「1994年の予算の成立は6月。景気を決定的に悪くした。景気対策を考えたら、予算は年度内に(成立させ)きちんとスタートさせるのが大事」と述べた。

http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/news/20081115010000261.asp

 これは、衆院解散は2009年度予算と関連法成立後の4月以降に行う意向を示唆したものと受け取られている。

 麻生首相は同時に「あらかじめ(解散は来年)4月と決めておくわけではない。1月に施政方針演説をして冒頭解散もある。何が起こるか分からない世界だ」とも述べているが、これは野党向けのリップサービスで、本音は4月以降にあると見た方がいいだろう。

 金融危機や「出来レース」だった自民党総裁選の影響で内閣支持率が低迷する中、早期に解散・総選挙を行えば、自民党の議席は大幅に減り、政権の座から転落することは目に見えている。

 麻生首相が臨時国会冒頭解散を期待されながら踏み切れなかったことを考えれば、少しでも政権維持の可能性を探るためには、解散は出来るだけ先送りした方がよいと麻生首相が考えるのも無理もない。

 かといって、来年9月の任期満了に近づけば近づくほど、麻生首相の求心力はなくなり、解散権を行使できなければ、それこそ命取りだ。三木武夫首相が解散権を行使できず、新憲法下で唯一の任期満了選挙に追い込まれ、政権の座から引きずり下ろされたことを考えれば、麻生首相が任期満了選挙を避けたいという気持ちもよく分かる。

 筆者は民意を反映していない政権が三代も続き、自民党政治が劣化している状況を考えれば、早期に解散し、有権者に政権選択をゆだねるべきだと考えているが、自らの主張は脇に置いて、解散・総選挙はいつなのかを考えると、7月に任期満了を迎える東京都知事選とのダブル選挙という有力な選択肢が浮上する。

 このブログでも指摘したとおり、自民党と連立を組み、自民党が選挙での組織的な支援を期待する公明党は、来年の東京都議選(7月22日任期満了)を重視し、都議選と衆院選の間を最低3カ月間あけるように主張している。

http://yoichitoyoda.cocolog-nifty.com/seiji/2008/10/20081025-9c29.html

 しかし予算成立後の解散で、公明党の条件を満たすには、総選挙を9月11日の任期満了後に総選挙を行わなければいけなくなる。小泉純一郎元首相の首席秘書官で政略に長けた、飯島勲・駒澤女子大学人文学部客員教授は「最終的には10月末まで投票日を延ばす選択肢の幅がありうる」と指摘した、という。

http://www.nikkei.co.jp/neteye5/shimizu2/20080528neb5s000_28.html

 ただ、これはかなりの奇策であることには間違いない。任期満了後の総選挙を設定した場合、自民党は公明党の言いなりという批判を浴び、惨敗する可能性も出てくる。そうした批判も前には、「景気対策優先」との言い訳も無力だろう。

 だとしたら、選択肢は予算と予算関連法成立後の選挙しかない。

 ねじれ国会下、予算は衆院通過後1カ月経過すれば、衆院の優越で自然成立するにしても、予算関連法については、参院で野党が抵抗し、採決を先延ばしした場合、衆院通過後60日後に参院で否決されたものとみなす「みなし規定」を使い、衆院で三分の二以上の賛成で再可決しなければならない。単純に考えれば、予算関連法の成立は予算成立後の約一カ月後だ。

 予算と関連法の衆院通過は早くても2月下旬だろうから、予算成立は3月下旬から4月上旬、予算関連法の成立は5月以降になる。

 さて5月の予算関連法成立直後に、衆院解散に踏み切れるのだろうか。その時点では東京都議選に向けた動きが本格化しており、そんな時期に衆院解散に踏み切れば、公明党の不興を買うのは目に見えている。それを回避するぎりぎりの選択肢が、都議選とのダブル選挙というわけだ。

 都議会の任期満了は09年7月22日。公選法上、都議選の投票日は6月28日か、7月なら5日、12日、19日のいずれかだ。来年7月8日から10日までは、イタリアのマッダレーナ島でG8サミット(主要国首脳会議)が開かれるので、サミット効果を最大限生かすには7月12日か19日が有力だ。夏休み直前を避けるなら12日だろう。

 ただ、都議選の日程設定を衆院解散と連動させられるか、筆者は情報を持ち合わせていない。加えて、衆院解散時期の決断は、その時々の政治状況が最も大きい要素になるのは間違いない。とりあえずは、11月30日に会期末を迎える臨時国会や、来年1月召集予定の通常国会での与野党攻防の行方を注意深く見る必要があるだろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

米大統領選講義ノート(1)「米大統領選と日米関係」村田晃嗣同志社大学教授

 米大統領選でバラク・オバマ上院議員が大勝し、米国史上初めてアフリカ系大統領が誕生したことを受け、日本国内でも米大統領選やオバマ政権下の日米関係に関する講演会が頻繁に行われるようになりました。私もそのうちの何回かに参加しましたので、その内容を書き留めておきたいと思います。題して「米大統領選講義ノート」。第一回は、村田晃嗣同志社大学教授による講演「米大統領選と日米関係」です。

●米大統領選

(1)ミズーリでは最終的な投票結果が出ていないが、おそらくマケインが勝つ。「ミズーリを制したものが大統領選に勝つ」というジンクスがあるが、今回の大統領選では、それが崩れた。

(2)オバマは圧勝ではないが、大勝には間違いない。大統領選と同時に、上下両院議員選も行われ、いずれも民主党が勝った。最高裁判所判事9人の内訳は現在、保守派4人、リベラル4人、やや保守寄りの中道1人だが、5人が70歳を超えている。オバマ政権が8年続けば、死亡か辞任でポストが開き、オバマはリベラルを指名し、9人はリベラルに変わる。これにより、行政、立法、司法がすべて民主党に変わる。

(3)今回は、民主党が勝つはずの大統領選。理由は3つ。

①共和党が2期8年続き、復元力が働き、民主党に移るころだった。同じ政党が3期続いたのは、レーガン2期とブッシュ父の12年だけ。

②現職大統領の支持率が低い。ブッシュ大統領の支持率は25%程度で、極端に低い。共和党に不利。

③景気がよければ与党に有利。(悪ければ野党に有利)

(4)オバマは魅力的な候補。3つの多様性を象徴している。

①オバマは1961年、ハワイで生まれた黒人と白人のハーフ。当時、全米3分の1の州で、白人と黒人の結婚が禁止されていたが、ハワイの州法では禁止されていなかった。父母がハワイで出会ったことが重要 → 人種の多様性

②オバマの母は、オバマの父と別れた後、インドネシア人と結婚し、オバマは最大のイスラム国に3年間暮らした → 文化の多様性

③オバマはハーバードに進学。その後、シカゴの貧困地域でコミュニティオーガナイザーに → 社会階層の多様性

(5)オバマは雄弁家。天才的に話がうまい。オバマが勝のは必定。元NHKの日高さんはマケインが勝つと断言していた。インチキの典型。ただ、8月に起こったロシアのグルジア侵攻でマケインの支持率が上がった。ペイリン効果もあった。米国の保守の壁は厚く、人種偏見もある。民主党分裂の可能性もあり、オバマが負ける可能性もあった。最終的にオバマが勝ったのは金融危機が要因。これにより、外交よりも内政に有権者の関心が向いた。生活を守る大統領を選んだ。

(6)オバマは、自分の信念にかかわらず、政治的に望ましい方向にシフトする。第2のケネディ、ローズベルト、リンカーンになる可能性。期待はずれに終わり、第2のカーターになる可能性もある。オバマは途方もないカリスマがある。第2のレーガンになるかも知れない。

●今後の日米関係

(1)日米関係がどうなるのかという質問の背景には、日米関係は米国次第という発想がある。日米関係をどうしたいかを問うべきで、日米関係を主体的に変える必要がある。日米関係を強化し、発言力を強めたい。

(2)日本の政局が不安定。2世、3世議員が多く、最近では首相の親族しか首相になれない。これは日本の民主主義にとって危機。日本の政治が袋小路に入っている。日米関係をどうするかという前に、日本の民主主義をどうするかが重要。

(3)オバマの課題は金融危機対応。麻生首相のプレゼンスはない。外交の中での争点は、アフガニスタン、イランの核武装。米国はアフガン兵力を増強する。ドナーカントリーで200億円出すが、どの国が出すか決まっていない。イギリス、カナダ、ドイツ、オランダはアフガンに軍隊を出しており、金融危機でお金は出せない。日本は憲法の制約で人は出せない。もっとお金をという議論になってくる。

(4)北朝鮮問題で、ブッシュ政権は焦りからテロ支援国家指定を解除。同盟国への配慮を欠いた。オバマは対話路線。

(5)2010年は日米安保改定50年。APEC首脳会談が日本であり、オバマは必ず日本に来る。外務省は日米安保を再々定義する共同宣言を出したい。地球環境や中国、国際テロにどう取り組むかが重要なポイント。

(6)戦後、日米関係で成功した政治家は、アジアでも成功している。岸しかり中曽根しかり。米国かアジアかではなく、立体的ビジョンが求められる。小泉は例外。ビジョンがなかった。安倍さんはイデオロギーを前面に出して参院選で大敗。国内のコンセンサスビルディングがなかった。政治は好き嫌いではない。妥協するのが政治。福田さんは説明責任能力に欠けた。

●田母神論文

(1)内容の是非にかかわらず、敵性勢力が批判し、大きな問題になることは分かっていた。これにより喜ぶのは中国、北朝鮮だ。これにより、拉致被害者の帰国が少なくとも一週間遅れた。日本のイメージを傷つけ、国益を害した。将軍は戦略的な思考をしなければならない。書きたいなら、制服を脱いで書くべきだ。それになぜアパホテルの懸賞論文なのか。本気で主張するなら、NYタイムズに投稿すべきなかったのか。アパとの親密な関係が指摘されている。賄賂ではなかったのかという邪推を招く。李下に冠を正さずという言葉を知らないのか。

(2)田母神論文はいくつかの観点から批判がある。戦略的観点や、論文のレベルなど。日本軍の進駐は条約に基づくというが、条約には圧力がつきもので、その程度が問題。論文には想像力の欠如が山のようにある。

(2008年11月15日午前、拓殖大学にて、海外事情研究所国際講座)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月14日 (金)

押し付けは「地方分権」か

 麻生太郎首相が金融サミット出席のため、ワシントンに到着した。首相としては、1990年代後半の金融危機を乗り切った日本の対応を教訓に、短期的な金融市場安定化策として、経営者責任を明確にした上での金融機関への公的資金注入の必要性などを訴えて、サミットで主導的な役割を果たしたい考え、だそうだ。

 背景には、「経済の麻生」を国際的にアピールするとともに、国内向けには、国際会議での活躍を印象づけ、低迷する内閣支持率のアップに少しでも役立てたいとの思いがあるのだろう。

 とはいえ、定額給付金の迷走ぶりを見ると、とても経済政策を主導したとは言えないし、第一、いくら国際会議の場で自分を売り込んでみても、国際的な関心が麻生首相に向くことはないだろう。単なる首相の自己満足に終わる可能性が高い。

 金融サミットをめぐる評価は、それが終わった時点で試みたい。

 ところで、麻生首相は出発前日、定額給付金の受け取りにあたって所得制限を設けるかどうかを各自治体にゆだね、同じ所得でも住む自治体によって受け取れる人と受け取れない人が出てくることを「だって地方分権なんだから、よろしいんじゃないですか」と言い放った。とても、地方自治を担当する総務相を務めた人の発言とは思えない暴言だ。

 地方分権とは国の権限や財源を地方に移譲し、地方の裁量で実情に応じた施策をとることを指す。

 しかし、今回の定額給付金は、もともと地方自治体側が求めたものではなく、国の政策だ。自民党の公明党対策といってもよく、地方自治体はその事務を押しつけられたに過ぎない。ましてや、高額所得者を給付対象にするかどうかは、高度な政治判断が必要な問題だ。

 政府・与党が1800万円という目安を示したとはいえ、その判断を各自治体にゆだねたのは、政府・与党内で調整しきれなかったためで、そのつけを地方に回すことが地方分権ではないことは、火を見るよりも明らかだ。

 もし、首相が地方分権を推進したいなら、定額給付金の財源として用意する2兆円を各自治体に財源委譲し、その使途は各自治体の工夫に任せたらどうだろうか。各自治体が知恵を絞って、それぞれの景気浮揚策を考え、実現したら、それこそが地方分権の成果ではないのか。

 前回、首相の国語力のなさを指摘したが、首相は漢字の読み方を知らないばかりか、重要政策の定義も知らないらしい。地方分権の定義も知らないような人物が総務相をやっていたと思うと、背筋が寒くなる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

麻生首相の言語力

 揚げ足を取るつもりはないが、麻生太郎首相の言語力の欠如には、耐え難いものがある。

 発端は11月11付の朝日新聞朝刊だ。

 http://www.asahi.com/politics/update/1110/TKY200811100225.html

 記事によると、麻生首相は「踏襲」を「ふしゅう」と読み間違えたが、この報道をきっかけに、首相が漢字が苦手なことが次々と報道された。 「頻繁(ひんぱん)」を「はんざつ」、「未曾有(みぞう)」を「みぞうゆう」という具合だ。

 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20081113-OYT1T00202.htm

 http://mainichi.jp/select/seiji/news/20081113ddm005010124000c.html

 首相は12日夜、記者団に「読み間違えた」と釈明したが、間違えたのではなく、読み方を知らなかったのだろう。日本語の言語力が欠如しているといわざるを得ない。

 ベストセラー「国家の品格」を書いた藤原正彦氏によると、「国語力を取り戻すことが日本人としての品格を育み、日本という国柄を再生させる第1の要諦」なのだそうだ。

 保守派の旗頭が国語力を著しく欠いていたとすれば、保守派にとっても由々しき自体だろう。

 首相はまんが好きで有名だが、まんがを読む前に、漢字や国語の勉強をして、一般書を読み重ねることが必要だ。私は自分の子どもに「まんがばっかり読んでいたら、国語の成績はよくならないよ」と注意してきたが、首相は、こうした注意を聞かずに育ってきたに違いない。注意する人さえいなかったのかも。

 言語力のなさでは、ブッシュ米大統領もぴかいちだったが、麻生首相は「遅れてきたブッシュ」というところか。

 一国民分際で、首相にまで上り詰めた人にこんなことを言いたくないのだが、あえて言わせてもらおう。

 「まんがを捨てて、本を読もう」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月13日 (木)

定額給付金、丸投げとは驚いた

 定額給付金をめぐる与党合意が11月12日まとまった。金融危機に伴って低迷必至な景気を、個人消費を刺激することでてこ入れするのが目的で、1人あたり1万2千円、18歳以下と65歳以上には8千円を上乗せする。

 そもそもこの定額給付金、受け取る側の国民にはすこぶる評判が悪い。報道各社の世論調査では、おおよそ6割以上が「不要」「評価せず」と厳しい評価を下している。

 自民党は1999年にも、公明党の意をくんで地域振興券を発行したが、このとき景気浮揚効果は、経済企画庁(当時)のアンケート調査によると、新たに約2,000億円強の消費押し上げ効果しかなかったと推定されている。このときの発行額が約6200億円だから32%だ。思ったほどの効果はなかったと言っていい。

 このときの地域振興券は、当時野党だった公明党を与党に引きつけるための国会対策費だった意味合いが強い。今回の定額給付金も、自民党離れを起こしつつあった公明党を引き留めるという側面を持つことは否定できない。世論調査で不評なのは、有権者がそのあたりの事情を見抜いているからではないか。

 加えて驚いたのは、所得制限を設けるか否かを、各自治体の判断に丸投げしたことである。

 所得制限をめぐっては、与謝野馨経済財政担当相が1日の民放番組で「高い所得層にお金を渡すのは生活支援の名に反する」と発言し、中川昭一財務相らが事務手続きの煩雑さを理由に反対したことから、政府・与党内で議論になった。

 結局、所得制限については1800万円という目安は設けたものの、法律では定めず、各自治体の判断にゆだねることになったが、これは、政府・与党内で決着できなかった問題を、自治体に押しつけたことは、火を見るより明らかだ。

 所得制限を法律で定めることになれば、事務手続きが煩雑になり、年度内に間に合わないという理由は分からないではない。しかし、結果的に麻生政権の政府・与党内での調整能力不足が露呈しただけではないのか。

 首相は12日、記者団の質問に「それ(現場の混乱)はあなた(記者)の希望であって、全然現場は混乱しない」と強弁したが、首相の指導力が発揮されることはなかった。

 早期解散を期待されながら解散権を行使しないことで、当初から高くない内閣支持率はさらに下落しつつある。発足当初から政権末期状態の政権が三代続くのは異常としか言いようがない。金融危機で、やるべきことをやらなければ解散できないのは分からなくはないが、一刻も早く、国民に政権選択をゆだねるべきである。選挙期間中も政府がなくなるわけではない。この言葉は他ならぬ、麻生首相の言葉である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月11日 (火)

田母神論文再論

 きょう午前10時から参院外交防衛委員会で、田母神俊雄航空幕僚長が参考人として招致される。このブログを書いているのが午前5時なので、約5時間後だ。田母神氏はおそらく自説を再び展開するのだろうが、やはり航空幕僚長という制服自衛官のトップに立つ人が、懸賞論文への応募という形にしろ、政府見解と異なる自説を堂々と表明することには違和感を覚える。文民統制の観点からで、田母神氏の行為はやはり、制服自衛官としては暴走としか思えない。

 私自身、これまでもこのブログで書いたように、国民の生命と財産を守る最小限度の軍事力(日本政府はあくまでも防衛力と呼ぶが)を保有することは、憲法が認めるとの立場を取る。危険な任務に日夜、服している自衛官に対しても、尊敬の念を抱いてやまない。生命を賭して、国民を守る崇高さは、何人によってもゆがめられることはあってはならない。

 しかし、それは規律への絶対的な服従があってのみ可能である。その規律の最高位に位置づけられるのは、文民統制に他ならない。軍隊が文民統制から外れると、国民をどれほど悲惨な結末に導くかは、太平洋戦争敗戦に至った経緯を見れば明らかだ。

 11月7日付の産経新聞朝刊に掲載された、櫻田淳東洋学園大準教授の「正論」によれば、終戦時の陸軍大臣だった阿南惟幾は、二・二六事件の際、陸軍幼年学校校長として全校生徒を集め、「農民の救済を唱え政治の改革を叫ばんとする者は、先ず軍服を脱ぎ然る後に行え」と厳しく訓示したという。

 もちろん、自衛官とはいえ日本国憲法に庇護された日本国民である限り、思想信条の自由はあるが、それと職責に伴う義務とは別問題だ。田母神氏がもし、自らの信条を自由に表明したいのであれば、制服を脱いでからにすべきだった。

 今回の行為が、どれほど組織としての自衛隊への信頼を損ねたか。自衛隊発足以来、自衛官一人一人が厳しい訓練や任務、国際貢献を地道に重ね、国民の信頼を勝ち得てきただけに、軽率な意見表明は誠に残念だ。

 防衛大学校の五百旗頭真校長は11月9日付の毎日新聞朝刊に「国、国民への『服従』は誇り」と題するコラムを寄稿し、文民統制の重要性を指摘している。

 本日の参考人招致で、田母神氏は、文民統制から外れた自らの行為を反省し、自衛隊への国民の信頼を損ねたことを率直に謝罪すべきである。再び自説のみを展開するような往生際の悪さを見せれば、武人としてあるまじき行為であることは論を待たない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月10日 (月)

政治的領域を侵した空幕長論文(2)

田母神俊雄空幕長の更迭に関連し、歴史認識とはどうあるべきか、ノンフィクション作家の保坂正康さんのインタビュー記事がありますので、リンク先を紹介します。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/sokkyo/news/200708/CK2007081402040841.html

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2008年11月 9日 (日)

政治的領域を侵した空幕長論文

 「我が国が侵略国家だったというのはぬれぎぬ」と主張する論文をホテルグループ主催の懸賞に応募していた田母神俊雄・航空幕僚長が更迭された。歴史認識に関して論議があることは認めるが、空幕長という空軍トップの意見表明としては不適切だったと指摘せざるを得ない。

 私自身、国民の生命財産を守るための必要最小限の軍事力は必要だと考えている。そうした軍事力は、日本国憲法を改正しなくても、持つことが可能だとの立場を取る。解釈改憲は、英国と不成典憲法と同様、有効だと考えることが現実的と考えるからだ。

 さて戦後、戦力の不保持を明記した憲法下で、自衛隊の存在をいかに認めるかは、自衛隊を旧軍といかに切り離すかが大前提であった。軍の政治介入により、国を勝算なき戦争に導き、300万以上の同胞に犠牲を強いたことの反省からだ。

 言論の自由が認められた現行憲法下で、個々人が自らの意見を表明することは当然の権利だが、空幕長という立場で表明する必要、妥当性があったのか。むしろ、営々と積み上げられた自衛隊への信頼を揺るがす結果になってしまったのではないか。立場をわきまえず高度な政治判断が必要な領域にまで踏み込んでしまったのは、行き過ぎとのそしりを免れない。仮に確信犯だとしたら、極めて悪質だと断ぜざるを得ない。

 さらに、私が問題だと思うのは、懸賞論文の選考過程だ。新聞報道によると、論文は筆者の名前や肩書きを伏せた形で行われたというが、外部による検証が必要だろう。空幕長と論文を募集したホテルグループのトップはこれまでもきわめて親しい関係にあり、最初から田母神空幕長に賞金を与えるために、懸賞という形を取った「賄賂」だった可能性がぬぐいきれないからだ。やましいことがないならば、今すぐにでも外部機関による検証を受け入れるべきだ。

 今回の更迭劇をめぐって、様々な議論があるが、私が読んだ中では、11月7日の産経新聞の「正論」欄に掲載された櫻田淳・東洋学園大学准教授の論考「空幕長論文の正しさ・つたなさ」に一番、共感したので、リンク先を紹介しておきたい。

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/081107/acd0811070337000-n1.htm

| | コメント (0) | トラックバック (0)

オバマ大統領誕生と米国の変容

 バラク・オバマ氏がアメリカ大統領選を制し、来年1月、第44代大統領に就任する。選挙直前にはすでに優勢が伝えられていたため、驚きはないが、初のアフリカ系、8年ぶりの民主党政権という意味では感慨深い。

 勝因はいろいろあろうが、やはり一番大きいものは、8年にわたるブッシュ路線の否定だろう。

 ブッシュ政権は米中枢同時テロを受け、戦時体制に突入した。そして報復のためにアフガニスタンを攻撃、その後、大量破壊兵器などなかったにもかかわらず、イラクに兵を進めた。そして4千人以上という米兵を失い、多くのイラク国民を犠牲にした。

 この過程で、ブッシュ政権は強大な軍事力を背景に一国主義(unilateralism)を推し進め、多国間主義(multilateralism)を放棄した。ブッシュ大統領は戦時大統領の強い指導力、決断力を演出して、父が果たせなかった再選を実現した。アメリカは一極支配を謳歌しているかに見えた。

 しかし、イラク・アフガニスタン情勢の悪化と、新自由主義経済の一つに帰結である金融危機は、そうした一極支配の終焉を告げた。皮肉にも、金融危機は大統領選が佳境に入るころ起こり、共和党のマケイン候補の足を確実に引っ張り、オバマ候補の優勢を決定づけた。急速なブッシュ路線離れが、米国政治を大転換させた。

 実は、私自身、オバマ氏が2004年の民主党大会で行った基調演説をボストンで聴き、将来、大統領候補になることを確信したのだが、それは早くても2012年の大統領選だろうと思っていた。米国社会の変容、つまりブッシュ政権の一国主義、新自由主義経済からの転換が私の予想以上のスピードで進み、オバマ氏を大統領に押し上げたのだろう。

 それにしても、うらやましいのは米国社会の復元力だ。それも、二大政党制による政権交代があるからこそ可能だ。アメリカの国としての歴史は浅いが、アメリカという実験国家が生んだ民主主義、三権分立という政治システムは、古代ローマの原始民主制を除けば最も古い歴史を持つ。その点は見落とすべきではない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2008年10月 | トップページ | 2008年12月 »