即興政治論 & JUNK BOX
◆東京新聞に2006年10月から1年間掲載された「即興政治論」のリンク集です。
即興政治論 http://yoichitoyoda.cocolog-nifty.com/sokkyo_seiji/
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●民主党政権誕生へ
衆院選が大詰めを迎え、30日の投開票に向け、報道各社による情勢分析が出そろった。新聞各社の見出しを見ると、すべてが民主党の圧勝を予言している。
【東京】民主、300議席超す勢い 自民は100前後か
【朝日】民主、300議席うかがう勢い 自民苦戦、半減か
【毎日】民主320議席超す勢い 自民100議席割れも
【読売】民主300議席超す勢い 自民激減、公明は苦戦
【産経】民主、300議席確保へ 政権交代は確実
【日経】民主圧勝の勢い 300議席超が当選圏 自民、半減以下も
こうした情勢報道が、実際の投票行動にどう影響を及ぼすかは定かではないが、民主党が単独で過半数を確保する情勢は動かず、民主党が政権交代を果たし、同党中心の政権ができるのは揺るぎない状況だ。
●自民の敗因、民主の勝因
2005年の前回衆院選、いわゆる「郵政解散」で296議席という歴史的圧勝を果たした自民党が、なぜここまで支持を失ったのか。
数々の失言を放ってきた麻生太郎首相自身の資質の問題はあるが、最も大きな要因は、小泉純一郎が進めた構造改革路線への反発だろう。郵政民営化、公共事業費や社会保障費の抑制、三位一体の地方分権など、新自由主義を基調とする小泉改革にはもともと、弱者や地方の切り捨て、貧富の差拡大を招いたとして強い反発がある。小泉首相在任中は、国民的な人気を背景にした強いリーダーシップで、そうした批判は押さえられてきたが、小泉首相退陣後はそれを抑えることができなかった。麻生首相は小泉路線からの決別を宣言したが、時すでに遅し、だった。
また、小泉首相が構造改革の一貫で進めた「脱業界団体」の動きにより、郵政関係団体、医師会、建設業界、農協など自民党の支持団体が離反していった。
こうした自民党離れに伴い、政権交代を目指す民主党への期待感が確実に高まっていった。鳩山由紀夫代表はじめ民主党候補は選挙戦で「政権交代」を訴え、これは有効なワンフレーズとなった。郵政解散での「郵政民営化」に相当するものだ。自民党は、「政権交代」に対抗できるワンフレーズを生み出せなかった。
さらに、選挙地盤という点で、市町村の広域合併が進み、市町村数が減ったことも見逃せない。これは、選挙の際、自民党候補の手足として動いてきた市町村長、市町村議員が減少したことを意味し、自民党の基盤となってきた地方の足腰は確実に弱っていた。
共産党が候補者を絞り込んだ影響も大きい。共産党は従来300小選挙区のすべてに候補者を擁立していたが、法定得票数に達せず、没収される供託金が莫大になるため、今回の選挙では152候補者に絞り込んだ。候補者がいない小選挙区の共産党支持者は比例代表では共産党に投票するが、小選挙区では民主党に投票する支持者が多い。
共同通信社が8月20-22日に実施した全国電話世論調査では、共産党候補がいない選挙区で共産党を支持すると答えた人に投票先を尋ねたところ、民主党候補が52.6%で最多だった。こうした票の動きが、民主党の支持を伸ばす要因になっている。
●小選挙区制の功罪
小泉政権が郵政解散で果たした歴史的圧勝が、次の選挙で覆る制度的要因が小選挙区制だ。一つの選挙区で一人を選ぶ小選挙区制は、一票でも票の多い方が勝者となり、一票でも少なければ敗者となる。All or nothing、Winner take allだ。こうした小選挙区制は民意を鋭角的に表現する。それがこの制度の利点でもあり欠点でもある。
前回選挙の翌日、自民党内で話題になったのは、小選挙区制を活用するカナダでかつて、政権与党からわずか数議席の少数党に転落した事例だった。この当時から自民党内にあった野党転落の懸念が現実になった。これが小選挙区制の恐ろしさでもある。
●鳩山政権いつ誕生?
新首相を決める特別国会は8月30日の投票日から30日以内に召集すると憲法で定められているが、民主党は9月中旬までには国会で首相指名選挙を行い、組閣を終えたい考えだ。それは9月下旬に米国で相次いで国際会議が開かれるため、その場を「鳩山首相」の国際デビューの場としたいためだ。また、会議の合間をぬって、オバマ米大統領との初会談を設定したいとしている。
【主な政治・外交日程】
【2009年】
9月22日 気候変動問題に関する首脳級会合(ニューヨーク)
9月23日 国連総会一般討論(ニューヨーク)
9月24-25日 金融サミット(米ピッツバーグ)
9月28日 特別国会召集期限
9月30日 麻生自民党総裁の任期切れ
10月 臨時国会召集(?)
10月25日 参院補欠選挙
11月14-15日 APEC首脳会議(シンガポール)
12月 2010年度予算政府案を閣議決定(?)
【2010年】
1月 通常国会召集
1月15日 インド洋での給油支援特措法期限切れ
夏 参院選
首相指名選挙が行われる特別国会の召集時期をめぐっては、各派代表者会議が9月初めに開かれ、協議される見通しだ。
政府高官は8月24日夜、特別国会の召集時期について「常識的には新政権の意見を聞かなければならない」と、民主党側の意向をくんで9月14~18日の間に召集されるとの見方を示したが、実際には、民主党の思惑通りに決定されるとは限らない。自民党サイドで衆院選惨敗を受けて、後継総裁が決まらない事態も予想されるからだ。
選挙結果にかかわらず、麻生首相の自民党総裁としての任期は9月30日に切れ、自民党の総裁公選規程では任期満了の1カ月前までに日程を決めることになっている。つまり、8月30日の投開票日前に、次の総裁を選ぶ日程を決めなければいけないが、厳しい選挙情勢を受けて、党執行部には総裁選の準備に入る余裕はない。総裁候補になりうる人が当選できるかどうかを見極めなければ、総裁選日程を決められないような状況で、総裁選日程の決定は、総選挙後に先送りされる気配だ。
また、自民党が党員・党友による本格的な総裁選を行えば、数日では終わらないこともあり得る。このため自民党が特別国会の召集時期を遅らせることも考えられ、召集時期が憲法の規定上ぎりぎりの9月下旬までずれ込む可能性がある。その場合、鳩山氏の9月下旬の米国での外交デビューは困難になり、米国での一連の会議には麻生首相が出席し、帰国後に新首相の指名が行われる事態もあり得る。
●民主党政権どうなる
民主党は衆院選で圧勝しても、参院では単独で過半数に達しておらず、鳩山代表は総選挙後、31日中にも社民、国民新両党に連立参加を呼びかけ、政策協定や閣僚ポストの配分などをめぐる「連立協議」に入る。特別国会召集までに新政権の枠組みを固め、鳩山氏は首相指名後、直ちに組閣に入り、新政権を速やかに発足させたい考えだ。
民主党のマニフェスト冒頭では、「政治家主導の政治へ」などとうたった政権構想「5原則」に続き、その方策を書いた「5策」が並ぶ。(1)政府に国会議員約100人を配置、政治主導で政策立案・調整・決定(2)「閣僚委員会」活用。事務次官会議廃止(3)首相直属の「国家戦略局」設置(4)政治主導で事務次官・局長などの新たな幹部人事制度を確立(5)天下り全面禁止、「行政刷新会議」の設置――だ。
民主党政権の最初の課題は、2010年度予算編成にどう臨むのか。政権交代の真価が問われることになる。
民主党の構想では国家戦略局が予算編成や国家ビジョン策定の司令塔になるとしているが、組織の発足には法改正が必要なため、とりあえず初閣議で内閣官房組織令を改正し、内閣に首相直属の「国家戦略室」を設置、マニフェストに掲げた主要政策の実現に向けた2009年度補正予算の減額補正、2010年度予算編成の準備に直ちに着手する。秋に想定される臨時国会に「国家戦略局設置法案(仮称)」を提出、成立を図り、正式に発足させる考えだ。
国家戦略局の設置は、これまで官僚の手にゆだねられてきた予算編成の政治主導への転換と、政府と党の政策決定一元化が目的で、戦略局担当相には、党政調会長を兼ねる重要閣僚を充て、戦略局スタッフには、政治家や学者のほか、民主党の政権公約を支持する官僚も起用。地方自治体代表も加え、計30人程度となる見込みだ。国家戦略局の設置に伴い現在の経済財政諮問会議は廃止する。
民主党は、麻生政権下で編成、成立した2009年度補正予算について、公益法人などに積まれた46基金に拠出する総額4兆3600億円を見直し、3兆円程度減額する一方、不要不急の事業を中止し、生活保護の母子加算の復活、来年度の子ども手当、高速道路無料化、高校無償化など、目玉政策の財源に充てたい考えだ。 その象徴が117億円が計上されている「アニメの殿堂」(国立メディア芸術総合センター)。事業中止で浮いた財源は、年間で約180億円と試算される生活保護の母子加算の復活財源に充てるという。
戦略局では、こうした方針を整理した上で、秋の臨時国会に補正組み替えのための2009年度第2次補正予算案を提出する。2010年度予算案については、麻生内閣が既に決めた概算要求基準を全面的に見直し、戦略局であらためて編成方針を策定する。特別会計の剰余金などの「埋蔵金」とあわせて約5兆円を確保する。
一方、行政刷新会議は、予算の無駄排除や地方分権を進める組織。各省庁の予算の点検などを通じ、政権公約を実現するための財源を見つけ出すのが最大の目的で、国と地方の役割を見直し、中央省庁のスリム化も検討する。
国会議員数人が主導、有識者や全国知事会など地方6団体の代表者らをメンバーとする予定で、国家戦略会議設置など、政策決定に関する制度改革の一括法案とすることも検討されている。
また、秋の臨時国会には、国家公務員の再就職あっせんを全面禁止する「天下り根絶法案」を提出。「子ども手当」や高校無償化についても、2010年度開始に向けた市町村の準備期間確保のため、関連法案を提出する方向だ。
ただ、こうした民主党の無駄をカットする路線は、それ自体は有権者に歓迎されるだろうが、財源論としては限界が指摘されている。目玉政策をすべて実現するには、行政の無駄をカットするだけでは財源は捻出できないという指摘だ。
さらに、政治主導方針には、官僚サイドの強い抵抗が予想される。官僚の抵抗で、民主党の政治指導力に疑問符がつき、政権構想が実現できない事態になれば、世論の期待は失望に変わる。その失望感が、来年の参院選での民主党敗北につながれば、参院で与党過半数割れの事態を招き、再び「ねじれ国会」の状況となる。
民主党の政治主導路線が名実ともに実現するか否かは、日本政治が安定政権期に移行できるかどうかを占う試金石でもある。
●閣僚人事どうなる?
民主党政権の顔ぶれはどうなるのか。それを予想する一つの材料が、鳩山「次の内閣」閣僚名簿だ。
【総理大臣】鳩山由紀夫
【副総理大臣】小沢一郎、菅直人、輿石東
【国務大臣】岡田克也
【官房長官】直嶋正行
【総務大臣】原口一博
【外務大臣】鉢呂吉雄
【防衛大臣】直嶋正行(兼務)
【内閣府担当大臣】松井孝治
【財務大臣】中川正春
【金融担当大臣(経済財政担当)】大畠章宏
【厚生労働大臣】藤村修
【年金担当大臣】長妻昭
【経済産業大臣】増子輝彦
【法務大臣】細川律夫
【文部科学大臣】小宮山洋子
【子ども・男女共同参画担当大臣】神本美恵子
【農林水産大臣】筒井信隆
【国土交通大臣】長浜博行
【環境大臣】岡崎トミ子
【官房副長官】長妻昭(年金担当大臣兼務)
ただ、どう見ても、民主党のオールスターメンバーとは言えず、大幅な組み替えが予想される。
鳩山代表は、官房長官、財務相、外相の3主要閣僚は議員からの登用を表明。新聞報道では、官房長官に菅直人代表代行、財務相に藤井裕久最高顧問、外相に岡田克也幹事長の起用が取りざたされている。榊原英資・早大教授、寺島実郎・日本総合研究所会長ら民間からの財務相、外相起用の芽は消えたものの、民間からの閣僚起用はあり得る。また、連立を組む社民、国民新両党にも閣僚ポストを割り振るとみられ、民主党議員の入閣枠はさらに減る。
報道によると、山岡賢次国対委員長が農相起用を表明するなど、民主党圧勝の予測を受けて閣僚ポストへの自薦が出始めており、そうした希望を不満なくどうさばくかも、鳩山氏ら党首脳の力量が問われることになる。
●新田中派の誕生か
民主党が衆院選で議席を増やした場合、小沢一郎代表代行に近い「小沢チルドレン」が増殖するのは確実。現在50人程度の小沢グループが100人規模に膨らみ、小沢氏の政権運営に与える影響が大きくなることも予想される。
民主党内のほかのグループは自民党の派閥とは異なる緩やかなグループだが、長年、自民党を支配した旧田中派の系譜につながる小沢グループは、旧田中派と同様、強い結束力と強力な秘書団、豊富な資金力を誇る。
小沢代表の下で戦った2007年の参院選で当選した民主党新人議員38人の多くは小沢氏の強い影響を受けている。衆院選でも小沢チルドレンが増殖すれば、政治資金問題で一度は代表の座を退いた小沢氏の「完全復権」に向けた足場ができる。
鳩山氏が「故人献金」問題で野党・自民党の追及をかわしきれなくなれば、小沢氏の首相登板の芽が出てくる。首相の座につかなくても、小沢氏がグループを足場に、党内で影響力をさらに強める可能性はある。小沢チルドレンの増殖は「新田中派」の誕生をも意味している。
●対等な日米同盟 どこまで?
民主党は従来の日本外交を「対米追従」と批判しており、マニフェストでは外交・安全保障政策について「主体的な外交戦略を構築し、緊密で対等な日米同盟関係をつくる」と明記。在日米軍の犯罪容疑者引き渡し方法などを定め、日本に不利とされる日米地位協定の「改定を提起」し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても「見直しの方向で臨む」と記した。これらはいずれも、対等な日米同盟を目指す一環だ。
ただ、民主党が政権奪取後、対等な日米同盟をどう構築するのか、具体的なビジョンを描ききっているわけではない。
まず、米側が日米地位協定の改定や米軍再編の見直しを即座に受け入れる可能性は低い。政府は麻生政権下ですでに、米軍再編合意の順守を盛り込んだ協定を国会で承認済み。米側は協定を盾に日本に実施を求める構えで、合意内容の見直しに応じる気配はない。日米地位協定の取り扱いも同様で、米側は運用改善で対応する従来方針を堅持するものとみられる。
民主党側も、こうした米側の対応をにらみ、マニフェストの表現を弱めたり(2008年政策集は日米地位協定について「抜本的な改定に着手する」、米軍再編や在日米軍基地のあり方は2009年政策集で「見直しを進める」と明記)、インド洋における海上自衛隊の給油活動についても、鳩山氏は来年1月の期限を「延長しない」と明言し、当面は活動を継続する考えを表明するなど、現実的な対応へと舵を切り始めている。
鳩山氏は、9月にも想定される初の日米首脳会談で、オバマ米大統領との信頼関係を構築し、マニフェストで挙げた諸課題について、米側と十分に協議した上で最終判断したい考えだが、「対等な日米同盟」が米国離れを意味するならば、日米間の軋轢になる可能性は否定できない。マニフェストでは、「東アジア共同体」の構築をうたっており、日本外交の軸足が米国から東アジアに本格的に移るようなことがあれば、日米関係の悪化は決定的となる。
民主党が日米関係をはじめとして外交・安全保障政策で具体的なビジョンを描き切れていないのは、党内に集団的自衛権の行使を容認する前原誠司副代表ら日米同盟重視派から、自衛隊の海外派遣に否定的な旧社会党系グループまでを抱え、意見集約が容易でないからだ。
さらに、非核三原則の法制化などを求める社民党を連立内に抱えれば、政権内の意見統一も、より難しくなる。
2010年は日米安全保障条約改定50年を迎え、日米の外交当局者は、新しい日米安保宣言を発する意向だ。
「鳩山首相」が、現実路線と独自路線のバランスをどう取り、新しい日米同盟の地平をどう切り開くのか。しばらくは新政権発足後の対応を見守る必要がある。
● 対ロ外交どうなる?
北方領土問題に関し、民主党の2009政策集は「領土問題の解決は、困難を伴うとともに相当の時間を要するものです。わが国が領土主権を有する北方領土・竹島問題の早期かつ平和的解決に向け粘り強く対話を積み重ねます」と明記した。昨年の政策集では「四島の一括返還を目指す」としており、北方領土問題で従来採ってきた「早期一括返還」の方針を軟化させている。「四島の日本への帰属が確認されれば実際の返還の時期や態様については柔軟に対応する」(3月の麻生首相国会答弁)という政府の姿勢を引き継ぐものとみられる。
1956年に日ソ国交回復を実現した鳩山一郎首相を祖父に持つ鳩山氏は、北方領土問題解決への思い入れが強いとみられ、新政権では領土問題が重要な政策課題となる可能性はある。その場合、キーマンとなるのが北海道で民主党が選挙協力する新党大地の鈴木宗男代表だ。
鈴木氏は8月6日、衛星放送「BSイレブン」の番組で、衆院選で政権交代が実現した場合、連立政権協議に加わる意向を示すとともに、北方領土問題について「政権を取ったら半年以内にその道筋を付けましょうということで(鳩山氏と)合意した」と述べた。
鈴木氏が新政権でどのような立場になるかは、まだ見通せないが、北方領土問題に関し、鈴木氏が政権内部で発言力を強める可能性はある。ただ、鈴木氏が自民党にいた当時、二島先行返還を唱えたことに外務省内で反発が起き、対ロ交渉が混乱した経緯があり、鳩山氏が鈴木氏をどう処遇するかも焦点となる。
(了)
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6月14日 千葉市長選
6月16日 国民年金法改正案、再可決可能に
6月19日 西松建設前社長初公判
6月中旬 政府の「安心社会実現会議」が提言
6月22日 海賊対処法案、再可決可能に
6月29日 日本郵政株主総会
6月下旬 政府が骨太の方針2009を決定
7月3日 東京都議選告示
7月3日 天皇皇后両陛下米国、カナダご訪問
7月5日 静岡県知事選
7月8-10日 主要国首脳会議(伊ラクイラ)
7月12日 東京都議選、奈良市長選
7月12日 税制改正法案、再可決可能に
7月17日 天皇皇后両陛下がご帰国
7月26日 仙台市長選
7月28日 通常国会会期末
8月6日 広島原爆忌
8月9日 長崎原爆忌
8月11日 ◆衆院選公示(解散しない場合)
8月23日 ◆衆院選投開票(同)
9月10日 衆院議員任期満了
9月15日 国連総会開幕(ニューヨーク)
9月24-25日 金融サミット(米ピッツバーグ)
9月30日 麻生自民党総裁が任期満了
11月14-15日 APEC首脳会議(シンガポール)
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●北核実験、核論議の引き金に?
北朝鮮が5月25日、2006年10月以来、二度目の核実験を行った。追加的な核実験をしないよう求めた国連安全保障理事会の制裁決議違反は明かで、日米両国などが中心となって新たな制裁決議の文言調整を進めている。
北朝鮮の再核実験は、日本の安全保障政策にどういう影響を与えるのか。その一つが、「敵基地攻撃論」の台頭だ。
自民党国防部会の防衛政策検討小委員会は5月26日、政府が年末に改定する「防衛計画の大綱」に向けた提言案をまとめ、おおむね了承された。
政府はこれまでも、海外の敵の基地を攻撃することは、政府の憲法解釈で認められた自衛の範囲内との立場をとってきた。1956年当時の鳩山内閣による「我が国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない。他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である」という政府見解を維持し続けている。
麻生首相も5月28日の参院予算委員会で、こうした見解を再確認している。
ただ、憲法解釈上、可能であることと、実際にできるかと言うことは別問題で、自衛隊はこれまで、憲法9条に基づく専守防衛の観点から、敵の基地を攻撃する装備を保有してこなかった。これは、集団的自衛権は権利として保有していると考えられるが、行使することは憲法上認められないということと同じ論理と言っていい。
しかし、北朝鮮による核・ミサイル開発が進むにつれ、実際に敵の基地を攻撃できる能力を、自衛隊が持つべきだという議論は、確実に台頭している。国防部会の提言はそうした自民党内の空気の現れでもある。
提言案では、弾道ミサイルの脅威に対し、「座して死を待たない防衛政策」として、ミサイル防衛(MD)に加え、策源地(敵基地)攻撃能力の必要性を盛り込み、巡航ミサイルの導入などを挙げている。提言案は6月上旬にも提言を党として正式決定し、麻生首相に提出される見通しだ。
ただ、首相は前述の参院予算委員会で「現実の自衛隊は敵基地攻撃を目的とした装備体系を保有していない。日米安保をきちんとして、日本の平和と安全を期することが基本だ」と語った。
日米安全保障条約に基づく日米安保体制では、自衛隊が盾(防衛)、米軍が矛(攻撃)という役割分担をしている。日本が矛の役割を持とうとすることは、裏返せば日米安保が機能していないことになる。敵基地攻撃能力を持つという議論自体が、日米同盟の信頼性を失わせるというジレンマにもなっている。
同様のことは、日本の核武装論にも言える。
北朝鮮の核開発を受け、日本の一部タカ派議員やマスコミの間で、日本も核武装すべきだという意見が出ている。
しかし、日本が核武装するということは、NPT(核不拡散条約)を脱退し、国際的な孤立を招くことを意味する。つまり、日本も北朝鮮になるということである。また、米国による核の抑止力「核の傘」の信頼性を失わせ、現実的ではないとして退けられてきた。
日本にとって、核問題をめぐり気になるのは、北朝鮮の核開発よりも、オバマ政権による核軍縮論議の方だ。
日本政府はこれまで、「唯一の被爆国」として15年連続して国連総会に核廃絶決議案を提出するなど、核軍縮・不拡散問題に取り組んできており、4月5日のオバマ米大統領のプラハ演説を受け、中曽根弘文外相が「世界的核軍縮のための11の指標」と銘打った日本独自の提言を発表した。
その内容は(1)核軍縮国際会議の日本開催(2)米ロ両国の第1次戦略兵器削減条約(START1)に代わる条約交渉の早期妥結(3)米国の包括的核実験禁止条約(CTBT)早期批准(4)北朝鮮やインド、パキスタンの核拡散防止条約(NPT)加入-などだ。
「11の指標」には、「唯一の被爆国」の願いを説得材料に、この分野をリードし、日本外交の存在感を高めようという思いがにじむ。
しかし、米国の「核の傘」に依存する日本が、核軍縮をリードできるのかという指摘もある。
オバマ政権発足後、日本政府は核の傘を維持するよう、念押しを重ねてきたという。毎日新聞によると、2月17日=クリントン国務長官訪日▽同24日=ワシントンでの日米首脳会談▽3月31日=オランダ・ハーグでの日米外相会談。4月5日のオバマ演説後は、同15日=麻生太郎首相の大統領あて親書▽同24日=日米首脳電話協議▽同27日=中曽根弘文外相の特別演説--という具合だ。
こうした日本政府の姿勢は、核武装論を抑えるためにも、核の傘の維持を訴えているようにもみえるが、核抑止力を意味する「核の傘」の維持を求める一方で、核軍縮を訴えるのは、確かに矛盾のようにみえる。
核の傘の維持と核軍縮をどう両立させるのか、日本政府は、その明確な見解は示していない。
さらに、核抑止力の維持を訴える日本の姿勢は、核軍縮に反対する米国内の保守派に利用されかねない危惧はある。
米国からの報告では、核軍縮活動家の間などで「スポイラー・ジャパン(Spoiler Japan)」という単語が広がっているという。核の傘に固執する日本の姿勢が、核軍縮に本腰を入れようとする米国をスポイルする(甘やかしてだめにする)という意味なのだという。
●ルース駐日米大使起用の波紋
オバマ米大統領が5月27日、次期駐日大使にカリフォルニア州の弁護士ジョン・ルース氏(54)を正式に指名した。上院での承認を経て、夏ごろ、シーファー前大使の後任として日本に赴任する。
ルース氏は、スタンフォード大ロースクールを卒業。大手弁護士事務所を経営し、同州シリコンバレーを拠点に、情報技術(IT)企業の合併・買収などを手がけてきた。昨年の大統領選では、オバマ氏の有力な資金提供者として貢献した。オバマ大統領はルース氏起用と同時に、金融大手シティグループの前副会長で、やはり選挙資金面で貢献したとされるルイス・サスマン氏を駐英大使に正式指名しており、ルース氏の駐日大使への起用は、資金集めへの「論功行賞」の色合いが強い。
河村建夫官房長官は5月28日の記者会見で、ルース氏起用について「日本政府として歓迎したい。オバマ大統領の信任が極めて厚い方で、今回の指名はオバマ政権の日米同盟重視の証左だ」と、大統領とのパイプへの期待感を示した。
ただ、米国の同盟国として大物大使の起用に期待を寄せていた日本政府にとって、日本とのパイプが細いルース氏起用は、期待はずれの面もある。
次期駐日米大使は当初、国務、国防総省の要職を歴任し、国際政治学者として知名度の高いジョセフ・ナイ・ハーバード大教授が有力視され、日本のマスコミも一斉に報道した。在日米軍再編や北朝鮮の核問題など難題を抱える中で、東アジア政策に詳しいナイ氏が適任との期待感があったからだ。
そうしたナイ氏に比べ、ルース氏の安全保障政策をめぐる手腕は未知数だ。近年の駐日大使は、マンスフィールド民主党上院院内総務、モンデール副大統領、フォーリー下院議長、ベーカー共和党上院院内総務ら政界の大物が起用される例が多く、ルース氏は、格落ちの感が否めない。
日本政府の不満を増幅しているのは、米国が日本よりも中国を重視しているのではないかという疑念だ。
オバマ大統領は次期駐中国大使にユタ州のジョン・ハンツマン知事を起用した。その発表は、大統領がホワイトハウスで自ら行うという力の入れようだったが、駐日大使の発表は5月27日夜、ホワイトハウス記者会に文書で事務的に連絡があっただけ。これが日本軽視との見方を増幅しているのだ。
もっとも、この発表も英国、フランス、インドなど、ほかの11人の大使と同時で、日本だけ特別な扱いだったわけではなく、むしろ、同盟国としての気安さが、簡略な発表につながったとも言えなくもない。
米大統領は共和党、民主党を問わず、大統領選での貢献者を大使に起用する傾向があり、ルース氏の大使起用も、驚くべきことではない。
ナイ氏はクリントン政権で国防次官補を務め、東アジア戦略報告をまとめるなど、ヒラリー・クリントン国務長官に近いとみられている。これが、駐日大使に起用されなかった理由の一つとする報道もあり、ルース氏起用は、対日関係を国務省ではなく、ホワイトハウス直轄とするオバマ政権の意向の表れとみることもできる。
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●小沢辞任で民主復調
小沢一郎前代表の公設秘書が西松建設の違法献金事件で逮捕・起訴され、ダメージを受けていた民主党が、小沢氏の代表辞任を契機に、息を吹き返している。
朝日新聞が、鳩山由紀夫新代表選出を受けて5月16、17の両日に実施した全国電話世論調査によると、「いま投票するとしたら」との前提で質問した衆院比例代表の投票先は、民主党が38%で前回調査(4月18、19日)の32%から伸ばしたのに対し、自民党は25%と前回27%からやや減らした。
また、政党支持率でも民主が26%(前回21%)と増え、自民の25%(同25%)と並んだ。望ましい政権の形は「民主中心」45%(同41%)、「自民中心」28%(同29%)で、「民主中心」が差をさらに広げた。
どちらが首相にふさわしいかでは、麻生太郎首相29%に対し、鳩山代表が40%でリード。小沢氏の辞任前の前回は麻生氏37%、小沢氏23%で、麻生氏が優位に立っていたが、入れ替わった。
朝日新聞以外の報道各社による世論調査でも、こうした傾向は同様で、小沢氏が「政権交代のため」として辞任した効果が出ているようだ。
世論調査での民主党への追い風は、地方選挙にも現れている。鳩山新代表就任後、初めて行われた大型地方選である5月24日のさいたま市長選では、民主党埼玉県連支持の清水勇人氏が、与党系現職の相川宗一氏ら5氏に圧勝した。
与党側は、さいたま市長選敗北について「さいたま市は民主党が比較的強い地域で、国政への影響は限定的だ」(細田博之自民党幹事長)と、9月までに行われる次期衆院選への影響を否定しているが、それは強がりだろう。
民主党によほどの失策がない限り、麻生内閣がいくら経済対策で得点を上げたとしても、今の世論調査の傾向を覆すことは難しい。
次期衆院選前に自民党総裁、首相を代えて、新しい顔の下で選挙に臨む。それが自民党が政権を維持する唯一の策になりつつある。
●世襲批判は新「階級闘争」
自民党は、次期衆院選での逆風を少しでも弱めようと、有権者の歓心を買う様々な「改革姿勢」を打ち出している。その一つが「世襲制限」。麻生首相の側近で、自民党の選挙対策を取り仕切る菅義偉(すが・よしひで)選挙対策副委員長が口火を切った。
菅氏は高校卒業後、秋田県から集団就職で上京し、働きながら大学を卒業。サラリーマンや故小此木彦三郎衆院議員秘書を経て、地縁も血縁もない横浜市で市議会議員となって政界入りした、いわゆるたたき上げの「党人派」。
これまでも、親や親戚から地盤(後援会組織)看板(知名度)カバン(資金力)を受け継ぐ世襲候補に対しては、新人候補の参入を阻害するとして根強い批判があった。しかし、自民党内では、配偶者や子供らが選挙地盤や集票組織、後援会を受け継ぐ議員が後を絶たず、菅氏には、世襲を当然のことと考える自民党の姿勢が、国民の支持を失う大きな理由になっていると映ったようだ。
実際、自民党の衆参両院議員のうち37.8%にあたる112人が三親等内に国会議員を持つ世襲議員。1996年の橋本龍太郎首相就任以降をみると、森喜朗元首相以外の橋本、小渕恵三、小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎の各首相経験者は皆、世襲議員だ。
もちろん世襲議員には、落語家や歌舞伎役者のように、幼少の時から親の働く姿を見て、政治の「英才教育」を受けたという見方もあるが、泥酔会見で辞任した中川昭一前財務相や、事務所費問題で絆創膏を貼って会見に臨み、辞任に追い込まれた赤城徳彦元農相ら、その資質が疑われる世襲議員が続出したため、国民の世襲に対する目は厳しくなっている。
菅氏の狙いは、自民党が世襲に厳しい姿勢を見せることで、国民の支持を回復することだが、もう一つの隠された思惑がある。それが「脱小泉」だ。
小泉元首相は昨年、政界引退を表明し、後継に次男の進次郎氏を指名した。小泉氏の祖父、父も国会議員を務めており、典型的な世襲議員。進次郎氏が当選すれば、四代続けて国会議員を務めることになる。
小泉家の世襲を認めず、自民党が進次郎氏を公認しなければ、国民に改革姿勢を示すと同時に、郵政民営化など新自由主義的政策を進めてきた小泉路線からの脱却をアピールできることになる。
もちろん、自民党は「刺客候補」を立てることはなく、進次郎氏が無所属で当選すれば、追加公認して自民党入りさせる「抜け道」も用意している。小泉氏自身も、最初は自民党の公認がもらえず、無所属で立候補して落選した経験があり、世襲制限に理解を示しているようだ。
ただ、菅氏が打ち出した世襲制限は、菅氏ら「党人派」の「世襲議員」に対する不満を顕在化させ、自民党内で権力闘争の新たな対立軸となるのは間違いない。
苦労して政治家になった党人派が、その矛先を、銀のスプーンをくわえて生まれてきた世襲議員に向ける構図は、「新たな階級闘争」といってもいいだろう。
●衆院選8月9日が濃厚に
次期衆院選は8月9日に行われる可能性が濃厚になっている。麻生太郎首相はいまだ、衆院解散の具体的な時期について明らかにしていないが、国会情勢や国事行為として衆院を解散する天皇陛下の日程等を考えると、8月9日が最有力候補として浮かび上がってくるからだ。
衆院選の時期を考える上で、最も重要な要素は、2009年度補正予算案と補正予算関連法案、海賊対処法案など重要法案の審議・成立状況だ。
まず補正予算案は6月29日、参院で野党の反対多数で否決されるが、憲法60条の衆院優越規定で同日中に成立する運び。
予算執行の裏付けとなる補正予算関連6法案のうち、生前贈与の非課税枠を拡大することで相続税を軽減する税制改正法案は5月13日に衆院を通過しており、野党側が参院での採決を見送っても、7月12日には同法案の成立が担保される。12日は日曜日なので13日には再可決・成立の運びとなる。
ほかの5法案のうち、株価の大幅下落に備え新組織を設置する資本市場危機対応臨時特例措置法案は成立を断念する方向で、日本政策投資銀行法改正案、銀行株式等保有制限法改正案、商工組合中央金庫法改正案など3法案は民主党と修正協議をしており、5月中の衆院通過は見送られるものの、両党が修正に合意すれば、早期成立が可能。修正に合意できず、成立に至らなくても、予算執行にほとんど影響ないとの見方が、与党内にはある。
つまり、与党にとって開会中の通常国会で成立させなければならないのは、税制改正法案だけということになる。
通常国会の会期は6月3日。通常国会は国会法の規定上、1回しか延長できないので、少なくとも7月13日までは国会を延長しなければならない。
麻生首相は、補正予算の成立を最大の景気対策としてきたので、税制改正法が成立確実となる7月13日以降は、いつでも解散できるということになる。国会が延長されれば、麻生首相が成立を目指していた海賊対処法や改正国民年金法などの重要法案も成立させることができる。
まず、ここで(1)「解散は7月13日以降」という「方程式」が導き出される。
衆院選の期日を決める次の要素は、麻生首相が実際に解散に踏み切るかどうかだ。
衆院議員の任期満了は9月10日。その30日前からは「任期満了選挙」が可能となる。日曜日に限れば8月16日、23日、30日、9月6日の4回ある。
しかし、任期満了選挙は、首相が政権基盤の弱体化で解散に踏み切れなかったという印象を与え、与党に不利となる。もちろん、任期満了選挙が可能な期間でも、解散できないことはないが、主導権を維持したとは言い難いので、自民、公明両党としては、この期間の選挙は避けたいところだ。
新憲法下で任期満了選挙は三木内閣当時に一回あるが、自民党は議席を減らし、三木武夫首相は退陣に追い込まれた。
麻生首相が定石通りに任期満了選挙を避けるとしたら、(2)「衆院選の投開票日は8月9日以前」という、次の方程式が導き出される。
衆院解散日を決める上で、もう一つ見逃せない要素は、天皇陛下の日程だ。衆院解散は天皇の国事行為の一つであり、天皇が外国訪問などで国内に不在の場合、皇太子が国事行為を代行できるものの、通常この間は解散を避ける。
天皇陛下は7月3日から17日まで米国を訪問されることになっており、普通に考えれば解散は天皇陛下の帰国後だ。帰国される17日が金曜日で、この日を含め、土、日曜日と祝日の公務の負担をかけないとすると、先ほどの(2)「解散は7月13日以降」という方程式は、(3)「解散は7月21日以降」という方程式に上書きされる。
7月21日は火曜日で公示日に当たるが、解散日に公示はできないので、(2)式と(3)式の連立方程式の解を求めると、「衆院選は8月9日」という解が得られる。
この場合、公示日は7月28日となり、解散から1週間しかたっていない。解散から公示までは、通常は10日前後だが、任期満了近い予期された選挙なので、準備期間としては十分だろう。
8月の選挙は新憲法下では行われた例がないが、旧憲法下では2回あり、2005年の郵政解散も公示は8月だったことから、できないわけではない。
投開票日の8月9日は長崎原爆犠牲者慰霊平和記念式典があり、この日は避けるべきだとの意見はあるが、最近では期日前投票が普及し、投票日以外の投票がしやすくなっており、投開票日回避の決定的な要因とはならない。
8月9日投開票なら、東京都議会議員選挙が行われる7月12日から約1カ月が経過しており、都議選から最低でも1カ月以上離すよう求めていた公明党の意向にも沿うことができる。
もちろん、これらの方程式は、麻生首相が常識的な判断をした場合にのみ有効だ。安倍晋三元首相や福田康夫前首相のように政権を突然、投げ出した場合など不測の事態が起きれば、衆院解散・総選挙の時期は、これらの方程式で導き出した解よりもずれることになる。
ただ、その場合でも、9月10日までには選挙は行われるので、多少ずれたとしても「誤差の範囲内」と言える。
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次期衆院選は8月9日に行われる可能性が濃厚になった。麻生太郎首相はいまだ、衆院解散の具体的な時期について明らかにしていないが、国会情勢や国事行為として衆院を解散する天皇陛下の日程等を考えると、8月9日が最有力候補として浮かび上がってくるからだ。
衆院選の時期を考える上で、最も重要な要素は、2009年度補正予算案と補正予算関連法案、海賊対処法案など重要法案の審議・成立状況だ。
まず補正予算案について、与党は5月13日に行われる麻生首相と小沢一郎民主党代表との党首会談後、衆院予算委員会で採決し、同日中に衆院本会議を開いて可決、衆院を通過させたい考えだ。
野党側は難色を示しているので、同日中の衆院通過は微妙だが、15日の金曜日までには衆院を通過するだろう。これにより、野党側が参院でどんなに審議を遅らせても、6月13日には補正予算本体、7月13日には補正予算関連法の成立が担保される。
開会中の通常国会の会期は6月3日。通常国会は国会法の規定上、1回しか延長できないので、少なくとも7月13日までは国会を延長しなければならない。
麻生首相は、補正予算の成立を最大の景気対策としてきたので、補正予算関連法が成立確実となる7月13日以降は、いつでも解散できるということになる。国会が延長されれば、麻生首相が成立を目指していた海賊対処法や改正国民年金法などの重要法案も成立させることができる。
まず、ここで(1)「解散は7月13日以降」という「方程式」が導き出される。
衆院選の期日を決める次の要素は、麻生首相が解散に踏み切るかどうかだ。
衆院議員の任期満了は9月10日。その30日前からは「任期満了選挙」が可能となる。日曜日に限れば8月16日、23日、30日、9月6日の4回ある。
しかし、任期満了選挙は、首相が政権基盤の弱体化で解散に踏み切れなかったという印象を与え、与党に不利となる。もちろん、任期満了選挙が可能な期間でも、解散できないことはないが、主導権を維持したとは言い難いので、自民、公明両党としては、この期間の選挙は避けたいところだ。
新憲法下で任期満了選挙は三木内閣当時に一回あるが、自民党は議席を減らし、三木武夫首相は退陣に追い込まれた。
麻生首相が定石通りに任期満了選挙を避けるとしたら、(2)「衆院選の投開票日は8月9日以前」という、次の方程式が導き出される。
衆院解散日を決める上で、もう一つ見逃せない要素は、天皇陛下の日程だ。衆院解散は天皇の国事行為の一つであり、天皇が外国訪問などで国内に不在の場合、皇太子が国事行為を代行できるものの、通常この間は解散を避ける。
天皇陛下は7月3日から17日まで米国を訪問されることになっており、普通に考えれば解散は天皇陛下の帰国後だ。帰国される17日が金曜日で、この日を含め、土、日曜日と祝日の公務の負担をかけないとすると、先ほどの(2)「解散は7月13日以降」という方程式は、(3)「解散は7月21日以降」という方程式に上書きされる。
7月21日は火曜日で公示日に当たるが、解散日に公示はできないので、(2)式と(3)式の連立方程式の解を求めると、「衆院選は8月9日」という解が得られる。
この場合、公示日は7月28日となり、解散から1週間しかたっていない。解散から公示までは、通常は10日前後だが、任期満了近い予期された選挙なので、準備期間としては十分だろう。
8月の選挙は新憲法下では行われた例がないが、旧憲法下では2回あり、2005年の郵政解散も公示は8月だったことから、できないわけではない。
投開票日の8月9日は長崎原爆犠牲者慰霊平和記念式典があり、この日は避けるべきだとの意見はあるが、最近では期日前投票が普及し、投票日以外の投票がしやすくなっており、投開票日回避の決定的な要因とはならない。
8月9日投開票なら、東京都議会議員選挙が行われる7月12日から約1カ月が経過しており、都議選から最低でも1カ月以上離すよう求めていた公明党の意向にも沿うことができる。
もちろん、これらの方程式は、麻生首相が常識的な判断をした場合にのみ有効だ。安倍晋三元首相や福田康夫前首相のように政権を突然、投げ出した場合など不測の事態が起きれば、衆院解散・総選挙の時期は、これらの方程式で導き出した解よりもずれることになる。
ただ、その場合でも、9月10日までには選挙は行われるので、多少ずれたとしても「誤差の範囲内」と言える。
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●小沢は辞めるのか
4月26日に投開票された名古屋市長選で、民主党推薦の前衆院議員、河村たかしが当選した。3月29日の千葉県知事選、4月12日の秋田県知事選で推薦・支持候補の敗北が続いていた民主党にとっては、今回の市長選勝利を、小沢一郎代表の公設秘書が政治資金規正法違反で逮捕された西松建設による違法献金事件の悪影響からの脱却につなげたいところだろう。
ただ、これで小沢が引き続き代表を務め、そのまま衆院選に突入することができると考えるのは早計だ。
幹事長の鳩山由紀夫は4月26日夜、市長選勝利が小沢の進退問題に与える影響について「圧勝したということで、プラスの影響は当然ある」と記者団に語ったが、河村はこれまで民主党内で「一匹オオカミ」的な存在として知られ、今回の勝利も「河村の個人人気の結果」との見方が、党内でも大勢だ。
小沢は今回の市長選で、名古屋市入りし、選挙事務所など激励に訪れたが、街頭演説に立つことはなかった。このことは小沢と河村との微妙な距離、小沢の今置かれている現状を暗示しているようにみえる。
党内有力者の発言をみると、鳩山は表向き、小沢と一蓮托生の立場だが、小沢の後継者と目される代表経験者の岡田克也、同じく代表経験者の前原誠司は、小沢と距離を置く発言を繰り返している。
岡田は4月25日、熊本市内での講演で「われわれは国民が納得するだけの努力を一生懸命考えている。もう少し時間をいただきたい。理解ができていないままで、政権交代ができないことは分かっている」と強調した。
前原も4月24日、日本外国特派員協会での講演で「小沢代表の『党代表や首相の座に未練はない。最大のテーマは政権交代可能かどうかだ』との発言を私は固く信じている。客観的に党の状況を分析し、判断することが大事だ」と述べた。
これらの発言に共通しているのは、世論の賛同が得られないなら、代表を辞任すべきだとの考えを強くにじませている点だ。
その世論の動向はどうだろうか。
日本経済新聞社とテレビ東京が4月24日から26日に行った共同世論調査によると、小沢の進退について「辞任すべきだ」と答えた人が62%に達し、「続投すべきだ」の24%を大きく上回った。
産経新聞とフジテレビが4月25、26両日に行った合同世論調査でも、「小沢代表を辞任すべきだ」との回答は56.6%で、1カ月前の前回調査よりも5.7ポイント減ったものの、依然過半数を占めている。また「麻生太郎首相は退陣し、衆院選を行うべきだ」と答えたのは23.5%にとどまっているのに対し、「小沢代表が退陣し、新代表の下で衆院選に臨むべきだ」との回答は57.3%に上っている。
これらの調査結果は、小沢の代表続投が国民の支持を得られていないことを示している。
また、民主党内では、かつて小沢の秘書を務めた、側近の樋高剛前衆院議員が小沢ではなく非小沢系の蓮舫参院議員と並ぶポスターを作ったことも発覚。 産経新聞によると、小沢と距離を置く中堅、ベテラン議員らが、小沢氏の辞任を求める「連判状」作成を検討するなど、小沢離れがじわじわと広がっている。
当の小沢は4月28日の記者会見で、こうした党内の動きについて「いろんな意見があることは風の便りに聞いている」と、辞任論の存在を認めつつも、「(次期衆院選で)国民の信頼を必ず獲得できると現時点では思っている」と、代表辞任を改めて否定した。
ただ、小沢はこれまで政権交代に政治生命をかけると明言しており、自らが身を引くことで民主党の党勢が著しく回復するような状況になった場合には、潔く身を引く可能性もある。今は、じっとその時を見定めているのかもしれない。
次期衆院選では小沢の続投が自民党に有利になると説いている小泉純一郎元首相は4月22日、小沢の進退について「衆院解散直後に代表を辞任する。代表選をやらずに後継指名するだろう。彼の性格からして代表辞任後も影響力を残そうとするのではないか」との見通しを示している。
●首相側近4人の密談
4月23日夜、首相官邸の敷地内に2台の自動車が裏門から滑り込んでいった。乗っていたのは安倍晋三元首相と菅義偉自民党選対副委員長。公式には、麻生はこのとき、首相公邸で甘利明行政改革担当相と会っていたことになっており、新聞各社の首相動静欄に、安倍と菅の記録はない。麻生にとって、安倍、菅との会談は、公にはできない事情があったのだろう。
麻生とその周辺がなぜ、そこまで神経質になるのか。それは、この四人の密談が、衆院解散・総選挙の時期をめぐるものだったからに違いないと容易に推測できる。
この会談の布石になったのが、官房長官の河村建夫が、衆院解散・総選挙の時期について「政権を一緒にやっている公明党だから、無視できないだろう」と述べた4月22日の講演だ。
この発言は、公明党幹事長の北側一雄幹事長が4月20日、大阪市内での講演で、次期衆院選の時期について「4~6月期のGDP(国内総生産)が8月中ごろに出て、少しは経済の底打ち感が出てくるのではないか。多くの方々が底打ちを感じる時が一つのチャンスだ」と、8月中旬以降にすべきだと発言したことに呼応したものだ。
公明党は、国政選挙並みに重視する東京都都議会議員選挙(7月12日投開票)と衆院選の時期を、少なくとも1カ月以上ずらすよう求めており、解散権者の麻生が公明党の意向を重視するなら、衆院選は6月7日以前か8月16日以降に絞られる。
しかし、6月7日以前の衆院選は、民主党が2009年度補正予算の審議に全面的に協力して早期成立が可能になるか、民主党が補正予算審議に徹底抗戦して、成立しないまま解散に踏み切るしかできない。8月16日以降なら事実上の任期満了選挙だ。
河村がなぜこの時期に、麻生の専権事項である衆院解散・総選挙の時期に踏み込んで発言したのかは分からない。
安倍は麻生との密談で「補正成立後すぐの解散も視野に入れるべきだ」と、「5月解散論」を主張したという。事実上の任期満了選挙では、レームダックに陥る危険性があるとの認識からだろうが、河村発言に待ったをかける意味があったのかもしれない。
麻生の盟友でもあり、密談に加わった甘利明行政改革担当相は4月21日の記者会見で、「麻生首相が国内外にメッセージを発信する環境が整ってきた。解散を焦る必要はないと思う」と、「5月解散論」を否定。首相側近として台頭著しい菅も4月20日の講演で「(2009年度補正予算を)しっかりと成立をさせ、王道を歩んだほうがいいと総理に申し上げた」ことを明らかにした。補正予算に加え、関連法も成立させた上で解散することが望ましいとの考えを示した発言で、菅も甘利と同じく「5月解散論」を否定的だ。
麻生は4月27日、記者団に対し、衆院解散・総選挙の時期について「(税制)関連法案もあるし、ソマリアや年金の話など重要法案もある。これ(補正予算の成立)だけで、後はすべて終わりという状況ではない」と述べた。
この発言は、2009年度補正予算と予算関連法に加え、海賊対処法や改正国民年金法など重要法案の成立前の衆院解散を否定したものと受け取られている。
補正予算案と予算関連法案は、与党側のシナリオ通り5月中旬に衆院を通過したとしても、民主党は補正予算に反対しており、野党が多数を示す参院で採決を引き延ばされる可能性は大いにある。補正予算は衆院優越の憲法規定で6月中旬に成立したとしても、予算関連法を成立させるには、7月中旬まで待たなくてはならない。
景気低迷が続く中、民主党がそこまで採決を引き延ばすとは考えにくいが、たとえ、補正予算案と関連法案の迅速な処理に合意したとしても、海賊対処法などを成立させるには、6月3日までの通常国会の会期内では困難だ。
古賀誠選対委員長ら自民党内の一部には、5月解散を求める意見はあるが、麻生のこれらの発言から推測すると、麻生は5月解散に否定的だ。国会を延長して重要法案を仕上げて、7月のイタリアでのサミット後、景気対策と外交での成果を掲げて選挙に臨むという麻生の基本戦略は変わっていない。このことからも、選挙対策の実権はすでに、選対「委員長」の古賀から、「副委員長」の菅に移っていることも分かる。
麻生は4月20日、自民党の細田博之幹事長、大島理森国会対策委員長らを首相官邸に呼び、2009年度補正予算案と税制改正関連法案など予算関連法案の早期成立を図るよう指示した。これも、5月解散に含みを残すというよりは、補正と関連法を早期に仕上げて、「景気の麻生」をアピールする狙いからなのは明らかだ。
焦点は(1)7月12日の東京都議会議員選挙とのダブル選挙はあるのか(2)8月中旬のお盆前か後か(3)任期満了後の選挙はあるのか--だ。ただ、9月10日の任期満了まで、すでに4カ月しかなく、選挙期日の設定は限られ、いつ選挙があろうとも「誤差の範囲内」だ。
●3.5島返還論の背景
前外務次官で政府代表を務める谷内正太郎が4月17日付の毎日新聞インタビューで、北方領土問題をめぐり「3.5島(返還)でもいいのではないか。北方4島を両国のつまずきの石にしない」と発言し、国内外に波紋を広げた。
谷内は麻生が外相当時に外務次官を務めるなど麻生に近く、谷内発言の背景には、麻生の意向が働いているのではないかと受け止められたからだ。
毎日新聞によると、谷内は1956年の日ソ共同宣言に基づく解決案としてロシア側が示している歯舞、色丹の2島返還を引き合いに、「2島では全体の7%に過ぎない。択捉島の面積が大きく、面積を折半すると、(歯舞、色丹、国後)3島プラス択捉島の20~25%ぐらいになる。実質は4島返還になる」と語ったという。
政府はこの発言を「谷内氏の個人的見解」(河村官房長官)と火消しに走ったが、麻生自身も同様のことを発言したこともある。外相当時の2006年12月、衆院外務委員会で「択捉島の約25%を(国後、色丹、歯舞の)残り3党にくっつけると、(面積が)50(対)50の比率になる」と述べている。今回の谷内発言と全く同じ内容だ。
3.5島返還論が、谷内の発想を麻生が代弁したものなのか、麻生の発想を谷内が代弁したものなのかは判然としないが、日本政府内で、北方領土問題解決の一つのアイディアとして存在することは間違いない。
麻生は2月18日、サハリンを訪問し、ロシアのメドベージェフ大統領と会談した。会談後、麻生は記者団に、北方領土問題について「新たな、独創的で型にはまらないアプローチで、我々の世代で解決すべく、具体的な作業を加速しようということで一致した。4島の話は向こう(ロシア)が2、こっちが4ではまったく進展しない。日露間すべてに引っかかっている問題だ。政治が決断しなければいけない」と述べた。
この「独創的アプローチ」が何を指すのかは分からないが、センテンスの後半「4島の話は向こう(ロシア)が2、こっちが4ではまったく進展しない」に、3.5島返還論がにじんでいるように見える。
麻生が5月に来日するロシアのプーチン首相や、7月にイタリアで開かれる主要国首脳会議の際、メドベージェフ大統領との首脳会談で、面積2等分案を交渉カードに使うのではないか、との見方もあることにはあるが、4島返還を目指す日本側にとって大幅な譲歩であり、領土問題で譲歩案を示すには、麻生の政権基盤は脆弱すぎる。内閣支持率は一時の危機的な状況を脱しつつあるが、政治決断できる環境には至っていない。
麻生自身は今回、4月23日の衆院海賊対処・テロ防止特別委員会で「北方4島の話は、帰属問題がはっきりしない限りは前に進まない。(谷内も)それを前提にしゃべっていると思う。ロシアとの平和条約締結は、4島の帰属問題を明らかにした上でどうするかという話にすべきだというのが、基本的な政府の考え方だ。このことは一貫して変わっていない」と述べるにとどめている。
谷内発言が麻生と打ち合わせ済みの、北方領土問題の解決を目指すための「観測気球」だったとしたら、3.5島返還論への反発が依然、強いことが明らかになり、麻生が北方領土問題で譲歩案を提示するのは難しくなったといえる。逆に「観測気球」でなかったとしたら、谷内発言は軽率だったことになる。
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●小沢は辞めるのか
4月26日に投開票された名古屋市長選で、民主党推薦の前衆院議員、河村たかしが当選した。3月29日の千葉県知事選、4月12日の秋田県知事選で推薦・支持候補の敗北が続いていた民主党にとっては、今回の市長選勝利を、小沢一郎代表の公設秘書が政治資金規正法違反で逮捕された西松建設による違法献金事件の悪影響からの脱却につなげたいところだろう。
ただ、これで小沢が引き続き代表を務め、そのまま衆院選に突入することができると考えるのは早計だ。
幹事長の鳩山由紀夫は4月26日夜、市長選勝利が小沢の進退問題に与える影響について「圧勝したということで、プラスの影響は当然ある」と記者団に語ったが、河村はこれまで民主党内で「一匹オオカミ」的な存在として知られ、今回の勝利も「河村の個人人気の結果」との見方が、党内でも大勢だ。
小沢は今回の市長選で、名古屋市入りし、選挙事務所など激励に訪れたが、街頭演説に立つことはなかった。このことは小沢と河村との微妙な距離、小沢の今置かれている現状を暗示しているようにみえる。
党内有力者の発言をみると、鳩山は表向き、小沢と一蓮托生の立場だが、小沢の後継者と目される代表経験者の岡田克也、同じく代表経験者の前原誠司は、小沢と距離を置く発言を繰り返している。
岡田は4月25日、熊本市内での講演で「われわれは国民が納得するだけの努力を一生懸命考えている。もう少し時間をいただきたい。理解ができていないままで、政権交代ができないことは分かっている」と強調した。
前原も4月24日、日本外国特派員協会での講演で「小沢代表の『党代表や首相の座に未練はない。最大のテーマは政権交代可能かどうかだ』との発言を私は固く信じている。客観的に党の状況を分析し、判断することが大事だ」と述べた。
これらの発言に共通しているのは、世論の賛同が得られないなら、代表を辞任すべきだとの考えを強くにじませている点だ。
その世論の動向はどうだろうか。
産経新聞とフジテレビが4月25、26両日に行った合同世論調査によると、「小沢代表を辞任すべきだ」との回答は56.6%で、1カ月前の前回調査よりも5.7ポイント減ったものの、依然過半数を占めている。また「麻生太郎首相は退陣し、衆院選を行うべきだ」と答えたのは23.5%にとどまっているのに対し、「小沢代表が退陣し、新代表の下で衆院選に臨むべきだ」との回答は57.3%に上っている。
その一週間前、朝日新聞が4月18、19両日に実施した全国世論調査でも、「小沢は代表を辞める方がよい」との意見は61%を占め、「続ける方がよい」は28%。 いずれの調査でも半数以上が、小沢の辞任を求めており、小沢の代表続投が国民の支持を得られていないことを示している。
また、民主党内では、かつて小沢の秘書を務めた、側近の樋高剛前衆院議員が小沢ではなく非小沢系の蓮舫参院議員と並ぶポスターを作ったことも発覚するなど、小沢離れもじわじわと広がっている。
当の小沢は4月21日の記者会見で、自らの進退について「民主党の組織としての総意はもう(続投と)決まり切っている。私は代表として総選挙に向けてみんなと一緒に全力で取り組む」と、続投への強い意欲を示した。
ただ、小沢はこれまで政権交代に政治生命をかけると明言しており、自らが身を引くことで民主党の党勢が著しく回復するような状況になった場合には、潔く身を引く可能性もある。今は、じっとその時を見定めているのかもしれない。
次期衆院選では小沢の続投が自民党に有利になると説いている小泉純一郎元首相は4月22日、小沢の進退について「衆院解散直後に代表を辞任する。代表選をやらずに後継指名するだろう。彼の性格からして代表辞任後も影響力を残そうとするのではないか」との見通しを示している。
●首相側近4人の密談
4月23日夜、首相官邸の敷地内に2台の自動車が裏門から滑り込んでいった。乗っていたのは安倍晋三元首相と菅義偉自民党選対副委員長。公式には、麻生はこのとき、首相公邸で甘利明行政改革担当相と会っていたことになっており、新聞各社の首相動静欄に、安倍と菅の記録はない。麻生にとって、安倍、菅との会談は、公にはできない事情があったのだろう。
麻生がなぜ、そこまで神経質になるのか。それは、この四人の密談が、衆院解散・総選挙の時期をめぐるものだったからに違いないと容易に推測できる。
この会談の布石になったのが、官房長官の河村建夫が、衆院解散・総選挙の時期について「政権を一緒にやっている公明党だから、無視できないだろう」と述べた4月22日の講演だ。
この発言は、公明党幹事長の北側一雄幹事長が4月20日、大阪市内での講演で、次期衆院選の時期について「4~6月期のGDP(国内総生産)が8月中ごろに出て、少しは経済の底打ち感が出てくるのではないか。多くの方々が底打ちを感じる時が一つのチャンスだ」と、8月中旬以降にすべきだと発言したことに呼応したものだ。
公明党は、国政選挙並みに重視する東京都都議会議員選挙(7月12日投開票)と衆院選の時期を、少なくとも1カ月以上ずらすよう求めており、解散権者の麻生が公明党の意向を重視するなら、衆院選は6月7日以前か8月16日以降に絞られる。
しかし、6月7日以前の衆院選は、民主党が2009年度補正予算の審議に全面的に協力して早期成立が可能になるか、民主党が補正予算審議に徹底抗戦して、成立しないまま解散に踏み切るしかできない。8月16日以降なら事実上の任期満了選挙だ。
河村がなぜこの時期に、麻生の専権事項である衆院解散・総選挙の時期に踏み込んで発言したのかは分からない。
しかし、安倍は麻生との密談で「補正成立後すぐの解散も視野に入れるべきだ」と、「5月解散論」を主張したという。事実上の任期満了選挙では、レームダックに陥る危険性があるとの認識からだろうが、河村発言に待ったをかける意味があったのかもしれない。
麻生の盟友でもあり、密談に加わった甘利明行政改革担当相は4月21日の記者会見で、「麻生首相が国内外にメッセージを発信する環境が整ってきた。解散を焦る必要はないと思う」と、「5月解散論」を否定。
首相側近として台頭著しい菅も4月20日の講演で「(2009年度補正予算を)しっかりと成立をさせ、王道を歩んだほうがいいと総理に申し上げた」ことを明らかにした。補正予算に加え、関連法も成立させた上で解散することが望ましいとの考えを示した発言で、菅も甘利と同じく「5月解散論」を否定的だ。
麻生は4月20日、自民党の細田博之幹事長、大島理森国会対策委員長らを首相官邸に呼び、2009年度補正予算案と税制改正関連法案など予算関連法案の早期成立を図るよう指示したが、麻生が補正成立を衆院解散時期とどう結びつけようとしているのかは明らかではない。
麻生は安倍にも態度を明らかにしなかったというが、雌雄を決する衆院選時期の「選択の幅」が、確実に狭まっていることだけは間違いない。
●3.5島返還論の背景
前外務次官で政府代表を務める谷内正太郎が4月17日付の毎日新聞インタビューで、北方領土問題をめぐり「3.5島(返還)でもいいのではないか。北方4島を両国のつまずきの石にしない」と発言し、国内外に波紋を広げた。
谷内は麻生が外相当時に外務次官を務めるなど麻生に近く、谷内発言の背景には、麻生の意向が働いているのではないかと受け止められたからだ。
毎日新聞によると、谷内は1956年の日ソ共同宣言に基づく解決案としてロシア側が示している歯舞、色丹の2島返還を引き合いに、「2島では全体の7%に過ぎない。択捉島の面積が大きく、面積を折半すると、(歯舞、色丹、国後)3島プラス択捉島の20~25%ぐらいになる。実質は4島返還になる」と語ったという。
政府はこの発言を「谷内氏の個人的見解」(河村官房長官)と火消しに走ったが、麻生自身も同様のことを発言したこともある。外相当時の2006年12月、衆院外務委員会で「択捉島の約25%を(国後、色丹、歯舞の)残り3党にくっつけると、(面積が)50(対)50の比率になる」と述べている。今回の谷内発言と全く同じ内容だ。
3.5島返還論が、谷内の発想を麻生が代弁したものなのか、麻生の発想を谷内が代弁したものなのかは判然としないが、日本政府内で、北方領土問題解決の一つのアイディアとして存在することは間違いない。
麻生は2月18日、サハリンを訪問し、ロシアのメドベージェフ大統領と会談した。会談後、麻生は記者団に、北方領土問題について「新たな、独創的で型にはまらないアプローチで、我々の世代で解決すべく、具体的な作業を加速しようということで一致した。4島の話は向こう(ロシア)が2、こっちが4ではまったく進展しない。日露間すべてに引っかかっている問題だ。政治が決断しなければいけない」と述べた。
この「独創的アプローチ」が何を指すのかは分からないが、センテンスの後半「4島の話は向こう(ロシア)が2、こっちが4ではまったく進展しない」に、3.5島返還論がにじんでいるように見える。
麻生が5月に来日するロシアのプーチン首相や、7月にイタリアで開かれる主要国首脳会議の際、メドベージェフ大統領との首脳会談で、面積2等分案を交渉カードに使うのではないか、との見方もあることにはあるが、4島返還を目指す日本側にとって大幅な譲歩であり、領土問題で譲歩案を示すには、麻生の政権基盤は脆弱すぎる。内閣支持率は一時の危機的な状況を脱しつつあるが、政治決断できる環境には至っていない。
麻生自身は今回、4月23日の衆院海賊対処・テロ防止特別委員会で「北方4島の話は、帰属問題がはっきりしない限りは前に進まない。(谷内も)それを前提にしゃべっていると思う。ロシアとの平和条約締結は、4島の帰属問題を明らかにした上でどうするかという話にすべきだというのが、基本的な政府の考え方だ。このことは一貫して変わっていない」と述べるにとどめている。
谷内発言が麻生と打ち合わせ済みの、北方領土問題の解決を目指すための「観測気球」だったとしたら、3.5島返還論への反発が依然、強いことが明らかになり、麻生が北方領土問題で譲歩案を提示するのは難しくなったといえる。逆に「観測気球」でなかったとしたら、谷内発言は軽率だったことになる。
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●小沢代表の進退、焦点に
小沢一郎民主党代表の進退問題が、当面の政局の最大の焦点になっている。
ことの発端は、小沢の公設第一秘書が政治資金規正法違反の罪で逮捕・起訴された西松建設による巨額献金事件。小沢は秘書が起訴された3月24日、緊急役員会と常任幹事会で、贈収賄などの新しい事実が明らかにされなかったとして当面続投する考えを表明し、了承された。
ただ、小沢の続投が次期衆院選に影響するとして、民主党内からも異論が出ている。24日の常任幹事会では、前原誠司副代表が「すんなり了と言うわけにはいかない」と指摘したほか、小宮山洋子衆院議員も24日夜、記者団に「政権交代を実現して日本を良くするため、代表は辞任すべきだ。謝りながら、言い訳しながらの選挙では勝てない。小沢氏が検察と戦うのは自身の問題で、小沢氏の裁判闘争と政権を取るための民主党の戦略は別だ」と語った。
小沢の続投に対しては、世論も反発を示している。
共同通信社が25、26両日に実施した全国緊急電話世論調査によると、小沢の続投表明に対し、「代表を辞めるべきだ」との回答が66.6%に上り、「代表を続けてよい」の28.9%を大きく上回った。事件に関する小沢の説明を「納得できなかった」との答えも79.7%に上り、「納得できた」は12.0%にとどまっている。
一方、麻生内閣の支持率は23.7%で、3月7、8両日実施の前回調査から7.7ポイント増加し、不支持率は63.5%と7.3ポイント減少。麻生太郎首相と小沢の「どちらが首相にふさわしいと思うか」との質問でも麻生が前回比7.5ポイント増の33.1%、小沢が同2.4ポイント減の31.2%と逆転した。
報道各社が行った世論調査でも同様の傾向が出ており、小沢がこのまま代表にとどまれば、政権交代確実とみられていた次期衆院選で、苦戦を強いられるのは避けられない情勢となっている。
そうした、民主党にとって厳しい情勢の一端が、3月29日に投開票され、小沢の秘書起訴後、初の大型選挙となった千葉県知事選で明らかになった。民主党など野党が推薦する第三セクター鉄道会社の前社長吉田平(49)候補が、自民党県議会議員らの支援を受けた元自民党衆院議員の森田健作(59)に敗れたからだ。
小沢は投開票前日の28日、吉田応援のため千葉県入りして、てこ入れしたにもかかわらず、40万票近い票差をつけられてしまった。選挙に強いとされてきた小沢の求心力は、西松巨額献金事件とともに陰り始めたことは否めない。
小沢はこれまで、地方の首長選でも独自候補を擁立し、自民党と対決する選挙戦略を主導してきており、秋田県知事選(4月12日投開票)など、今後の地方選挙で敗北が続くようだと、党内から代表交代論が噴出し、小沢が代表辞任を決断せざるを得ない状況に追い込まれる可能性は十分ある。
一方、小沢の立場からみれば、自らの秘書が関係する事件で、民主党に勢いがなくなる中、自らの辞任は、民主党を再び浮上させる要素にもなる。このため、小沢自身が、自らの辞任時期を慎重に見極めているとの見方もできる。
●5月解散論、自民内で浮上
こうした民主党の混乱を受け、自民党内では「5月衆院解散・総選挙論」が浮上している。
これまで解散時期への具体的言及を避けてきた自民党の古賀誠選挙対策委員長は26日、古賀派の総会で「5月は緊張しなければいけない時になる。追加の景気回復(対策を盛り込む2009年度補正予算案)の国会提出時期と成立させるタイミングは、今度の政局の最大のヤマ場になる」と述べた。
また、細田博之幹事長も29日、NHKテレビの日曜討論で「5月解散論」について「与野党が早急に協議をして済ませればいろいろ余地が出てくるのではないか」と、可能性を否定しなかった。
こうした発言の背景にあるのが、民主党が小沢の進退問題でもたつき、麻生内閣の支持率が持ち直している今こそ、解散の好機との判断だ。
ただ、麻生自身は5月解散に否定的とみられる。その理由の一つが、麻生が7月上旬にイタリアで開かれるマッダレーナ・サミットへの出席を熱望している、とされていることだ。
民主党がいくら小沢の進退問題で混乱しているとはいえ、次期衆院選で自民党が必ず勝てるとの確信はない。万が一、自民党がサミット前の解散・総選挙で敗北すれば、麻生のサミット出席は泡と消える。麻生にとって、そんな危険を冒してまで、5月に解散する必要はないからだ。
さらに、5月解散の前提となっているのが、2009年度補正予算の早期成立。これには民主党の協力が不可欠だが、民主党が自分たちが負ける可能性のある5月解散のために協力するとは考えにくい。民主党がずるずると審議を引き延ばせば、5月解散は困難になり、7月の東京都議会議員選挙に近づく。公明党は次期衆院選と都議選の時期が近づくことを嫌がっており、麻生は結局、解散できなくなってしまう。
また、5月解散の可能性が濃厚になれば、民主党内で次期衆院選への危機感から小沢降ろしの動きが一気に加速するかもしれない。もし、小沢が代表辞任を決断し、新しい代表の下で次期衆院選を戦うことになれば、民主党が議席を伸ばし、政権交代の可能性がより高くなる。
つまり、5月解散論が声高に叫ばれるほど、その実現の可能性が低まるというジレンマになっている。
結局、衆院解散・総選挙の時期は、サミット後から任期満了の9月10日までの間に行われる可能性が高い状況は、依然変わっていないとみるのが妥当だろう。
●ミサイル防衛の成否は
外交面で喫緊の課題となっているのが、北朝鮮が人工衛星名目で4月4―8日の間に発射を予告している長距離弾道ミサイルへの対応だ。
北朝鮮側の予告によると、このミサイルは秋田県の西方沖約130~380キロの日本海に1段目を落下させ、その後、東北地方北部上空を通過する。
このため政府は3月27日、ミサイルが日本領土・領海に落下した場合に迎撃する「破壊措置命令」を初めて発令し、陸上自衛隊新屋(あらや)演習場(秋田県)、同岩手山演習場(岩手県)、首都圏の市ケ谷駐屯地(東京都新宿区)、朝霞(埼玉県)、習志野(千葉県)両駐屯地など全国5カ所に地上配備型迎撃ミサイル(PAC3)を配備、海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載した海上自衛隊のイージス艦「こんごう」と「ちょうかい」を日本海に展開した。
また、米軍も米イージス駆逐艦「ジョン・S・マケイン」「チェフィー」を日本海に展開している。日米のイージス艦同士は「データリンク」で結ばれてデータを共有しており、米軍と自衛隊が連携してミサイルの発射を探知、飛行ルートを追跡するとみられる。
では、実際に迎撃ミサイルは発射されるのだろうか。答えは「否」だろう。
その理由の一つは、北朝鮮がミサイル発射を人工衛星打ち上げと主張、事前の通告も行っていることから、それを打ち落とせば深刻な外交問題に発展しかねないからだ。
米国はイージス艦を展開しているものの、迎撃には慎重な姿勢を見せている。 ゲーツ米国防長官は29日、FOXテレビの番組で「もしハワイに向かってくるようなら迎撃も考慮するが、現時点でわれわれにはその計画はない」と語った。これは米政府が衛星写真などから、発射されるミサイルが米国を射程に含むものではないと見切り、ことさらに緊張を高める必要はないと判断しているものとみられる。
第2の理由は、超高速で落下してくるミサイルを打ち落とすことは、実験では一部成功しているとはいえ、極めて困難だからだ。日本政府はこれまでミサイル防衛に約7千億円を投じており、迎撃が失敗すれば、ミサイル防衛を進めてきた政府への批判が高まる。
そもそも、専門家の間では、日本の領土にミサイルが落下する可能性は低いとみられている。にもかかわらず、政府・防衛省がミサイル迎撃態勢をとり、本来、防衛秘であるはずのPAC3配備場所まで公開しているのは、北朝鮮へのけん制と同時に、日本国民に対してミサイル防衛をアピールする狙いもあるとみられる。
●「自由と繁栄の弧」復活
麻生首相は3月25日夜、ウクライナのティモシェンコ首相と会談し、今後の協力強化と方向性を確認する共同声明を発表した。
この会談の重要な点は、麻生首相がウクライナの民主化と市場経済化の努力を支援する方針を伝えたのに対し、ティモシェンコ首相が麻生首相が提唱してきた「自由と繁栄の弧」を高く評価したことだろう。
自由と繁栄の弧は、2006年11月、安倍内閣の外相だった麻生が講演で提唱した外交政策で、ブッシュ米前政権のネオコン勢力が進めた「価値観外交」と軌を一にしている。
「弧」にあたるのは「北欧諸国から始まって、バルト諸国、中・東欧、中央アジア・コーカサス、中東、インド亜大陸、さらに東南アジアを通って北東アジアにつながる地域」。
この地域への経済協力などを通じ、自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済などの「普遍的価値」を根付かせて政治・経済を安定させ、テロの温床を無くして平和を構築しようとする試みだ。
麻生はこの際、特にインドとの関係を強化し、貿易・投資や政府開発援助の拡大政策などを行った。これは明らかに中国を意識したものであり、ウクライナへの協力は、ロシアに対するけん制でもある。自由と繁栄の弧は、中ロけん制、もしくは中ロ封じ込めと同義語だ。
この「自由と繁栄の弧」は当時外務事務次官であった谷内正太郎を中心に企画・立案されたとされる。
2007年9月に安倍首相が退陣し、後継の福田内閣が中韓両国を中心とするアジア外交に軸足を移したことに加え、2008年1月に谷内が退任したことで、「自由と繁栄の弧」政策は一時期、後退した。
しかし、2008年9月に麻生自身が首相に就任し、2009年1月には谷内を政府代表に起用した。政府代表は外務公務員法に規定された特別公務員で、政府を代表して外国政府と交渉する権限がある。これまでも経緯から推測しても、麻生は外相の中曽根弘文よりも、谷内を信頼しているとみていい。
麻生内閣がいつまで続くかは分からないが、当面は麻生-谷内ラインの「価値観外交」に基づく外交政策が進められることになる。
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●政局の材料にされる日本外交
麻生太郎首相が積極的な外交を展開している。2月18日にサハリンを日帰りで訪れ、メドベージェフ・ロシア大統領と会談。24日にはワシントンを訪問し、オバマ政権下でホワイトハウスに招かれる初めての外国首脳として、オバマ米大統領と初の日米首脳会談を行った。
首相は、4月2日にロンドンで開かれる第2回金融サミット、4月にタイで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス日中韓首脳会議への出席を予定しているほか、5月に訪日するプーチン・ロシア首相のホスト役にも意欲を示している。中国訪問にも意欲的で、政府部内では金融サミット前の訪中も検討されている。
麻生首相が外交日程を詰め込んでいるのは、内政での失点を外交で挽回しようという思惑以外に、外交日程を詰め込むことで、徐々に激しくなっている「麻生降ろし」の動きを封じる目的もある。国際会議や外国訪問を盾にして、反麻生の動きに対して「国益を損なう」と反論することができるからだ。
●当事者能力を失う麻生政権
ただ、外国政府側は麻生首相を、日本の首相として引き続き重要なパートナーであり続けるとは見ていないようだ。その理由は、内閣支持率の続落で政権交代の可能性が高まっており、政権の当事者能力を失いつつあるためだ。
その具体例が、麻生首相の訪米だ。急きょ決まった、国会日程の合間を縫っての訪問ではあったが、現地滞在約24時間、共同文書は作成されず、昼食会や夕食会はもちろん記者会見も行われなかった。このことは、オバマ政権が発足間もないとはいえ、初訪米でキャンプ・デービッドに招待された小泉元首相とは、米政権側が日本の首相に抱く期待度の差が如実に現れている。
高い内閣支持率を武器に首脳外交に臨み、ブッシュ前米大統領と蜜月関係を結んだ小泉純一郎元首相はモスクワでの記者会見で「外交において、その国の政治基盤が安定していることは大変重要だ。日本国内の政局混乱を一日も早く正すことが重要な課題だ」と述べたという(2009年2月19日付読売新聞朝刊)が、その指摘が麻生内閣の現状を指していることは衆目の一致するところだ。
就任直後の米大統領に会うために訪米した首相は短命でもある。過去3代の大統領は就任3カ月以内に日米首脳会談に応じてきたが、日本の首相はいずれも会談後4カ月以内に退陣を余儀なくされている。
例えば、1989年2月2日、就任2週間後のブッシュ大統領(父)と会談した竹下登首相は消費税導入やリクルート事件で激しい批判を浴びて4カ月後の6月に内閣総辞職。 93年4月16日に就任から3カ月足らずのクリントン大統領と会談した宮沢喜一首相はこの年7月、衆院選での自民党過半数割れで退陣し、非自民の細川護煕政権が誕生した。2001年3月19日、ブッシュ大統領(子)と会談した森喜朗首相は既に自民党総裁選前倒しを提案して事実上の退陣表明をしており、4月に小泉内閣が発足している。
これは日米首脳会談を政権浮揚に利用しようとしても、外交は内閣支持率の上昇にはつながらず、結局は追い込まれることを如実に現している。
●注目浴びる小沢発言
麻生内閣が国政、外交ともに当事者能力を失う一方で、注目を集めているのが民主党の小沢一郎代表の言動だ。小沢氏はこれまで、麻生内閣を早期の衆院解散に追い込んで総選挙での政権交代を目指すため、全国を行脚し、選挙に向けた活動に重点を置いてきたが、麻生内閣のレームダック化が鮮明になるにつれ、外交活動にも力を入れ始めた。というよりも、外国政府側が日本の政権交代をにらんで、民主党中心の政権誕生時に首相に就任するとみられる小沢氏とのパイプづくりを急いでいると見た方がいいだろう。
主なものだけでも、小沢氏は2月17日に来日したヒラリー・クリントン米国務長官、2月23日には中国の王家瑞・中国共産党対外連絡部長(中連部長)と会談した。
野党党首と国務長官との初めての個別会談となったクリントン-小沢会談は、米国側の打診によるものだ。当初、小沢氏は地方出張を理由に会談を断っていたが、周囲の説得に応じた。王部長との会談は、麻生首相との会談よりも長い1時間15分にわたったという。
各国から民主党幹部と会談したいとの要請が増えたのは昨年12月からで、実現した会談は12月以降30件を数えるという(2009年2月25日付朝日新聞朝刊)。
そうした状況下で飛び出したのが、小沢氏の「第七艦隊」発言。その発言要旨は以下の通り(2009年3月1日時事通信配信)だ。
「米国の言う通り唯々諾々と従うのではなく、きちんとした世界戦略を持ち、どんな役割を果たしていくか。少なくとも日本に関連する事柄についてはもっと日本が役割を果たすべきだ。そうすれば米国の役割は減る。今の時代、前線に部隊を置いておく意味が米国にもない。軍事戦略的に言うと第7艦隊がいるから、それで米国の極東におけるプレゼンスは十分だ。あとは日本が極東での役割を担っていくことで話がつく」(2月24日、奈良県香芝市内で記者団に)
「安全保障の面で日本が役割を負担していけば、米軍の役割はそれだけ少なくなる。米軍におんぶにだっこだから、米国の言うことを唯々諾々と聞くことになっている。自分たちにかかわることはなるべく自分たちできちんとやるという決意を持てば、そんなに米軍は出動部隊を日本という前線に置いている必要はない。ただ、東南アジアは非常に不安定要因が大きいので、米国のプレゼンスは必要だ。それはおおむね第7艦隊の存在で十分じゃないか」(2月25日、大阪市内で記者団に)
この発言について、小沢氏自身は2月27日、横浜市での記者会見で「わたしは単に自衛隊ができることをやり、米国の負担が軽くなれば、それだけ在日米軍も少なくて済むという、ごくごく当たり前の話をしただけだ」と真意を説明した。
この発言の核心は「対等な日米関係」だ。小沢氏には自民党幹事長当時の1991年、湾岸戦争を受けて多国籍軍に90億ドル(1兆2000億円)の支援を主導したが、結局、当事国に感謝されなかったというトラウマがある。
これ以降、小沢氏は日本の主体的な外交・防衛政策を主張するようになり、その一つの到達点が「対等な日米関係」であり、1993年に出版した「日本改造計画」で提唱した「普通の国」なのだ。
ただ、仮に日本に駐留する米陸空軍や海兵隊が撤退することになれば、日本の安全保障だけでなく、アジア・太平洋地域の軍事バランスにも大きな影響が生じる。代わりに自衛隊増強を目指すのかどうかなど、小沢氏は全体像を明らかにしておらず、政府・与党からは「防衛に知識がある人はそういう発言はしない」(麻生首相、2月26日記者団に)などと民主党の政権担当能力を疑問視する意見が続出しており、民主党内でも小沢氏の説明不足を指摘する声が出ている。
また、次期衆院選で民主党が勝利すれば、連立政権に参加すると見られる社民党は「(在日米軍撤退の)あとは日本でやるということなら、意味が違ってくる」(福島瑞穂党首)と受け止めており、小沢氏の「第七艦隊」発言が今後、連立協議の障害になる可能性は捨てきれない。
もちろん、小沢氏の「第七艦隊」発言は、日本の外交当局、米政府にとっても懸念材料だ。小沢氏の「対等な日米関係」という言葉は、1993年に非自民連立政権の首相となった細川護煕首相が提唱した「成熟した大人の日米関係」に通じる。細川首相のこの姿勢は当時、日米包括経済協議をこじらせ、クリントン政権のその後の「日本離れ」の布石となったからだ。
このため、民主党幹部は小沢発言の沈静化に躍起となっているが、小沢発言は図らずも、民主党が依然、安全保障政策で定見を持たない未熟な政党にとどまっているという印象を与えてしまった。
●米中関係の深化に警戒感
日中両国と台湾が領有権を主張する尖閣諸島をめぐり、日本政府は米中接近への警戒感を強めている。
この尖閣諸島の領有権問題に関連し、麻生首相は2月26日の衆院予算委員会で、尖閣諸島に第三国が侵攻してきた場合について「尖閣は日本固有の領土である以上、日米安全保障条約の対象だ」と述べた。麻生首相が言及した尖閣諸島をめぐる日本政府の見解は従来と何ら変わることはない。
これに対し、中国の楊潔チ外相は2月28日、就任後初めて中国を訪問した中曽根弘文外相との会談で、麻生首相の尖閣諸島をめぐる発言を念頭に、言動を慎重にするよう求め、両外相は「日中関係全般に影を差すべきではない」との認識で一致した。
1960年に改定された新安保条約第5条は、日本の施政下にある領域への攻撃は、日米双方の平和と安全を危うくするものと認め、「共通の危険」に対処するよう行動することを定めている。
尖閣諸島が日米安保の対象かどうかについて、ブッシュ前政権は2004年、尖閣諸島の魚釣島(沖縄県石垣市)に上陸した中国人活動家七人が逮捕された際、「1972年、沖縄の日本復帰の一部として返還されて以来、日本の施政下にあり、日米安全保障条約の第五条が適用される」(エアリー米国務省副報道官、2004年3月24日の記者会見)と、日米安保条約に基づいて尖閣諸島への攻撃は米国への攻撃とみなし、集団的自衛権を発動して反撃するとの見解を示しており、日本政府はこうした見解が米国の政権交代によっても変わらないことを期待している。
しかし、オバマ民主党政権になり、日本政府がこうした見解を確認するよう求めているものの、米政府側は確認を避けているという(2009年2月27日付読売新聞朝刊)。ブッシュ共和党政権以前のクリントン民主党政権下でも、米政府は確認を避け続けた経緯があり、日本政府は、オバマ政権が今後、クリントン政権同様、中国に近いスタンスをとるのではないかと警戒しているのだ。
日本政府にとって重要なのは、米国が尖閣諸島における日本の実効支配を認め、日米安保条約の対象とし続けることである。そのことが何よりも中国に対するけん制になるからであり、日本政府は米国に対し、機会あるごとに尖閣諸島が日米安保条約の対象となることの確認を米政府に求め続けるであろう。
中国は今年から通常型空母2隻の建造を計画しているのに続き、2020年以降、同国として始めてとなる原子力空母2隻の建造を計画している、という(2009年2月13日付朝日新聞朝刊)。
また、中国海軍の攻撃型潜水艦が2008年、過去最多の計12回の哨戒活動を実施していたことが分かった(2009年2月5日共同通信配信)。
これら海軍力の増強、海軍活動の活発化はいずれも、中国の外洋進出の意図をうかがわせている。
こうした動きに対し、米海軍が、潜水艦からの攻撃を想定した日米共同訓練(対潜特別訓練)を重視し、米本土から空母を派遣するケースが増えてきた(2009年2月26日付朝日新聞ウエッブ)。
オバマ政権としても、いつまでも尖閣諸島を日米安保条約の対象か否か、曖昧にし続けることはできないだろう。中国の経済発展、外洋進出の意図はクリントン政権の時のそれとは全く異なるからである。
●3島返還論は消えていないのか
麻生首相は2月18日、サハリンを訪問し、ロシアのメドベージェフ大統領と会談した。会談後、麻生首相は記者団に、北方領土問題について「新たな、独創的で型にはまらないアプローチで、我々の世代で解決すべく、具体的な作業を加速しようということで一致した。4島の話は向こう(ロシア)が2、こっちが4ではまったく進展しない。日露間すべてに引っかかっている問題だ。政治が決断しなければいけない」と述べた。
麻生首相の「独創的アプローチ」が何を指すのかは分からない。しかし、それを読み解くヒントが、センテンスの後半「4島の話は向こう(ロシア)が2、こっちが4ではまったく進展しない」にある。(4+2)÷2。面積二分論、また3島(+α)返還論だ。
麻生首相は外相当時、3島返還論に言及したことがある。2006年12月、衆院外務委員会で「択捉島の約25%を(国後、色丹、歯舞の)残り3党にくっつけると、(面積が)50(対)50の比率になる」と述べている。
しかし、3島返還論が有力な解決策になり得たとしても、日本の国内世論的には、4島返還論から転換するに至っていない。かつて2島先行返還論を唱えた鈴木宗男衆院議員は失脚させられた。
麻生首相であれ、首相が誰にせよ、3島返還で決着しようとしたら、世論の猛反発を買う。だからこそ、麻生首相は外相時代には3島返還論に言及できたとしても、より責任の重い首相としては言い出せる状況にはない。
領土交渉を解決するには、強力な政治指導力が求められる。どんな形で決着するにせよ、国内の反対論を押さえ込むだけの政権基盤が必要だ。今の麻生政権にはそれだけの力量がなく、領土問題解決の道筋をつけられるような状況ではない。
外交問題はつとめて内政問題である。北方領土問題は日ロともに、国内に強硬な世論を抱え、少なくとも日本側で支持基盤の弱い政権が続くうちは、解決は極めて難しいだろう。
※このレポートは、小沢一郎民主党代表の公設第一秘書が政治資金規正法違反で逮捕される以前に脱稿したものです。
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郵政民営化をめぐる麻生太郎首相の発言を聞いて、唖然としている国民、有権者は多いことだろう。麻生首相にはもともと宰相としての資質はなかったのだから、どんなとんでもない発言をしても「当然」と思えるのだが、こんな総裁にいつまでも付き合っている自民党議員には、よほど我慢強いのだと尊敬の念をいただかざるを得ない。もちろんこれは皮肉である。断っておかないと、今の自民党議員には称賛だと受け取られかねないので、あえて付言しておく。
ことの発端は、麻生首相が郵政民営化に賛成じゃなかったと発言したことだ。麻生氏と言えば、郵政民営化を閣議決定した第2次小泉改造内閣で、「郵政解散」後に民営化法を成立させた第3次小泉内閣で、ともに郵政を管轄する総務相だった。
確かに、麻生氏は郵政民営化に慎重で、民営化法案の骨子をつくる段階で、当時の竹中平蔵郵政民営化担当相が10年間の移行期間後に持ち株会社が郵貯会社と保険会社の株式をすべて売却するよう主張したのに対し、総務相だった麻生氏は一定の保有継続を求めた経緯がある。
だからといって、民営化に賛成じゃなかったという言い訳は通用しないだろう。麻生氏は自らの良心に背いて、民営化法案の閣議決定に副署したのであろうか。だとしたら、政治家としての姿勢に問題があると言わざるを得ない。自らの主張に反する決定を政府がしようとしたら、潔く身を引くべきだったのではないか。それが政治家としての矜持というものだろう。
もし、民営化に賛成しない麻生首相が政権に居座るとしたら、それは2005年の郵政解散における国民の選択を愚弄するものだ。麻生首相は2月10日、記者団に「(郵政民営化の)内容を詳しく知っていた方はほとんどいなかった」と発言したそうだが、国民が何も知らずに民営化に賛成したかの言いぐさは、政治家としておごりも甚だしい。
今、参院で過半数がないにもかかわらず、野党が反対する法案を成立させることができるのは、衆院で三分の二という議席があるからではないか。それは紛れもなく、郵政民営化を掲げて自民党と公明党が勝ち取った議席である。郵政民営化を根本から見直すというのなら、「郵政民営化の抜本見直し」を政権公約に掲げて解散に打って出るべきであろう。そんなこともできずに、軽々に民営化見直しに言及すべきでない。
また、かんぽの宿問題をことさら問題視している鳩山邦夫総務相は、郵政族の大ボス田中角栄元首相の秘書を務めた生粋の田中派議員である。鳩山氏がかんぽの宿をことさら問題化させている背景に、郵政族と組んで郵政利権を守ろうとする旧郵政官僚がうごめいていることは間違いない。次期総務事務次官レースで旧郵政官僚が復権を図ろうとしていることも絡んでいると見た方がいい。
鳩山氏が総務相としてすべきことは、かんぽの宿の一括売却をめぐる国民の疑問を解消するような政策をとることである。総務相自らが疑問を吹聴するようでは、自らの職務を放棄しているとのそしりは免れない。
とはいえ、問題はそのような発言を続ける麻生首相と、郵政族、郵政官僚の利権確保のために改革の流れを逆行させようとしている鳩山総務相の言動を、与党である自民党が止められないことだ。すでに政治秩序を維持しようとする意欲もエネルギーも失い、機能不全に陥っている。
唯一の救いは、自民党の保利耕輔政調会長が、麻生首相の発言に「ちょっと口が滑っちゃったかなという感じがする。首相の真意は民営化をしっかりした形に作っていくということであり、党としても民営化を後退させることはできない」と述べていることだ。
保利氏は郵政民営化に反対して離党した政治家だ。その彼が民営化を後退させることはできないと述べているのだ。目の前のことに汲々とする政治家が多くなった自民党にあって、大局観を示していると言っていいだろう。麻生首相も保利氏の爪の垢でも煎じて飲んだらいかがか。
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